自分の血液でしわ治療「PRP注入」:学会の診療指針は、しわ・たるみには「弱く推奨」。成長因子(bFGF)を混ぜる注入は、しこりやふくらみの報告が多く「行わないことを弱く推奨」
日本皮膚科学会など5学会の「美容医療診療指針」(2020年)によると、自分の血液から血小板を濃縮して注入するPRP(多血小板血漿)療法は、日本では未承認の医療で、再生医療等安全性確保法の第三種として国への届け出が必要です。顔のしわ・たるみへのPRP単独療法は改善が50%未満ながら重い合併症はなく「弱く推奨」。一方、床ずれなどの治療薬であるbFGF(トラフェルミン)を混ぜた注入は、しこりやふくらみなど合併症の報告が多く、「安易には勧められない(行わないことを弱く推奨)」とされています。

メル美「自分の血液を使うから安心」っていうしわの注射の広告を見たの。「再生医療」って書いてあって、なんだかすごそう。

プレ男自分の血なら、副作用もなさそうに思えるよね。実際はどうなんだろう。
こんにちは、Dr. Taro です。 「美容医療」から、今回はPRP(多血小板血漿)療法の話です。日本皮膚科学会・日本形成外科学会・日本美容皮膚科学会・日本美容外科学会(JSAPS・JSAS)の5学会による「美容医療診療指針」(令和元年度厚生労働科学特別研究事業、2020年)の「シワ・タルミに対する多血小板血漿(PRP)療法」をもとにまとめ、改訂版(令和3年度厚生労働科学研究補助金)の内容も確認しました。
PRPってなに?
- 自分の血液を採って、遠心分離で血小板を濃縮した血漿です
- 注入すると、血小板から出るさまざまな成長因子が、皮膚や皮下脂肪などに働き、しわやたるみの改善を目指します
- 指針によると、PRP療法は日本では未承認の医療で、再生医療等安全性確保法の第三種のリスクの対象です。しわ・たるみの治療で行う場合は、認定再生医療等委員会の審査を経て、厚生労働省への届け出が必要とされています

メル美「再生医療」って、国への届け出が必要な医療なんだね。
PRP単独:「弱く推奨」。重い合併症は報告されていない
- 指針は、顔のしわとたるみに対するPRP単独療法について、「治療を希望する患者には、行うことを弱く推奨する」としています
- 令和元年度版では、研究をまとめると改善の程度は50%未満とされていました。改訂版(令和3年度)では、しわに有効と判断できる論文が多くあることから「弱く推奨」とし、血管の中に誤って注入しないよう注意が必要としています
- 重い合併症はなく、比較的安全な治療とされています
- 一時的な合併症として、赤み、むくみ、熱っぽさ、痛み、押したときの痛み、内出血、皮むけ、乾燥感などがみられています
- 一方、研究ごとにPRPの作り方(調製法)や注入回数がバラバラで、対照のない研究が多いなど、評価には限界があります。美容外科でのPRP療法は推奨の判断には至らないとした総説もあります
bFGFを混ぜたPRP:「行わないことを弱く推奨」
- bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)の一種であるトラフェルミンは、床ずれ(褥瘡)や皮膚潰瘍の治療で保険が使える薬です
- これをPRPに混ぜたものが、フィラー(ヒアルロン酸などの注入)の代わりにしわやへこみに注入されることがあります
- 指針は、bFGFを混ぜたPRPの注入について、「行わないことを弱く推奨する」「安易には勧められない」としています。安全性は「保証できない」、承認状況は「未承認(適応外使用)」です
- 理由:
- 注入したあとのしこり(硬結)や、皮膚が盛り上がりすぎることが報告されている
- 日本美容外科学会(JSAPS)の会員へのアンケートでは、注入部のしこりやふくらみなどの合併症の約4割が、PRPとbFGFの混合注入によるものだった
- bFGFのこうした使い方は日本以外では広く行われておらず、安全性を担保できる手順が確立していない
- 薬そのものの人への注入投与の有効性・安全性は確立しておらず、適正な使い方とはいいがたい
- しこりができたときの対処(ステロイドの注射)も、確実な方法とはいいきれない

プレ男しこりやふくらみの合併症の4割がこの注入だったんだ…。「自分の血だから安心」とは言えないね。

学会の診療指針では、PRPに成長因子(bFGF)を混ぜた注入は、しこりなどの合併症の報告が多く「安易には勧められない」とされています。何を混ぜて注入するのか、必ず医師に確認しましょう。
受ける前に確かめたいこと
-
PRPだけなのか、ほかの薬(bFGFなど)を混ぜるのか
-
再生医療等安全性確保法の届け出をしている医療機関か
-
効果の程度と、合併症、しこりができたときの対応
-
「自分の血液だから副作用がない」といった説明には注意しましょう
-
ヒアルロン酸などの注入のリスクはヒアルロン酸などの「注入(フィラー)」、受ける前のチェックは美容医療を受ける前の4つのチェックの記事もどうぞ

メル美「再生医療」って言葉だけで決めないで、何を注入するのか聞いてみるね。
まとめ
- PRPは、自分の血液から血小板を濃縮して注入する治療。日本では未承認で、再生医療等安全性確保法の第三種として届け出が必要
- しわ・たるみへのPRP単独は、重い合併症はなく「弱く推奨」(改訂版でも同じ)
- bFGF(トラフェルミン)を混ぜたPRPは、しこり・ふくらみの報告が多く「行わないことを弱く推奨」
- 受ける前に、何を混ぜるか、届け出、合併症への対応を確認
参考文献
- 日本皮膚科学会, 日本形成外科学会, 日本美容皮膚科学会, 日本美容外科学会(JSAPS), 日本美容外科学会(JSAS). 美容医療診療指針(令和元年度厚生労働科学特別研究事業). 日本美容外科学会会報 42(特別号), 2020. 第2章第5節 シワ・タルミに対する多血小板血漿(PRP)療法(CQ2-5-1、CQ2-5-2). https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/biyosinryo.pdf (閲覧日:2026年10月4日)
- 日本皮膚科学会, 日本形成外科学会, 日本美容皮膚科学会, 日本美容外科学会(JSAPS), 日本美容外科学会(JSAS). 美容医療診療指針(令和3年度厚生労働科学研究補助金). 日本美容外科学会会報 44(特別号). https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/biyo2v.pdf (閲覧日:2026年10月5日)(第2章第5節。PRPは改訂版でも「弱く推奨」、bFGF添加は「行わないことを弱く推奨」)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。