【テクノロジー解説】量子コンピューターはいまどこまで来た?最大の弱点「エラー」を、量子ビットをふやすほど減らせるように。日本では256量子ビット機や、部品まで日本製の「純国産」機も。いまの暗号を守る新しい暗号の準備も始まった
量子コンピューターの最大の弱点は、計算がこわれやすい「エラー」です。Googleの研究チームは2024年、量子ビットをふやすほどエラーが減る「しきい値以下」の誤り訂正を実証し(Nature)、2025年には、ふつうのコンピューターではまねしにくい計算で、実用的な「量子優位」への道を示しました。日本では、理化学研究所と富士通が2025年に256量子ビットの超伝導量子コンピューターを開発し、1,000量子ビット超をめざしています。2025年には部品まで日本製の「純国産」機が稼働し、2026年には144量子ビットの「叡-Ⅱ」が使えるようになりました。一方、将来の量子コンピューターがいまの暗号を破るのにそなえ、米国NISTは2024年に新しい暗号の標準を公開しました。

プレ男量子コンピューターって、何年も前から「すごい」って言われてるけど、もう使えるの?

メル美日本でもつくってるって聞いたよ。いまどこまで来てるんだろう。
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回は量子コンピューターの最新の進歩です。論文(Nature)、理化学研究所の発表、米国国立標準技術研究所(NIST)の発表をもとにまとめました。量子力学の基礎と2025年のノーベル物理学賞は量子コンピューターの土台「量子力学」ってなに?へ。
いちばんの壁は「エラー」
- 理研と富士通の発表によると、いまの量子コンピューターは「NISQ(ノイズが多い中規模量子デバイス)」とよばれ、ノイズの影響を完全にはなくせず、計算が大きくなるほど正確な答えが出にくい状態です
- そこで研究されているのが「量子誤り訂正」です。たくさんの物理的な量子ビットをまとめて1つの「論理量子ビット」にし、エラーを見つけて直しながら計算します
- ただし、量子ビットをふやせばエラーが減るのは、一つひとつの量子ビットのエラーがある限界(しきい値)より小さいときだけです
2024年:ふやすほどエラーが減った
- Google の研究チームは、新しい超伝導の量子チップ「Willow」で、しきい値より下で動く誤り訂正を実証しました(Nature、2024年12月オンライン公開)
- 誤り訂正の規模(符号の距離)を1段階大きくするたびに、論理的なエラーが約2.14分の1に減りました。いちばん大きい101量子ビットの構成では、誤り訂正1回あたりのエラーが0.143%
- まとめた論理量子ビットは、いちばん性能のよい1つの量子ビットより約2.4倍長く情報を保てました
- 論文は、この性能を大きくしていければ、エラーに強い大規模な量子計算に必要な条件を満たしうる、としています

プレ男ふやすほどエラーがふえるんじゃなくて、減るようになったのか!それは大きな一歩だね。
2025年:「役に立つ量子優位」への道
- 同じチームは2025年、量子の世界の「時間を逆にたどる」実験の手法を使い、たくさんの量子ビットがからみあった状態のくわしいふるまいを測定しました(Nature、2025年10月)
- 測定したものは、ふつうのコンピューターでまねするのがとてもむずかしい性質をもち、さらに、物理のしくみを調べることにも使えることを示しました
- 論文は、これが「実用的な量子優位」(ふつうのコンピューターではできない、役に立つ計算)への道を示している、としています
日本の量子コンピューター
理化学研究所の発表から。
- 2023年3月:国産の初号機(64量子ビット、愛称「叡(えい)」)が公開され、インターネット経由のクラウドで外部の人が使えるようになりました
- 2025年4月:理研と富士通が、256量子ビットの超伝導量子コンピューター(世界最大級)を開発。新しい高密度実装技術で、量子ビットを4倍にしました。今後は1,000量子ビット超をめざすとしています
- 2025年7月:主要な部品やソフトウェアがすべて日本製の「純国産」の超伝導量子コンピューターが、大阪大学で稼働をはじめました
- 2026年3月:144量子ビットのチップをのせた「叡-Ⅱ(エイツー)」のクラウドサービスがはじまりました。量子ビットの寿命も大きくのび、冷凍機をふくむシステム全体は「叡」と同じくらいの大きさにおさまっています

量子コンピューターの最大の弱点はエラーです。2024年には、量子ビットをふやすほどエラーが減る誤り訂正が実証されました。日本でも256量子ビット機や「純国産」機がつくられています。
いまの暗号を守る「新しい暗号」
- メール、通販、医療の記録など、ネットの安全は暗号で守られています。いまの暗号は、ふつうのコンピューターには解くのがむずかしい数学の問題を使っています
- NIST によると、十分に強力な量子コンピューターができれば、いまの暗号を破れるおそれがあり、10年以内にそうした装置があらわれると予測する専門家もいます
- そこで NIST は2015年から、量子コンピューターでも解けない新しい暗号を世界から募集し、25か国の82の方式を評価して、2024年8月13日に最初の3つの標準(FIPS 203・204・205)を公開しました。システムの管理者には、できるだけ早く新しい標準に移るよう呼びかけています
量子とつながる技術
- いまのコンピューターの心臓:半導体チップとトランジスタ
- パスワードのいらないログイン:「パスキー」って何?

プレ男まだ「何でもできる」段階じゃないけど、エラーの壁を越えはじめたんだね。

メル美暗号の準備が先に始まってるのもおもしろい。
まとめ
- いまの量子コンピューターはノイズが多く、大きな計算ほど正確な答えが出にくい
- 2024年、Google が量子ビットをふやすほどエラーが減る誤り訂正を実証(101量子ビット、エラーは1段階ごとに約2.14分の1)
- 2025年、実用的な量子優位への道を示す実験
- 日本:叡(64量子ビット、2023年)、256量子ビット(2025年、1,000超をめざす)、純国産機(2025年)、叡-Ⅱ(144量子ビット、2026年)
- NIST が2024年8月に、量子コンピューターに強い新しい暗号の標準を公開
参考文献
- Google Quantum AI and Collaborators. Quantum error correction below the surface code threshold. Nature. 2025;638(8052):920-926. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39653125/ (閲覧日:2026年10月7日)
- Google Quantum AI and Collaborators. Observation of constructive interference at the edge of quantum ergodicity. Nature. 2025;646(8086):825-830. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41125780/ (閲覧日:2026年10月7日)
- 理化学研究所. 世界最大級の256量子ビットの超伝導量子コンピュータを開発(2025年4月22日). https://www.riken.jp/pr/news/2025/20250422_1/index.html (閲覧日:2026年10月7日)
- 理化学研究所. 「純国産」量子コンピュータ、7月28日稼働!(2025年7月28日). https://www.riken.jp/pr/news/2025/20250728_2/index.html (閲覧日:2026年10月7日)
- 理化学研究所. 量子コンピュータ「叡-Ⅱ」の運用開始(2026年3月26日). https://www.riken.jp/pr/news/2026/20260326_1/index.html (閲覧日:2026年10月7日)
- National Institute of Standards and Technology (NIST). NIST Releases First 3 Finalized Post-Quantum Encryption Standards(2024年8月13日). https://www.nist.gov/news-events/news/2024/08/nist-releases-first-3-finalized-post-quantum-encryption-standards (閲覧日:2026年10月7日)
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