【テクノロジー解説】量子コンピューターの土台「量子力学」ってなに?離れていても一体のようにふるまう「量子もつれ」(2022年)と、手でもてる大きさの回路で起きた量子のトンネル効果(2025年)。2つのノーベル物理学賞から
量子コンピューター、量子暗号、量子センサー。ニュースでよく聞く「量子技術」の土台は、100年前に生まれた量子力学です。2022年のノーベル物理学賞は、離れた2つの粒子が一体のようにふるまう「量子もつれ」を実験で確かめた3人に、2025年のノーベル物理学賞は、超伝導の電気回路という手でもてる大きさのもので、量子のトンネル効果とエネルギーのとびとびの値を示した3人に贈られました。ノーベル委員会は「量子力学はすべてのデジタル技術の土台」とし、コンピューターのチップのトランジスタも量子技術の一例としています。やさしく解説します。

プレ男「量子コンピューターがすごい」ってよく聞くけど、「量子」ってそもそも何なのか、さっぱりわからない…。

メル美去年のノーベル賞も量子だった気がする!
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回は、量子コンピューターなどの量子技術の土台、量子力学です。2022年と2025年のノーベル物理学賞の公式発表をもとにまとめました。とても奥が深い分野なので、ここでは発表に書かれていることにしぼって紹介します。
量子力学は、すべてのデジタル技術の土台
2025年のノーベル物理学委員会の委員長は、
- 100年前に生まれた量子力学は、いまも新しいおどろきをくれる。そして、量子力学はすべてのデジタル技術の土台で、とても役に立つ
と述べています。コンピューターのチップのトランジスタも、私たちのまわりにあるすでに確立した量子技術の一例だとしています(半導体チップってなに?)。
2022年:離れていても一体の「量子もつれ」
2022年のノーベル賞の発表によると、
- 量子力学では、2つ以上の粒子が「もつれた(エンタングルした)状態」になることがあります。もつれたペアの一方に起きたことが、もう一方に起きることを決めます。遠くはなれていてもです
- 長いあいだ、「粒子が、どんな結果を出すかのかくれた指示(かくれた変数)をあらかじめもっているだけではないか」が問題になっていました
- 1960年代、ベル博士は、「かくれた変数」があるなら、たくさんの測定結果の関係はある値をこえない、という不等式をつくりました。量子力学は、それをこえると予言していました
- クラウザー博士は、実際の実験で、このベルの不等式がやぶられること(量子力学が正しいこと)を示しました
- アスペ博士は、ペアが出発したあとに測定の設定を切りかえることで、実験の重要な「抜け穴」をふさぎました
- ツァイリンガー博士のグループは、量子の状態を、はなれた粒子に移す「量子テレポーテーション」を実証しました
これらの研究が、量子コンピューター、量子ネットワーク、安全な量子暗号通信などの研究分野への道をひらきました。

プレ男遠くはなれていても、片方を見るともう片方が決まる…ふしぎすぎる!
2025年:手でもてる大きさで「量子」が起きた
2025年のノーベル賞の発表によると、
- 量子力学では、粒子がかべ(障壁)をすりぬける「トンネル効果」が起きます。ふつうは、たくさんの粒子が集まると、量子の効果は目立たなくなります
- クラーク博士、デヴォレ博士、マルティニス博士は、1984〜1985年、超伝導(電気抵抗ゼロで電流が流れる)の部品を、薄い絶縁の層ではさんだ「ジョセフソン接合」の電気回路で実験しました
- 回路の中の電気をおびた粒子たちが、回路全体に広がる1つの粒子のようにふるまい、電圧ゼロの状態から、トンネル効果でぬけだすことを示しました
- さらに、決まった量のエネルギーだけを吸収・放出する(エネルギーの量子化)ことも示しました
- 手でもてるくらいの大きさのシステムで量子の性質を示したこの研究は、量子暗号、量子コンピューター、量子センサーなど、次の世代の量子技術を開発する機会をもたらした、としています

量子力学は、スマホやパソコンのチップをふくむ、すべてのデジタル技術の土台です。離れても一体のようにふるまう「量子もつれ」や、電気回路で起きる量子のふるまいの研究が、量子コンピューターなど次の技術につながっています。
暗号やパスワードの話とも、つながる
「安全な量子暗号通信」も研究されています。いま私たちができるアカウントの守り方は、「パスキー」って何?へ。AI の土台も物理学から生まれました:ニューラルネットワークってなに?。

プレ男ぜんぶはわからないけど、スマホのチップも量子力学のおかげってことは覚えた!

メル美100年前の理論が、まだおどろきをくれるってすてきだね。
量子コンピューターの最新の進歩(誤り訂正、日本の国産機、新しい暗号)は、量子コンピューターはいまどこまで来た?へ。
電子が壁をすりぬける量子のふしぎと、日本人の発見は、電子は「壁をすりぬける」へ。
ドーナツとコーヒーカップの数学で物質のふしぎを説明した研究は、トポロジーへ。
まとめ
- 量子力学は、すべてのデジタル技術の土台。チップのトランジスタも量子技術の一例
- 量子もつれ:はなれた粒子が一体のようにふるまう。ベルの不等式の実験で確かめられた(2022年ノーベル物理学賞)
- 量子テレポーテーションなど、量子コンピューター・量子ネットワーク・量子暗号への道
- 超伝導の電気回路という手でもてる大きさで、トンネル効果とエネルギーの量子化を示した(2025年ノーベル物理学賞)
- 次の世代の量子コンピューター・量子センサー・量子暗号の開発へ
参考文献
- The Royal Swedish Academy of Sciences. Press release: The Nobel Prize in Physics 2022. NobelPrize.org. https://www.nobelprize.org/prizes/physics/2022/press-release/ (閲覧日:2026年10月5日)
- The Royal Swedish Academy of Sciences. Press release: The Nobel Prize in Physics 2025. NobelPrize.org. https://www.nobelprize.org/prizes/physics/2025/press-release/ (閲覧日:2026年10月5日)
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