
プレ男「2000年前のコンピューター」って、ネットでよく見るけど、本当なの?

メル美電気で動くわけじゃないけど、歯車で天体の動きを計算する道具だったんだって。論文も出てるよ。
今回は「アンティキティラ島の機械」です。所蔵するアテネ国立考古学博物館のデジタル解説サイト「The Mysteries of the Mechanism of Antikythera」と、研究チームの論文(Nature、2006年/Scientific Reports、2021年)の原文で確かめました。
プロフィール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| つくられた時期 | 紀元前2世紀(博物館)。刻まれた文字は紀元前150〜100年ごろのもの(博物館)。2006年の論文は「紀元前2世紀の終わりごろ」 |
| 見つかった場所 | ギリシャ・アンティキティラ島の北東の沖の沈没船 |
| 引きあげ | 1900〜1901年(シミ島の海綿とりの潜水夫とギリシャ海軍) |
| つくり | 青銅(すずの少ない銅の板)の歯車・軸・目盛り盤・針。木の箱に入り、前と後ろに金属の板 |
| いまの姿 | 82のかけら。もとの約3分の1が残り、歯車は30個(2021年の論文) |
| 所蔵 | アテネ国立考古学博物館 |
沈没船から(博物館より)
- 船は紀元前75〜50年のあいだにアンティキティラ島で沈んだ、積める量約300トンの貨物船でした。行き先はおそらくイタリア
- そのころ、ローマの上流の人たちは、東地中海のぜいたく品をほしがり、別荘を美術品で飾るのがはやっていました
- 引きあげは2回。1900〜1901年、ギリシャ考古局の監督のもと、シミ島の海綿とりの潜水夫とギリシャ王立海軍が協力しました。2回目は1976年、ジャック=イヴ・クストーの海洋調査船「カリプソ号」の協力で行われました。調査はいまも続いています
- 積み荷には、青銅像「アンティキティラの青年」「哲学者」、神々や英雄の大理石像、青銅の寝台、金の宝飾品、ガラスの器、アンフォラ(つぼ)やランプなどがありました
- この沈没船の発見と引きあげは、ギリシャの水中考古学の始まりとされています

プレ男美術品を運ぶ船の中に、まさか「計算機」がまじっていたなんて!
何を計算した?
博物館によると、この機械は、科学の研究の道具、日食・月食を予測する道具、こよみとして使われ、占星術や航海にも使われたかもしれません。
- こよみ:1年は月の満ち欠けの数でちょうど割りきれないので、太陽のこよみと月のこよみは少しずつずれます。古代の天文学者は、同じ並びがくりかえす周期を見つけていました
- メトン周期:19年(235か月)ごとに、太陽・月・地球が同じ位置関係にもどる
- カリポス周期:76年(940か月)。メトン周期4回分
- 日食・月食:
- サロス周期:223か月(約18年と11日)ごとに、日食と月食がくりかえす。バビロニアの人たちが見つけた周期
- エクセリグモス周期:サロス周期の3倍の669か月。日数が整数になり、食の時刻のずれを直せる
- 2006年の論文(Nature)は、表面の画像とX線CTで、日食と月食をバビロニアの周期で予測していたことを示しました。さらに、月が空を動く速さの変化を説明したヒッパルコス(紀元前2世紀)の理論を、歯車の仕組みで再現していたこともわかりました。論文は、この機械が、少なくともその後1000年のあいだに知られるどの装置よりも技術的に複雑だと書いています
- 2021年の論文(Scientific Reports)によると、CTで読めた文字には、太陽・月と、古代に知られていた5つの惑星の動きと、それが前面にどう表示されたかが書かれていました。研究チームは、月・月の交点・水星・金星・太陽・火星・木星・土星・日付の9つを、輪のように重ねて表示する前面の新しい復元模型を発表しています
機械の表面には「取扱説明書」
- 博物館によると、前と後ろの金属の板には、天文学の内容の文字がびっしり刻まれ、使い方の説明もありました。文字は同じ人の手で書かれたようです
- 前の板からきたかけら(G)の文から、この機械は、つくった人だけでなく、天文学者たちにも使われていたらしいことがわかります
- 2021年の論文は、後ろのふたの文を「取扱説明書」とよび、そこに「コスモス(宇宙)の」という言葉や惑星の名前が読めることを示しています

メル美説明書つきの天体計算機!2000年以上前の人の知恵ってすごい。
100年以上つづく研究(博物館より)
| 時期 | 研究 |
|---|---|
| 1902〜1934年 | 考古学者スヴォロノス、スタイスらが研究。はじめはアストロラーベ(天体の高さを測る道具)と考えられた。言語学者レームは「プラネタリウム」とよんだ |
| 1953〜1974年 | イェール大学の科学史家デレク・デ・ソーラ・プライスが、物理学者カラカロスのX線写真をもとに、機械じかけのこよみ計算機だと考えた。その結論は、のちの研究に大きな影響をあたえた |
| 1990年以降 | 計算機科学者ブロムリーと、機構の歴史家ライトが、断層写真で調べる |
| 2005年〜 | 3次元の表面画像とX線CTで、国際的なチームが多くの「かくれた」文字や仕組みを明らかにし、新しい模型をつくった |
- この機械をつくれた背景として、博物館は、アリストテレスの著作に歯車が出てくること、アルキメデスが天球の模型(プラネタリウム)をつくったとキケロが伝えていることなどをあげ、その技術はアルキメデスの後継者やロドス島のポセイドニオスの学派にかかわる、と説明しています

アテネ国立考古学博物館によると、アンティキティラ島の機械は紀元前2世紀の青銅の歯車の機械で、日食・月食の予測やこよみに使われました。
まとめ
- 紀元前75〜50年ごろにアンティキティラ島の沖で沈んだ貨物船から、1900〜1901年に引きあげ
- 紀元前2世紀の、青銅の歯車の機械。いまは82のかけら、歯車30個
- メトン周期のこよみ、サロス周期の日食・月食の予測、ヒッパルコスの月の理論を歯車で再現
- 表面には使い方の説明。惑星の動きも表示していたとみられ、2021年に新しい復元模型
- アテネ国立考古学博物館で展示
- 古代の空の絵はネブラの天文盤、なぞの古文書はヴォイニッチ手稿もどうぞ
参考文献
- National Archaeological Museum, Athens. The Mysteries of the Mechanism of Antikythera: Archaeologist. https://antikythera-mechanism.namuseum.gr/en/archaeologist/ (閲覧日:2026年10月22日)
- 同上. Science historian. https://antikythera-mechanism.namuseum.gr/en/science-historian/ (閲覧日:2026年10月22日)
- 同上. Epigraphist. https://antikythera-mechanism.namuseum.gr/en/epigraphist/ (閲覧日:2026年10月22日)
- 同上. What is the Mechanism and what does it consist of? https://antikythera-mechanism.namuseum.gr/en/what-is-the-mechanism-and-what-does-it-consist-of/ (閲覧日:2026年10月22日)
- Freeth T, Bitsakis Y, Moussas X, et al. Decoding the ancient Greek astronomical calculator known as the Antikythera Mechanism. Nature. 2006;444:587–591. https://www.nature.com/articles/nature05357 (閲覧日:2026年10月22日)
- Freeth T, Higgon D, Dacanalis A, et al. A Model of the Cosmos in the ancient Greek Antikythera Mechanism. Scientific Reports. 2021;11:5821. https://www.nature.com/articles/s41598-021-84310-w (閲覧日:2026年10月22日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。