スピリチュアル或いは、不可知のものをどう扱うかについて

目標を書くと叶う、の正体 ― 目標設定理論と「もし〜なら、こうする」の計画

約5分で読めます2026年10月12日

目次
  1. 「書くと叶う」は本当か
  2. 目標設定理論:「がんばる」より「具体的で、少し難しい」
  3. 実行意図:「もしこうなったら、こうする」
  4. 書くことは、何をしているのか
  5. 叶わなかったとき、自分を責めないために
  6. 科学で言えること、言えないこと
  7. まとめ

この記事の要点

「書くと叶う」は本当か

手帳に目標を書く。紙に書いて壁に貼る。「書くと叶う」という言葉は、自己啓発の本でも、スピリチュアルの世界でもよく聞きます。

書いた文字が、宇宙や見えない力に届いて、願いを引き寄せてくれる。そう信じることを、私は否定しません。ただ、このサイトでは、まず「科学で言えること」を確かめてから、その先の話をしたいと思います。

心理学には、目標と行動の関係を長く調べてきた研究があります。その中から、2つを紹介します。

目標設定理論:「がんばる」より「具体的で、少し難しい」

アメリカの心理学者エドウィン・ロックとゲイリー・レイサムは、目標の立て方と成果の関係を何十年も研究し、2002年に35年分の研究をまとめた論文を発表しました。これが目標設定理論です。

2人が2006年に書いたまとめでは、この理論の中心として、具体的で難しい目標の効果が挙げられています。そして、その効果が、人・課題・国・期間のちがい、目標を自分で決めたか人と一緒に決めたか与えられたか、といった条件をこえて見られることが書かれています。

つまり、「できるだけがんばる」よりも、「3か月で〇〇を〇回やる」のように、中身がはっきりしていて、少し背伸びが必要な目標のほうが、行動を引き出しやすい、ということです。

実行意図:「もしこうなったら、こうする」

もうひとつは、ドイツの心理学者ペーター・ゴルヴィツァーの実行意図(implementation intentions)の研究です。

ゴルヴィツァーは、目標を立てても、人は次のようなところでつまずく、と書いています。

そこで、ゴルヴィツァーは2種類の「意図」を分けました。

実行意図を作っておくと、行動のきっかけを「その場面」にまかせることができます。その場面が来たときに、迷わず、ほとんど自動的に行動が始まる、というのがゴルヴィツァーの説明です。1999年の論文では、一連の研究から、実行意図が目標の達成を後押しすることが示された、と述べられています。

たとえば、「運動したい」は目標の意図です。「平日の朝、歯をみがいたら、そのままスクワットを10回する」は実行意図です。

書くことは、何をしているのか

ここからは、研究そのものではなく、私の考えです。

「書くと叶う」というとき、書くこと自体に不思議な力があるというより、書こうとすることで、次のことが起きているのだと思います。

  1. ぼんやりした願いが、言葉になる 「なんとなく変わりたい」は書けません。書こうとすると、何を望んでいるのかを自分に問うことになります
  2. 目標が具体的になる 紙の上では、「いつまでに」「どのくらい」を書きたくなります。これは目標設定理論の「具体的な目標」に近づくことです
  3. 行動の場面が決まる 「何をするか」まで書けば、それは実行意図になります
  4. 何度も目に入る 壁に貼った紙は、毎日目に入ります。忘れにくくなります

書くことは、願いを「行動の計画」に翻訳する作業だ、と言えるかもしれません。

叶わなかったとき、自分を責めないために

ひとつ、気をつけたいことがあります。

「書けば叶う」を強く信じすぎると、叶わなかったときに「書き方が悪かった」「信じる気持ちが足りなかった」と、自分を責めてしまうことがあります。

目標が叶うかどうかには、自分ではどうにもできない条件も関わります。景気、相手の気持ち、体の病気、運。どれだけ計画を立てても、思いどおりにならないことはあります。

だから私は、目標を書くことを、「叶えるためのおまじない」ではなく、「自分にできることを尽くすための道具」として使うのがよいと考えています。できることを尽くしたら、あとは結果を待つ。昔から「人事を尽くして天命を待つ」と言われてきた態度です。

目標を書いて、気持ちが前向きになり、不安が軽くなるなら、それはよい使い方です。逆に、書いた紙を見るたびに苦しくなるなら、目標を小さくするか、いったん外してもよいと思います。

科学で言えること、言えないこと

最後に、この記事の立ち位置を整理しておきます。

何を書くかは、あなたが決めることです。研究が教えてくれるのは、書いたあとに、それを行動に変えるための工夫です。

まとめ

参考文献

  1. Locke EA, Latham GP. Building a practically useful theory of goal setting and task motivation: A 35-year odyssey. American Psychologist. 2002;57(9):705-717. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12237980/ (閲覧日:2026年10月12日)
  2. Locke EA, Latham GP. New Directions in Goal-Setting Theory. Current Directions in Psychological Science. 2006;15(5):265-268. https://doi.org/10.1111/j.1467-8721.2006.00449.x (閲覧日:2026年10月12日)
  3. Gollwitzer PM. Implementation intentions: Strong effects of simple plans. American Psychologist. 1999;54(7):493-503. https://doi.org/10.1037/0003-066X.54.7.493 (閲覧日:2026年10月12日)

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。