【テクノロジー解説】「分子マシン」ってなに?分子でつくった「くさり」「エレベーター」「モーター」「ナノカー」。いまは1830年代の電気モーターと同じ段階で、未来の洗濯機や扇風機にあたる使い道はこれから(2016年ノーベル化学賞)
コンピューターは、部品を小さくすることで社会を変えました。2016年のノーベル化学賞は、それをさらに小さく、分子1個の大きさの「機械」をつくった3人に贈られました。1983年、ソバージュ博士は2つの輪の分子をくさりのようにつなぎ、1991年、ストッダート博士は分子の軸に輪を通して動かし、エレベーターや人工筋肉をつくりました。1999年、フェリンガ博士は同じ向きに回りつづける分子モーターをつくり、自分の1万倍の大きさのガラスの筒を回したり、ナノカーを設計したりしました。新しい材料やセンサー、エネルギーをためるしくみなどへの応用が期待されています。
目次

プレ男分子1個で「機械」がつくれるって聞いたんだけど、ほんとに動くの?

メル美分子の車「ナノカー」もあるらしいよ。
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回は分子マシンです。2016年のノーベル化学賞の発表をもとにまとめました。
機械を「分子の大きさ」に
- コンピューターの発展は、技術を小さくすることが革命につながることを示しました
- 2016年のノーベル化学賞は、機械を分子の大きさまで小さくした、ジャン=ピエール・ソバージュ博士(フランス)、フレーザー・ストッダート博士(イギリス)、ベルナルト・フェリンガ博士(オランダ)に贈られました
- 3人は、動きをコントロールできる分子をつくり、エネルギーを加えると仕事をするようにしました
ステップ1(1983年):分子の「くさり」
- ふつう分子は、原子どうしが電子を共有する強い結合(共有結合)でつながっています
- 1983年、ソバージュ博士は、輪の形の分子2つを、くさりのようにつなぐことに成功しました(カテナン)
- この2つの輪は、共有結合ではなく、もっと自由な「機械的な結合」でつながっています。機械が仕事をするには、部品どうしが動けることが必要で、からみあった2つの輪は、まさにその条件を満たしていました
ステップ2(1991年):軸を動く「輪」
- 1991年、ストッダート博士は、細い分子の軸に、分子の輪を通し、輪が軸にそって動くことを示しました(ロタキサン)
- これをもとに、分子のエレベーター、分子の筋肉、分子でつくったコンピューターチップなどを開発しました

プレ男分子のエレベーターに、分子の筋肉!
ステップ3(1999年):回りつづける「モーター」
- 1999年、フェリンガ博士は、分子の羽根を同じ向きに回りつづけさせることに成功し、はじめての分子モーターをつくりました
- 分子モーターで、自分の1万倍も大きいガラスの筒を回したり、ナノカー(分子の車)を設計したりしました
いまは「1830年代の電気モーター」
- 発表によると、分子モーターは、1830年代の電気モーターと同じ段階にあります。当時の科学者は、回るクランクや車輪を見せていましたが、それがのちに洗濯機、扇風機、フードプロセッサーにつながるとは知りませんでした
- 分子マシンは、新しい材料、センサー、エネルギーをためるしくみなどの開発に使われていくだろう、としています

分子マシンは、分子の大きさでつくった機械です。くさり、エレベーター、モーター、ナノカーまでつくられました。いまは1830年代の電気モーターと同じ段階で、使い道はこれから広がっていくと考えられています。
小さな世界の技術つながり
- 部品を小さくして社会を変えた:半導体チップとトランジスタ
- 大きさで色が変わるナノの粒:「量子ドット」ってなに?
- 分子を見る道具:電子顕微鏡ってなに?

プレ男100年後には、分子マシンの家電があるのかもね。

メル美電気モーターも、最初はおもちゃみたいだったんだね。
まとめ
- 分子マシンは、動きをコントロールでき、エネルギーで仕事をする分子
- 1983年:2つの輪をつないだ「くさり」(ソバージュ博士)
- 1991年:軸を動く輪。エレベーター、筋肉、チップへ(ストッダート博士)
- 1999年:回りつづける分子モーター、ナノカー(フェリンガ博士)
- いまは1830年代の電気モーターと同じ段階。材料、センサー、エネルギーの分野へ(2016年ノーベル化学賞)
参考文献
- The Royal Swedish Academy of Sciences. Press release: The Nobel Prize in Chemistry 2016. NobelPrize.org. https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/2016/press-release/ (閲覧日:2026年10月8日)
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