【テクノロジー解説】中性子をぶつけて、原子が「どこにいて」「何をしているか」を見る:X線では見えにくい水素や小さな磁石も見える。超伝導、排ガスの触媒、プラスチック、ウイルスの研究に(1994年ノーベル物理学賞)
物の中をくわしく調べるには、X線や顕微鏡が知られていますが、それでも足りないことがあります。1994年のノーベル物理学賞は、原子炉から出る中性子を物質にぶつけて、その散らばり方から物質を調べる「中性子散乱」の方法を開発したシャル博士とブロックハウス博士に贈られました。シャル博士は原子が「どこにいるか」(構造)を、ブロックハウス博士は原子が「何をしているか」(動き)を調べる方法をつくりました。中性子は電気をおびていないので物の奥まで入りこみ、X線では見えにくい水素の位置や、原子の小さな磁石の向きもわかります。

プレ男物の中を見るなら、X線でいいんじゃないの?

メル美X線では見えにくいものが、中性子なら見えるんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回は中性子散乱です。1994年のノーベル物理学賞の発表をもとにまとめました。
中性子をぶつけて調べる
- 物をくわしく調べる方法として、X線や顕微鏡が知られていますが、それだけでは足りないこともあります
- 中性子散乱は、原子炉から出てくる中性子を、調べたい物質にぶつけて、その散らばり方から物質を調べる方法です
- 中性子が物質の原子にぶつかると、向きが変わります。その向きから、原子がどう並んでいるか(構造)がわかります
- 中性子の速さの変化からは、原子がどう動いているか(ふるえかたなど)がわかります
「どこにいる」と「何をしている」
- かんたんにいうと、クリフォード・シャル博士は原子が「どこにいるか」を、バートラム・ブロックハウス博士は原子が「何をしているか」を調べる方法をつくりました
- 2人は1940〜50年代、アメリカとカナダの最初のころの原子炉で、先がけの研究をしました

プレ男「どこにいるか」と「何をしているか」。原子の探偵みたい!
X線では見えにくいものが見える
- 中性子は電気をおびていないので、物の奥まで入りこみ、試料全体を調べられます
- 水素:X線は原子の電子で散らばるので、電子が1つしかない水素は、X線ではほとんど見えません。でも、水素の原子核(陽子)は中性子をよく散らすので、水素の位置がわかります。水素は、体をつくる物質にも、技術に大切な物質にも多くふくまれています
- 小さな磁石:中性子も、磁石になる物質の原子も、小さな磁石です。中性子を使うと、原子の小さな磁石の向きを調べられます。X線ではできないことで、いまの磁石の研究に欠かせない道具になりました
原子の「ふるえ」を見る
- たくさんの原子がいっしょにふるえる動きを「フォノン」といいます
- ブロックハウス博士は、中性子のエネルギーの変化をくわしく調べる装置(3軸分光器)を設計しました。中性子のエネルギーは、物質の中のフォノンのエネルギーと同じくらいなので、原子のふるえを調べるのにぴったりでした
- 1955年には、アルミニウムの結晶のふるえ方をはじめて実験で示しました
何に役立つ?
- 新しいセラミックスの超伝導体、車の排ガスをきれいにする触媒の表面での分子の動き、ポリマーの弾力、ウイルスの構造など、はば広い研究に使われています
- コンピューターのメモリのような技術や、汚染の化学のような環境の研究への応用も期待されていました(1994年当時)

中性子散乱は、中性子を物質にぶつけて、原子がどこにいて何をしているかを調べる方法です。X線では見えにくい水素の位置や、原子の小さな磁石の向きもわかります。
つながるテクノロジー
- 物の中を見るもう1つの方法:X線(レントゲン)
- 中性子で調べられた超伝導体:「高温」超伝導の発見
- 排ガスの触媒の表面:化学反応は「表面」で起こる

プレ男X線と中性子、得意なものがちがうんだね。

メル美いろんな「見る技術」があるから、科学が進むんだね。
まとめ
- 中性子散乱:中性子を物質にぶつけ、散らばり方で調べる
- 向きから原子の並び(構造)、速さの変化から原子の動きがわかる
- シャル博士=原子が「どこにいるか」、ブロックハウス博士=原子が「何をしているか」
- X線では見えにくい水素の位置、原子の小さな磁石の向きもわかる
- 超伝導体、触媒、ポリマー、ウイルスの研究に(1994年ノーベル物理学賞)
参考文献
- The Royal Swedish Academy of Sciences. Press release: The Nobel Prize in Physics 1994. NobelPrize.org. https://www.nobelprize.org/prizes/physics/1994/press-release/ (閲覧日:2026年10月10日)
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