【テクノロジー解説】「高温」超伝導の発見:13年動かなかった記録を、銅をふくむ焼き物(セラミックス)が12度こえた。世界中の研究所が追いかけ、数か月で高価な液体ヘリウムではなく液体窒素で冷やせる温度に(1987年ノーベル物理学賞)
電気抵抗がゼロになる超伝導は、とても冷やさないと起こらず、沸点-269℃の液体ヘリウムで冷やす必要がありました。1973年に-250℃で超伝導になる合金ができてから、記録は止まっていました。1987年のノーベル物理学賞は、ふつうの合金ではなく、銅などをふくむ酸化物の焼き物(セラミックス)に目をつけ、1986年に記録を12度上回る超伝導を見つけたベドノルツ博士とミュラー博士に贈られました。世界中の何百もの研究所が追いかけ、数か月で、絶対零度より90度以上高い温度に。安くあつかいやすい液体窒素で冷やせるようになりました。

プレ男「高温超伝導」って、熱いところで超伝導になるの?

メル美「それまでより高い」っていう意味で、それでもとても冷たい世界なんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回は高温超伝導です。1987年のノーベル物理学賞の発表をもとにまとめました。
超伝導の「冷やす」問題
- 超伝導は1911年に発見されました。ある温度より冷やすと、急に電気抵抗ゼロで電流が流れ、磁場をおしだす「マイスナー効果」も起こります(電気抵抗ゼロの「超伝導」)
- 超伝導は、加速器などの大きな磁石のコイルに使われ、発電機やエネルギーの貯蔵、磁気で浮かせるしくみなどの試作も進んでいました
- でも、それまでの超伝導の材料はとても冷やす必要があり、使える冷却剤は沸点-269℃の液体ヘリウムだけ。あつかいがむずかしく、高価でした
- 1973年に、絶対零度より23度高い温度(約-250℃)で超伝導になる合金がつくられてから、記録は13年間止まっていました
「合金」をすてて「焼き物」へ
- IBMチューリッヒ研究所のゲオルク・ベドノルツ博士とアレックス・ミュラー博士は、ふつうの合金から離れ、1983年から金属の酸化物に目をつけました。酸素のほかに銅や希土類の金属をふくむ物質です
- 酸化物は、ふつうはあまり電気を通しません。でも2人は、銅の原子が運ぶ電子が、まわりの結晶と強くふれあうようにできれば、超伝導になるかもしれないと考えました
- ランタン・銅の酸化物にバリウムを加えて、セラミックス(焼き物)をつくり、1986年4月、それまでの記録より12度高い温度で超伝導がはじまることを報告しました。その年のうちに、本物の超伝導であることを示す磁気の性質も確かめました

プレ男電気を通しにくい焼き物が、超伝導になったのか!
世界中で「なだれ」のように
- これがなだれのはじまりでした。世界中の何百もの研究所が、似た物質の研究をはじめました
- 1987年のはじめの数か月で、アメリカ、中国、日本、ヨーロッパで、絶対零度より90度以上高い温度で超伝導になる物質がつくられました。それまでの4倍以上の温度です
- この温度なら、液体ヘリウムよりずっと安く、効率がよく、あつかいやすい、液体窒素で冷やせます
なぞも残った
- 新しい物質でなぜ超伝導が起こるのか、くわしいしくみはまだわかっていませんでした。これまでの理論で足りるのか、新しい考え方が必要なのかが、大きな問いでした
- 電力、マイクロエレクトロニクス、精密な測定など、応用への期待が高まっていました(1987年当時)

1986年、銅をふくむ焼き物で、13年ぶりに超伝導の温度の記録がぬりかえられました。数か月のうちに、高価な液体ヘリウムではなく、液体窒素で冷やせる温度の超伝導体が生まれました。
つながるテクノロジー
- 超伝導のしくみ:電気抵抗ゼロの「超伝導」と、ねばりゼロの「超流動」
- 超伝導の磁石を使う検査:MRI
- 液晶と超伝導のふるまいの共通点:電卓や腕時計の数字を表示する「液晶」

プレ男「常識をすてる勇気」が、記録をやぶったんだね。

メル美世界中がいっせいに追いかけたのも、すごい熱気だね。
新しい超伝導体の構造や動きを調べた方法は、中性子をぶつけて、原子が「どこにいて」「何をしているか」を見るへ。
まとめ
- 超伝導はとても冷やす必要があり、高価な液体ヘリウムが必要だった
- 1973年(約-250℃)から13年間、記録は止まっていた
- ベドノルツ博士とミュラー博士は、合金ではなく銅をふくむ酸化物のセラミックスで、1986年に記録を12度更新
- 数か月で絶対零度より90度以上高い温度に。液体窒素で冷やせる
- 電力・電子機器・精密測定への期待(1987年ノーベル物理学賞)
参考文献
- The Royal Swedish Academy of Sciences. Press release: The Nobel Prize in Physics 1987. NobelPrize.org. https://www.nobelprize.org/prizes/physics/1987/press-release/ (閲覧日:2026年10月10日)
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