「ずっと効く」注入に注意:顔の吸収されないフィラーは、学会の診療指針で「行わないことを強く推奨」。何年もたってからのしこり・感染、取り出すのが難しい。日本では未承認
日本皮膚科学会など5学会の「美容医療診療指針」(2020年)は、顔のしわ治療への非吸収性フィラー(体に吸収されない充填剤)の注入を「行わないことを強く推奨」としています。日本ではすべて未承認で、異物として長く体に残るため、何年もたってからの肉芽腫(しこり)や感染など重い合併症を起こしやすく、ヒアルロン酸のような分解する薬もなく、取り出すのが困難です。一方、ヒアルロン酸の注入は、改訂版(令和3年度)で「弱く推奨」とされ、皮膚の壊死や失明などの重い合併症への注意が必要とされています。

メル美ほうれい線のヒアルロン酸、半年〜1年でなくなるんだって。「ずっと効く注入」っていうのもあるみたいで、そっちのほうがお得かな?

プレ男ずっと残るってことは、何かあっても取れないってこと?ちょっとこわい気もする。
こんにちは、Dr. Taro です。 「美容医療」から、今回は顔のしわへの注入(フィラー)のうち、体に吸収されないフィラーの話です。日本皮膚科学会・日本形成外科学会・日本美容皮膚科学会・日本美容外科学会(JSAPS・JSAS)の5学会による「美容医療診療指針」(令和元年度厚生労働科学特別研究事業、2020年)の「シワ・タルミに対するフィラー(充填剤)による治療」をもとにまとめ、改訂版(令和3年度厚生労働科学研究補助金)の内容も確認しました。
吸収されるフィラーと、吸収されないフィラー
- 吸収性フィラー:代表はヒアルロン酸。時間がたつと体に吸収されます。合併症のときは、ヒアルロン酸を分解する薬(ヒアルロニダーゼ)があります
- 非吸収性フィラー:体に吸収されず、ずっと残るものです。過去にはシリコンゲル、最近はポリアクリルアミドハイドロジェル(PAAG)などの高分子を使った製剤が出回っています
- 指針によると、日本では、非吸収性フィラーはすべて未承認です
非吸収性フィラー:「行わないことを強く推奨」
- 指針は、顔のしわ治療への非吸収性フィラーの注入について、「行わないことを強く推奨する」としています
- 理由として、何年もたってから起こる合併症(晩期合併症)の危険があること、取り出すのが難しいこと、長い期間での安全性が確立していないことがあげられています。安全性は「保証できない」です
どんな合併症?
- 異物として長く体に残るため、肉芽腫(しこり)や遅れて起こる感染など、重い合併症を起こしやすいとされています
- 研究では、注入のあとにしこり、赤み、痛み、感染、膿がたまる(膿瘍)、慢性の肉芽腫、輪郭の変形、へこみ、皮膚の下での移動などが報告されています
- 慢性の感染による炎症性のしこりができ、何年もたってから、痛み・しこり・変形をくり返すこともあります
- シリコンゲルは、リンパ節や肝臓・脾臓に移動することがあり、炎症性のしこり(シリコノーマ)になると治療が難しく、永久的な傷害をもたらすとされています
- 合併症が起きても、ヒアルロン酸のような分解する薬がなく、注入したものが組織の中に入りこむため、取り除くのが困難です

メル美「ずっと効く」は、「ずっと残る」ってことなんだね。何年もあとにしこりができることもあるんだ。
ヒアルロン酸:改訂版では「弱く推奨」。重い合併症に注意
- 顔のしわへのヒアルロン酸の注入は、令和元年度版の指針では「行うことを強く推奨」でしたが、改訂版(令和3年度)では「治療を希望する患者には、行うことを弱く推奨する」に変わりました。簡便な施術で、合併症は軽いものがほとんどとされています。日本でも年間12万〜15万件(2017〜2018年)と、一般的な施術になっています
- 合併症のほとんどは、はれ・痛み・赤みなどの軽いものとされています
- ただし、血管の中に誤って注入されると、皮膚の壊死や、まれに失明や脳梗塞などの重い合併症が起こることがあり、十分な注意が必要です
- 失明は、鼻、眉間、額への注入で多く報告されているとされています
- ヒアルロン酸については承認品もありますが、未承認品も広く使われています
- ヒアルロン酸などの注入のリスクとすぐに受診すべきサインは、ヒアルロン酸などの「注入(フィラー)」の記事にまとめています

学会の診療指針は、顔のしわへの吸収されないフィラーの注入を「行わないことを強く推奨」しています。注入する前に、何を入れるのか、吸収されるものか、承認されているものかを医師に確認しましょう。
受ける前に確かめたいこと
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注入するものは何か(製剤の種類)、体に吸収されるものか
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日本で承認されているものか
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合併症と、起きたときの対応(分解する薬があるか、取り出せるか)
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「ずっと効く」「一度で長持ち」という説明は、ずっと体に残るという意味かもしれません
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豊胸への注入は注入による豊胸のリスク、自分の血液を使う注入はPRP注入とbFGF添加の記事もどうぞ

メル美「お得」で選ぶのはやめて、何を入れるのか、まずお医者さんに聞いてみる。
まとめ
- 顔のしわへの非吸収性フィラーは、5学会の診療指針で「行わないことを強く推奨」。日本ではすべて未承認
- 何年もたってからのしこり・感染、移動・変形などの合併症。分解する薬がなく、取り出すのが困難
- ヒアルロン酸は、改訂版(令和3年度)では「弱く推奨」。ただし、血管に入ると皮膚の壊死・失明・脳梗塞のおそれ
- 注入する前に、何を入れるか、吸収されるか、承認されているかを確認
参考文献
- 日本皮膚科学会, 日本形成外科学会, 日本美容皮膚科学会, 日本美容外科学会(JSAPS), 日本美容外科学会(JSAS). 美容医療診療指針(令和元年度厚生労働科学特別研究事業). 日本美容外科学会会報 42(特別号), 2020. 第2章第2節・第3節 シワ・タルミに対するフィラー(充填剤)による治療(CQ2-2、CQ2-3). https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/biyosinryo.pdf (閲覧日:2026年10月4日)
- 日本皮膚科学会, 日本形成外科学会, 日本美容皮膚科学会, 日本美容外科学会(JSAPS), 日本美容外科学会(JSAS). 美容医療診療指針(令和3年度厚生労働科学研究補助金). 日本美容外科学会会報 44(特別号). https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/biyo2v.pdf (閲覧日:2026年10月5日)(第2章第2節・第3節。非吸収性フィラーは改訂版でも「行わないことを強く推奨」)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。