【テクノロジー解説】細胞は「計画的に」死ぬ:大人の体では毎日1兆個以上の細胞が生まれ、同じだけが自分から消える。指のあいだの水かきも消える。線虫の1,090個の細胞のうち131個が必ず死ぬ(2002年ノーベル生理学・医学賞)
わたしたちの体は、受精卵から生まれた何百種類もの細胞でできています。新しい細胞が生まれる一方で、決められた細胞が自分から消える「プログラムされた細胞死」も、体を保つのに欠かせません。大人の体では、毎日1兆個以上の細胞がつくられ、同じくらいの数の細胞がこのしくみで死んでいます。2002年のノーベル生理学・医学賞は、体長1mmの透明な線虫を使って、器官ができるしくみと、細胞死をコントロールする遺伝子を見つけたブレナー博士、サルストン博士、ホロビッツ博士に贈られました。人にも同じような遺伝子があることがわかっています。

プレ男細胞が「計画的に死ぬ」って、どういうこと?死んだらだめなんじゃないの?

メル美体をつくるために、必要な死もあるんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回はプログラムされた細胞死です。2002年のノーベル生理学・医学賞の発表をもとにまとめました。
生まれる細胞と、消える細胞
- 人の体は、受精卵から生まれた何百種類もの細胞でできています。細胞は育ち、専門の役割をもって、筋肉、血液、心臓、神経などをつくります
- 新しい細胞がつくられる一方で、細胞の死も、胎児にも大人にもふつうに起きていることです。組織の細胞の数をちょうどよく保つためです
- この、ていねいにコントロールされた細胞の消え方を「プログラムされた細胞死」といいます
- 大人の体では、毎日1兆個以上の細胞がつくられ、同じくらいの数の細胞が、このコントロールされた「自死」で消えています
体をつくるための死
- オタマジャクシがカエルになるときにも、プログラムされた細胞死が必要です
- 人の胎児では、はじめ手足の指のあいだにある組織(水かきのような部分)が、この細胞死でとりのぞかれます
- 脳ができはじめるころの、多すぎる神経細胞も、同じしくみで減らされます

プレ男指が5本に分かれたのは、細胞が計画的に消えたからなのか!
透明な線虫で、細胞を1つ残らず追いかける
- シドニー・ブレナー博士は1960年代はじめ、ほ乳類は細胞が多すぎて、器官ができるしくみを調べるのはむずかしいと考えました。そこで選んだのが、体長約1mmで透明、すぐに世代がかわる線虫(C. elegans)です。顕微鏡で、細胞分裂を直接見られます
- ブレナー博士は1974年、化学物質で線虫の遺伝子に変異を起こし、遺伝子と器官づくりを結びつける方法を示しました
- ジョン・サルストン博士は、受精卵から大人の線虫(959個の細胞)まで、すべての細胞分裂を追いかける方法を開発しました。そして、どの線虫もまったく同じ順番で分裂し、育つことを示しました
- さらに、決まった細胞が必ずプログラムされた細胞死で消えることを発見しました。線虫の発生では、1,090個の細胞のうち131個が、毎回同じように死にます
「死の遺伝子」
- ロバート・ホロビッツ博士は、細胞死をコントロールする遺伝子のしくみを調べ、1986年、はじめての本物の「死の遺伝子」ced-3とced-4を見つけました。この2つが働かないと、細胞死は起こりません
- さらに、細胞死から守る遺伝子ced-9や、死んだ細胞をかたづける遺伝子も見つけました
- 人の遺伝情報にも、ced-3に似た遺伝子があることを示しました。線虫で細胞死にかかわる遺伝子の多くは、人にも対応する遺伝子があります
医学にとって大切な理由
- 細胞死をコントロールするしくみのみだれを理解することは、医学にとって非常に大切です。この発見は、多くの病気がどう起こるかに新しい光をあてました(2002年当時)

大人の体では毎日1兆個以上の細胞が生まれ、同じくらいの数がプログラムされた細胞死で消えています。2002年の受賞者は、透明な線虫で、この細胞死をコントロールする遺伝子を見つけました。
つながるテクノロジー
- 同じ線虫から見つかった遺伝子のブレーキ役:マイクロRNA
- 細胞の中のリサイクル:オートファジー
- DNAの修理チーム:DNAは毎日こわれている

プレ男体の中では、毎日すごい数の細胞が入れかわってるんだね。

メル美1mmの線虫が、たくさんのノーベル賞を生んでるね。
細胞が増えるときの順番を守らせるしくみは、細胞分裂の「エンジン」と「アクセル」と「点検所」へ。
まとめ
- プログラムされた細胞死:決められた細胞が、コントロールされて自分から消えるしくみ
- 大人の体では、毎日1兆個以上が生まれ、同じくらいが消える
- 胎児の指のあいだの組織や、多すぎる神経細胞もこのしくみで消える
- 透明な線虫で、1,090個のうち131個が必ず死ぬことを発見。「死の遺伝子」ced-3、ced-4
- 人にも対応する遺伝子がある(2002年ノーベル生理学・医学賞)
参考文献
- The Nobel Assembly at Karolinska Institutet. Press release: The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2002. NobelPrize.org. https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/2002/press-release/ (閲覧日:2026年10月10日)
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