目次
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、いつもの記事とは少しちがって、私個人の考えを書きます。医学の話ではなく、「人類はこの先どうなるのか」という、大きな話です。
※この記事の前半は、私の個人的な意見です。後半では、AIの専門家たちがどう見ているかを、調査や報告書をもとに紹介します。専門家の間でも、見方は大きく分かれています。
人類も、いつかは「終わる」
- 人間は、いつか必ず死にます。それと同じように、人類という種にも、いつか終わりが来るのだろうと私は思っています
- 実際、カリフォルニア大学バークレー校の古生物学博物館によると、これまで地球に現れた生物の種の、少なくとも99%はすでに絶滅しています
- ただし、これは「過去の生き物の多くがそうだった」という話で、人類の未来を決める証拠ではありません
私の考え:終わり方として、いちばんありそうなのはASI
- ASI(人工超知能)とは、あらゆる分野で人間よりはるかに賢いAIのことです
- 人類の終わり方としては、隕石の衝突や感染症の大流行もありえます。でも私は、いちばん「ありそうな道」は、ASIが生まれ、人類が地球の主役の座を明けわたすことではないかと感じています。感染症でさえ、ASIが生み出すことがあるかもしれません
- 社会全体で「ASIをつくらない」と決める可能性はあります。でも、世界中の国や企業が競争している以上、遅かれ早かれ、誰かがつくるのではないでしょうか
- もちろん、これは決めつけられることではありません。あとで紹介するように、専門家の間でも見方は大きく分かれています
生命は「入れかわりながら」進化してきた
- 私たちの種、ホモ・サピエンスが現れたのは、およそ30万年前とされています。地球の長い歴史から見れば、ほんの最近のことです
- 地球の主役は、これまでも入れかわってきました。人類の次は、機械の生命、あるいは機械と生き物がまざった生命が、地球の知性を引きついでいくのかもしれません
- NASAの解説によると、太陽はおよそ60億年後に燃料が尽きて赤色巨星になっていき、地球は住めなくなります。生き残る道は、ほかの星へ移ることだけです
- そのころには、ASIか、その子孫が、太陽系の外に出ているかもしれません
そもそも「滅ぶ」とは何だろう
地球の主役が入れかわることは、人類が「滅びる」ということなのでしょうか。この疑問は、とても大事です。人類が「滅ぶ」とは、どういうことなのでしょうか。
生物学の「絶滅」:最後の1人がいなくなること
- 国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、ある種が「絶滅」とされるのは、「最後の1個体が死んだことに、合理的な疑いがない」ときです
- この意味では、ホモ・サピエンスという種の最後の1人がいなくなったとき、人類は「絶滅」したことになります
でも、いなくなっても「残る」ものがある:ネアンデルタール人
- ネアンデルタール人は、約40万年前から4万年前ごろまで生きていた、私たちとは別の人類です。約4万年前までに、その痕跡は消えました。種としては絶滅しています
- ところが、ネアンデルタール人は私たちの祖先と交わって子どもを残していました。スミソニアン協会によると、アフリカ以外にルーツを持つ今の人の遺伝情報(ゲノム)の1〜4%は、ネアンデルタール人に由来します。アフリカの人たちにも、ネアンデルタール人のDNAがあることがわかっています
- つまり、ネアンデルタール人は「種」としては滅びましたが、その遺伝子の一部は、今も私たちの中で生きているのです
※よく名前が出る「クロマニョン人」は、実は私たちと同じホモ・サピエンスです。ヨーロッパに住んでいた、初期のホモ・サピエンスの呼び名です。
「滅ぶ」には、いくつかの段階がある
人類が、有機(生き物)と無機(機械)がまざった生命に置きかわった場合、それは「滅び」なのでしょうか。私は、「滅ぶ」を次のように分けて考えるとわかりやすいと思います。
| 段階 | 何がなくなる? | たとえ |
|---|---|---|
| ① 種の終わり | ホモ・サピエンスという種(最後の1人がいなくなる) | ネアンデルタール人(ただし遺伝子は残った) |
| ② 体の終わり | 人間の生き物としての体。でも、心や記憶、文化は、機械や、機械とまざった体で続く | 有機と無機がまざった生命への移行 |
| ③ すべての終わり | 人間の遺伝子も、知識も、文化も、受け継ぐものが何も残らない | 本当の意味での「滅亡」 |
- 生物学の定義でいえば、①の時点で人類は「絶滅」です
- でも、②のように、人間の知性や文化を受け継いだ存在が続いていくなら、それは「滅び」というより、姿を変えた「進化」や「バトンタッチ」と呼べるかもしれません。私たちがネアンデルタール人の遺伝子を受け継いでいるのと、少し似ています
- 本当に怖いのは、③のように、人間が何も受け継がれずに終わることです。AIの専門家たちが心配しているのも、主にこちら、つまり人間がAIに取ってかわられ、コントロールを失ってしまう未来です
専門家はどう見ているか
私の考えは、あくまで一つの見方です。AIの専門家たちは、どう考えているのでしょうか。
「絶滅のリスク」を訴える声明(2023年)
- 2023年、AIの研究者や企業のトップが、「AIによる絶滅のリスクを減らすことは、パンデミックや核戦争と並ぶ、世界の優先課題であるべきだ」という短い声明を出しました
- 署名した人の中には、深層学習の研究者ジェフリー・ヒントン、ヨシュア・ベンジオのほか、OpenAI、Google DeepMind、Anthropicといった、AIをつくっている会社のトップもいます
2,778人のAI研究者への調査(2024年発表)
- 一流の学会で論文を出したAI研究者2,778人への調査では、機械があらゆる仕事で人間を上回る確率は、2047年までに50%と見積もられました
- 高度なAIが人類の絶滅と同じくらい悪い結果をもたらす確率を「10%以上」と答えた人は、質問のしかたによって38〜51%いました
- 一方で、よい結果のほうが起こりやすいと考える人も多く(68.3%)、AIの進歩は速いほうがいいか、遅いほうがいいかについても、意見は分かれました
ノーベル賞学者の警告
- 2024年にノーベル物理学賞を受けたジェフリー・ヒントンは、同じ年の12月、AIが30年以内に人類を絶滅させる確率を「10〜20%」と語りました
- ヒントンは、「より賢いものが、より賢くないものにコントロールされている例を、いくつ知っていますか?」と問いかけ、人間はAIにとっての「3歳児」のようになると例えています
- そして、安全のための研究を企業に進めさせるには、政府の規制が必要だと訴えています
国際的な報告書:「専門家の意見は分かれている」
- 30以上の国や国際機関が支えた「国際AI安全性報告書」は、2025年版で、AIが誰のコントロールも受けなくなる「制御の喪失」が、いつ、そもそも起こるのかについて、専門家の意見が分かれていると整理しています
- 2026年2月の報告書では、今のAIには、まだそのような危険を生む能力はないとしつつ、自分で動く力など、関係する能力は伸びていると指摘しています
つまり、「ASIで人類が滅びる」は、専門家の中でも「ありうる」と考える人がいる一方、確実だと言えるわけではない、というのが今の状況です。 私は「既定路線」だと感じていますが、そうならない未来を信じて、安全のために働いている人たちもたくさんいます。
だから、今が「奇跡の時代」だと思う
こう考えるようになってから、私は、今自分が生きている世界が奇跡に思えるようになりました。
- 今の先進国では、多くの人が、食べるものに困ることなく、子どもをかわいがりながら、人間としての生を楽しむことができます
- もちろん、そうではない人もいます。国連の報告では、2024年に世界で約6億7,300万人(世界の人口の約8.2%)が飢えに苦しんでいました
- それでも、長い人類の歴史の中で、これほど多くの人が安心して暮らせる時代は、ほんのつかのまなのではないかと思うのです
孫たちのために
- 文明がこのまま進めば、どこかでASIによる人類の「淘汰」が始まるかもしれません。500年後に人類がいるかどうか、私は正直、かなり懐疑的です
- それでも、孫たちのためにも、せめてあと100年くらいは、平和で幸せな世の中が続いてほしいと願っています
- そのために大切なのは、AIの安全のための研究やルールづくりに関心を持つこと。そして、今日という日を大切に生きることだと思います
未来のことを考えて、不安な気持ちが強くなりすぎたときは、ひとりで抱えこまないでください。こころがしんどいときの相談先もまとめています。
まとめ
- 人間がいつか死ぬように、人類にもいつか終わりが来る。これまでの生物の種の99%以上は絶滅している
- 私(Dr. Taro)は、終わり方としていちばんありそうなのはASIだと感じています
- ただ、「滅ぶ」にも段階がある。ネアンデルタール人の遺伝子が私たちの中に残るように、人間の知性や文化を受け継ぐ存在が続くなら、それは姿を変えた進化かもしれない
- AI研究者への調査では、機械があらゆる仕事で人間を上回る確率は2047年までに50%。絶滅と同じくらい悪い結果を「10%以上」と見る研究者も4〜5割いました
- ただし専門家の意見は大きく分かれていて、ASIで人類が滅びると決めつけることはできません
- だからこそ、食べるものに困らず、家族と笑いあえる今は、奇跡の時代。今日を大切に生きたいと思います
参考文献
- Center for AI Safety. Statement on AI Risk(2023年5月). https://aistatement.com/ (閲覧日:2026年9月28日)
- Grace K, et al. Thousands of AI Authors on the Future of AI. arXiv:2401.02843(2024年). https://arxiv.org/abs/2401.02843 (閲覧日:2026年9月28日)
- Irish Examiner(PA). ‘Godfather of AI’ shortens odds of the technology wiping out humanity over next 30 years(2024年12月). https://www.irishexaminer.com/world/arid-41544136.html (閲覧日:2026年9月28日)
- International AI Safety Report 2025(2025年1月). https://internationalaisafetyreport.org/publication/international-ai-safety-report-2025 (閲覧日:2026年9月28日)
- International AI Safety Report 2026(2026年2月3日). https://internationalaisafetyreport.org/publication/international-ai-safety-report-2026 (閲覧日:2026年9月28日)
- Smithsonian Institution Human Origins Program. Our species arose at least 300,000 years ago. https://humanorigins.si.edu/research/whats-hot-human-origins/our-species-arose-least-300000-years-ago (閲覧日:2026年9月28日)
- NASA Science. Chapter 6: Aging Into Gianthood. https://science.nasa.gov/exoplanets/resources/life-and-death/chapter-6/ (閲覧日:2026年9月28日)
- UN News. Slight decrease in global hunger as inequalities widen, UN report reveals(2025年7月). https://news.un.org/en/story/2025/07/1165514 (閲覧日:2026年9月28日)
- University of California Museum of Paleontology. Biodiversity (Page 5). https://ucmp.berkeley.edu/education/explorations/tours/stories/middle/B5.html (閲覧日:2026年9月28日)
- IUCN. IUCN Red List Categories and Criteria: Version 3.1, Second edition. https://portals.iucn.org/library/sites/library/files/documents/RL-2001-001-2nd.pdf (閲覧日:2026年9月28日)
- Smithsonian Institution Human Origins Program. Ancient DNA and Neanderthals. https://humanorigins.si.edu/evidence/genetics/ancient-dna-and-neanderthals (閲覧日:2026年9月28日)
- Smithsonian Institution Human Origins Program. Homo neanderthalensis. https://humanorigins.si.edu/evidence/human-fossils/species/homo-neanderthalensis (閲覧日:2026年9月28日)
- Smithsonian Institution Human Origins Program. Cro-Magnon 1. https://humanorigins.si.edu/evidence/human-fossils/fossils/cro-magnon-1 (閲覧日:2026年9月28日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。