
プレ男「死者の書」って名前がこわい…。読むと呪われる本とか?

メル美ぎゃくに、死んだ人があの世で困らないように、お墓に入れたものなんだって。
今回は、古代エジプトの「死者の書」です。大英博物館のエジプト学者 E.A.ウォリス・バッジの解説書『The Book of the Dead』をプロジェクト・グーテンベルクで読み、メトロポリタン美術館の所蔵品の情報で確認しました。以下は、とくにことわりがなければ、バッジの解説の内容です。
プロフィール
| 中身 | 死者のための呪文、まじない、賛歌、祈り、神の名前などの集まり |
| 書かれた場所 | ピラミッドや墓の壁、棺、パピルスの巻物 |
| エジプトでのよび名 | 「日の下に出るための章」(ペル・エム・ヘルウ) |
| 「死者の書」という名前 | 19世紀のはじめ、エジプト学者たちがつけた |
| 有名な場面 | 心臓を天びんではかる「オシリスの審判」(第125章など) |

「アメン神の女性歌い手ナウニの死者の書」第3中間期・第21王朝、紀元前1050年ごろ。パピルスに彩色、長さ521.5cm。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
「本」ではなかった
- バッジによると、「死者の書」という題名は、じつはあまりふさわしくなく、誤解をまねくものです
- 文はひとつにつながった作品ではなく、同じ時代のものでもありません
- いっしょに葬られた死者の一生やしごとについては、何も語っていません
- 名前のもとは、エジプトの墓あらしたちが、ミイラといっしょに見つかる文字の書かれた巻物を、なんでも「キターブ・アル=マイイト(死人の本)」とよんだことです。中身は知らず、ただ「棺の中で死人といっしょに見つかった本」という意味でした
- それを、シャンポリオンたちエジプト学者が「Le Livre des Morts(死者の書)」と訳したのです
- エジプトでの名前は「ペル・エム・ヘルウ」、「日の下に(日の中へ)出る」ための章、という意味でした

プレ男こわい名前は、墓あらしのよび方から来てたのか!
心臓を天びんではかる
- バッジによると、いちばん古い宗教の文から、エジプト人は最後の審判を、心臓を天びんではかることと結びつけていました。絵入りのパピルスでは、この場面が大きくえがかれています
- 心臓は、よいものも悪いものも、すべての感情や願い、意志、考えの宿る場所と考えられていました
- 有名な「アニのパピルス」(大英博物館)の絵では、天びんの片方にアニの心臓、もう片方に真実と正しさをあらわす羽根がのっています
- 天びんを見はるのは、アヌビス(アンプ)。そばには、悪い者の心臓を食べる怪物「死者を食らう者」アメミトがいます
- 心臓が天びんにのっているあいだ、アニは自分の心臓に語りかけます。「わたしの母の心臓よ、わたしの心臓よ。証言のとき、わたしに不利なことを言わないでくれ。偉大な神の前で、わたしについてうそを言わないでくれ」(第30章B)
「わたしは人を泣かせなかった」
- 第125章で、死者は、オシリスが裁きをおこなう「マアティの間」に入り、42の神々の前で、罪をおかさなかったことを誓います。初期のエジプト学者は、これを「否定告白」とよび、いまもこの名前で知られています
- 死者が誓う言葉の一部です
- 「わたしは人にむかって罪をおかしていません」
- 「わたしは悪いことをしていません」
- 「わたしは人に痛みをあたえていません」
- 「わたしは人を飢えさせていません」
- 「わたしは人を泣かせていません」
- 「わたしは、ますめをごまかしていません。天びんのおもりをふやしていません」
- 「わたしは子どもの口から乳をとりあげていません」
- 「流れるべき水をせきとめていません」
- そして最後に、「わたしは清い。わたしは清い。わたしは清い」とくり返します
- さらに神々にむかって、「わたしは飢えた人にパンを、かわいた人に水を、はだかの人に衣を、舟のいる人に舟をあたえました」と語ります

メル美3000年以上前の人も、「人を泣かせない」「ずるをしない」ことが大切だと考えていたんだね。

バッジによると、死者の書の絵では、死者の心臓を天びんの片方に、真実と正しさをあらわす羽根をもう片方にのせて、はかる場面が大きくえがかれています。
まとめ
- 「死者の書」は、死者のための呪文・賛歌・祈りの集まり。墓の壁や棺、パピルスの巻物に書かれた
- 名前は、墓あらしのよび方「死人の本」を、19世紀のエジプト学者が訳したもの。エジプトでは「日の下に出るための章」
- 「オシリスの審判」では、心臓を真実の羽根と天びんでくらべる
- 第125章では、42の神々に「人を泣かせなかった」などと罪をおかさなかったことを誓う
- 古代メソポタミアの法律はハンムラビ法典、古代エジプトの文字の解読はロゼッタストーン、なぞの文字の本はヴォイニッチ手稿もどうぞ
参考文献
- Budge, E.A. Wallis. The Book of the Dead. Chapters I, III, VII. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/7145 (閲覧日:2026年10月7日)
- メトロポリタン美術館. Book of the Dead for the Chantress of Amun, Nauny, Third Intermediate Period, Dynasty 21, ca. 1050 BCE(30.3.31、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/548344 (閲覧日:2026年10月7日)
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