首のすじ(広頸筋)のボツリヌストキシン注射:米国では2024年に承認、日本では未承認。臨床試験で改善したのは約3割
首の前に出る縦のすじ(プラティスマバンド)は、首に薄く広がる「広頸筋」が縮んでできます。米国では2024年10月に、ボツリヌストキシン注射がこの首のすじに承認されました。日本では未承認です。打ち方、臨床試験で改善した人の割合、注意点を、米国の添付文書をもとにまとめました。

プレ男歯を食いしばると、首に縦のすじがくっきり出るんだよね…。

メル美それも筋肉なんだって。首にボトックスって聞いたことある。
こんにちは、Dr. Taro です。 ボツリヌストキシン注射の部位別シリーズ、今回は首です。首は、日本では承認されていない使い方です。
首のすじにかかわる筋肉
- 広頸筋(こうけいきん)は、あごの下から首の前に、薄く広がる筋肉です
- 力を入れると広頸筋が縮み、首に縦のすじ(プラティスマバンド)が浮き出ることがあります
- 20本の論文をまとめた解剖学の総説(2017年)によると、広頸筋は、多くの人で鎖骨の前の胸の上のほうから始まり、首を上っていって、ほおの皮膚や口のまわりの筋肉などにつきます。主なはたらきは、下くちびるを下へ引くことです
- 年齢とともに、広頸筋が縮んで短くなる、薄くなるといった変化が起こると報告されています
日本では「未承認」、米国では2024年に承認
- 日本で見た目の治療として承認されているのは、眉間のしわ・目尻のしわ・エラの張り(咬筋)だけです。首は承認されていません
- 米国では、2024年10月に、ボツリヌストキシン(一般名:オナボツリヌストキシンA)の見た目用の製剤が、中等度から重度の首のすじに承認されました
米国での打ち方
米国の添付文書では:
- あごの骨の下(1〜2cm下)に、左右4か所ずつ、1か所2単位
- 首の縦のすじに沿って、1本あたり5か所、1か所1単位(左右それぞれ1〜2本)
- すじの本数によって、合計26・31・36単位
- 首の前のほうの深いところ(筋肉より奥)には打たないこと、あごの骨から1cm以上下に打つことなどが、注意として書かれています

プレ男首は、深く打っちゃいけないんだ。
どのくらい効く?
米国の2つの臨床試験(ボツリヌストキシン約400人、偽薬約430人)の結果です。
- 注射して14日後に、医師と本人の両方の評価で、すじが「軽い」以下まで2段階以上よくなった人は、32%と31%(偽薬では2%と0%)
- 参加者の94%が女性で、アジア系は5%でした。日本人でどうなるかは、この試験だけではわかりません
- 安全性は、ほかの部位で知られているものと同じ傾向だったとされています
受ける前に知っておきたいこと
- 日本で承認されていない使い方であることを、説明してもらいましょう
- どの製剤を使うのか(日本で承認されているものか、海外から輸入したものか)も確認を(ボツリヌストキシン注射)
- 承認されていない使い方では、健康被害が出たときに、国の医薬品副作用被害救済制度の対象にならない場合があります
- ボツリヌストキシンの効果が離れた筋肉に広がる(飲みこみにくい、話しにくい、息苦しいなど)ことがまれに報告されていて、米国の添付文書の冒頭で注意されています。注射のあとに、こうした症状があれば、すぐに受診しましょう
- 妊娠中・授乳中の人は受けられません。注射のあとは避妊が必要です(女性は2回の月経を経るまで、男性は少なくとも3か月。国内の添付文書より)
まとめ
- 首の縦のすじは、首に薄く広がる広頸筋が縮んでできる
- 首は、日本では承認されていない使い方。米国では2024年10月に承認
- 米国での打ち方は、あごの下と、すじに沿って、合計26〜36単位
- 臨床試験で改善したのは約3割。参加者の多くは女性で、アジア系は5%
参考文献
- U.S. Food and Drug Administration. onabotulinumtoxinA for injection, for intramuscular use(米国添付文書、2024年10月改訂). https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2024/103000s5316s5319s5323s5326s5331lbl.pdf (閲覧日:2026年9月28日)
- A型ボツリヌス毒素製剤(表情皺・咬筋) 添付文書 2026年8月改訂(第4版)(KEGG MEDICUS). https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00056431 (閲覧日:2026年9月28日)
- 医薬品医療機器総合機構. 医薬品副作用被害救済制度 Q7 救済の対象とならない場合とは. https://www.pmda.go.jp/relief-services/adr-sufferers/0032.html (閲覧日:2026年9月28日)
- Hwang K, Kim JY, Lim JH. Anatomy of the Platysma Muscle. J Craniofac Surg. 2017. https://doi.org/10.1097/scs.0000000000003318 (閲覧日:2026年9月28日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。