【テクノロジー解説】脳の中にも「GPS」がある:部屋の決まった場所で働く「場所細胞」と、六角形の方眼をつくる「格子細胞」。道を覚え、迷わず歩けるしくみ(2014年ノーベル生理学・医学賞)
自分がどこにいるのか、どうやって目的地まで行くのか。脳はどうやってまわりの地図をつくっているのでしょうか。2014年のノーベル生理学・医学賞は、脳の中の「GPS」を発見した3人に贈られました。オキーフ博士は1971年、ネズミが部屋の決まった場所にいるときだけ働く海馬の神経細胞「場所細胞」を発見。モーザー夫妻は2005年、近くの嗅内皮質で、六角形の方眼の点を通るたびに働く「格子細胞」を見つけ、座標の役割をすることを示しました。人にも同じ細胞があるとみられ、アルツハイマー病で道に迷うしくみの理解にもつながると期待されています。

プレ男スマホの地図がないと、ぼくはすぐ道に迷う…。昔の人はどうやって道を覚えてたんだろう。

メル美脳の中にも「GPS」があるんだって。ノーベル賞の発見だよ。
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回は脳の中のGPSです。2014年のノーベル生理学・医学賞の発表をもとにまとめました。
脳は、どうやって地図をつくる?
- 自分がどこにいるのか、ある場所から別の場所へどう行くのか、次に同じ道を通るときにすぐわかるように、どう覚えておくのか
- 200年以上前、哲学者カントは、空間の感覚は経験の前から心にそなわっていると考えました
- 20世紀なかば、トールマンは迷路のネズミを調べ、脳の中に「認知地図」ができると考えました。でも、その地図が脳のどこにどうあるのかはわかりませんでした
1971年、「場所細胞」の発見
- ジョン・オキーフ博士は、部屋の中を自由に動くネズミの、脳の海馬という場所の神経細胞の信号を1つずつ記録しました
- すると、ネズミが部屋のある場所にいるときだけ働く神経細胞が見つかりました。別の場所では、別の神経細胞が働きます
- オキーフ博士は、この「場所細胞」が、目に入るものを記録しているだけでなく、部屋の地図をつくっていると考えました。海馬は、場所ごとにたくさんの地図をつくり、場所の記憶を、場所細胞の組みあわせとしてたくわえているのです

プレ男場所ごとに担当の細胞がいるのか!
2005年、六角形の「格子細胞」
- 30年以上あと、マイブリット・モーザー博士とエドバルド・モーザー博士(夫婦)は、海馬の近くの「嗅内皮質」で、おどろくような働き方をする細胞を見つけました
- ネズミが、六角形の方眼のようにならんだいくつもの点を通るたびに働くのです
- この「格子細胞」は、座標のしくみをつくり、正確な位置と道さがしを可能にします
- 嗅内皮質には、頭の向きや部屋の壁(境界)を感じる細胞もあり、海馬の場所細胞と回路をつくっています。これが、脳の中の総合的な位置決めシステム=「内なるGPS」です
人にもある?
- 脳の画像の技術や、脳の手術を受ける患者さんの研究から、人にも場所細胞と格子細胞があることを示す証拠が得られています
- アルツハイマー病では、海馬と嗅内皮質が早い段階で影響を受けることが多く、道に迷ったり、まわりがわからなくなったりします。脳の位置決めシステムの知識は、そのしくみの理解に役立つかもしれない、としています(2014年当時)
- この発見は、記憶、考えること、計画することなど、ほかの心の働きを理解する新しい道もひらきました

脳の海馬には、決まった場所で働く「場所細胞」が、近くの嗅内皮質には六角形の方眼をつくる「格子細胞」があり、いっしょに脳の中のGPSとして働いています。
つながるテクノロジー
- 人工衛星のGPS:GPSの誤差は10mから「数cm」へ
- 日本版GPS「みちびき」:みちびき
- 脳をまねたAI:ニューラルネットワーク

プレ男今度の休みは、地図を見ずに散歩して、脳のGPSを使ってみる。

メル美迷ったらスマホを見ていいからね。
記憶がシナプスにしまわれるしくみは、記憶は「シナプス」にあるへ。
まとめ
- 脳はどうやって地図をつくるのか、長いあいだなぞだった
- 1971年、オキーフ博士が海馬の「場所細胞」を発見(場所ごとに働く)
- 2005年、モーザー夫妻が嗅内皮質の「格子細胞」を発見(六角形の方眼=座標)
- 頭の向きや壁を感じる細胞とともに、脳の中の「内なるGPS」をつくる
- 人にもあるとみられ、アルツハイマー病の理解にも(2014年ノーベル生理学・医学賞)
参考文献
- The Nobel Assembly at Karolinska Institutet. Press release: The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2014. NobelPrize.org. https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/2014/press-release/ (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。