【テクノロジー解説】記憶は「シナプス」にある:アメフラシで見つけた短い記憶と長い記憶のちがい。長く覚えるには新しいタンパク質が必要。脳の信号物質ドーパミンの発見も(2000年ノーベル生理学・医学賞)
人の脳には1,000億個以上の神経細胞があり、つなぎ目の「シナプス」で化学物質をやりとりして信号を伝えています。2000年のノーベル生理学・医学賞は、このシナプスでの信号の伝わり方を明らかにした3人に贈られました。カールソン博士はドーパミンが脳の信号物質で、体の動きのコントロールに大切だと発見。グリーンガード博士は、信号物質が細胞の中のタンパク質にリン酸をつけてはたらきを変えるしくみを示しました。カンデル博士は、神経細胞が約2万個のアメフラシで、短い記憶はシナプスのはたらきの変化で、長い記憶は新しいタンパク質づくりでシナプスの形が変わることでできることを示しました。

プレ男一夜づけで覚えたことって、すぐ忘れるよね。記憶ってどこにしまわれてるの?

メル美神経細胞のつなぎ目「シナプス」にあるんだって。海の生き物「アメフラシ」の研究でわかったらしいよ。
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回はシナプスと記憶です。2000年のノーベル生理学・医学賞の発表をもとにまとめました。
脳の中の信号のやりとり
- 人の脳には、1,000億個以上の神経細胞があり、複雑なネットワークでつながっています
- 神経細胞から神経細胞へは、化学物質(神経伝達物質)で信号が伝わります。その接点を「シナプス」といい、1つの神経細胞が何千ものシナプスをもつこともあります
- 3人は、シナプスでの信号の伝わり方の一つ「ゆっくりした信号の伝達」についての発見で受賞しました。数秒から数時間続く変化で、目のさえや気分などにかかわります
カールソン博士:ドーパミンは脳の信号物質
- 1950年代後半、ドーパミンは、別の物質(ノルアドレナリン)をつくる材料にすぎないと考えられていました
- アルビド・カールソン博士は、ドーパミンを高感度ではかる方法をつくり、ドーパミンが脳の別の場所に集まっていることから、それ自体が信号物質だと結論しました
- ドーパミンは、体の動きのコントロールに大切な場所(大脳基底核)にとくに多くありました
- この研究から、パーキンソン病は、脳の一部でドーパミンが足りなくなることで起こるとわかり、治療薬の開発につながりました
グリーンガード博士:タンパク質に「リン酸」をつける
- ポール・グリーンガード博士は、ドーパミンなどの信号物質が、細胞の表面の受容体にくっつくと、細胞の中で次々に反応が起こり、カギとなるタンパク質にリン酸がつけられたり外されたりすることを示しました
- タンパク質は形とはたらきを変え、神経細胞の興奮のしやすさなどが変わります

プレ男リン酸のつけ外しで、神経のはたらきが変わるのか。
カンデル博士:アメフラシで記憶のしくみを見る
- エリック・カンデル博士は、ほ乳類の脳は複雑すぎると考え、神経細胞が約2万個と少なく、1つ1つが大きいアメフラシ(海の軟体動物)を選びました
- アメフラシには、えらを守る反射があります。ある刺激を与えると、この反射が強くなり、それが何日も何週間も続きました。これは一種の学習です
- その正体は、感覚の神経と筋肉を動かす神経のあいだのシナプスが強まることでした
短い記憶と長い記憶
| 短い記憶 | 長い記憶 | |
|---|---|---|
| 刺激 | 弱い刺激 | 強く長く続く刺激 |
| 続く時間 | 数分〜数時間 | 数週間 |
| しくみ | イオンの通り道のタンパク質にリン酸がつき、信号物質がたくさん出る | 信号が細胞の核にとどき、新しいタンパク質がつくられて、シナプスの形が変わる |
| 新しいタンパク質づくりを止めると | 影響なし | できない |
- 1990年代にはマウスでも同じような変化が起こることを示し、このしくみは人にもあてはまると考えられています。記憶は「シナプスにある」といえるのです

記憶はシナプスにあります。短い記憶はシナプスのはたらきが一時的に強まることで、長い記憶は新しいタンパク質がつくられてシナプスの形が変わることでできる、とアメフラシの研究からわかりました。
つながるテクノロジー
- 脳の中の地図:脳の中にも「GPS」がある
- 信号物質を運ぶ小さな袋:細胞の中の「宅配便」
- 細胞の表面の受容体:ドキッとしたとき、細胞はどうやってアドレナリンを受けとる?

プレ男長く覚えるには、新しいタンパク質づくりが必要なんだね。

メル美アメフラシに記憶のしくみを教わったなんて、おもしろいね。
まとめ
- 脳の1,000億個以上の神経細胞は、シナプスで化学物質をやりとりして信号を伝える
- カールソン博士:ドーパミンは脳の信号物質で、体の動きのコントロールに大切
- グリーンガード博士:信号物質がタンパク質にリン酸をつけ、はたらきを変える
- カンデル博士:アメフラシで、短い記憶はシナプスのはたらきの変化、長い記憶は新しいタンパク質でシナプスの形が変わる
- 記憶は「シナプスにある」(2000年ノーベル生理学・医学賞)
参考文献
- The Nobel Assembly at Karolinska Institutet. Press release: The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2000. NobelPrize.org. https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/2000/press-release/ (閲覧日:2026年10月10日)
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