【テクノロジー解説】ドキッとしたとき、細胞はどうやってアドレナリンを受けとる?細胞の表面の「受容体」。細胞の壁を7回ぬうように通るセンサーで、光・におい・味も感じる。薬の約半分がここに働く(2012年ノーベル化学賞)
暗い夜道で人影が近づくと、心臓がドキドキします。ホルモンのアドレナリンが心臓を速く打たせるのですが、細胞はどうやってホルモンを受けとっているのでしょうか。2012年のノーベル化学賞は、細胞の表面にある「Gタンパク質共役受容体」のしくみを明らかにした、レフコウィッツ博士とコビルカ博士に贈られました。アドレナリンの受容体は、目で光をとらえる受容体とよく似ていて、細胞の壁を7回ぬうように通る、同じ形の仲間が約1,000種類もあることがわかりました。光、におい、味、ドーパミンやセロトニンなどを受けとり、薬の約半分がこの受容体を通して働いています。

プレ男好きな子にとつぜん話しかけられて、心臓がドキドキした!これってアドレナリン?

メル美心臓の細胞がアドレナリンを受けとるしくみも、ノーベル賞の研究なんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回は細胞の表面の受容体です。2012年のノーベル化学賞の発表と一般向け解説をもとにまとめました。
細胞は、どうやってまわりを感じる?
- わたしたちの体は、何十億もの細胞が、たがいにやりとりしてできています
- 細胞は、表面にある小さな「受容体」で、まわりのようすを感じとり、新しい状況に合わせています
- ホルモンのアドレナリンが、血圧を上げ、心臓を速く打たせることは知られていました。細胞の表面に、ホルモンの「受けとり手」があるとは考えられていましたが、それが何で、どう働くのかは、20世紀の大半のあいだなぞでした
放射線の目じるしで受容体を見つける
- ロバート・レフコウィッツ博士は1968年から、ホルモンに放射性のヨウ素をつけて、その放射線を手がかりに受容体を追いかけました
- そうして、アドレナリンの受容体(βアドレナリン受容体)などを見つけ、細胞の壁からとりだして、働き方を調べはじめました
目の受容体とそっくりだった
- 1980年代、チームに加わったブライアン・コビルカ博士は、ばく大な人の遺伝情報の中から、βアドレナリン受容体の遺伝子をとりだすことに成功しました
- 遺伝子を調べると、受容体は7本の長いらせんでできていて、細胞の壁を7回ぬうように通っていると考えられました
- しかも、目で光をとらえる受容体とよく似ていました。同じような形で、同じように働く受容体の大きな仲間があることに気づいたのです

プレ男ドキドキのセンサーと、光のセンサーが親せきだったのか!
約1,000種類の仲間、薬の約半分
- この仲間は「Gタンパク質共役受容体(GPCR)」とよばれます。受容体にホルモンなどがくっつくと、細胞の中の「Gタンパク質」に信号が伝わります
- 人では約1,000個の遺伝子が、この受容体をつくっています。光、味、におい、アドレナリン、ヒスタミン、ドーパミン、セロトニンなどを受けとる受容体です
- 薬の約半分は、このGタンパク質共役受容体を通して効いています
- 2011年、コビルカ博士のグループは、ホルモンを受けとって細胞の中に信号を送る瞬間の受容体の姿を画像にとらえました。何十年もの研究の成果です

細胞の表面には、細胞の壁を7回通る形の受容体の仲間が約1,000種類あり、光、におい、味、ホルモンなどを受けとっています。薬の約半分は、この受容体を通して効いています。
つながるテクノロジー
- 温度や触覚を感じる別のセンサー:温度と触覚のセンサーの発見
- ねらった分子にくっつく薬:モノクローナル抗体
- 分子の形を見る:電子顕微鏡

プレ男ドキドキも、においも、光も、細胞の表面のセンサーが受けとってたんだね。

メル美薬の半分がここに効くって、すごく大事なセンサーなんだね。
ホルモンや信号物質を細胞から送りだす「宅配便」は、細胞の中の「宅配便」へ。
同じ仲間のセンサーでにおいを感じるしくみは、約1万種類のにおいを、どうかぎ分ける?へ。
まとめ
- 細胞は、表面の受容体でまわりを感じる。アドレナリンを受けとるしくみは長くなぞだった
- 1968年から、レフコウィッツ博士が放射性の目じるしで受容体を見つけた
- 1980年代、コビルカ博士が遺伝子をとりだし、目の光の受容体とそっくりだとわかった
- Gタンパク質共役受容体は人で約1,000種類。光・におい・味・ホルモンなどを受けとる
- 薬の約半分がこの受容体を通して働く(2012年ノーベル化学賞)
参考文献
- The Royal Swedish Academy of Sciences. Press release: The Nobel Prize in Chemistry 2012. NobelPrize.org. https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/2012/press-release/ (閲覧日:2026年10月10日)
- The Royal Swedish Academy of Sciences. Popular information: The Nobel Prize in Chemistry 2012 (PDF). https://www.nobelprize.org/uploads/2018/06/popular-chemistryprize2012.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
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