【テクノロジー解説】約1万種類のにおいを、どうかぎ分ける?においのセンサーの遺伝子は約1,000個(遺伝子の3%)。1つの細胞に1種類のセンサー、組みあわせの「モザイク」でにおいを覚える(2004年ノーベル生理学・医学賞)
わたしたちは約1万種類のにおいをかぎ分け、覚えることができます。でも、そのしくみは長いあいだ、感覚の中でもっともなぞでした。2004年のノーベル生理学・医学賞は、においのしくみを明らかにしたアクセル博士とバック博士に贈られました。2人は1991年、においのセンサー(嗅覚受容体)をつくる約1,000個の遺伝子(遺伝子全体の3%)の大きな家族を発見。鼻のにおいを感じる細胞は、それぞれ1種類のセンサーだけをもち、同じセンサーの細胞は脳の同じ場所に信号を送ります。いくつものセンサーの反応の組みあわせが、モザイクのようなにおいのパターンになるのです。

プレ男ばあちゃんちのにおいをかぐと、子どものころを思い出すんだよね。においって、どうやって感じてるの?

メル美においのセンサーの遺伝子が、約1,000個もあるんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回はにおいを感じるしくみです。2004年のノーベル生理学・医学賞の発表をもとにまとめました。
いちばんなぞだった感覚
- わたしたちは、約1万種類のにおいをかぎ分けて覚えられます。でも、その基本的なしくみは、長いあいだ感覚の中でもっともなぞでした
- リチャード・アクセル博士とリンダ・バック博士は1991年、においのセンサー(嗅覚受容体)をつくる約1,000個の遺伝子の大きな家族を発見しました。わたしたちの遺伝子の約3%にあたります
- においのセンサーは、鼻のおくの上のほうの小さな場所にある「嗅細胞」についていて、吸いこんだにおいの分子をとらえます
1つの細胞に、1種類のセンサー
- 1つの嗅細胞は、1種類のセンサーだけをもっています。これはとても意外な発見でした
- 1種類のセンサーは、かぎられた数のにおいの物質をとらえます(似た分子にも、強さをかえて反応します)
- においのセンサーは、細胞の表面のセンサーの大きな仲間「Gタンパク質共役受容体(GPCR)」に属していて、細胞の膜を7回つらぬく形をしています。においの分子がくぼみにくっつくと形が変わり、細胞に電気信号が生まれます(ドキッとしたとき、細胞はどうやってアドレナリンを受けとる?)

プレ男1つの細胞が担当するのは1種類のセンサーだけなのか!
脳で「モザイク」になる
- 同じ種類のセンサーをもつ嗅細胞は、脳の入り口(嗅球)の同じ小さな場所(糸球体)に信号を送ります。嗅球には約2,000の糸球体があります
- そこから脳のほかの場所へ情報が送られ、いくつものセンサーの情報が組みあわさって、においごとのパターンになります
- ほとんどのにおいは、たくさんのにおい分子でできていて、1つの分子がいくつものセンサーを動かします。この組みあわせが、パッチワークやモザイクのような「においのパターン」になり、約1万種類のにおいを見分けて覚えられるのです
においと記憶、味
- 「おいしい」と感じるのは、おもににおいの感覚が働いているからです。いいワインや、よく熟した野いちごは、たくさんのセンサーを動かします
- においは、子どものころの思い出や、強い気持ちの記憶を呼びおこします。古い貝で気分が悪くなると、その記憶が何年も残り、貝料理を食べられなくなることもあります
- においを失うと、食べ物のちがいがわからなくなり、火事の煙のような危険のサインにも気づけなくなります
- 舌の味のセンサーも、GPCRの別の仲間だとわかっています
生き物ごとのちがい
- においのセンサーは、魚では約100、マウスでは約1,000。人はマウスより少し少なく、進化の中でいくつかの遺伝子を失ったと考えられています
- 犬の鼻の、においを感じる部分の面積は、人の約40倍です

においのセンサーの遺伝子は約1,000個あり、1つの嗅細胞は1種類のセンサーだけをもちます。いくつものセンサーの反応の組みあわせが、モザイクのようなパターンになり、約1万種類のにおいを見分けて覚えられます。
つながるテクノロジー
- 細胞の表面のセンサーの仲間:ドキッとしたとき、細胞はどうやってアドレナリンを受けとる?
- 温度や触覚のセンサー:温度と触覚のセンサーの発見
- 脳の中の地図:脳の中にも「GPS」がある

プレ男ばあちゃんちのにおいも、センサーの組みあわせのモザイクなんだね。

メル美においと思い出がつながってるの、すてきだね。
まとめ
- 人は約1万種類のにおいをかぎ分けて覚えられる
- においのセンサーの遺伝子は約1,000個(遺伝子の3%)。1991年に発見
- 1つの嗅細胞に1種類のセンサー。同じセンサーの細胞は、脳の同じ場所に信号を送る
- いくつものセンサーの反応の組みあわせ(モザイク)でにおいを見分ける
- においのセンサーはGPCRの仲間。味のセンサーも別の仲間(2004年ノーベル生理学・医学賞)
参考文献
- The Nobel Assembly at Karolinska Institutet. Press release: The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2004. NobelPrize.org. https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/2004/press-release/ (閲覧日:2026年10月10日)
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