【テクノロジー解説】「モノクローナル抗体」ってなに?ねらった1つの相手だけにくっつく抗体を、がん細胞と融合させた細胞で無限につくる。1975年に生まれた技術が、病気の検査や薬に(ノーベル賞1984・2018)
抗体は、ウイルスや細菌などの「相手」を見分けてくっつく、体の免疫のタンパク質です。1975年、ケーラー博士とミルスタイン博士は、抗体をつくる細胞をがん細胞の一種と融合させて「ハイブリドーマ」をつくり、ねらった相手だけにくっつく同じ抗体(モノクローナル抗体)をいくらでもつくれるようにしました(1984年ノーベル生理学・医学賞)。この技術は、病気の診断、物質の精製、そして治療に使われるようになりました。さらに、ウイルスを使って抗体を「進化」させる方法(2018年ノーベル化学賞)から生まれた薬は、2002年から関節リウマチなどの治療に使われています。

プレ男「抗体の薬」ってニュースで聞くけど、抗体を薬にするって、どういうこと?

メル美「モノクローナル抗体」っていう技術がもとになってるらしいよ。
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回はモノクローナル抗体です。1984年のノーベル生理学・医学賞と2018年のノーベル化学賞の発表をもとにまとめました。
抗体は、相手を見分ける「カギ」
- 免疫のいちばん大切な仕事は、細菌やウイルスなどから体を守ることです。白血球の一種のリンパ球が、たくさんの異物(抗原)を見分けて反応します
- 抗体は、特定の相手(抗原)を見分けてくっつくタンパク質です
- 1つの抗体をつくる細胞と、その細胞が分かれてできた細胞たち(クローン)は、まったく同じ抗体をつくります。これが「モノクローナル(単一クローンの)抗体」です
1975年:「ハイブリドーマ」で、同じ抗体をいくらでも
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研究者たちは長いあいだ、ねらった相手にくっつく抗体を、思いどおりにつくりたいと夢見ていました。でも、抗体をつくる白血球は、体の外に取りだすと長く生きられません
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一方、骨髄腫(ミエローマ)という血液のがんの細胞は、培養でずっとふえつづけることがあります
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1975年、ケーラー博士とミルスタイン博士は、
- ねらった抗原で免疫したマウスのひ臓の細胞(抗体をつくる)と、
- 培養した骨髄腫の細胞(ふえつづける)を
融合させました。こうしてできた細胞「ハイブリドーマ」は、生きつづけて分裂する力と、ねらった抗体をつくる力をあわせもっていました
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この方法で、同じモノクローナル抗体を、いくらでもつくれるようになりました。ノーベル賞の発表は、1970年代の生物医学でもっとも重要な方法の進歩のひとつとしています

プレ男すぐ死んじゃう細胞と、死なない細胞を合体させたのか!
何に使われる?(1984年の発表から)
- 研究:ウイルスなどのタンパク質の、どの部分がどんな働きをしているかを調べる(たとえば、インフルエンザウイルスの表面の変化を調べて、くり返しかかる理由を明らかにする)
- 精製:決まった相手だけにくっつく性質を使って、インターフェロンなどの物質をとても高い純度で取りだす
- 診断:細胞の表面や中の特別な構造を見分けて、腫瘍の種類を区別したり、白血球の種類を見分けたりする。ウイルスや細菌、寄生虫に感染した細胞を、とても高い精度で見分ける
- 治療:移植の分野で使われはじめ、腫瘍の治療への可能性もあるとしていました
2018年:ウイルスを使って、抗体を「進化」させる
- 2018年のノーベル化学賞は、ジョージ・スミス博士とグレゴリー・ウィンター博士に贈られました(賞の半分)
- スミス博士は1985年、細菌に感染するウイルス(ファージ)を使って、新しいタンパク質を進化させる「ファージディスプレイ」という方法を開発しました
- ウィンター博士は、この方法で抗体を進化させ、新しい薬をつくりました。この方法から生まれた最初の薬は2002年に承認され、関節リウマチ、乾癬、炎症性腸疾患に使われています
- それ以来、ファージディスプレイからは、毒を中和する抗体、自己免疫の病気をおさえる抗体、転移したがんを治すこともある抗体が生まれています

モノクローナル抗体は、ねらった1つの相手だけにくっつく同じ抗体です。1975年のハイブリドーマの技術で大量につくれるようになり、病気の診断や治療に使われるようになりました。
抗体つながり
- 抗体の薬で、がんへの免疫のブレーキを外す:免疫チェックポイントってなに?
- 体に抗体をつくらせるワクチン:mRNAワクチンってなに?
- ウイルスの遺伝子を見つける検査:PCRってなに?

プレ男抗体の薬の元をたどると、1975年のハイブリドーマにつながるんだね。

メル美検査にも治療にも使われてるのがすごいね。
抗体を実験室で「進化」させる技術は、進化を「試験管の中で」くり返すへ。
免疫のスイッチを入れる見はり役と司令塔は、体の防御は2段がまえへ。
まとめ
- 抗体は、特定の相手(抗原)を見分けてくっつく免疫のタンパク質
- 1975年、ケーラー博士とミルスタイン博士が、抗体をつくる細胞と骨髄腫の細胞を融合させたハイブリドーマを開発
- 同じモノクローナル抗体をいくらでもつくれるように(1984年ノーベル生理学・医学賞)
- 研究、精製、診断、治療に
- ファージディスプレイで抗体を進化させ、2002年に最初の薬が承認(2018年ノーベル化学賞)
参考文献
- The Nobel Assembly at Karolinska Institutet. Press release: The Nobel Prize in Physiology or Medicine 1984. NobelPrize.org. https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/1984/press-release/ (閲覧日:2026年10月7日)
- The Royal Swedish Academy of Sciences. Press release: The Nobel Prize in Chemistry 2018. NobelPrize.org. https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/2018/press-release/ (閲覧日:2026年10月7日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。