【テクノロジー解説】体の防御は2段がまえ:細菌の目じるしを見つける「見はり役」のセンサー(トル様受容体)と、次の部隊を動かす「司令塔」の樹状細胞。ハエの研究から見つかり、ワクチンやがんの治療の研究へ(2011年ノーベル生理学・医学賞)
わたしたちは細菌やウイルス、カビ、寄生虫にいつもねらわれています。体を守る免疫には、最初に働く「自然免疫」と、そのあとで働き、記憶もする「獲得免疫」の2段がまえがあります。2011年のノーベル生理学・医学賞は、その入り口のしくみを見つけた3人に贈られました。ホフマン博士はショウジョウバエで、ボイトラー博士はマウスで、病原体の目じるしを見つけて自然免疫を動かすセンサー(トル様受容体)を発見。スタインマン博士は1973年に「樹状細胞」を見つけ、獲得免疫のT細胞を動かす特別な力があることを示しました。

プレ男「免疫」って、体の中の警察みたいなもの?

メル美見はり役と、本隊と、そのあいだをつなぐ司令塔がいるんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回は免疫のスイッチです。2011年のノーベル生理学・医学賞の発表をもとにまとめました。
体の防御は2段がまえ
- わたしたちは、細菌、ウイルス、カビ、寄生虫などの病原体に、いつもねらわれています
- 1段目「自然免疫」:入ってきた病原体をこわし、炎症を起こして攻撃をくいとめる、最初の防衛線
- 2段目「獲得免疫」:1段目がやぶられると出動。T細胞とB細胞が、抗体や、感染した細胞をこわすキラー細胞をつくります。たたかいのあとは記憶が残り、同じ病原体が来たときに、より速く強く守れます
- ただし、スイッチが入りやすすぎたり、自分の体の分子でスイッチが入ったりすると、炎症の病気が起こることがあります
- 20世紀に、抗体のしくみなどはわかってきましたが、自然免疫のスイッチが何で入るのか、自然免疫と獲得免疫がどうつながるのかは、なぞのままでした
ハエで見つけた「見はり役」のセンサー
- ジュール・ホフマン博士は1996年、ショウジョウバエが感染とどうたたかうかを調べていました
- Toll(トル)という遺伝子が変異したハエは、細菌やカビに感染すると、うまく身を守れずに死んでしまいました。Tollは、病原体を見つけるのにかかわり、防御に必要だったのです
- ブルース・ボイトラー博士は1998年、細菌の成分(LPS)に反応しないマウスを調べ、ハエのTollによく似た遺伝子の変異を見つけました。これが「トル様受容体(TLR)」です
- ハエもほ乳類も、似た分子で自然免疫のスイッチを入れていることがわかりました。人やマウスでは10種類あまりのTLRが見つかっていて、それぞれ、病原体に共通する決まった種類の分子を見つけます

プレ男ハエと人で、同じような見はり役を使ってるのか!
司令塔「樹状細胞」
- ラルフ・スタインマン博士は1973年、新しいタイプの細胞を見つけ、「樹状細胞」と名づけました
- 樹状細胞があると、獲得免疫の要であるT細胞が、活発に反応することを示しました。はじめは疑いの目で見られましたが、樹状細胞にはT細胞を動かす特別な力があることを証明しました
- 自然免疫からの合図を樹状細胞が受けとり、T細胞を動かすかどうかを決めます。こうして、病原体には反応し、自分の体はなるべく攻撃しないしくみになっています
- スタインマン博士は、受賞の知らせが届く前になくなりました
何に役立つ?
- よりよいワクチンの開発
- 免疫にがんを攻撃させる試み
- 免疫が自分の体を攻撃してしまう理由の理解と、炎症の病気の新しい治療の手がかり(2011年当時)

免疫は、病原体の目じるしを見つける見はり役のセンサー(トル様受容体)が自然免疫のスイッチを入れ、樹状細胞が司令塔としてT細胞を動かす、2段がまえで体を守っています。
つながるテクノロジー
- 免疫のブレーキをはずすがん治療:免疫チェックポイント
- 免疫に設計図をわたすワクチン:mRNAワクチン
- ねらった相手にくっつく抗体:モノクローナル抗体

プレ男見はり役と司令塔と本隊。体の中のチームワークってすごい。

メル美ハエの研究が人の免疫のなぞを解いたのもおもしろいね。
キラーT細胞が感染した細胞を見分けるしくみは、キラーT細胞は「ウイルスのかけら」と「自分の目じるし」をセットで見るへ。
まとめ
- 免疫は自然免疫(最初の防衛線)と獲得免疫(T細胞・B細胞、記憶する)の2段がまえ
- ホフマン博士(1996年、ハエのToll)とボイトラー博士(1998年、マウスのTLR)が、自然免疫のセンサーを発見
- スタインマン博士(1973年)が樹状細胞を発見し、T細胞を動かす司令塔であることを示した
- 病原体には反応し、自分の体はなるべく攻撃しないしくみ
- ワクチン、がん、炎症の病気の研究へ(2011年ノーベル生理学・医学賞)
参考文献
- The Nobel Assembly at Karolinska Institutet. Press release: The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2011. NobelPrize.org. https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/2011/press-release/ (閲覧日:2026年10月10日)
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