
プレ男夔って、また読めない漢字! どんな獣なの?

メル美「き」って読むんだって。足が1本の牛みたいな獣で、雷みたいな声なの。でも、孔子は「足が1本じゃない」って言ったらしいよ。
こんにちは、Dr. Taro です。 幻獣の解説、今回は中国の夔(き)です。『山海経(せんがいきょう)』大荒東経、『尚書』舜典、『呂氏春秋』察伝篇の原文(ウィキソース)を読みました。中国神話の全体は中国神話の入門へ。

呉任臣『山海経広注』の挿絵「夔」(1786年刊の版、中国・清)。版画。ウィキメディア・コモンズ(パブリックドメイン)
プロフィール
| すみか | 東の海の中の流波山。海に7000里入ったところ |
| すがた | 牛のようで、青黒い体、角がない、足が1本 |
| ふしぎな力 | 水に出入りすると必ず風雨がおこる |
| 光と声 | 光は日や月のよう、声は雷のよう |
| 黄帝との関係 | 黄帝がその皮で太鼓をつくった |
| べつの夔 | 『尚書』では、舜に音楽をまかされた家臣 |
1. 流波山の一本足の獣
『山海経』大荒東経です。
- 「東の海の中に、流波山がある。海に7000里入ったところだ」
- 「その上に獣がいる。すがたは牛のようで、青黒い体に角がなく、足が1本。水に出入りすると、必ず風雨がおこる。その光は日や月のようで、その声は雷のよう。その名を夔という」

メル美光は日や月みたいで、声は雷!? 1本足なのに、すごい迫力だね。
2. 黄帝の太鼓
- 『山海経』はつづけます。「黄帝はこれを手に入れ、その皮で太鼓をつくり、雷獣の骨でたたいた。その音は500里先まで聞こえ、天下をおそれさせた」
- 黄帝は、蚩尤とたたかった帝王です(くわしくは黄帝と蚩尤)
3. 音楽の長・夔
『尚書』舜典では、「夔」は獣ではなく、舜の家臣の名前として出てきます。
- 舜は言いました。「夔よ、おまえに音楽をつかさどることを命じる。若者たちに教えて、まっすぐでいておだやか、心が広くてつつしみぶかく、強くてもむごくなく、おおらかでもおごらないようにせよ」
- 「詩は心ざしを言葉にし、歌は言葉をながくのばす。8つの楽器の音がよくととのい、たがいにみださなければ、神と人がなごむ」
- 夔は答えました。「ああ、わたしが石の楽器をうち、たたけば、たくさんのけものたちが、つれだって舞います」

プレ男同じ「夔」なのに、こっちは音楽の先生なんだ!
4. 「夔一足」の本当の意味
『呂氏春秋』察伝篇は、うわさをそのまま信じず、よく確かめることの大切さを説く篇です。
- 魯の哀公が、孔子にたずねました。「音楽の長の夔は、足が1本だったというが、本当か」
- 孔子は答えました。「むかし舜は、音楽で天下に教えをひろめようとして、草むらの中から夔を見つけだして、音楽の長にしました。夔は音律をととのえ、5つの音をやわらげ、天下はみな従いました」
- 「ほかにも人をさがそうという声があがったとき、舜はこう言いました。『音楽は天地の精(せい)で、うまくいくかどうかのかなめだ。夔はそれをととのえて、天下をおだやかにできる。夔のような者は、ひとりで足りる』」
- 「だから『夔一足(夔はひとりで足りる)』というのであって、足が1本という意味ではないのです」

『呂氏春秋』では、孔子が「夔一足」を「足が1本」ではなく「夔のような者はひとりで足りる」という意味だと説明しています。
まとめ
- 『山海経』の夔は、牛のような一本足の獣。水に出入りすると風雨がおこり、声は雷のよう
- 黄帝はその皮で太鼓をつくり、500里先までひびかせた
- 『尚書』では、夔は舜に音楽をまかされた家臣
- 『呂氏春秋』の孔子は、「夔一足」を「夔ひとりで足りる」という意味だと説明した
- 同じく一本足の鳥畢方、太鼓をつくった黄帝と蚩尤、同じ『山海経』の燭龍、中国神話の入門もどうぞ
参考文献
- 『山海經』大荒東經(流波山 夔). ウィキソース. https://zh.wikisource.org/wiki/山海經/大荒東經 (閲覧日:2026年10月10日)
- 『尚書』舜典. ウィキソース. https://zh.wikisource.org/wiki/尚書/舜典 (閲覧日:2026年10月10日)
- 『呂氏春秋』卷二十二 察傳. ウィキソース. https://zh.wikisource.org/wiki/呂氏春秋/卷二十二 (閲覧日:2026年10月10日)
- ウィキメディア・コモンズ. Wu-Renchen-Shanhai-jing-guangzhu-Kui(呉任臣〈1628〜1689年〉『山海經廣注』、1786年刊、パブリックドメイン). https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Wu-Renchen-Shanhai-jing-guangzhu-Kui.jpg (閲覧日:2026年10月10日)
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