世界の神話Mythos

Atlas of World Mythology神話の星図

ギリシャ、北欧、日本、ケルト、エジプト、インド、中国、メソポタミア。八つの神話と、そこに棲む幻獣を、原典の言葉と古い図版で。

記事
359篇
神話
8世界
図版
204点
  1. Iギリシャ
  2. II北欧
  3. III日本
  4. IVケルト
  5. Vエジプト
  6. VIインド
  7. VII中国
  8. VIIIメソポタミア
  9. IX幻獣

ギリシャ神話Greek

オリュンポスの神々と、怪物に挑む英雄たち。ヘシオドスとホメロスから。

九つの扉へ
  1. 入門成り立ちと大まかなあらすじ神々の系図を語ったのはヘシオドスとホメロス。カオスから大地が生まれ、ウラノス→クロノス→ゼウスと王が代わり、人間の時代、英雄たちのトロイア戦争へ
  2. アイオロスと風の袋海にうかぶ島にすむ風の王アイオロスは、オデュッセウスに、あれくるう風をとじこめた牛皮の袋をあたえた。ふるさとの島が見えたそのとき、ねむったオデュッセウスのそばで、仲間たちは「金銀が入っているにちがいない」と袋をあけてしまった
  3. カエルとネズミの合戦カエルの王の背中にのって池をわたったネズミが、ヘビにおどろいた王にふりおとされた。おこったネズミたちは、豆のさやのすね当て、ランプのふたの盾、針の槍で武装する。神々はどちらの味方をするか相談するが、アテナは言った。「ネズミはわたしの衣に穴をあけたし、カエルはうるさくてねむれない」
  4. ヘルメスと牛飼いバットスアポロンの牛をぬすむところを見ていた老人バットス。「だまっていれば、この牝牛をあげよう」「だいじょうぶ、しゃべったら、あの石がしゃべるさ」。ところが、姿をかえたヘルメスが、牛を2頭あげると言うと…
  5. カリュプソブドウのつるがしげる洞窟で、金のひで機を織りながら歌う女神。「ここにいれば、あなたを不死にしてあげるのに」。けれどもオデュッセウスは、毎日浜で海をながめて泣いていた。ゼウスの命令がとどくと、女神はおのを手わたし、いかだをつくらせ、星を見て進む道を教えた
  6. 乳母エウリュクレイアと足の傷あと20年ぶりに、こじきの姿で帰ってきたオデュッセウス。その足を洗った年老いた乳母は、ひざの上の傷あとにふれたとたん、足をとりおとした。それは、少年のころ、祖父の山でイノシシ狩りをしたときの傷だった
  7. 人間の五つの時代神々がはじめにつくったのは、苦しみも老いも知らない「金の種族」。つぎは100年も子どものままの「銀」、戦いを好む「青銅」、英雄たちの「半神」。そしていまの「鉄の種族」。ヘシオドスは言った。「わたしは、5番目の種族に生まれたくなかった」
  8. ガイア(大地)はじめにカオスがあり、つぎにすべての神々の土台となる、胸の広い大地ガイアが生まれた。ガイアは自分と同じ大きさの星空の天を生み、山々と海を生んだ。そして、わが子をのみこむクロノスから、孫のゼウスをクレタの洞窟にかくした
  9. グラウコスとディオメデス戦場のまんなかで向かいあった、敵どうしのふたりの戦士。「人の世代は、木の葉のようなものだ」と名のりあううち、祖父どうしが客と主人としておくりものをかわした仲だとわかった。ふたりは槍を地面につきたて、手をにぎり、よろいをとりかえた
  10. ヘカテ大地にも、海にも、星空にも、ほまれをもつ女神。ゼウスは、ティタンの時代からの分けまえを、何ひとつとりあげなかった。裁きの場にも、いくさにも、競技にも、漁にも、家畜の小屋にもあらわれて、思うままに助ける。そして、ペルセポネのさけびを聞き、たいまつを手にデメテルをたずねた
  11. ヘレネのわすれ薬と木馬の思い出オデュッセウスを思って、みんなが泣いてしまった宴。ヘレネは、エジプトの女性からもらった「悲しみや怒りを消す薬草」を酒にまぜ、トロイアでのオデュッセウスの話をした。メネラオスは、木馬の中でのオデュッセウスの勇気を語った
  12. 太陽神の牛トリナキエの島には、ふえもへりもしない太陽神の牛と羊の群れがいた。「けっして手を出すな」と予言されていたのに、風がやまず、食べものがつきると、仲間たちはオデュッセウスがねむっているあいだに牛をほふってしまった。焼き串の肉は、牛のように鳴きだした
  13. ヘリオスとセレネ太陽の神ヘリオスは、金のかぶとから鋭い目で見おろし、馬車で天の頂へのぼってから、オケアノスの海へおりていく。月の女神セレネは、オケアノスで体を洗い、長いたてがみの馬を走らせて、月の半ばの夜、いちばん明るくかがやく
  14. ホメロスとヘシオドスの歌くらべ「人が神々にいのるべき、いちばんよいことは?」「いつも自分自身とやすらかであること」。どんななぞかけにもみごとに答えたホメロス。けれども王が冠をあたえたのは、「平和と畑仕事」を歌ったヘシオドスだった
  15. 父ラエルテスと果樹園の木20年ぶりに帰ったオデュッセウスが、いなかの農園へ行くと、年老いた父が、つぎはぎの服でブドウの根もとをたがやしていた。「おまえが本当にわが子なら、しるしを見せよ」。息子は、足の傷あとと、子どものころ父にもらった木の数を答えた。「ナシの木を13本、リンゴを10本、イチジクを40本…」
  16. ロートスを食べる人々嵐で9日間ながされ、10日目に着いたのは、花からとれる食べものを食べる人々の国。人々はやさしく、オデュッセウスの仲間にロートスをすすめた。それはあまりにおいしく、食べた者は、ふるさとに帰ることなど、どうでもよくなってしまった
  17. ムーサ(9人の歌の女神)ヘリコン山でおどり、夜は霧につつまれて歌いながら出かける9人の女神。羊を飼っていたヘシオドスに月桂樹の枝をわたし、神の声をふきこんだ。「わたしたちは、うそを本当のように語れる。でも、そうしたいときは、本当のことも語れる」
  18. オデュッセウスの冥界くだり予言者テイレシアスは告げた。「いつか、海を知らない国で、おまえのかつぐオールを『箕(み)だ』と言う旅人に会うだろう」。母のたましいは「おまえを思う気持ちが、わたしの命をうばったのです」と語り、英雄アキレウスは「死者の王より、地上の雇われ人がいい」と言った
  19. パイアケス人の国年をとらない金と銀の番犬がまもる王の館。一年じゅう実がなり、熟した実のそばで新しい実が育つ庭。かじも舵とりもいらず、人の考えを知って、霧の中でも世界じゅうの町へ行ける船。そして、旅人を送りとどけた船は、海の神の手で石に変えられた
  20. ピクスとカネンス歌えば森も岩も動き、けものもおとなしくなる妖精カネンスの夫、若い王ピクス。狩りの森で魔女キルケに思いをうちあけられたが、「わたしの心はカネンスのもの」とことわった。怒ったキルケが杖で3度ふれると、ピクスは紫の翼と金色の羽の鳥になった
  21. ステュクス神々のちかいの水。オケアノスのいちばん上の娘で、銀の柱にささえられた岩の館に、神々からはなれて住む女神。この水にかけてちかい、うそをついた神は、まる1年息もできずにふせり、さらに9年、神々の集まりからしめだされる
  22. アキレウス「ここで戦えば、名はくちないが、故郷には帰れない。帰れば、命は長いが、名はのこらない」。2つの運命を知りながら、親友の死のために戦場へもどった英雄。息子を殺された老王が、その手に口づけしたとき、アキレウスは自分の父を思って泣いた
  23. アルケスティス「だれかが代わりに死ねば、王は死をまぬがれる」。年老いた父も母もことわったその役を、王妃アルケスティスが引きうけた。悲しみの館にとまったヘラクレスは、墓のそばで死の神をまちぶせし、王妃をとりもどした
  24. アマゾン族弓を射て、槍を投げ、馬に乗る女性の戦士たち。ギリシャ人の船からのがれてスキタイの地にたどりついたアマゾンたちは、スキタイの若者たちとくらしはじめた。でも、「わたしたちは、あなたたちの国の女の人とはくらせない」と、川をこえて新しい国をつくった
  25. アフロディテ海の白い泡の中から生まれ、キュプロス島に上がった愛と美の女神。季節の女神たちに金の冠と首飾りでかざられると、神々はみな妻にしたいと願った。でも戦場で息子をかばって手首を傷つけられると、泣いて母のひざにすがった
  26. アポロンヘラのじゃまで、どの土地にも生まれる場所をことわられた母レト。小さな島デロスのヤシの木の下で生まれ、ひと口の神の食べものでむつきをやぶって「竪琴と弓はわたしのもの」。デルポイでは大蛇をたおし、イルカの姿で神官をつれてきた
  27. アラクネ「女神アテナと織りくらべをしてもいい」と言いきった、織物の名人の娘。老婆に化けた女神の忠告もはねつけ、ついに女神と同じ機で勝負した。アラクネの布には、ひとつのきずもなかった。そして彼女は、いまも糸を出して巣を織る、クモになった
  28. アレス戦いの神なのに、人間の英雄の槍で傷つけられ「9000人か1万人の戦士」のようなさけび声。父ゼウスには「いちばんきらいな神」と言われ、アテナには境界石で打ちたおされた。でも讃歌は「わたしを、おだやかな平和のおきてにとどめてください」と祈る
  29. アリオンとイルカたくわえたお金をねらう船乗りたちに、海へ飛びこめとせまられた竪琴の名人。「さいごに一曲だけ」と、晴れ着で船の上に立って歌い、そのまま海へ。すると、イルカが背にのせて、岬まではこんでくれた
  30. アルテミス金の矢の狩りの女神。山々で弓を引けば、峰がふるえ森がこだまする。狩りを終えると兄アポロンの館で歌と踊りをみちびく。神々の大げんかでは、ヘラに自分の弓でたたかれて、泣きながら父ゼウスのひざへ
  31. アスクレピオスケンタウロスのケイロンに医術を学び、死んだ人まで生きかえらせた医術の神。人間がたがいに命を救いあうようになるのをおそれたゼウスは、雷で彼をうった。エピダウロスの神殿には、なおった人の名前と病気となおし方を書いた石板がならんでいた
  32. アタランテ赤ちゃんのときに山にすてられ、クマの乳で育った狩人の娘。カリュドンのイノシシ狩りでは、男の英雄たちより先に矢をあてた。結婚をもとめる男たちとは、武装したまま競走し、追いついたら勝ち。ところが、黄金のリンゴに足を止めてしまう
  33. バウキスとピレモン旅人の姿のゼウスとヘルメスを、千軒の家が追いかえした。たったひとつ戸をあけたのは、わらぶき小屋の老夫婦だった。ふたりの願いは「同じときに死なせてください」。年老いたふたりは、さいごに、寄りそう2本の木になった
  34. カドモスさらわれた妹エウロペをさがす旅に出て、「牛についていき、牛がたおれた場所に町をつくれ」というお告げで、テバイの町をひらいた英雄。泉をまもる竜をたおし、その歯をまくと武装した兵士が生まれた。最後は妻とともにヘビになった
  35. カッサンドラアポロンから予言の力をさずかったトロイアの王女。でも、アポロンとの約束をやぶったため、「だれにも信じてもらえない」ようにされた。木馬の中に兵がいると言っても、トロイアの人びとは聞かなかった。「来るものは、来る」
  36. ケユクスとアルキュオネ「2か月のうちに帰る」と約束して船出した夫は、嵐の海にしずんだ。夢の神モルペウスがその知らせをとどけ、浜で夫を見つけた妻は、カワセミになって飛んだ。冬の7日間、海がしずまる「ハルシオン・デイズ」のはじまり
  37. キルケアイアイエの島で、機を織りながら美しい声で歌う魔女の女神。館のまわりには、魔法の薬で手なずけたオオカミとライオン。もてなしの飲みものに薬をまぜ、杖でふれると、オデュッセウスの仲間たちはブタになった。ヘルメスがオデュッセウスにわたしたのは、根が黒く花が乳のように白い薬草「モーリュ」
  38. ダプネアポロンをばかにされたエロス(クピド)は、金の矢でアポロンに恋をさせ、鉛の矢でダプネに恋をきらわせた。追いかけるアポロン、にげるダプネ。父の川の神に助けをもとめたダプネは、月桂樹になった。アポロンは「おまえの葉を、いつもわたしの冠にしよう」と言った
  39. デメテルむすめペルセポネをさがして老婆の姿で人間の町へ。エレウシスの王子を火の中で不死にしようとして母親にさけばれ、正体をあらわす。神殿にこもると、大地は1粒の芽も出さず、神々もこまりはてた
  40. デウカリオンとピュラゼウスの大洪水で、生きのこったのはふたりだけ。女神のお告げは「大いなる母の骨を、うしろへ投げよ」。母の骨とは、大地の石のこと。ふたりがうしろへ投げた石は、やわらかくなって人間の姿になった
  41. ディオニュソスぶどう酒とツタの神。海賊にさらわれると、船にぶどう酒があふれ、帆にぶどうのつるがからみ、神はライオンに変身。海にとびこんだ海賊たちはイルカになった。助かったのは、神だと見ぬいたかじ取りだけ
  42. カストルとポリュデウケス(ディオスクロイ)馬をならすカストルと、ボクシングのポリュデウケス。兄弟が殺されたとき、ポリュデウケスは「ひとりだけ不死になる」ことをことわった。ゼウスはふたりに、1日ごとに神々のもとと人間のもとでくらすことをゆるした
  43. ギュゲスの指輪大雨と地震でさけた大地の底に、青銅の馬。その中で羊飼いが見つけた金の指輪は、台座を内がわに回すと姿が消え、外がわに回すと姿があらわれた。「だれにも見られないなら、人は正しくいられるか」——プラトンが『国家』で語る、透明人間の指輪
  44. ハデスくじ引きで「うす暗い闇」を引いた、ゼウスの兄。地の底の館の門には、入る者にはしっぽをふり、出ようとする者は食べてしまう番犬。神々の大げんかで大地がゆれると、冥界が見えてしまうと王座からとびあがった
  45. ヘクトルトロイアをひとりでまもった王子。戦いへもどる前、城門で妻アンドロマケと赤ちゃんに会った。父のかぶとの羽かざりにおびえて泣く子を見て、父と母は声をあげてわらい、ヘクトルはかぶとをぬいで、わが子に口づけした
  46. ヘパイストス足の悪いかじの神。天から投げ落とされて1日じゅう落ちつづけ、日がしずむころレムノス島へ。金でできた、考えて話す「少女の人形」に支えられ、ひとりでに歩く車輪つきの三脚を作り、英雄アキレウスの盾には世界のすべてをきざんだ
  47. ヘラ金の玉座の女神、神々の女王。クロノスの娘たちの中で「いちばん年上で、いちばん重んじられ、ゼウスの妻とよばれる」と自分で言いきる。夫ゼウスがこっそり女神テティスと相談すると、すぐに見ぬいて問いつめた
  48. ヘルメス夜明けに生まれ、昼にはカメのこうらで竪琴を作り、夕方には兄アポロンの牛50頭をぬすんだ赤ちゃんの神。足あとを逆向きにし、「ぼくはきのう生まれたばかり」としらを切る。最後は竪琴で兄と仲なおり
  49. ヘスティアかまどの火の女神。クロノスに最初にのみこまれ、最後にはきだされたので「いちばん上で、いちばん下」の子。ポセイドンとアポロンに求婚されても、ゼウスの頭にふれて「一生むすめのままでいる」とちかい、家のまんなかの席をもらった
  50. ヒュアキントスアポロンが愛したスパルタの若者は、ふたりで円盤投げをたのしんでいたとき、はねかえった円盤にあたって命を落とした。なげくアポロンの前で、若者の血は紫の花に変わり、花びらには「アイ、アイ(ああ、ああ)」というなげきの文字がきざまれた
  51. イオゼウス(ユピテル)に白い牝牛に変えられた川の神の娘。百の目をもつ番人アルゴスに見はられ、声を出せば牛の鳴き声。父に気づいてもらうため、ひづめで地面に自分の名前を書いた。アルゴスの百の目は、のちにヘラの鳥の羽にかざられた
  52. イアソン川でサンダルを片方なくしたことから、「片方のサンダルの男に気をつけよ」というお告げをおそれる王に、金の羊毛をとってくるよう命じられた英雄。しゃべる木をつけた50のかいの船アルゴー号に、ヘラクレスやオルペウスら英雄たちが集まった
  53. パリスの審判争いの女神が投げこんだ「いちばん美しい者へ」の賞品をめぐって、ヘラ、アテナ、アフロディテがあらそった。ゼウスは、イダ山の羊飼いの王子パリスに決めさせた。「すべての人の王に」「戦いの勝利を」「ヘレネを妻に」。パリスがえらんだのは…
  54. レトとリュキアの農民ふたごの赤ちゃんをだいて、のどがかわききった女神レト。池の水を飲もうとすると、農民たちは「飲むな」とじゃまをし、池をかきまわして泥だらけにした。「いつまでも、その泥の池でくらすがいい!」。農民たちは、カエルになった
  55. ナウシカア海べで洗たくをして、侍女たちとボールあそびをしていたパイアケス人の王女。ボールが川の深みに落ちたさけび声で、流れついたオデュッセウスが目をさました。侍女たちはにげたが、ナウシカアだけはふみとどまった。「旅人やこまっている人は、みなゼウスからつかわされた人です」
  56. オデュッセウスの帰郷20年ぶりにこじきの姿でイタケへ帰った英雄。ふんの山によこたわる老犬アルゴスは、主人に気づいて尾をふり、そのまま息をひきとった。妻ペネロペは、昼に織った布を夜にほどいて求婚者たちを待たせ、最後は「動かせない寝台」の秘密で夫をたしかめた
  57. パンヤギの足に2本の角、ひげの顔で生まれた赤ちゃんを見て、乳母はにげだした。でも父ヘルメスは大よろこびでオリュンポスへつれていき、神々はみな心をよろこばせた。「みんな」をよろこばせたから、名前はパン。葦笛をふく、山と羊飼いの神
  58. パエトン「ほんとうに太陽の神の子なのか」と友だちにからかわれ、父の宮殿をたずねた少年。父が冥界の川にかけて「なんでもかなえる」とちかうと、太陽の馬車を1日だけ走らせたいとねがった。「ゼウスでさえ、この馬車は走らせられない」と止められたのに…
  59. ムーサとピエロスの9人の娘「わたしたちも9人。歌でも負けない」。芸術の女神ムーサたちに歌くらべをいどんだピエロスの娘たち。審判のニンフたちがムーサの勝ちを告げると、娘たちは悪口をやめず、腕に羽が生え、口がくちばしになって、おしゃべりなカササギになった
  60. 海の老人プロテウスどんな海の深さも知っている、うそをつかない海の老人。つかまえれば、未来を教えてくれる。でも、つかまれると、ライオンに、ヘビに、ヒョウに、イノシシに、水に、木にと姿を変える。メネラオスはアザラシの皮をかぶってまちぶせし、はなさずにしがみついた
  61. タンタロスとシシュポス冥界で終わりのない罰をうける2人。あごまで水につかっているのに、飲もうとすると水が消え、頭の上の果物に手をのばすと風が雲の上までもっていくタンタロス。大きな石を山の上へおしあげるのに、頂上の手前でかならずころがり落ちるシシュポス
  62. テセウス大岩を持ちあげて父の剣とサンダルを見つけ、あえて危険な陸の道を選んでアテナイへ向かった英雄。宴で毒の杯をさしだされたとき、剣をぬいて父に気づかせた。ミノタウロスをたおして帰る船で、白い帆をあげるのを忘れてしまう
  63. エオスとティトノス暁の女神エオスは、愛するトロイアの若者ティトノスを「不死」にしてほしいとゼウスにたのんだ。ねがいはかなった。けれども、「若さ」をたのむのをわすれていた。年老いて動けなくなったティトノスは、部屋の中で、いつまでもかすかに話しつづけている
  64. アテナ父ゼウスの頭から、金のよろいを着て槍をふりながら飛び出した知恵と戦いの女神。怒りで剣をぬきかけたアキレウスの髪をうしろからつかみ、ポセイドンとは町の守り神の座をオリーブの木であらそった
  65. ポセイドンくじ引きで「灰色の海」を引いた、ゼウスの兄。三叉の矛で大地をゆらし、金のたてがみの馬の車で波の上を走れば、海の生きものがはねて道をあける。「わたしはゼウスと同じ身分だ」と弟にも引かない
  66. ミダス王「さわるものすべてを金に」という願いがかなったら、パンも水も金になって食べられない。こんどは音楽くらべでアポロンに逆らい、耳をロバの耳にされた。床屋が穴にささやいた秘密は、アシが風で話してしまった
  67. ナルキッソスとエコー人の言葉の終わりしかくり返せなくなったニンフのエコーと、泉にうつった自分の姿に恋をした美少年ナルキッソス。予言は「自分を知らなければ、長生きする」だった
  68. ゼウス父にのみこまれるはずが、身代わりの石で助かった末っ子。雷を武器に神々の王となり、「わたしがうなずけば、取り消しはない」。神々全員で金の鎖を引いても、天から引きおろせない
  69. イカロスの翼鳥の羽を糸とロウでとめた、父ダイダロスの手づくりの翼。「低すぎると波でぬれ、高すぎると太陽にこがされる。そのあいだを飛べ」——天にのぼりたくなった少年のロウは、とけた
  70. オルペウスとエウリュディケ蛇にかまれて死んだ新妻を、竪琴の歌で冥界から連れもどす。条件は「地上に出るまで、ふり返ってはならない」。あと少しのところで、ふり返ってしまった
  71. パンドラ「パンドラの箱」は、もとは「大きなかめ」だった。火を盗まれたゼウスが「火の代わり」につくった、すべての神々から贈りものをうけた女性。ふたを開けると災いが広がり、「希望」だけがかめのふちに残った
  72. ペルセポネとザクロの実花をつんでいた娘を、冥界の王ハデスが連れ去った。母デメテルが悲しむと、大地に実りがなくなった。ザクロの種を食べてしまったので、1年の3分の1は冥界へ——春が来ると、地上にもどる
  73. プロメテウスゼウスをだました「いけにえの分け方」、ウイキョウの茎にかくして盗んだ火。罰は、毎日ワシに肝臓を食べられ、夜のあいだに元にもどること。救ったのはヘラクレスだった
  74. ペルセウス箱に入れられ海に流された赤ちゃんが、メドゥーサを倒す英雄に。アンドロメダ救出、そして円盤投げで「予言」が当たってしまう
  75. ヘラクレス生後8か月でヘビ2匹を素手でしめた最強の英雄。女神ヘラのねたみで正気を失い、つぐないの「12の功業」へ。ライオン、ヒュドラ、ケルベロス——全リスト
  1. 入門成り立ちと大まかなあらすじ伝えたのは、13世紀アイスランドの政治家スノッリの『エッダ』。氷と炎のあいだで生まれた巨人ユミルの体から世界が作られ、神々の国アースガルズ、そして最後の日ラグナロクへ
  2. バルドルの夢バルドルが見たおそろしい夢のわけを知るため、オーディンはスレイプニルに乗って、死者の国へくだった。墓からよびおこされた巫女は、名をいつわる旅人に、しぶしぶ未来を語る。「ここでは、バルドルのために蜜酒がつくられている」
  3. 小人とエルフ巨人ユミルの肉の中で、うじ虫のようにうまれた小人たち。神々は相談して、小人に人の知恵とすがたをあたえたが、すむのは土の中と岩の中。天のささえる四すみには、東・西・南・北という名の4人の小人。そして天のアールヴヘイムには、太陽より美しい光のエルフがすむ
  4. ゲフィウンの土地すき旅の話のお礼に、王ギュルヴィは「4頭の牛が1日と1夜ですけるだけの土地」をあたえると言った。ところがその女はアース神族のゲフィウン。巨人の国から4頭の牛をつれてきてすくと、土地はごっそりはがれて海へ運ばれ、島になった
  5. 神々の12の館トールのスルーズヘイム、フレイのアールヴヘイム、銀の屋根のヴァーラスキャールヴ、黄金にかがやくヴァルハラ…。火のあいだにすわらされたオーディンが「グリームニル」の名で語った、神々のすまいの一覧
  6. グロッティの石臼のぞむものを何でもひきだす、ふしぎな石臼。フロジ王は巨人の娘フェニヤとメニヤに、金と平和と幸せをひかせ、休むことをゆるさなかった。娘たちが歌いながらひきだしたのは…。海の水がしょっぱくなったわけ
  7. ハーヴァマール(高き者のことば)オーディンのことばとされる北欧の知恵の歌。「旅に出るなら、知恵にまさる荷物はない」「わかい日、ひとりで旅して、道を知らなかった。友を見つけたとき、ゆたかになった気がした。人は人のよろこび」「家畜は死に、身内も死ぬ。けれども、よい名はけっして死なない」
  8. リーグの歌海辺の道をあるいてきた神リーグは、3つの家をたずね、それぞれ3晩ずつとまった。3つの家に生まれた子どもたちから、むかしの北欧の3つの身分がはじまった、と歌われる。さいごの家の子孫「若きコン」は、ルーンを学び、鳥のことばを聞いた
  9. ロルフ・クラキと金の種「王座にすわっているのは、小さなカラス(クラキ)じゃないか」。まずしい若者にそう言われた王は、笑って金の腕輪をあたえた。追っ手にむかって角いっぱいの金をまきちらし、フュリスの野をかけぬけた、北の国でいちばん名高い王
  10. 太陽と月を追う狼むすことむすめに「月」「太陽」と名づけた男は、神々の怒りをかい、ふたりは天で太陽と月の馬車を走らせることになった。太陽がいつもいそいでいるのは、うしろから狼が追ってくるから。そして夜と昼も、馬に乗って空をめぐる
  11. スヴィプダグとメングロズ「目をさまして、グロア、やさしいお母さん」。だれも行けない場所の乙女をさがせと命じられた若者は、亡き母の墓でまじないの歌をさずかった。炎にかこまれた館の門番との問答のすえ、門はひらき、乙女はむかえた。「愛しあう2人には、待ちこがれた出会いこそ、いちばんのよろこび」
  12. アルヴィースの歌トールの娘を花嫁にしようとやってきた、鼻のまわりが青白い小人アルヴィース(すべてを知る者)。トールは「すべての世界での言葉を答えられたら」と、大地、空、月、太陽…と問いつづけた。小人は全部答えた。でも、そのあいだに夜が明けた
  13. フレイヤ2匹のネコが引く車に乗る、女神たちの中でいちばん名高い女神。戦場でたおれた者の半分をえらび、遠くへ行った夫をさがして流す涙は赤い金。巨人たちは、何かといえば「フレイヤをよこせ」と言い出した
  14. フレイ雨と日の光と大地の実りをつかさどる「アース神族でいちばん名高い神」。オーディンの高座から見た巨人の娘ゲルズに恋をして、ひとりでに戦う剣を家来にゆずった。その剣がないことが、ラグナロクでの命とりになる
  15. フリッグオーディンの妻で、人の運命を知っていても語らない女神。夫と「どちらの育て子がりっぱな王か」の賭けをし、侍女フッラを送って、旅人に化けたオーディンをつかまえさせた。わが子バルドルが死ぬと、フェンサリルの館でさめざめと泣いた
  16. トールとゲイルロズロキのせいで、ハンマーも力の帯ももたずに巨人ゲイルロズの館へ行くことになったトール。女巨人グリーズに杖と手袋と帯をかりて、ふくれあがる大河をわたり、真っ赤に焼けた鉄のくさびを手袋でうけとめた
  17. ヘイムダル9人の姉妹から生まれた「白い神」。鳥よりねむらず、夜でも100マイル先まで見え、草がのびる音も、羊の毛がのびる音も聞こえる、神々の見張り番。世界の終わりには角笛ギャラルホルンを吹き鳴らす
  18. ヘルロキの娘で、死者の国の女王。体の半分は青く、半分は肌の色。食卓の名は「飢え」、ナイフは「飢餓」、寝床は「心配」。光の神バルドルを帰す条件は「すべてのものが泣くなら」だった
  19. フルングニル心臓も頭も盾も石でできた、巨人いちばんの強者。トールとの決闘で、トールのハンマーと巨人の砥石が空中でぶつかり、砥石のかけらはトールの頭にささったまま。生まれて3晩の息子マグニが、トールを助けだした
  20. イズンとリンゴ神々が年をとると食べて若がえる、イズンの箱のリンゴ。ロキにだまされて森へさそいだされたイズンは、ワシに化けた巨人にさらわれた。神々はみるみる白髪になり、ロキはタカに化けて、イズンをクルミに変えてつれもどした
  21. 詩の蜜酒飲めばだれでも詩人になり、知恵者になる蜜酒。オーディンは、名前をボルヴェルクと変え、ヘビになって岩の穴にもぐりこみ、3口で3つのかめを飲みほし、ワシになって神々の国へ飛んで帰った
  22. ニョルズとスカジ海辺の館にすむ風と海の神ニョルズと、山にすむスキーの女神スカジ。足だけを見てえらばれた夫婦は、山で9夜、海で3夜ずつくらすことにした。「オオカミの遠ぼえは、白鳥の歌にくらべていやだった」「毎朝カモメの声で目がさめる」
  23. テュール狼フェンリルにえさをやれた、ただひとりの勇敢な神。「ほどいてくれる約束のしるしに」と自分の右手を狼の口に入れ、神々が約束をやぶったとき、その手を失った。片手の神は、いまでは「人びとの仲なおりの神」とよばれる
  24. ヴァフスルーズニルの歌オーディンは名前をかくして、いちばん物知りの巨人をたずね、首をかけた知恵くらべをした。昼をはこぶ馬の名、世界のはじまり、神々のおわりのあとのこと。そして最後の問い。「オーディンは、火葬の火にのる前の息子の耳に、何をささやいたか」
  25. ワルキューレ(ヴァルキュリャ)オーディンにつかわされて戦場をかけ、たおれる者をえらぶ「戦死者をえらぶ乙女」。ヴァルハラでは勇士たちに酒をはこぶ。オーディンにさからって眠りのとげをさされ、炎の盾の砦でねむっていたワルキューレもいた
  26. ロキ美しい顔で、うそと悪だくみの名人。神々をたびたび大ピンチにし、また知恵で救う。女神シヴの髪を切った罰から、小人たちの「宝づくり勝負」が始まり、トールのハンマーやオーディンの槍が生まれた
  27. トール神々と人間でいちばん強い雷の神。ハンマー・ミョルニル、力が2倍になる帯、鉄の手袋。そのハンマーを巨人にぬすまれ、とり返すために、花嫁のベールをかぶって女神フレイヤのふりをした
  28. オーディン知恵の泉の水を飲むため、片目を差し出した神々の父。毎朝2羽のカラスを世界に飛ばし、ルーン文字を手に入れるため、風のふく木に9夜つるされた。食べるのはワインだけ、肉は2匹の狼に
  29. バルドルの死光かがやく神バルドルに、女神フリッグは「すべてのもの」から傷つけないという誓いをとった。ただ1つ、若すぎて誓わせなかった「ヤドリギ」を、ロキは見のがさなかった
  30. ロキの罰バルドルを死なせたロキは、サケに化けて滝ににげた。神々は、ロキ自身が考えた「網」でつかまえる。岩にしばられ、顔に落ちる蛇の毒。妻シギュンが器で受けとめ、器をあける間に毒が落ちると、大地がゆれる
  31. ラグナロク(神々の最後の日)夏の来ない「フィンブルの冬」が3年、狼が太陽と月をのみこみ、炎の巨人スルトが世界を焼く。でもそのあと、緑の大地が海からよみがえり、2人の人間から新しい世界が始まる
  32. トールと巨人の王ウートガルザ・ロキの力くらべ大食い・かけっこ・飲みくらべ・ネコ持ち上げ・すもう、ぜんぶ負け。でも相手は「火」「考え」「海」「世界の大蛇」「老い」だった
  33. 世界樹ユグドラシル枝は全世界にひろがり天の上まで。3本の根の下には、オーディンが片目と引きかえに水を飲んだ「知恵の泉」。根をかじる竜、悪口を運ぶリス、運命の女神ノルンたち
  1. 入門成り立ちと大まかなあらすじ712年の『古事記』と720年の『日本書紀』。28歳の稗田阿礼がよみならい、太安万侶が書きとめた。天地のはじめから国生み、天の岩戸、国ゆずり、天孫降臨、そして初代の天皇へ
  2. 引田部の赤猪子「嫁に行かずにおれ。召しだすぞ」。三輪川のほとりで天皇にそう言われた娘は、その言葉を信じて待ちつづけ、80年がすぎた。すっかり年をとった赤猪子は、待っていた心だけは伝えたいと、宮へ参上する
  3. トンボとアキヅ野吉野で狩りをする天皇のうでにアブがくいつくと、トンボがとんできてアブを食べ、とんでいった。天皇はトンボをたたえて歌った。「この大和の国を、蜻蛉島というのだ」。葛城山では、手負いのイノシシにおわれて、ハンの木にのぼった話も
  4. 豊後の国の名と、人の声におこる湯北からとんできた白い鳥が、餅になり、それから何千株もの芋になった。「天のめでたいしるし、地のゆたかな草。おまえがおさめる国は、豊国とよぼう」。『豊後国風土記』の、国の名のはじまりと、ふしぎな湯の話
  5. 福慈の岳と筑波の岳日がくれて、神祖尊は、駿河の福慈の岳の神に宿をたのんだ。「きょうは新しい粟の祭りで、ものいみ中です」とことわられ、つぎに筑波の岳の神をたずねると、「祭りの夜ですが、おもてなしします」。それから、福慈の岳はいつも雪で人がのぼれず、筑波の岳には人があつまって歌い、おどるようになった
  6. 十四の丘と火明命気のあらい子の火明命に手をやいた父神大汝命は、水をくみに行かせたすきに、舟でにげだした。もどってきた子はおこって風と波をおこし、父の舟はこわれた。琴の落ちたところは琴神丘、箱の落ちたところは箱丘…。『播磨国風土記』の、14の丘の名のはじまり
  7. せのびした巨人と、さかずきの父さがしほかの土地では天がひくくて、いつもかがんで歩いていた大男が、この土地に来てはじめてせのびをした。「高いなあ」。その足あとは沼になった。父のいない子が、神々にさかずきをさしだすと…。『播磨国風土記』託賀郡の話
  8. 播磨の国争い海をわたってきた天日槍命が「宿をください」とたのむと、国の主の葦原志挙乎命は「海の中なら」と答えた。天日槍命は剣で海をかきまわして宿にした。あわてた主の神は、口から飯つぶをこぼしながら国をしめに走った。黒葛を足にむすんでなげた土地占いの話も
  9. 大和三山の争いと阿菩大神大和の畝火・香山・耳梨の3つの山があらそっていると聞いて、出雲の阿菩大神はとめに出かけた。ところが播磨まで来たところで、争いはおさまったと聞き、のってきた舟をふせて、そこにすわりこんだ。『播磨国風土記』揖保郡の地名ばなし
  10. 童子女の松原と白鳥の里うたがきの集まりで出会った若い2人は、松のかげで手をとり、夜があけるのも忘れて語りあった。鶏が鳴き、人に見られるのをはじて、2人は松の木になった。『常陸国風土記』香島郡の、海辺の言いつたえ
  11. 『常陸国風土記』のふしぎな話ひと晩で杯いっぱいに大きくなった小さなヘビの子、草や木がものを言った天地のはじめに、よろいや剣をぬいで白い雲で天へ帰った神、ぬわなくても衣になる布、鏡を見ると去っていく鬼。常陸の国につたわった言いつたえ
  12. 火の国と霧の国夜空から火がひとりでにもえておりてきた山。夜の海で、だれがともしたのかわからない火の光を目あてに、天皇の舟は岸にたどりついた。「この火は、人の火ではない」。『肥前国風土記』の、国の名のはじまりと、秋に白くにごる泉
  13. 印南の別嬢と白い犬天皇が妻にむかえに来ると聞いて、別嬢はおどろき、小さな島へわたってかくれた。海にむかって長くほえる白い犬が、天皇にそのありかを知らせた。「この島に、いとしい妻がかくれていた」。『播磨国風土記』の地名の由来
  14. 出雲の2つのほら穴佐太大神が生まれた加賀の神埼の窟では、母神が金の弓矢で「暗い岩屋だこと」と射とおすと、光がかがやいた。いっぽう、宇賀の浜の窟は「黄泉の坂・黄泉の穴」。夢でそこへ行った人は、かならず死ぬといわれた
  15. 出雲国風土記の大穴持命「天の下をおつくりになった大神」とよばれる大穴持命。その神が「わたしの心ははやしい」と言った林、イノシシを追った犬と猪がそのまま石になった道、稲の種を落とした里、山の岩屋にのこる長さ7尺の琴。出雲の地名には、大神の足あとがのこる
  16. 国引き「出雲の国は、せまく小さい若い国だ。ぬいつけて大きくしよう」。八束水臣津野命は、海の向こうの岬に、あまった土地を見つけると、鋤で切りわけ、三つよりの綱をかけて、「国来、国来」と引きよせた
  17. 三重の采女の歌天皇にささげた酒の杯に、ケヤキの葉が1枚うかんでいた。いかった天皇に、伊勢の三重から来た采女は「申しあげることがございます」と、宮殿と大きなケヤキをたたえる歌をうたった。歌ひとつで命がすくわれた、『古事記』の宴の話
  18. ニニギの天孫降臨「この鏡こそ、わたしの魂として、わたしをまつるようにまつりなさい」。アマテラスの孫ニニギは、勾玉と鏡と草薙の剣をさずかり、5つの部族の神々をしたがえて、八重の雲をおしわけ、筑紫の高千穂の峰へとおりたった
  19. 仁徳天皇の鳥と氷生まれた日に産屋へとびこんだ鳥の名を、大臣の子と天皇の子でとりかえた。網にかかったふしぎな鳥は、百済で「倶知」とよばれる鳥、いまの鷹だった。山の野の「いおりのような穴」は、夏まで氷をたくわえる氷室だった。『日本書紀』巻11の3つの話
  20. 仁徳天皇の歌物語吉備へ帰る黒日売の小舟を、高殿から見おくった天皇。「山の畑の青菜も、吉備の人とつむと楽しい」。島で雁が卵をうむと、長生きの大臣に「この国で雁が子をうむのを聞いたことがあるか」と歌でたずねた。『古事記』の、歌でつづる仁徳天皇の段
  21. 論語と千字文、そして酔った天皇と逃げた石百済からワニキシが論語と千字文をもってきた。ススコリがかもした酒に酔った天皇が、杖で道の大石をうつと、石はにげだした。「かたい石でも、酔った人に会うとにげる」。吉野のクズたちの歌もいっしょに、『古事記』応神天皇の段の話
  22. オケとヲケ、かくれていた王子父をうしなって播磨へにげ、馬飼い・牛飼いとして身をかくしていた2人の少年。新築祝いの宴で「兄上から」「おまえから」と舞をゆずりあったあと、弟は名のった。「わたくしは、イチノベノオシハの王の子です」。そして、鈴をならしてよんだ置目の老媼
  23. ウヂの若郎子と位のゆずりあい「兄と弟、どちらの子がかわいいか」。父天皇の問いの心を見ぬいたオホサザキの命。父の死後、兄と弟はたがいに天下をゆずりあい、ささげものを運ぶ海人は、行ったり来たりにつかれて泣いた。「海人なれや、己が物から泣く」
  24. 歌垣の歌くらべと、御陵のかたすみ歌垣の場で、王子ヲケと貴公子シビが、ひとりの娘をめぐって歌を掛けあった。夜があけるまでつづいた歌くらべ。のちに天皇になったヲケが、父の仇の御陵をこわそうとしたとき、兄オケは、そばの土を少しだけ掘って帰ってきた
  25. 夜刀の神ヘビの体に、頭には角。谷の葦原を田にしようとすると、むれをなしてあらわれ、じゃまをした夜刀の神。麻多智は神々を山の入り口まで追いはらうと、杭を立てて言った。「ここから上は神の土地、ここから下は人の田。これからは、わたしが神主として、いつまでもおまつりします」
  26. アメノヒボコ新羅の王子がゆるした男からもらった赤い玉は、美しい娘になった。けれども、王子がおごって妻をののしると、妻は「母の国へ行きます」と小舟で海をわたり、難波の神になった。追ってきた王子は、海の神にはばまれ、但馬にとどまった
  27. 天若日子(あめのわかひこ)天からつかわされたのに、8年たっても返事をしなかった神。ようすを見に来たキジを射ると、その矢が天まで飛んで、ふたたび天から投げかえされ、朝ねていた天若日子の胸にあたった。「行ったきりのキジのお使い」のことわざのはじまり
  28. 春山の霞壮夫と秋山の下氷壮夫たくさんの神がのぞんでもかなわなかったイヅシ乙女。弟の春山の霞壮夫が、母が一晩で藤のつるから織った衣を着て出かけると、衣も弓矢もすべて藤の花になった。でも、賭けをした兄は約束をまもらなかった
  29. 一言主の大神葛城山で、雄略天皇の行列とそっくりの行列があらわれた。服も人も、問いかける言葉まで同じ。天皇が弓に矢をつがえると、むこうも矢をつがえた。「悪いことも一言、よいことも一言で言いわける神、葛城の一言主の大神だ」
  30. ホムチワケもえる稲の城の中で生まれた皇子は、ひげが胸までのびても、言葉を話さなかった。ある日、空をわたる鳥の声を聞いて、はじめて「あぎ」と声をあげた。その鳥を追って、男は国から国へ。出雲の大神をおがんだあと、皇子はついに言葉を話した
  31. ヤタガラスと神武東征熊野の山で道をうしなったカムヤマトイハレ彦(神武天皇)のもとへ、天から送られた道案内のカラス。『日本書紀』では、アマテラスが夢で「頭八咫烏を送ろう」と告げ、さらに大和の戦いでは、金色のトビが弓の先にとまって光りかがやいた
  32. 枯野(からの)という船朝日をうけると影が淡路島までとどき、夕日をうけると高安山をこえるほどの大木。その木でつくった船「枯野」は、とてもはやく走った。こわれたあとは塩を焼くたきぎになり、焼けのこった木でつくった琴は、遠くの里までひびいた
  33. コノハナサクヤヒメ天から降りたニニギが海辺で出会った「木の花の咲くや姫」。姉の石長姫を返したことで、天皇の命は花のようにはかなくなった。疑われた姫は、戸のない産屋に火をつけ、炎の中で3人の子を生んだ
  34. オホモノヌシと三輪山の糸夜ごとにやってくる名も知らないりっぱな男。父母は娘に「麻の糸を針に通して、その人の着物のすそにさしなさい」と教えた。朝になると、糸は戸のかぎ穴をぬけ、のこった糸は3巻(みわ)だけ。糸をたどると、三輪山の神の社についた
  35. サルタヒコ天から降りるニニギの道のまんなかで、天と地を照らして待っていた「道の神」。『日本書紀』では、鼻の長さ七咫、背の高さ七尺、目は大きな鏡のようにかがやく。アメノウズメに名を明かして道案内をつとめ、伊勢の五十鈴川のほとりへ帰った
  36. スクナビコナ蔓芋(つるいも)のさやの舟に乗り、ガの皮を着て波の上からやってきた、小さな神。神の指のあいだからこぼれ落ちた子で、大国主と力をあわせて国をつくり、病をいやす方法を定めた。最後は粟の茎にのぼり、はじかれて海のかなたの常世の国へ
  37. タヂマモリ天皇の命令で、海のかなたの常世の国へ「ときじくのかくの木の実」をさがしに行った男。10年かけて持ち帰ったとき、天皇はもう亡くなっていた。その木の実とは、いまのタチバナのこと
  38. タケミカヅチ火の神を斬った剣の血から生まれた、剣と雷の神。出雲の浜で剣を波にさかさに立て、その切っ先にあぐらをかいて「この国をゆずるか」と大国主にせまった。力くらべをいどんだタケミナカタの手を「若い葦のように」にぎりつぶし、諏訪まで追いつめた
  39. 仁徳天皇と民のかまど高い山から国を見わたすと、家々からごはんをたく煙がのぼっていない。「国じゅうが貧しいのだ。3年のあいだ、税と労役をすべてやめよ」。宮殿の屋根がこわれて雨がもっても、天皇はなおさせなかった
  40. トヨタマヒメ海の神の宮殿で、井戸の上の桂の木にいる山幸彦を見つけた海神の娘。3年の結婚のあと、浜辺の鵜の羽の産屋で「わたくしを見ないで」とたのんだのに、のぞかれた。姫は八丈もある鰐の姿で子を生み、海の道をふさいで帰っていった
  41. 浦島子(浦島太郎のもと)『日本書紀』では、釣りあげた大きなカメが女性になり、ともに海の蓬莱山へ。『万葉集』の長歌では、海の神の娘と常世の宮で「老いもせず死にもせず」くらしたのに、「開けないで」と言われた箱を開けると白い雲がたなびき、若い肌はしわに、黒い髪は白くなった
  42. ツクヨミアマテラス・スサノオと並ぶ「三貴子」なのに、『古事記』に出てくるのはたった2回。『日本書紀』の別伝では、口から食べものを出した神を「けがらわしい」と斬り、怒ったアマテラスと「1日1夜はなれて」住むことに——昼と夜のはじまり
  43. ヤマトタケル女の子の姿で熊襲の宴にまぎれこんだ英雄。草薙の剣と叔母の袋で野火をのりこえ、妻オトタチバナ姫は海に身を投じた。最後は「大和は国のまほろば」と歌い、白鳥になって飛んでいった
  44. アマテラス天を治める太陽の女神。弟スサノオの乱暴に、天の岩戸にこもって世界はまっ暗に。神々の「宴会作戦」と、鏡に映ったもう一人の神
  45. イザナギとイザナミ日本の島々を生んだ夫婦の神。妻を追って黄泉の国へ行き「見てはいけない」を破った夫。「1日に1,000人殺す」「なら1,500人生まれさせる」——生と死の始まり
  46. 大国主(オオクニヌシ)因幡の白兎を助けたやさしい神は、兄たちに2度殺され、スサノオの試練をのりこえて国の主に。「袋を背負った末っ子」の大逆転
  47. スサノオ泣きわめいて山を枯らした暴れん坊が、ヤマタノオロチを退治するヒーローに。アマテラスの弟、『古事記』でいちばんキャラが濃い神さま
  1. 入門成り立ちと大まかなあらすじドルイドは教えを文字に書かなかった。伝わるのは、ローマのカエサルの記録と、中世のアイルランド・ウェールズの写本。ダーナ神族の到来、銀の腕の王ヌアザ、万能の神ルー、そして神々は丘の中へ
  2. ボドヴ・デルグダグダの長男で、地下にかくれたダーナ神族の王。土地をもらえなかった人間の3人の王子が、丘の前ですわりこむと、神々は3人に妻と、水がはちみつ酒になる桶と、だれもがねむる音楽家をおくった
  3. 猟犬ブランとスコローンの誕生フィンの母の妹トゥレンは、やきもちをやいた妖精の女のドルイドの杖で、美しい猟犬に変えられた。犬ぎらいで有名な王フェルグスのもとで、その猟犬は2匹の子犬を生んだ。フィンがいちばん愛した猟犬、ブランとスコローンのはじまり
  4. カエルとクレーデ夢で見た妖精の丘の姫クレーデに求婚するには、姫の宝と館をほめたたえる詩をつくらなければならない。若者カエルは、乳母からさずかった詩をうたった。「屋根は鳥の羽でふかれ、木からリンゴが4つ、杯に落ちる」
  5. クリーナの波美しすぎて故郷にいられなくなった王子キーヴァーン。小舟で海に出た王子を、9つの波のあいだ海にもぐり、10番めの波で少しもぬれずにあらわれる騎手が、約束の地へつれていく。そこで出会った金髪の乙女クリーナと逃げた王子だが…
  6. 赤髪のコンラと妖精の女王子コンラの前に、ふしぎな服の女があらわれた。「死のない国へ、いっしょに行きましょう」。姿はコンラにしか見えず、ドルイドの呪文が女を追いはらったが、女はリンゴを1つ投げた。1か月、コンラはそれだけを食べたが、リンゴはへらなかった
  7. コルマク王と真実の杯ふれば悲しみもつかれもわすれる、赤い金のリンゴが9つなった銀の枝。それとひきかえに、王は娘と息子と妻をつれさられた。霧の中を追いかけた先は、海の神マナナーンの国。そこには、うそを3つ言うとわれ、本当のことを3つ言うともとにもどる、金の杯があった
  8. エトネと妖精の国ボイン川のほとり、アンガスの館に仕える乙女エトネは、ある日から、年をとらない妖精の食べものを口にしなくなった。川で水あびをしたあと、妖精のお守りをなくしたエトネには、仲間の姿も館も見えなくなり…
  9. フィンが白髪になったわけ灰色の子ジカを追ってスリーヴ・クリンの湖へ来たフィンは、湖に指輪を落としたという美しい乙女にたのまれて、水にもぐった。指輪をわたしたとたん、フィンは弱々しい白髪の老人になっていた。妖精の姉妹のやきもちがまねいた魔法
  10. 小人の王イウブダンアザミを一撃でなぎたおす怪力の戦士がじまんの、小人の国フェイリンの王。「わたしより強い王はいるか」とたずねると、詩人エイシルトは笑った。人間の国アルスターへ出かけた王は、かゆの大鍋に落ちてしまい…
  11. ラブラ王の秘密いつもずきんをかぶっている船乗りラブラ王。髪を切った若者は、見たことを秘密にすると太陽と風にちかったが、秘密の重さに病んでしまう。ドルイドの教えで、柳の木にささやくと…。アイルランドの「王さまの耳は馬の耳」
  12. ロイガレと喜びの野霧の中からあらわれた妖精の国の戦士に助けをもとめられ、王子ロイガレは50人の仲間と湖の中へ。1年後、ふるさとにもどったロイガレは、馬からおりずに言った。「あちらでは、雨のかわりにビールがふる。王国のすべてをもらっても、妖精の国のひと晩とはかえない」
  13. マナウィダンとネズミ雷と霧のあと、ダヴェドの国から人も家畜も消えた。3つの麦畑は、夜のうちに無数のネズミに刈りとられる。つかまえた1ぴきのネズミを、どんなに大金をつまれても手ばなさないマナウィダン。そのネズミの正体は…
  14. オシーンの誕生狩りで追った子ジカは、魔法でシカに変えられた乙女サバだった。フィンの妻となったサバは、ある日、フィンの姿をしたまぼろしにさそわれ、ふたたびシカに。7年後、ベン・グルバンの木の下で、フィンは長い髪の少年を見つける
  15. タイグの航海さらわれた妻と弟たちをさがしに、牛の皮40枚の小舟で海へ出たタイグ。馬ほど大きなヒツジの島、卵を食べると羽が生える鳥の島。たどりついた「世界で4つめの楽園」には、コンラとクリーナがいた
  16. アンガス(オーグ)ダグザの息子で、銀の竪琴を持つ美しい若い神。キスが4羽の鳥になって若者たちのまわりで「おいで」「行くよ」と鳴く。「1日と1夜」のとんちで父の館を手に入れ、育てた英雄ディアルミドの死には、魂を入れて毎日話そうと誓った
  17. ブロダイウェズ魔法使いたちが、オークの花、エニシダの花、メドウスイートの花からつくった女性。英雄スェウの妻になったが、べつの男と心をかよわせ、夫の「ふしぎな死に方」を聞きだした。さいごはフクロウに変えられ、昼の光に顔を見せられなくなった
  18. リルの子らまま母のドルイドの杖で、4羽の白い白鳥にかえられた王の子どもたち。言葉と、人をねむらせる美しい歌声だけはのこされ、湖で300年、荒れた海で300年、西の海で300年。姉フィオヌーラは、嵐の夜に弟たちを翼の下に入れた
  19. クー・フリン7歳で鍛冶屋クランの番犬をたおし、「わたしが代わりに番犬になる」と言って「クランの犬」と名づけられた少年。「この日に武具をとる者は名高くなるが、命は短い」と聞くと、「名高くなれるなら、この世に1日しかいなくてもかまわない」と答えた
  20. ディアルミド「青春」とよばれる娘に、見た女性がみな恋をする「愛のほくろ」をつけられたフィアナの騎士。フィンの花嫁グラーニャのたのみをことわれずにかけおちし、長い逃避行のすえ、ベン・ガルバンのイノシシにたおれた。フィンの両手の水は、3度目にようやくとどいた
  21. エーディン妖精の王ミディルの妻エーディンは、もうひとりの妻のねたみで蝶に変えられ、風にとばされて7年、さらに7年。人間の女性のさかずきに落ちて、1012年ぶりに人間の娘として生まれなおした。やがて王妃になった彼女を、ミディルはチェスの賭けでとりもどし、2羽の白鳥になって飛びさった
  22. フィン・マックール父を殺され、森でかくれて育ったフィアナ騎士団の長。知恵のサケを焼いていて、やけどした親指を口に入れたとき、すべての知恵を得た。毎年サウィンの夜にタラを焼く妖精の竪琴を、魔法の槍の力で目をさましたまま見はった
  23. スリッズとスレヴェリス風にのった言葉をすべて聞きとる一族、5月の前夜にひびくおそろしいさけび声、一晩で王の食べものをすべて消してしまう魔術師。ブリテン島をおそった3つのわざわいを、王スリッズは、海のむこうの賢い弟スレヴェリスの知恵でとりのぞいた
  24. マクセン皇帝の夢狩りのとちゅうでねむったローマ皇帝は、夢の中で山をこえ、海をわたり、金の広間で、太陽のようにまぶしい乙女に出会った。目がさめると、乙女のことで頭がいっぱい。使者たちが夢の道すじをたどると、そこはブリテン島だった
  25. マナナーン海の神「リルの子」。負けたダーナ神族のために、人には見えない壁で丘をかくした魔法の名人。「あなたには澄んだ海でも、わたしの車からは花の野原」と歌い、英雄ブランを「女たちの国」へみちびいた
  26. モリガン「大女王」「戦いのカラス」とよばれる、アイルランドの戦いの女神。霧と火の雨で敵をまどわせ、勝ちいくさのあとには「天まで平和を、天は地へ、地は天の下に」と勝利を告げた。英雄クー・フリンには「影の足もとで寝ているようでは、英雄になれない」とはっぱをかけた
  27. 常若の国のオシーン白い馬に乗った金髪の王女ニアヴにさそわれ、海のかなたの「常若(とこわか)の国」へわたった詩人オシーン。ふるさとをひと目見たくて帰ってきたが、「馬からおりてはいけない」という約束をやぶったとたん、300年の時が体におそいかかった
  28. リアンノンどんなにはやい馬で追っても、ゆっくり進む白い馬の女性には追いつけない。王プウィスが「止まってください」とたのむと、「もっと早くそう言えば、馬もつかれずにすんだのに」。のちに、いわれのない罪を着せられ、7年のつぐないにたえた王妃
  29. ダグザ「すべての知恵の赤い人」とよばれるダーナ神族の神。王ブレスのもとでは、とりでづくりの土木作業。報酬に選んだのは、たった1頭の黒い若牛。でもその1頭が、うばわれたアイルランドじゅうの牛を取りもどした
  30. ルー大工・かじ屋・戦士・竪琴ひき・詩人・医者……「ぜんぶ1人でできる者はいるか」で王の宮殿に入った「すべての技の達人」。母方の祖父は邪眼の巨人バロル。父のかたきには、世界の果ての宝を「つぐない」に求めた
  1. 入門成り立ちと大まかなあらすじはじめは、なにもない水「ヌン」だけ。太陽の神が自分で生まれ、その涙から人間が生まれた。年をとったラーへの反乱と、ビールで止めた女神ハトホル。オシリス・イシス・セト・ホルスの物語へ
  2. アメン・ラー名前は「かくれた者」。テーベの神アメンは、太陽神ラーとむすびついて「神々の王」となった。「しいたげられた者のさけびを聞き、弱い者を乱暴な者から助け、穴の中のネズミにも食べものをあたえる」
  3. アニのパピルスのラー賛歌「のぼるときはラー、しずむときはテム」。母なる天空の女神ヌトの背の上にのぼり、休まない星々の歌にむかえられて、舟で天をわたる太陽。書記アニは「毎日、わたしのからだに、あなたの光をそそいでください」といのった
  4. 死者の書の変身の章「わたしはツバメ、わたしはツバメ」「わたしは、ラーの鼻からわきでる清らかなハスの花」「わたしは毎日死に、毎日生まれ、若がえるヘビ」。古代エジプトの人は、死後、金のハヤブサやハスやツバメに姿をかえて、昼の世界へ出ていけるとねがった
  5. 運命の王子生まれた王子に、ハトホルの女神たちは告げた。「この子の死は、ワニか、ヘビか、犬によるだろう」。砂漠の家で育った王子は、「運命が3つあるなら、思うように生きさせてほしい」と旅に出る。70の窓の塔、愛犬、そしてワニ…物語は、パピルスがとぎれたところで終わっている
  6. アンテフ王の竪琴弾きの歌「むかしの神々も墓にねむり、家をたてた人々の城壁もくずれた。あちらから帰って、話を聞かせてくれる者はいない。だから生きているうちに、心のねがいをかなえなさい」。墓の竪琴弾きの前に書かれていたという、古代エジプトの歌
  7. イシスとネフティスのなげきの歌「家にお帰りなさい、家にお帰りなさい。あなたが見えなくて、わたしの心は泣いている」。オシリスの祭りの日、イシスとネフティスにふんした2人の女性が、かわるがわる歌った、よみがえりをねがう歌
  8. 死者の書の「42の告白」「わたしは、だれも泣かせていません」「子どもの口からミルクをうばっていません」「はかりの目もりをごまかしていません」。真理の広間で、死者は42の神々ひとりひとりに、自分が悪いことをしていないと告げた
  9. ナイル讃歌「ようこそ、ナイルよ。おだやかにやってきて、エジプトに命をあたえる者よ」。毎年の洪水で畑をうるおし、麦をそだて、貧しい人にも心をくばる。けれども、その姿は石にきざまれず、神殿もなく、すみかも知られていない。古代エジプトの人々がナイルにささげた歌
  10. 天の女神ヌトとピラミッド・テキスト「大地はすべて、あなたの下にある。あなたは大地をだきかかえ、すべてはあなたの両手の中」。ピラミッドの壁にきざまれた最古の宗教文書で、王は星となり、ガチョウのように羽ばたき、はしごをのぼって天へ行く
  11. プタハヘテプとアニの教え「知識があるからといって、えらぶるな。学のない人とも話しなさい」「人の心は穀物倉。よい答えをえらんで口にし、悪い答えはしまっておけ」。古代エジプトの役人たちが若者にのこした、生きかたの教え
  12. 葦の野(セケト・アアル)審判で「ことばの正しい者」とみとめられたたましいは、オシリスの国の農園にむかえられる。運河がはしるたいらな野で、麦を刈り、牛をひいて畑をたがやす。麦の背の高さは3キュビット。たましいを乗せて、ひとりでに進む舟もある
  13. シュウ太陽神ラーの「肉であり骨」である長男。母をもたず、自分で生まれた。天を高くおしひろげ、自分の手でささえる神。頭の上には女神テフヌトがすわり、敵にむかって炎をはなつ
  14. 湖の水を2つにかさねた魔術師退屈したスネフェル王のために、宮殿の湖で舟あそび。ところが、舟をこぐ娘のマラカイトの飾りが水に落ちた。「かわりをあげよう」「いいえ、わたしのがほしいのです」。よばれた朗読神官ジャジャエムアンクが呪文をとなえると、湖の水は半分がもう半分の上にかさなった
  15. アヌビスイヌ(ジャッカル)の姿の、死者を守る神。『死者の書』の審判の場面では、死者の心臓と真理の羽根をのせた天秤の針を見守る。プルタルコスは、ネフティスの子で、イシスがイヌたちの助けで見つけて育てた、と伝えている
  16. バステトネコの頭の女神と、ブバスティスの町。ヘロドトスによると、エジプトでいちばんにぎやかな祭りはこの女神の祭りで、70万人が集まり、1年分よりも多くのぶどう酒が飲まれた。家のネコが亡くなると、人びとはまゆ毛をそってなげいた
  17. 雄弁な農夫ロバに塩や薬草をつんで旅していた農夫は、道に布をしいたずるい男に、ロバも荷もうばわれた。農夫は役人のもとへうったえに行き、9回もたのみつづけた。その言葉があまりに美しいので、王は「返事をせずに、もっと話させよ。そのあいだ、家族の食べものはこっそり送れ」と命じた
  18. ハトホル牛の耳をもつ女神。ラーの目として人間をほろぼしかけ、ビールでよって止まった女神。そして古代エジプトの物語では、生まれた子のもとにあらわれて「この子の死は、ワニか、ヘビか、犬によって」と運命を告げる「ハトホルたち」
  19. ホルスハヤブサの神。沼地でかくれて育ち、あの世から来た父オシリスにきたえられて、おじのセトと戦った「父のかたきをうつ子」。エドフの神殿の伝説では、翼のある太陽の円盤になって空にのぼり、太陽神ラーの敵をうった
  20. イシス「ことばの力の女主人」とよばれた魔法の女神。夫オシリスをさがしてエジプトじゅうを歩き、7匹のサソリをつれて沼地にかくれ、わが子ホルスが毒にたおれると、その声で太陽の舟まで止めた
  21. クヌムヒツジの頭の、ナイル川の源をあずかる神。「わたしの手が、おまえの体をあみあわせ、心臓をあたえた」。7年もナイルの水があふれず、ききんに苦しむ王ジェセルの夢にあらわれ、毎年かならず川をあふれさせると約束した
  22. コンステーベでまつられた神。遠い国ベクテンの王女が悪霊にとりつかれると、王ラメセス2世は神像に「行ってくれ」とたのみ、像は2度うなずいた。17か月の旅のすえ、王女はたちまちいやされたが、のちに国王の夢の中で、神は金のタカになってエジプトへ飛びさった
  23. セト母のわき腹をやぶって生まれた、オシリスの弟。兄をぴったりの箱でだまし、ホルスと何日も戦った。ギリシャ人はテュポンとよび、赤い髪でロバに似た神、ナイルをのみこむ「海」、あるいは「かわき」とたとえた
  24. 難破した水夫嵐で船がしずみ、ただひとり流れついた島。雷のような音とともにあらわれたのは、金の体に青い石の色をした、長さ30キュビトの大きなヘビ。「こわがるな、小さき者よ。4か月たてば、ふるさとの船が来る」
  25. トトトキ(アイビス)の姿の知恵の神。年をとった太陽神ラーに「わたしの代わりになれ」と言われ、トキとヒヒと月がその名から生まれた。毒にたおれた子どもホルスを助け、悪口を言うセトには「くさい顔」とあだ名をつけた
  26. 魔術師デディと3人の王の誕生110歳の魔術師デディは、クフ王の前で、首を切られたガチョウをもとどおりにしてみせた。「人ではためさないでください」。そして予言した。「ラーの神官の妻が、のちに王となる3人の子を生みます」。女神たちは踊り子の姿で、そのお産を助けにいった
  27. ラー「朝はケペラ、昼はラー、夕べはトゥム」——自分で生まれ、目をひらけば光、とじれば闇の太陽の神。でも年をとって、女神イシスに「秘密の名前」を明かすはめに。毒ヘビ1匹で、神々の王がふるえた
  28. オシリス人びとに作物の育て方と法律を教えた王は、弟セトの「ぴったりの箱」にとじこめられた。妻イシスは子どもたちにまで聞いてまわり、遠いビブロスの柱の中から箱を見つけ出す。そして子ホルスとセトの戦いへ
  1. 入門成り立ちと大まかなあらすじ最古の聖典『リグ・ヴェーダ』は「この世界がどこから来たのか、神々は世界より後に生まれた。天の最高の見張り手なら知っているだろう——あるいは、知らないかもしれない」。神々と魔族の「乳海かくはん」、2つの大叙事詩へ
  2. アシュヴィン双神矢のようにはやい車に乗って、こまった人を助けにかけつけるふたごの神。海にとりのこされた若者を、百のオールの船で家へ送りとどけ、いくさで足をうしなった女性には鉄の足を、目の見えなくなった若者には目をあたえた
  3. アースティーカとヘビの供養父のかたきのヘビの王タクシャカをうつため、ジャナメージャヤ王はヘビたちを火によびよせる大供養をはじめた。ヘビの一族をすくったのは、母がヘビの王の妹である少年アースティーカ。少年がのぞんだほうびは「この供養を、やめてください」
  4. バラタ王と子ジカ王位も家族もすてて修行していた王バラタは、川で助けた子ジカをかわいがるうちに、子ジカのことしか考えられなくなった。シカに生まれかわり、さらにバラモンに生まれかわったバラタは、こしをかつぐ人足として、王に「わたしとは何か」を語る
  5. ビーシュマの誓い父王が、ふさぎこんでいるわけを知った王子デーヴァヴラタは、漁師の長のもとへ行き、誓った。「この娘から生まれる子を王にしよう。わたしは王位をすて、生涯、妻も子ももたない」。天から花がふり、神々はさけんだ。「この者はビーシュマ(おそるべき者)だ!」
  6. ダウミヤの3人の弟子水路のこわれ目に自分のからだでふたをしたアールニ。食べるものをすべてとめられ、目が見えなくなっても、アシュヴィン双神のお菓子を「先生より先には食べられない」とことわったウパマニュ。だまって師につかえつづけたヴェーダ。3人がうけた「試験」
  7. ドローナの弓の試験木の上に、つくりものの鳥。「何が見える?」と師ドローナがたずねると、王子たちはみな「木と、先生と、兄弟と、鳥が見えます」と答えた。ただひとりアルジュナだけが言った。「鳥しか見えません。いいえ、鳥の頭だけが見えます」
  8. カクドミ王とレーヴァティー娘のむこを相談しに、ブラフマーの世界へのぼった王。ガンダルヴァの歌がおわるのを待つあいだは、ほんのひとときに思えた。ところがブラフマーは言った。「あなたが歌を聞いているうちに、地上では何時代もすぎた。あなたの知る人々は、もうだれものこっていない」
  9. プラフラーダ三界をしたがえた魔王ヒラニヤカシプの子プラフラーダは、父の前でもヴィシュヌをたたえることをやめなかった。武器も、ヘビも、象の牙も、炎も、少年をきずつけられない。ついにヴィシュヌがあらわれ、願いを問うと、少年はこう言った。「父の罪を、ゆるしてください」
  10. プリトゥ王と大地の牛人々が飢えにくるしむと、王プリトゥは弓をとって大地にせまった。大地は牛のすがたでにげまわったが、とうとう言った。「わたしがのみこんだ草木を、乳にしてお返しします。子牛をあてがってください」。王は山々をどけて土地をたいらにし、大地の乳をしぼった
  11. 『リグ・ヴェーダ』のさいころの歌「やめようと決めても、さいころが盤の上で鳴ると、わたしはまた出かけていく」。賭けごとですべてをうしなった男のなげきに、サヴィタル神は言った。「さいころで遊ぶな。畑をたがやせ」
  12. 『リグ・ヴェーダ』のほどこしの歌「神々は、うえを、わたしたちの死とさだめたのではない」「富は、車の輪のように、今日はこの人、明日はあの人へとめぐる」「ひとりで食べる者は、罪だけを食べる」。最古の聖典が説いた、わかちあいの大切さ
  13. ルルとプラマドヴァラー結婚式の数日前、花嫁プラマドヴァラーはヘビにかまれて息をひきとった。森でなげく若者ルルに、天の使いは言った。「おまえの命の半分を、花嫁にゆずるなら」。ルルは、よろこんで自分の命の半分をさしだした
  14. 太陽の妻サンジュニャーと影のチャーヤー夫である太陽の熱にたえられなかったサンジュニャーは、自分のかわりに「影(チャーヤー)」をのこして森へ去った。やがて正体がわかり、太陽は牝馬の姿の妻をむかえにいく。工匠ヴィシュヴァカルマンは太陽の光をけずり、そのかけらから神々の武器をつくった
  15. サラマーとパニたちインドラの使いの犬サラマーは、遠いラサーの川をわたり、盗まれた牛をかくす岩のとりでにたどりついた。「牛をわけてやろう、わたしたちの妹になれ」とさそうパニたちに、サラマーは言った。「きょうだいなど知らない。遠くへ去れ!」
  16. カーンダヴァの森の4羽のひな森をのみこむ大火事がせまる。まだ羽も生えないひなたちは、母鳥に言った。「お母さん、わたしたちをおいて、にげてください」。のこされた4羽は、火の神アグニにうたをささげた。「どうか、べつの道を通ってください」
  17. 太陽の娘タパティー山で出会った乙女に心をうばわれた王サンヴァラナ。乙女は「わたしは太陽の娘。父にたのんでください」と言って空へのぼった。王は12日のあいだ太陽をおがみつづけ、聖仙ヴァシシュタが太陽のもとへ行って、乙女をもらいうけてきた
  18. トリシャンク王の天「生きたまま、からだごと天へ行きたい」。師にことわられ、のろいで姿まで変えられた王を、仙人ヴィシュヴァーミトラは自分の力で天へおしあげた。神々の王インドラにつきおとされた王を、仙人は「とまれ!」と空中にとどめ、南の空に新しい星々をつくった
  19. ウシャス天の娘、暁の女神。百の車に乗って人々のもとへやってきて、足のある生きものをすべて目ざめさせ、鳥たちを空へ飛びたたせる。身分の高い人も低い人もわけへだてなく照らし、きのうの暁のあとに、きょうの暁がつづいていく
  20. ウッタンカと王妃の耳かざり師の妻へのお礼に、王妃の耳かざりをもらいに行った弟子ウッタンカ。ヘビの王タクシャカにうばわれた耳かざりを追って、地下のヘビの国へ。そこでは、2人の女が黒と白の糸で布を織り、6人の少年が12本の輻(や)の車輪をまわしていた
  21. ことばの女神ヴァーチュ「わたしは女王。宝をあつめる者」「わたしによって、すべての者は食べものを食べる。見て、息をし、語られることばを聞く者はみな」「わたしは風のように強く息をし、すべての存在をひとつにたばねる」。『リグ・ヴェーダ』で、ことばそのものが歌う歌
  22. ヤージュニャヴァルキヤとヤマウズラのヴェーダ師にしかられた弟子ヤージュニャヴァルキヤは、学んだヤジュル・ヴェーダの文句をすべて吐きだして去った。ほかの弟子たちはヤマウズラになって、それをついばんだ。いっぽう弟子は太陽をたたえ、馬の姿の太陽から、師も知らない文句をさずかった
  23. ヤヤーティ王と息子の若さのろいで急に年老いた王ヤヤーティは、5人の息子にたのんだ。「だれか、わたしの老いをひきうけて、若さをわけてくれ」。兄たちはことわり、末っ子のプールだけがひきうけた。千年のあいだ若さをたのしんだ王は、ある真理に気づいた
  24. アグニ最古の聖典『リグ・ヴェーダ』の1番目の歌にうたわれる火の神。「わたしはアグニをたたえる、えらばれた祭官を」。2本の火きり棒の中に、はらまれた子のようにねむり、人がこすりあわせると「赤い馬のように」生まれ出る。神々と人間をむすぶ使者
  25. ドゥルヴァ父のひざに乗ろうとして、継母に「あなたにはその資格がない」と言われた5歳ほどの王子。「人からもらうものはいらない。父も手にしたことのない場所を、自分の力で手に入れる」。修行のすえ、ドゥルヴァは星々をささえる場所、北極星になった
  26. ガネーシャゾウの頭をもつ、障害をとりのぞく神。『マハーバーラタ』のはじめでは、聖仙ヴィヤーサの書記になり、「わたしのペンが一瞬も止まらないなら」と条件をつけた。ヴィヤーサは、ガネーシャがつい考えこむ、むずかしい詩句をまぜて時間をかせいだ
  27. ガンガーの降下天をながれる聖なる川ガンガーを、地上へおろしたい。王バギーラタの長い修行に、ブラフマーは言った。「天からの激流に、大地はたえられない。シヴァにうけとめてもらえ」。シヴァは頭で川をうけとめ、ガンガーはその髪の中を長いあいださまよった
  28. ハヌマーン風の神の子のサルの勇者。赤ん坊のころ、のぼる太陽を果物と思って300ヨージャナもとびあがり、インドラの雷で「あご」をくだかれた。大人になると体を山のように大きくして大海をとびこえ、さらわれたシーターに、夫ラーマの指輪をとどけた
  29. クリシュナとゴーヴァルダナ山「ぼくたち牛飼いの神は、牛と山だ」。少年クリシュナのすすめで、村人はインドラへのまつりをやめた。おこったインドラは7日7晩の大雨をふらせたが、クリシュナは山を片手でかさのようにもちあげ、村人と牛たちをまもった
  30. マヌと魚手を洗っていたマヌの手に、小さな魚が入ってきた。「わたしを育てて。そうすれば、あなたを大洪水から救う」。魚はつぼから池へ、池から海へ。やがて大洪水が来ると、角のある大魚が、マヌの船を北の山までひいていった
  31. ナラとダマヤンティー金の翼の白鳥が、会ったこともないふたりの恋をはこんだ。婿えらびの場には、ナラとそっくりの姿の神々が4人。王女は、汗をかかず、まばたきせず、足が地につかない神々の中から、汗とほこりにまみれた本物のナラを見わけた
  32. ラーマ神々も魔物もひけなかった弓を、たわむれるように引いて、まっぷたつに折った王子。けれども継母のねがいで、14年の森ぐらしへ。弟バラタは、兄のサンダルを王座において国をあずかり、14年後、そのサンダルを兄の足にかえした
  33. サーヴィトリー「この人は1年以内に死ぬ」と知りながら、王女サーヴィトリーはサティヤヴァットを夫にえらんだ。その日、夫の命をつれさる死の神ヤマのあとを、彼女はどこまでも歩いてついていき、言葉をつくして、ついに夫の命をとりもどした
  34. シヴァ世界をこわす毒をひとりで飲みほし、のどが青くなった「青いのどの神」。修行する英雄アルジュナの前には狩人の姿であらわれ、矢をすべて受けとめ、剣を頭でへし折り、組みうちで気をうしなわせた。そして「おまえの勇気は、わたしにほぼひとしい」
  35. シーター畑をたがやすすきの下から、大地より生まれた赤ちゃん。「すき跡(シーター)」と名づけられた王女は、王子ラーマの妻となった。夫が森へ追放されると決まったとき、シーターは言った。「いばらの道も、わたしの足があなたより先にふみわけます」
  36. ヴァーマナ3つの世界を手に入れた魔族の王バリ。どんなたのみもことわらない王のもとに、小人のすがたの神がやってきた。「3歩ぶんの土地をください」。ねがいがかなうと、小人はみるみる大きくなり、1歩で大地を、2歩で空を、3歩目で天をこえた
  37. ユディシュティラとヤクシャの問答湖の水を飲んだ弟たちは、つぎつぎにたおれた。「わたしの問いに答えずに飲めば、おまえも5人目のなきがらになる」。「風よりはやいものは?」「心です」。「いちばんのもうけは?」「健康です」。そして最後に、王は弟をひとりだけ生きかえらせる問いに答えた
  38. ヤマ人間ではじめて死に、死んだ人たちのすむところへの道を見つけた「死者の王」。4つの目の2匹の犬が道を見はる。少年ナチケータスが「人は死んだらどうなるのか」とたずねると、富も長寿もさしだして、その問いだけはさけようとした
  39. インドの神さまインドラ最古の聖典『リグ・ヴェーダ』の英雄。雷のつえで竜ヴリトラを倒し、とじこめられていた水を解きはなって「7つの川」を流した。注釈者は「雨がふるしくみのたとえ」と読んだ
  40. インドの神さまヴィシュヌ『リグ・ヴェーダ』では「3歩で世界をはかった」大またの神。『バガヴァッド・ギーター』では、正しさがおとろえるたびに、すがたをとって生まれてくると語られる
  1. 入門成り立ちと大まかなあらすじまとまった神話の本はなく、話は古い本のあちこちに。たまごのような混沌から生まれた盤古は1日に1丈ずつのび、死んで体が山や川に。女媧は5色の石で天の穴をふさぎ、羿は10の太陽を射た
  2. 北斗と南斗の碁「この若者は長く生きられない」と占い師に言われた顔超。教えられたとおり、桑の木の下で碁をうつふたりに、だまって酒と干し肉をすすめた。ふたりは夢中で飲み食いし、命の帳面の「19歳」を「90歳」に書きかえた
  3. 『山海経』海の外のふしぎな国々体に羽が生えた人の国、胸に穴があいた人の国、頭が3つの人の国、すわったまま船をけずる大きな人の国、2頭のトラをそばにおいて、ゆずりあってあらそわない「君子の国」…
  4. 黄帝と華胥の国の夢天下をおさめようとがんばりすぎて、顔色も心もつかれはてた黄帝。昼寝の夢で行ったのは、王もおさもいない、水に入ってもおぼれず、火に入ってもあつくない人々の国だった。もうひとつの理想郷、列姑射山の神人も
  5. 紀昌と造父、名人の修業「まず、まばたきをしないことを学べ」。はたおりの機の下にねころんで2年、毛につるしたシラミをながめて3年、シラミは車輪ほどに大きく見えた。御者の名人造父は、足のはばだけの杭の上を走る修業から、六頭の馬を心で動かすわざをえた
  6. 『荊楚歳時記』の秋と冬7月15日の盆の供えもの、8月の朝つゆで目を洗う袋、9月9日に山へのぼって菊の酒を飲むわけ、冬至のアズキのかゆと疫病の鬼、12月8日に太鼓を鳴らして疫病をおいはらう村の人々。6世紀の中国、荊楚の地方の年中行事と、その言いつたえ
  7. 『荊楚歳時記』の寒食と端午冬至から105日め、3日のあいだ火をつかわない「寒食」は、火の中でなくなった介子推をいたむため。5月5日の舟の競争は、汨羅にしずんだ屈原をすくいに行くため。古代中国の南の国の、春と初夏の行事と言いつたえ
  8. 『荊楚歳時記』のお正月元日の朝、庭で竹をもやしてパチパチ鳴らすのは、一本足の山の鬼「山臊」を追いはらうため。門には桃の木の板と、2人の門神「神荼・鬱塁」。1日はニワトリ、2日は犬…7日は人の日。古代中国の南の国のお正月と、その由来の話
  9. 『楚辞』九歌の神々鬼神をうやまう南の楚の国で、神をまつる歌と舞から生まれた「九歌」。天の神東皇太一、竜に乗る雲の神、人の命の長い短いをにぎる大司命と少司命、扶桑をてらしてのぼる東君。「悲しみは生き別れより悲しきはなく、楽しみは新しく知りあうより楽しきはなし」
  10. 『列子』の動物の話「朝に3つ、夕方に4つでどうだ」とおこったサルたちは、「朝4つ、夕方3つ」でよろこんだ。カモメとなかよしの若者は、「1羽つかまえてこい」と言われた次の日、1羽もおりてこなくなった。木でつくったようなニワトリこそ、いちばん強い
  11. 『列子』の夢とうつつ昼は召使い、夜は毎晩王さまになる夢を見る老人は言った。「人生100年、昼と夜は半分ずつ。何をうらむことがあろう」。かくしたシカを夢だと思った木こり、50日に1度しか目をさまさない国の人々…夢と現実は、どちらがほんとう?
  12. 『列子』説符篇の寓話馬の色もオスかメスかもまちがえたのに、天下の名馬を見ぬいた九方皋。分かれ道が多すぎて、にげたヒツジを見うしなった「歧路亡羊」。服の色がかわって、飼い犬にほえられた楊布。斧をなくして、となりの子がどろぼうに見えた人
  13. 『列子』湯問篇の大きいもの・小さいもの「朝の太陽は大きいから近い」「昼の太陽は熱いから近い」。2人の子どもに答えられなかった孔子。蚊のまつげに群れてすむ虫、8000年を春とする木、まゆ1本の糸で車いっぱいの魚をつりあげる釣りの名人
  14. 杞の国の人の心配「天がくずれて、地がこわれたら、身のおき場所がない」。心配でねむれず食事ものどを通らない人に、友は言った。「天は気がつもったもの。日も月も星も、光る気だよ」。ふたりはすっきりしてよろこんだ。でも、それを聞いた学者は笑った
  15. 馬と娘と蚕のはじまり「お父さんをつれて帰ってくれたら、お嫁さんになってあげる」。冗談のつもりの娘のことばに、馬は手綱をきってかけだした。やがて、馬の皮が娘をつつんで消え、数日後、大きな木の枝で、娘と馬の皮は蚕になっていた
  16. 捜神記の千日酒と孔子の大魚1杯飲めば1000日ねむる酒を飲んだ男は、死んだと思われて葬られた。3年後に墓をあけると「ああ、いい気持ちに酔った!」。いっぽう、旅の孔子の宿にあらわれた大男の正体は、大きな魚だった。「ものは年をとると、ばけるのだ」
  17. 捜神記の変身の話水辺にすてられた卵を、犬がくわえて帰ると、男の子が生まれて徐の国の君になった。その犬は死ぬまぎわ、角と9本の尾をはやし、黄色い竜になった。山にかくれた夫婦は2羽の鶴に、湯あみをしていた母はスッポンに…
  18. 羲和と常羲10の太陽を生み、甘淵の水で太陽を洗う母・羲和。12の月を生み、月を洗う母・常羲。ふたりは天帝・帝俊の妻だった。太陽は1つが帰ると1つが出て、どれもカラスに乗って空をわたる
  19. 終北の国洪水をおさめていた禹が道にまよってたどりついた、北の海のさらに北の国。山の頂の穴から、ランや山椒よりかぐわしい泉「神瀵」がわきでて、人々はあらそわず、王もいらず、1日じゅう歌っていた。周の穆王は3年も帰るのをわすれた
  20. 紫玉と韓重呉王夫差のむすめ紫玉は、若者韓重と結婚をちかったが、王にゆるされず、悲しみのあまりなくなった。3年後、墓の前で泣く韓重の前に、紫玉のたましいがあらわれて歌った。「南の山にカラスがいて、北の山にあみをはる。カラスが高くとびさったら、あみはどうしよう」
  21. 牽牛と織女(七夕)天の川をはさんで光る2つの星。中国でいちばん古い歌集のひとつ『詩経』では、織女星は一日じゅう機を織っても布を織りあげられない。漢の古い詩では「水ひとすじをへだてて、見つめあうだけで話せない」。そして7月7日の夜、2人は年に一度めぐりあう
  22. 董永と天女父のとむらいのために、自分の身を売った貧しい若者・董永。約束どおりはたらきに行くとちゅう、ひとりの女性が「あなたの妻にしてください」と言った。10日で絹を100反織りあげた妻は、門を出るとき言った。「わたしは天の織女。あなたの孝行の心に、天帝がわたしをつかわしたのです」
  23. 羽衣の娘田んぼにいた6〜7人の娘は、みな羽の衣を着た鳥だった。男がその1枚をかくすと、1人だけ飛べなくなり、男の妻になった。やがて生まれた娘たちから、衣が稲の山の下にあると聞いた母は、衣を着て飛びさり、のちに娘たちもむかえにきた
  24. 五つの神山と巨大なカメ渤海のはるか東、底なしの谷「帰墟(きょ)」にうかぶ5つの山。金と玉の宮殿、食べれば年をとらない木の実、仙人たちの住まい。でも、山は波にゆられて流されてしまう。天帝は15匹の巨大なカメに、頭で山をささえさせた
  25. 伏羲と神農ヘビの体と人の頭をもち、天と地を見て八卦をえがき、網を作って狩りと漁を教えた伏羲。人の体に牛の頭をもち、すきとくわを作って農業を教え、赤いむちで草木を打って百草をなめ、薬のはじまりをひらいた神農
  26. 黄帝と蚩尤『史記』の最初に登場する帝王・黄帝と、戦いをおこした蚩尤。蚩尤が風の神と雨の神をよんで大あらしをおこすと、黄帝は天から日照りの女神「魃」をおろして雨を止めた。魃は天に帰れなくなり、いる所には雨がふらなくなった
  27. 精衛と夸父東の海でおぼれた炎帝の娘は、鳥「精衛」になって、西の山の木や石をくわえては海をうめつづける。太陽と追いかけっこをした巨人・夸父は、黄河と渭水を飲みほしてもかわきがおさまらず、たおれたあとに杖が林になった
  28. 李寄、大蛇を斬る毎年、少女をいけにえに求める長さ7〜8丈の大蛇。すでに9人の少女が食べられていた。両親がとめるのもきかず、名のりでた少女・李寄は、剣と蛇をかむ犬をつれ、蜜をかけた米のだんごで大蛇をおびきだした
  29. 列子の歌と琴の名人師の歌声は林の木々をふるわせ、流れる雲をとめた。韓娥(かんが)の歌は、去ったあとも3日のあいだ梁(はり)のまわりにのこった。伯牙が山を思って琴をひけば、鍾子期は「泰山のようだ」と言いあてた
  30. 宋定伯、鬼(き)をとらえる夜道で幽霊に出会った若者・宋定伯は、「わたしも幽霊だ」とうそをついて、いっしょに旅をした。「新しく死んだので、体が重いのです」「幽霊のきらいなものは?」「人のつばだけ」。そして町につくと、幽霊はヒツジに化け、定伯はそれを売ってしまった
  31. 捜神記の動物の恩返しけがをした黄色いスズメを100日あまり世話した少年に、夜、黄色い服の子どもがあらわれた。「わたしは西王母の使いです」。大蛇がくわえてきた夜に光る珠、川でおぼれかけたアリの王、お産を手伝ってもらったトラ…『捜神記』にのこる5つの恩返し
  32. 捜神記の仙人たち風雨とともに空をのぼりおりする雨の神・赤松子。松の実ばかり食べて、体に毛が生え、目が四角くなった偓佺(あくせん)。木のヒツジに乗って山へ消えた葛由。赤いコイに乗って水から出てきた琴高。くつがカモになって飛んできた王喬…『捜神記』第1巻の6人の仙人
  33. 西王母(せいおうぼ)『山海経』では「ヒョウの尾にトラの歯、うそぶく声」の崑崙山のぬし。3羽の青い鳥に食べものを運ばせ、瑤池のほとりでは周の穆王と歌をかわし、羿には不死の薬をあたえた
  34. 偃師(えんし)のからくり人形周の穆王の前で、歌い、踊り、まばたきまでした「人」。王がおこると、職人の偃師はそれを分解してみせた。中身は、革と木と膠と漆。心をはずすと話せず、肝をはずすと見えず、腎をはずすと歩けなかった
  35. 羿(げい)と嫦娥10の太陽がいっせいにのぼって作物がこげた日、弓の名人の羿は9つを射おとし、太陽の中のカラスの羽が散った。でも、西王母からもらった不死の薬は、妻の姮娥(嫦娥)が飲んで月へ
  36. 禹天までとどく大洪水をおさめた、夏の王。父の鯀は9年かけても水をしずめられず、罰を受けた。禹は13年のあいだ家をはなれてはたらき、自分の家の門の前を通っても入らなかった。『山海経』では、鯀が天帝の「ふえつづける土」をぬすんで洪水をふさごうとした
  37. 愚公、山を移す家の前の大きな山が通るのにじゃまで、90歳ちかい愚公は、山をけずって海へ運びはじめた。わらう「智叟(ちえのある老人)」に、愚公は言った。「わしが死んでも、子がいる。子は孫を生む。山はふえないのだから、いつかたいらになる」
  38. 鍾馗(しょうき)熱病で1か月あまり苦しんだ唐の玄宗の夢に、帽子をかぶった大きな鬼があらわれ、宝物をぬすんでかけまわる小さな鬼をつかまえて退治した。「臣は鍾馗。天下の妖をのぞくとちかいます」。目ざめると、病はなおっていた
  39. 女媧(じょか)「人の顔に蛇の体、1日に70回すがたを変える」古代の女神。こわれた天を5色の石でつくろい、大亀の足で四方の柱を立て、黄土をこねて人間を作った。いそがしすぎて、縄で泥をはね飛ばしたことも
  1. 入門成り立ちと大まかなあらすじニネヴェの王の図書館の粘土板に、くさび形文字で。「上に天の名がまだなかったとき」——竜ティアマトを2つに切って天と地を作ったマルドゥク。そして、死をおそれた王ギルガメシュの旅と大洪水
  2. アッカドのざんげの詩「知らずにおかしたあやまちを、わたしの神は知っている」。地にたおれても手をとる者はなく、泣いても手のひらをとる者はいない。「わたしのあやまちは、七の七倍」。古代メソポタミアの人が神にささげた、ゆるしをもとめるいのり
  3. アッカドのことわざと歌「1度も2度ももうけたのに、まだ満足しない」「ひとりでほり、ひとりではたらいた」「わたしは子牛、母牛とならんでくびきにつながれる。すきの柄は重い、もちあげよ、もちあげよ!」。古代の学生の教科書にのこった、くらしのことば
  4. ラムマン(アダド)文字「イム」は嵐をあらわし、名「ラムマン」は「とどろく者」。雷と稲妻の神は、アッシリアでとくにうやまわれた。シリアのハダドとも同じとされ、太陽の神シャマシュとならんで「正義の神々」とよばれた
  5. アッシュールティグリス川のほとりの町アッシュールの神から、アッシリア全体の神へ。しるしは、翼のついた円盤の上で弓をひく戦士の旗じるし。王たちは、この旗を戦場までもっていった。名前の意味は「めぐみをあたえる、よい神」
  6. エア(エンキ)ペルシャ湾のほとりの古い町エリドゥの、深い水の神。知恵をさずけ、神々が人間をほろぼそうとしたときには人間のためにとりなした。かじや、彫刻家、織物職人の守り手で、息子マルドゥクにすべての力をゆずった「よろこぶ父」
  7. エンリル(ベル)ニップルの町の古い神。天の神アヌに対して、人のすむ地上と地下をおさめる「下の世界の主」。神殿の名は「山の家」、よび名は「大いなる山」。その名と力は、のちにバビロンのマルドゥクへ受けつがれた
  8. ナブーボルシッパの町の、知恵の神。しるしは、書く人の尖筆(せんぴつ)でもあり、王のつえでもある「つえ」。マルドゥクの子とされ、毎年の新年には、ボルシッパから川をわたって、父の神殿をたずねた
  9. ネルガルクタの町の神殿エ・シドラムから「立ちのぼる神」。「下の世界の王」とよばれ、その名は「大いなるすまいの力ある者」。ジャストロウによると、その正体は、真夏・真昼のはげしく照りつける太陽だった
  10. ニンギルスとバウラガシュの町の夫婦神。夫ニンギルスは「ベルの力強い戦士」で、しかも「穀物の山の神」。妻バウは「よき女主人」で、人の運命をさだめ、からだをいやす母。新年の日、ニンギルスの名で、バウに「結婚のおくりもの」がささげられた
  11. ニン・イブとグラアッシリアの王たちがたよった「神々の中の力ある者」ニン・イブ(仮の読み)と、その妻で「大いなる医者」とよばれた女神グラ。手でふれて病をとりさり、死者を新しい命へみちびく女神は、生きる者の神々と死者の神々のあいだに立っていた
  12. 7人の悪霊「その7人は、夕日の山で生まれ、朝日の山で育った」。天にも地にも名はなく、神々のあいだにも寝床をもたない、おそろしい7人。火の神のうったえを聞いたメロダクは、父なる水の神ヘアのもとへおりていった。古代バビロニアの悪霊ばらいの詩
  13. 太陽神シャマシュへの賛歌「太陽よ、あなたは天の土台からのぼり、かがやく空のかんぬきをはずし、天の戸をひらいた」。うそとまことを知り、天と地をさばく太陽の神に、古代カルデアの人々がささげた5つの歌
  14. シドゥリのことば死をおそれて世界の果てまで来たギルガメシュに、海辺の娘サビトゥムは言った。「あなたのさがす命は、見つからない。神々は人をつくったとき、死を人にさだめた。さあ、おなかを満たし、昼も夜もたのしみ、手をにぎる子をいつくしみなさい」
  15. 月の神シン(ナンナル)「光をもたらす者」ナンナルは、ウルの町の守り神。三日月の「角」を冠にいただき、ラピスラズリ色の長いあごひげをたくわえる。メソポタミアでは、月は太陽より上とされ、太陽は「月の神の子」とよばれた
  16. アダパ南風の翼をへし折った漁師。天の神アヌによびだされると、知恵の神エアは「死の食べものと死の水が出ても、口にするな」と教えた。ところが天でさしだされたのは「いのちの食べもの」だった。アダパは言いつけをまもり、不死をのがした
  17. エタナ子どもが生まれずに苦しむ妻のため、太陽の神に「生まれの草」をもとめた王。ワシの胸に胸を、翼に手をあてて天へのぼると、地上は山に、海は池に、やがて庭のみぞのように小さくなった。ところが、さらに高く女神イシュタルのもとへ向かう途中で…
  18. イシュタル愛と戦いの女神。英雄ギルガメシュに結婚をことわられると、天の牛を送りこんだ。「帰ることのない国」へくだるときは、7つの門で冠や首飾りを1つずつとりあげられ、女神がいないあいだ、地上の生きものはふえなくなった
  19. ウトナピシュティム大洪水を生きのびて、神々のように不死になった人。知恵の神エアにこっそり「家をこわして船を作れ」と教えられ、家族と生きものを乗せた。7日目、山にとまった船からハト、ツバメ、カラスをはなした
  20. ギルガメシュ「3分の2は神、3分の1は人間」のウルクの王。親友エンキドゥの死に「これは、どんなねむりだ」とよびかけ、死をおそれて世界の果てへ。若がえりの草をヘビにとられ、最後に見たのは自分が築いた城壁だった
  21. マルドゥク神々がこわがって逃げた竜ティアマトに、ただひとり名のり出たバビロンの神。宴会で「言ったことがそのままおこる力」をもらい、網と4つの風と嵐の車で出陣。勝ったあとは「50の名前」でたたえられた
  1. I『山海経』北山経のふしぎな生きものしっぽで空を飛ぶ耳鼠(じそ)、人を見るとねころがる幽鴳(ゆうあん)、頭1つに体が10ある魚、翼が10枚の魚、人を見ると飛んでいく白い犬「天馬」…。北の山々には、ちょっとゆかいな生きものがいっぱい
  2. II『山海経』東山経のふしぎな生きものあらわれると大豊作になるキバのあるブタ「当康(とうこう)」、人を見るとねむってしまう犰狳(きゅうよ)、足が6本の犬「従従(しょうしょう)」、翼のあるキツネ「獙獙(へいへい)」。東の山々の生きものは、天下の豊作やひでりを知らせるという
  3. III『山海経』南山経のふしぎな生きもの食べると足が速くなる狌狌(せいせい)、人の歌声で鳴く鹿蜀(ろくしょく)、木を割る音で鳴く旋亀(せんき)、背中に目がある猼訑(はくい)、頭が3つの鳥…。身につけたり食べたりすると、ふしぎな力があるという
  4. IV『山海経』西山経のふしぎな生きものあらわれると天下が安らかになる鸞鳥(らんちょう)、夜に西の海から東の海へ飛ぶ文鰩魚(ぶんようぎょ)、天帝の庭を見まもる英招(えいしょう)、翼も目も1つずつで、2羽そろってはじめて飛べる蛮蛮(ばんばん)…
  5. V『山海経』中山経の神々と生きもの人の顔にヒョウのもよう、耳に輪をさげ、玉のような声で鳴く神・武羅。トラの尾で、出入りするとき光る吉い神・泰逢。あらわれると大水になる4本角の白いシカ・夫諸、かうとうれいが消える白い尾の獣・朏朏、そして、よくののしる赤い獣・山膏…
  6. VI畢方(ひっぽう)ツルのような一本足の鳥。赤いもようで、青い体に白いくちばし。「ひっぽう」と自分の名前を鳴き、この鳥があらわれた町には、ふしぎな火事がおこる。黄帝が泰山に鬼神をあつめたときには、車のそばにつきしたがった
  7. VIIファフニール父を殺して呪われた黄金をひとりじめし、竜(大蛇)の姿になって財宝の上にねそべった男。英雄シグルズは、竜が水をのみに通る道にみぞをほってかくれ、下から剣をつきさした。竜の心臓の血をなめると、鳥のことばがわかるようになった
  8. VIII鳳凰ニワトリに似た五色の鳥。頭には「徳」、翼には「義」、背には「礼」、胸には「仁」、腹には「信」の文字のもようがあり、自然のままに飲み食いし、みずから歌い、みずから舞う。この鳥があらわれると、天下は平和になるという
  9. IXガルダ500年も卵の中にいて、生まれるとすぐ、ヘビたちの奴隷にされた母を救いに天へ向かった鳥の王。かみそりのような回転する輪をくぐりぬけ、不死の飲みもの「アムリタ」をうばったが、自分では一滴も飲まなかった。インドラの雷を受けても、羽を1枚落としただけだった
  10. X渾沌(こんとん)と帝江黄色いふくろのような体に、6本の足と4枚の翼。顔も目もないのに、歌と舞を知っている。『荘子』では、顔のない中央の帝・渾沌に、友だちが親切で1日に1つずつ穴をあけてあげたら、7日目に渾沌は死んでしまった
  11. XIジャターユ6万年を生きた大ワシの王。魔王ラーヴァナがシーターをさらって空をかけていくのを見て、「王たる者が、人の妻にふれてはならない」といさめ、年老いた体で立ちむかった。たおれたジャターユから話を聞いたラーマは、父のようにだきしめ、自分の手で火葬の火をともした
  12. XII夔(き)東の海の流波山にすむ、牛のような一本足の獣。水に出入りすると必ず風雨がおこり、光は日や月のよう、声は雷のよう。黄帝はその皮で太鼓をつくった。いっぽう孔子は「夔一足」を「足が1本」ではなく「夔ひとりで足りる」だと説明した
  13. XIII鯤(こん)と鵬(ほう)北の暗い海にすむ、大きさが何千里あるかわからない魚「鯤」。それが鳥になると「鵬」。つばさは空にたれこめる雲のよう。つむじ風にのって9万里の高さまでのぼり、南の海へ飛んでいく。それを見たセミと小バトは笑った。「何のために、そんなに高く?」
  14. XIV陸吾(りくご)と開明獣(かいめいじゅう)天帝の地上の都・崑崙山をまもる番人たち。陸吾は虎の体に9本の尾、人の顔に虎のつめ。開明獣は虎のような大きな体に、人の顔が9つ。崑崙の9つの門をまもり、東を向いて立っている
  15. XVマンティコア人の顔、ライオンの体、サソリの尾。歯は3列にならび、尾のトゲを矢のように飛ばすという、インドの「人食い」の怪物。古代ギリシャの医師クテシアスが伝え、プリニウスは「声は笛とラッパをあわせたよう」と書いた
  16. XVI九尾の狐『山海経』では、青丘の山にすむ、赤ちゃんのような声で鳴き、人を食べる獣。でもその肉を食べると、「蠱(こ)」にあたらない。のちの『呉越春秋』では、白い九尾の狐が、洪水をおさめた禹のもとにあらわれ、「王になるしるし」とされた
  17. XVIIフェニックス(不死鳥)500年に一度だけエジプトにあらわれる、金と赤の羽のふしぎな鳥。ヘロドトスは「絵でしか見たことがない。信じられない話だ」と書き、オウィディウスは「みずから生まれかわる、ただ1羽の鳥」とうたった。香木の巣で一生を終え、その体から小さなフェニックスが生まれる
  18. XVIII麒麟りっぱな王がいる世にだけあらわれる「仁の獣」。孔子の国で、薪とりの男が「角のあるノロジカのような獣」をつかまえたと聞いて、孔子は「だれのために来たのだ」と2度言い、そでで顔をぬぐって泣いた。そして「わたしの道はきわまった」
  19. XIX窮奇(きゅうき)あべこべの獣。人がけんかをしていると、正しいほうを食べてしまう。まじめで誠実な人の話を聞くと、その人の鼻を食べる。悪いことをする人の話を聞くと、けものをとってきて贈りものにする。『春秋左氏伝』では「四凶」のひとりの名
  20. XX饕餮(とうてつ)食べものと財宝をむさぼり、いくらあつめても満足しない「四凶」のひとり。舜は四凶を国のはてへ追いはらった。周の鼎(かなえ)には、頭だけで体のない饕餮がほられていた。人を食べてのみこむ前に、その害が自分の身にかえってくる、というしるしだった
  21. XXI天狗(てんこう)赤い顔に高い鼻の、山伏すがたの天狗とはちがう、もうひとつの「天狗」。『山海経』では白い頭の狸のような獣で、わざわいをふせぐ。『史記』では、雷のような音をたてて地に落ちる星。そして『日本書紀』では、雷のような音で東から西へ流れた大きな星を、僧旻が「流れ星ではない、天狗だ」と言った
  22. XXII燭龍(しょくりゅう)・燭陰人の顔に、赤い蛇の体。長さは千里。目をあければ昼になり、目をとじれば夜になる。息を吹けば冬、息を吐けば夏。食べず、ねむらず、息もしない。太陽のとどかない北の闇を照らす神
  23. XXIIIズー嵐を鳥の姿であらわした、メソポタミアの怪鳥。神エンリルが朝の水をそそぎ、王冠をかぶったすきに、世界を動かす「天命の書板」をうばって山へにげた。「だれがズーをこらしめるか」——神々はみな、こわがってことわった
  24. XXIVバジリスクじつは「12本の指ほどの長さ」の小さな蛇だった。頭に王冠のような白い点、シューッと鳴けばほかの蛇は逃げ、息をかけただけで草をからし、石をくだく。天敵はイタチ
  25. XXV金の羊毛を守る竜コルキスのアレスの森で、オークの枝の金の羊毛を見張る「死なず、眠らない」大蛇。シューッという声に、遠くの町の赤んぼうまで飛びおきた。魔女メデイアは歌と薬で眠らせた
  26. XXVIエキドナギリシャ神話の「怪物たちの母」。上は美しい娘、下はまだらの大蛇。ケルベロス、ヒュドラ、キマイラ、スフィンクスまで生んだ。最後は、全身に目のある巨人アルゴスに眠っているところを倒された
  27. XXVIIラドン黄金のりんごを守る竜。アポロドーロスでは「100の頭をもち、いろいろな声で話す不死の竜」。アルゴー船の英雄たちが見つけたときは、ヘラクレスのヒュドラの毒矢でたおれていた
  28. XXVIIIスキュラとカリュブディス6本の長い首に3列の歯、子犬のような声で鳴く怪物スキュラと、1日3回海をのみこむ大渦カリュブディス。魔女キルケは「全員を失うより、6人を失うほうがまし」と言った
  29. XXIXタロスクレタ島を1日に3回まわって見張る、青銅の巨人。体は傷つかないが、くるぶしの下に1本だけ「命の血管」があった。アルゴー船の英雄たちを救ったのは、魔女メデイアだった
  30. XXXケンタウロス上は人間、下は馬。ぶどう酒のにおいで岩と松の木を手に押しよせる乱暴者たち。でも賢者ケイロンは、医術の神アスクレピオスと英雄アキレウスを育てた先生だった
  31. XXXIフェンリル北欧神話の巨大な狼。鉄の鎖を2度ちぎり、最後は「ネコの足音・女のひげ・山の根」でできた細いひもで縛られた。その代わりに神テュールは右手を失い、世界の終わりラグナロクでオーディンをのみこむ
  32. XXXIIグリフォン体はライオン、くちばしと翼はワシ。北の果てで「金」を守り、一つ目の民アリマスポイと戦う。アイスキュロスは「吠えないゼウスの猟犬」と呼んだ
  33. XXXIIIハルピュイア(ハーピー)翼のある女の怪物。目の見えない予言者ピネウスの食卓に空から舞いおり、料理をさらって、残りはくさくて食べられない。退治したのは翼をもつ北風の兄弟
  34. XXXIVヨルムンガンド世界をぐるりと一周して、自分のしっぽをかむ大蛇。雷神トールは牛の頭をえさに「世界蛇つり」に挑み、巨人ネコだと思って持ち上げたのも、じつはこの大蛇だった
  35. XXXVペガサスメドゥーサの首から生まれた、翼のある馬。名前の由来は「泉」。英雄ベレロポンは女神アテナの金のくつわで乗りこなしたのに、天にのぼろうとして振り落とされた
  36. XXXVIポリュペモス(キュクロプス)ポセイドンの息子の一つ目の巨人。オデュッセウスは「ぼくの名前は『だれでもない』」とうそをつき、ぶどう酒で眠らせて目をつぶし、羊のおなかにしがみついて洞窟を出た
  37. XXXVIIセイレーン歌声で船乗りを引きよせ、島のまわりには白骨の山。オデュッセウスは仲間の耳をロウでふさぎ、自分はマストにしばられて「聞きながら」通りぬけた
  38. XXXVIIIスレイプニル主神オーディンの8本足の馬。「神々と人間の中でいちばんの馬」は、巨人の城づくりをじゃまするため、ロキが雌馬に化けたことから生まれた。冥界の門も、ふれずに飛びこえた
  39. XXXIXスフィンクス「4本足にも2本足にも3本足にもなるものは?」のなぞなぞ。ギリシャ神話では顔は女性、体はライオン、鳥の翼。答えられないテーバイの人を連れ去り、オイディプスに解かれると身を投げた
  40. XXXXテュポンギリシャ神話「最強の怪物」。頭は星にとどき、手からは100の竜の頭、太ももから下は大蛇。神々はエジプトへ逃げ、ゼウスも一度は手足の腱を切られた。最後はエトナ山の下じきに
  41. XXXXIユニコーンじつは「白い馬」ではなかった?プリニウスの一角獣モノケロスは、頭はシカ、足はゾウ、しっぽはイノシシ、黒い角が1本。「生きたままつかまえることはできない」
  42. XXXXIIケルベロス冥界の番犬は「犬の頭が3つ、しっぽは竜、背中にはヘビの頭がびっしり」。ヘラクレス最後の功業は、武器を使わず素手でつかまえて地上に連れ出すこと
  43. XXXXIIIキマイラ前はライオン、しっぽは竜、真ん中にヤギの頭。ヤギの口から火をふく「3つの獣の力を持つ1匹」。英雄ベレロポンは天馬ペガサスに乗って空から射た
  44. XXXXIVヒュドラ首は9本、うち1本は不死。1本つぶすと2本生えてくる沼の怪物。ヘラクレスは甥っ子と「火で焼く」作戦で勝ったのに、「1人で倒してないからノーカウント」に
  45. XXXXVメドゥーサ見た者を石に変えるゴルゴン三姉妹の一人。じつは三姉妹で「死ぬ運命」なのはメドゥーサだけ。英雄ペルセウスは盾に映して首を落とし、首からは天馬ペガサスが
  46. XXXXVIミノタウロス顔は牛、体は人間。本名は「アステリオス」。クレタ島の迷宮ラビュリントスに閉じこめられ、アテナイの若者たちがいけにえに。英雄テセウスは「糸」で迷宮を出た

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