
プレ男シヴァって、インドの神さまだよね。どんな神?

メル美『マハーバーラタ』では、毒を飲んで世界を守ったり、英雄と力くらべしたりするんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 神さまの解説、今回はインド神話のシヴァです。K.M.ガングリ訳『マハーバーラタ』(プロジェクト・グーテンベルク)の英訳を読みました。インド神話の全体はインド神話の入門へ。

「踊りの王としてのシヴァ(ナタラージャ)」11世紀後半ごろ、インド(タミル・ナードゥ州)、チョーラ朝。銅合金。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
プロフィール
| よび名 | マハーデーヴァ(大いなる神)、ハラ、シャンカラ、バヴァ、ルドラ、マヘーシュヴァラなど。「神々の神」「三つの目の神」 |
| 妻 | ウマー |
| 持ちもの | 弓ピナーカ、三叉の矛 |
| 住まい | カイラーサ山(『マハーバーラタ』の英訳では「山々に住む者」) |
| のど | 青い(「ニーラカンタ」=青いのど) |
| 武器 | 「パーシュパタ」という、だれにもふせげない武器 |
1. 世界を守るために毒を飲む
『マハーバーラタ』第1巻(アーディ・パルヴァ)18章、「乳海かくはん」の場面です(くわしくはインド神話の入門)。
- 神々と魔族(アスラ)は、不死の飲みものアムリタを手に入れるため、マンダラ山を棒に、大蛇ヴァースキを綱にして、海をかきまわしました
- 海からは、月、女神ラクシュミー、白い馬、宝石などがつぎつぎにあらわれます。ところが最後に、猛毒カーラクータが出てきました
- 毒は大地をのみこむように燃えあがり、そのにおいで3つの世界がくらくらしました
- そこでシヴァは、ブラフマーにたのまれて、「創造されたものを守るために」その毒を飲みこみ、のどにとどめました。それから「ニーラカンタ(青いのど)」とよばれる、と書かれています

メル美世界をこわす毒を、自分ののどで止めたんだ…!
2. 狩人の姿であらわれる
『マハーバーラタ』第3巻(ヴァナ・パルヴァ)38〜39章、「キラータ(狩人)の巻」です。
- 英雄アルジュナは、強い武器を得るため、ヒマラヤの森でひとりきびしい修行をしていました。1か月目は3夜おきに果物を食べ、2か月目は6夜おき、3か月目は半月おき、4か月目には空気だけで生き、両腕をあげて、つま先で立ちつづけます
- その熱で大地がけむりはじめ、聖者たちはシヴァにうったえました。シヴァは「アルジュナがのぞんでいるのは、天でも、富でも、長生きでもない。わたしは、きょうのうちに、その願いをかなえよう」と答えます
- シヴァは、金の木のようにかがやく狩人(キラータ)の姿になり、妻ウマーも狩人の女の姿で、たくさんの精霊たちといっしょに、ヒマラヤにおりてきました。森は静まりかえり、泉の音も鳥の声も止まりました
3. すべての矢を受けとめた狩人
- ちょうどそのとき、魔族ムーカがイノシシの姿でアルジュナをおそおうとしていました。アルジュナと狩人は、同時にイノシシを射て、たおします
- アルジュナは「わたしが先にねらった獲物を、なぜ射た。狩りのおきてにそむく」と怒り、狩人は「先に射たのはわたしだ」と言いかえして、2人は弓で戦いはじめます
- アルジュナが何百本の矢をあびせても、狩人は「山が岩の雨を受けるように」よろこんで受けとめ、傷ひとつありません。アルジュナは「ピナーカの弓をもつ神(シヴァ)のほかに、わたしの矢にたえられる者はいない。この男は、ルドラその人か」とおどろきました
- 矢がつきると、アルジュナは弓で打ちかかりますが、弓をうばわれ、剣で頭を打つと、剣のほうがくだけました。木や石を投げ、こぶしで打ち、組みあいになると、2人の体から炭火のようにけむりが出ます。最後にアルジュナは、しめつけられて気をうしなってしまいました

プレ男剣で頭を打ったら、剣が折れた!? 相手が神さまだと、どうしようもない…。
4. 「おまえの力は、わたしにほぼひとしい」
- 気がついたアルジュナは、心の中でシヴァにひれふし、土でシヴァの像を作って花輪をささげました。すると、その花輪が、狩人の頭の上にかかっていたのです。アルジュナは、相手がシヴァだと気づき、その足もとにひれふしました
- シヴァは、雲がとどろくような声で言いました
- 「アルジュナよ、わたしはおまえを気に入った。おまえのおこないは、くらべるもののないものだ。勇気と忍耐で、おまえにならぶ戦士はいない。おまえの強さと力は、わたしにほぼひとしい」
- 「わたしの本当の姿を見る目をさずけよう。だれにもふせげない、わたしの武器をさずけよう」
- アルジュナは、ウマーをともなったシヴァの、かがやく本当の姿を見て、ひざまずいて祈りました。『マハーバーラタ』のはじめの部分でも、「アルジュナは、狩人の姿の三つの目の神を戦いでよろこばせ、大いなる武器パーシュパタを得た」とふり返られています

『マハーバーラタ』のシヴァは、世界を守るために猛毒を飲みこみ、のどにとどめて「青いのど」とよばれるようになりました。
まとめ
- シヴァは、マハーデーヴァなどたくさんの名をもつ「神々の神」。妻はウマー
- 乳海かくはんで出た猛毒を、世界を守るために飲みこみ、「青いのど」とよばれた
- 修行する英雄アルジュナの前に、狩人(キラータ)の姿であらわれ、力くらべでアルジュナを圧倒した
- 土の像にささげた花輪が狩人の頭にかかって正体がわかり、シヴァは「おまえの力はわたしにほぼひとしい」とほめて、武器パーシュパタをさずけた
- 天から落ちるガンガーを頭でうけとめた話はガンガーの降下へ。インド神話の全体はインド神話の入門へ。インドラ、アグニ、『マハーバーラタ』を書きとったガネーシャ、神々の不死の飲みものアムリタをうばった鳥ガルダの記事もどうぞ
参考文献
- Kisari Mohan Ganguli(英訳). The Mahabharata of Krishna-Dwaipayana Vyasa, Volume 1. Adi Parva, Section I and Astika Parva, Section XVIII; Vana Parva, Kairata Parva, Sections XXXVIII–XXXIX. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/15474 (閲覧日:2026年10月10日)
- メトロポリタン美術館. Shiva as Lord of Dance (Nataraja), Tamil Nadu, Chola period, ca. late 11th century(1987.80.1、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/39328 (閲覧日:2026年10月10日)
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