
プレ男「フェンリル」って、ゲームでは最強クラスの狼だよね。もとは北欧神話なんだっけ。

メル美神さまたちが、ふしぎな材料のひもで縛った話があるんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 世界の幻獣、今回は北欧神話のフェンリル(フェンリス狼)です。アイスランドのスノッリ・ストゥルルソン(英訳の解説によると1178年生まれ)の『散文のエッダ』の英訳(R.B.アンダーソン訳『The Younger Edda』、1879年)を、プロジェクト・グーテンベルクで読みました。
プロフィール
| 名前 | フェンリル(英訳では Fenris-wolf) |
| 父 | いたずらとうその神ロキ |
| 母 | 巨人の国ヨトゥンヘイムの女巨人アングルボザ(英訳では Angerboda) |
| きょうだい | 世界をとりまくミズガルズの大蛇ヨルムンガンド、冥界の女王ヘル |
| ラグナロクでは | 主神オーディンをのみこむ |
| 出典 | 『散文のエッダ』「ギュルヴィたぶらかし」34・35・55・56節(アンダーソン訳の節番号) |

ジョン・バウエル「テュールとフェンリル」1911年(ヴィクトル・リュードベリ『われらの父祖の神々の物語』の挿絵)。ウィキメディア・コモンズ(パブリックドメイン)
神々に育てられた狼
- ロキの3人の子が巨人の国で育てられていると知った神々は、予言から、この子たちが大きな災いをもたらすと考えます
- 主神オーディン(英訳では Alfather)は子どもたちを連れてこさせ、大蛇は海に投げこみ、ヘルは冥界ニヴルヘイムに送りました
- 狼だけは、神々(アース神族)が自分たちのもとで育てます。えさをやる勇気があったのは、神テュールだけでした
鉄の鎖を、2度ちぎる
- 狼が毎日どんどん大きくなるのを見て、神々は「この狼は自分たちに死をもたらす」という予言を思い出し、とても強い鎖「レージング」をつくりました
- 「力を試してごらん」と言われた狼は、かんたんに鎖をちぎってしまいます
- 神々は2倍も強い鎖「ドローミ」をつくり、「これをちぎれば、力の強さで有名になれる」とさそいます。狼は「有名になるには危険もおかさなければ」と考えて受け入れ、これもこなごなにしてしまいました
- このことから、とてもむずかしいことを成しとげることを「レージングからぬける」「ドローミをうちくだく」と言うようになった、と書かれています

プレ男鉄の鎖が2本ともダメ…。神さまたち、どうするんだろう。
「この世にない6つのもの」でできたひも
- オーディンは、フレイの使いの若者スキールニルを、黒い妖精の国スヴァルトアールヴァヘイムのドワーフのもとに送り、ひも「グレイプニル」をつくらせました
- 材料は6つ。ネコの足音、女のひげ、山の根、クマの腱、魚の息、鳥のつば
- 語り手は言います。「女にひげはなく、ネコの足音は聞こえず、山に根はない。だから、うそではないとわかるだろう」
- できあがったひもは、絹のひものように、なめらかでやわらかいものでした

メル美だから、ネコの足音は聞こえないし、女の人にはひげがないんだ、っていう説明になってるのか!
テュールの右手
- 神々は狼を、アームスヴァルトニル湖の島リュングヴィに連れていき、細いひもを見せて「ちぎってごらん」と言います
- 狼は答えます。「こんな細いひもをちぎっても、名誉にはならない。でも、わなやたくらみでつくられたものなら、足にはかけさせない」
- 神々が「ちぎれなくても、すぐにほどいてあげる」と言うと、狼は「だれか1人、うそでない証として、手を私の口に入れろ」と求めました
- 神々は顔を見合わせ、だれも手を出しません。ただテュールだけが、右手を狼の口に入れました
- 狼があばれると、ひもはますますかたく、きつくなります。みんなが笑いましたが、テュールだけは笑いませんでした。彼は手を失ったのです
剣のさるぐつわ
- 神々は、ひもにつけた鎖を大きな岩に通して地中深くに固定しました
- 狼が口を大きく開けてかみつこうとすると、神々は剣を口に、つかを下あごに、先を上あごに当ててさるぐつわにしました
- 狼はおそろしい声でほえ、口から流れるよだれは「ヴォン」という川になりました。ラグナロク(神々の最後の日)まで、そこに横たわっています
- なぜ殺さなかったのか。神々は、自分たちの聖なる場所を狼の血でけがしたくなかったのだ、と書かれています
ラグナロク:オーディンをのみこむ
- 世界の終わりの日、自由になったフェンリルは、口を大きく開けて進みます。上あごは天に、下あごは地につき、場所があればもっと開くほど。目と鼻からは火がふき出します
- 狼はオーディンをのみこみます。でもすぐに、オーディンの息子ヴィーザルが、片足で狼の下あごをふみつけ、片手で上あごをつかんで、口を引き裂きました
- ヴィーザルの足の靴は、人間が靴をつくるときに切りすてる革のきれはしを、むかしから集めてつくられたもの。だから神々を助けたい人は、そのきれはしをすてなさい、と書かれています

『散文のエッダ』によると、ひもグレイプニルは、ネコの足音、女のひげ、山の根、クマの腱、魚の息、鳥のつばの6つでつくられました。
まとめ
- フェンリルは、ロキと女巨人アングルボザの子の狼。きょうだいは大蛇ヨルムンガンドとヘル
- 神々は鉄の鎖レージングとドローミで縛ろうとしたが、狼はどちらもちぎった
- 3本目のひもグレイプニルは、ネコの足音・女のひげ・山の根・クマの腱・魚の息・鳥のつばでできた
- うそでない証にテュールが右手を口に入れ、手を失った
- ラグナロクではオーディンをのみこみ、息子ヴィーザルに口を引き裂かれる
- きょうだいの大蛇はヨルムンガンド、冥界の番犬はケルベロス、ギリシャ神話最強の怪物はテュポンもどうぞ
参考文献
- Snorri Sturluson. The Younger Edda; also called Snorre’s Edda, or The Prose Edda(英訳:Rasmus B. Anderson、1879年). Gylfaginning 34, 35, 55, 56. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/18947 (閲覧日:2026年10月4日)
- John Bauer, Tyr and Fenrir, 1911(for Our Fathers’ Godsaga by Viktor Rydberg). Wikimedia Commons(パブリックドメイン). https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Tyr_and_Fenrir-John_Bauer.jpg (閲覧日:2026年10月6日)
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