
プレ男ギリシャ神話でいちばん強い怪物って、だれなんだろう。

メル美「テュポン」だって。神さまたちが逃げ出して、ゼウスまで一度負けちゃったらしいよ。
こんにちは、Dr. Taro です。 世界の幻獣、今回はテュポン(テュポエウス)です。アポロドーロス『ビブリオテーケー』(J.G.フレイザー訳、1921年)とヘシオドス『神統記』(H.G.エヴリン=ホワイト訳、1914年)の英訳を、Perseusデジタル図書館で読みました。
プロフィール
| 名前 | テュポン(ヘシオドスではテュポエウス、テュパオン) |
| 親 | 大地の女神ガイアと、地の底のタルタロス |
| 生まれた場所 | キリキア(アポロドーロス) |
| 大きさ | すべての山よりも高く、頭はしばしば星にふれた |
| 姿 | 太ももまでは人の形。片手は西、片手は東にとどき、手からは100の竜の頭。太ももから下は大蛇のとぐろ。体じゅうに翼、目からは火 |
| 子ども | エキドナとの間に、オルトロス、ケルベロス、ヒュドラなど(ヘシオドス) |
| 出典 | アポロドーロス『ビブリオテーケー』第1巻6章3節/ヘシオドス『神統記』304〜314行、820〜868行 |

「竜巻――テュポンとたたかうゼウス」(エラズマス・ダーウィン『植物の園』より)。ウィリアム・ブレイク彫版、1795年。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
ヘシオドスのテュポエウス:100の蛇の頭と「いろいろな声」
- ゼウスがティタン神族を天から追い出したあと、大地ガイアはいちばん末の子テュポエウスを生みました
- 肩からは100の蛇の頭がはえ、黒い舌をちらつかせ、目からは火がひらめきました
- その頭からは、ありとあらゆる声が出ます。神々にわかる言葉、怒りくるう雄牛のうなり、ライオンの声、子犬のような声、そして山々にひびくシューッという音
- ゼウスがすばやく気づかなければ、テュポエウスは人間と神々の王になっていた、とヘシオドスは書いています
アポロドーロスのテュポン:神々も逃げた
- 神々が巨人族(ギガンテス)に勝つと、大地はさらに怒り、タルタロスとの間にテュポンを生みました
- テュポンは火のついた岩を投げ、シューッという音と叫び声をあげ、口から大きな炎をふき出しながら、天へ向かって突進します
- それを見た神々は、エジプトへ逃げ、追われて動物に姿を変えました

プレ男神さまたちが動物に化けて逃げるなんて、よっぽどこわかったんだ…。
ゼウス、一度は負ける
- ゼウスは、遠くからは雷を投げ、近づいては金剛の鎌で切りつけ、シリアのカシオス山まで追いつめます
- ところが組みついたとき、テュポンはとぐろでゼウスを巻きしめ、鎌をうばって、ゼウスの手足の腱を切ってしまいました
- テュポンはゼウスをかついで海をわたり、キリキアのコリュキオンの洞窟へ。切った腱はクマの皮に包んでかくし、半分けものの竜の娘デルピュネに見張らせました
- ところがヘルメスとアイギパンがこっそり腱をぬすみ出し、ゼウスにもとどおりつけたのです
最後はエトナ山の下じきに
- 力をとりもどしたゼウスは、翼のある馬の戦車で天から雷を投げつけ、テュポンをニュサ山まで追います。そこで運命の女神たちにだまされたテュポンは、「強くなれる」と信じてはかない果実を食べてしまいます
- トラキアのハイモス山では、テュポンは山をまるごと持ち上げて投げますが、雷の力で山がはね返り、山に血が流れました。山の名「ハイモス」は、そこからついたといわれます
- シチリアの海へ逃げたところで、ゼウスはエトナ山をテュポンの上に投げつけました。アポロドーロスは、「いまでも、投げつけられた雷から火がふき出しているという」と書いています

メル美火山の煙を、山の下の怪物と雷の火で説明してたんだね。
子どもたちも有名な怪物
- ヘシオドスによると、テュパオン(テュポン)は、上半身が美しい娘、下半身が大蛇のエキドナと結ばれ、次の怪物たちが生まれました
- ゲリュオネスの番犬オルトロス
- 冥界の番犬ケルベロス(ヘシオドスでは「50の頭」)
- レルネのヒュドラ
- アポロドーロスでは、スフィンクスも「母はエキドナ、父はテュポン」。キマイラも、ヘシオドスの説としてテュポンとエキドナの子と紹介されています

アポロドーロスによると、テュポンは山よりも大きく、頭はしばしば星にふれ、手からは100の竜の頭、太ももから下は大蛇のとぐろでした。
まとめ
- テュポンは、ガイアとタルタロスの子。山より大きく、頭は星にふれる
- 手からは100の竜の頭、太ももから下は大蛇。目から火、体じゅうに翼
- ヘシオドスでは、100の蛇の頭から雄牛・ライオン・子犬などのいろいろな声
- 神々は動物に化けてエジプトへ逃げた。ゼウスも一度は手足の腱を切られた
- ヘルメスたちが腱をとりもどし、ゼウスは最後にエトナ山をテュポンの上に投げた
- 子どもはケルベロス、ヒュドラ、オルトロスなど。くわしくはケルベロス、ヒュドラの記事で。妻のエキドナ、北欧神話の怪物はフェンリル
参考文献
- Apollodorus. The Library(英訳:Sir James George Frazer、1921年). 1.6.3. Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0022:text=Library:book=1:chapter=6:section=3 (閲覧日:2026年10月4日)
- Hesiod. Theogony(英訳:Hugh G. Evelyn-White、1914年). 295–314, 820–868. Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0130:card=820 (閲覧日:2026年10月4日)
- メトロポリタン美術館. William Blake, Tornado–Zeus Battling Typhon, from Erasmus Darwin’s “Botanic Garden”, 1795(2007.49.389、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/375909 (閲覧日:2026年10月5日)
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