
プレ男竜が出てくるお話なの?

メル美2匹の竜が地面の下でけんかするお話が出てくるんだって。兄弟が知恵を出しあって、国をすくうの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はケルト神話(ウェールズ)のスリッズとスレヴェリスです。ウェールズの中世の物語集『マビノギオン』の「スリッズとスレヴェリスの物語」を、シャーロット・ゲストの英訳(Project Gutenberg)で読みました。ケルト神話の全体はケルト神話の入門へ。

アーサー・ラッカム「スリッズ王はあとを追い、こう言った。『止まれ、止まれ』」(『連合国の妖精物語』1916年の挿絵)。ウィキメディア・コモンズ(パブリックドメイン)
プロフィール
| スリッズ | 大王ベリの長男で、ブリテン島の王。ロンドンの城壁をたてなおした |
| スレヴェリス | スリッズのいちばん愛した弟。賢く思慮深い。フランスの王女と結婚し、フランスの王になった |
| 3つのわざわい | ①何でも聞きとるコラニアイドの一族 ②5月の前夜のさけび声 ③食べものを消す魔術師 |
1. 3つのわざわい
- スリッズがブリテン島をおさめていたころ、島に3つのわざわいがふりかかりました
- 1つ目は、コラニアイドという一族でした。「島のどこで、どんなに小さな声で話しても、風がその言葉にふれれば、彼らにはわかってしまう」ので、だれも手出しができませんでした
- 2つ目は、毎年5月の前夜、島じゅうのかまどの上にひびくさけび声でした。その声は人びとの心をつらぬき、人も動物も木々も大地も水も、力をうしなってしまいました
- 3つ目は、王の宮殿に1年分の食べものと飲みものを用意しても、最初の一晩でぜんぶ消えてしまうことでした

メル美どこで話しても聞かれちゃうなんて、相談もできないね…。
2. 青銅の角笛
- スリッズは、賢い弟スレヴェリスに相談するため、こっそり船を出しました
- ふたりは、風に言葉をつかまれないよう、青銅の長い角笛をつくって、そのつつごしに話すことにしました。ところが、角笛ごしの言葉は、どちらにもとげとげしい、敵意のある言葉にしか聞こえません
- スレヴェリスは、角笛の中に悪いものがいるとわかり、ぶどう酒で角笛を洗いました。すると、悪いものは追いだされ、ふたりはちゃんと話しあえるようになりました

プレ男やさしく言ったつもりでも、とげとげしく聞こえる角笛…。けんかのもとって、そういうところにあるのかも。
3. 2匹の竜
- スレヴェリスは言いました。「2つ目のわざわいは、竜だ。おまえの国の竜に、よその国の竜がたたかいをいどんでいる。だから、おまえの竜がおそろしいさけび声をあげるのだ」
- 「島の長さとはばをはかり、ちょうどまんなかに穴をほって、いちばんよいハチミツ酒を入れた大釜をおき、絹の布でおおいなさい」
- 言われたとおりにすると、スリッズは、ちょうどまんなかのオックスフォードで、竜たちのたたかいを見ました。つかれた竜たちは2匹のブタの姿になって布の上に落ち、布ごと大釜の底にしずんで、ハチミツ酒を飲みほし、ねむってしまいました
- スリッズは、ねむった竜を布でつつみ、スノードンのいちばん安全な場所に、石の箱に入れてうめました。その場所は、のちに「ディナス・エムリス」とよばれるようになった、と書かれています
4. 食べものをぬすむ大男
- 3つ目のわざわいは、魔術で人をねむらせて食べものをもっていく、力の強い男のしわざでした。スレヴェリスは「ねむくなったら、そばにおいた冷たい水の大釜にとびこみなさい」と教えました
- スリッズが宴の食べものを見はっていると、夜ふけに、ふしぎな歌がひびいて、ねむけがおそってきました。スリッズは何度も冷たい水に入って、目をさましました
- やがて、重いよろいの大男がかごをもってあらわれ、食べものも飲みものもすべてかごにつめて出ていこうとしました(上の図版の場面です)
- スリッズは「止まれ、止まれ」と追いかけ、はげしい勝負のすえに大男をとりおさえました。大男は「これまでうばったものはすべてつぐない、これからはあなたの忠実な家来になります」とちかい、スリッズはそれを受けいれました

ゲスト訳の『マビノギオン』では、スリッズは竜たちをハチミツ酒でねむらせて布でつつみ、スノードンの石の箱にうめました。
まとめ
- ブリテン島の王スリッズは、3つのわざわいに苦しんだ
- 賢い弟スレヴェリスと、青銅の角笛ごしに相談した(角笛の中の悪いものは、ぶどう酒で追いだした)
- 5月の前夜のさけび声は、2匹の竜のたたかいだった。ハチミツ酒でねむらせて、スノードンにうめた
- 食べものをぬすむ大男は、冷たい水でねむけをはらって待ちぶせし、家来にした
- 同じ『マビノギオン』のマクセン皇帝の夢、リアンノン、ブロダイウェズ、ケルト神話の入門もどうぞ
参考文献
- Lady Charlotte Guest(英訳). The Mabinogion. “The Story of Lludd and Llevelys”. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/5160 (閲覧日:2026年10月10日)
- ウィキメディア・コモンズ. And thereupon King Lludd went after him and spoke unto him thus. ‘Stop, stop’, said he(Arthur Rackham、1916年、パブリックドメイン). https://commons.wikimedia.org/wiki/File:And_thereupon_King_Lludd_went_after_him_and_spoke_unto_him_thus._'Stop,_stop',_said_he.jpg (閲覧日:2026年10月10日)
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