
プレ男ゆっくり進んでいるのに、どんなにはやい馬でも追いつけない? どういうこと?

メル美ウェールズのリアンノンっていう女性のお話なんだって。ちょっとユーモアもあって、でもつらいことにもたえる人なの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はケルト神話(ウェールズ)のリアンノンです。ウェールズの中世の物語集『マビノギオン』の「ダヴェドの王プウィス」を、シャーロット・ゲストの英訳(Project Gutenberg)で読みました。ケルト神話の全体はケルト神話の入門へ。

ジョン・D・バッテン「わたしは自分の用で旅をしています」(J.ジェイコブズ編『続ケルトの妖精物語』1895年の挿絵)。ウィキメディア・コモンズ(パブリックドメイン)
プロフィール
| リアンノン | ヘヴェイズ・ヘーンの娘 |
| 夫 | ダヴェドの王プウィス |
| 息子 | プラデリ(はじめの名はグーリ・ワスト・エイリン) |
| 乗っていた馬 | 大きな白い馬 |
| つぐない | 7年のあいだ、城門の馬乗り台のそばで、客を背負って運ぶ |
1. 追いつけない白い馬
- ダヴェドの王プウィスが、ふしぎな丘の上にすわっていると、金の衣を着て、大きな白い馬に乗った女性が、道をゆっくり進んでくるのが見えました
- 家来がいちばんはやい馬で追いかけましたが、「馬をせかせばせかすほど、女性は遠くなった。それでも、女性ははじめと同じ速さで進んでいた」
- 次の日も、だめでした。3日目、プウィス自身が馬で追いかけましたが、どんなに走らせても近づけません
- そこでプウィスは声をかけました。「乙女よ、あなたがいちばん愛する人のために、止まってください」
- 女性は答えました。「よろこんで止まりましょう。もっと早くそう言ってくれたら、あなたの馬のためにもよかったのに」

メル美追いかけるより、まず「止まって」ってお願いすればよかったんだね(笑)。
2. 「わたしの旅の目的は、あなた」
- 女性はベールをあげて、プウィスを見つめました。「わたしは自分の用で旅をしています。あなたに会えてうれしい」(上の図版の言葉です)
- 「わたしはリアンノン、ヘヴェイズ・ヘーンの娘です。のぞまない相手と結婚させられそうになっています。でも、わたしはだれとも結婚したくない。あなたを愛しているから。あなたがことわらないかぎり」
- プウィスは答えました。「世界じゅうの女性の中からえらべるとしても、わたしはあなたをえらぶ」

プレ男リアンノンのほうから会いにきて、自分で相手をえらんだんだ! かっこいい。
3. いなくなった赤ちゃん
- ふたりは結婚し、やがて男の子が生まれました。ところが、生まれた夜、見守りをしていた6人の女たちがねむってしまい、明け方に目をさますと、赤ちゃんがいなくなっていました
- 女たちは、自分たちがせめられるのをおそれて、リアンノンが子どもに悪いことをしたといつわりました。リアンノンは「神はすべてを知っています。いつわりの罪を着せないで。こわくてそう言うのなら、わたしがあなたたちをまもります」とたのみましたが、女たちは同じことをくりかえしました
- 貴族たちは「王妃をしりぞけるべきだ」と言いましたが、プウィスは「もし罪があるなら、つぐないをさせよう」と答えました
4. 7年のつぐない
- リアンノンは、女たちとあらそうより、つぐないをうけることをえらびました
- つぐないは、7年のあいだ、ナルベルスの城門の外にある馬乗り台のそばにすわり、知らずに来た人にはこのいきさつを話し、旅人や客を、ゆるされれば背負って宮殿まで運ぶ、というものでした。「けれども、背負われることをゆるす人は、めったにいなかった」と書かれています

メル美何もしていないのに、毎日そんなつぐないを…。それでもみんな、背負われるのをことわったんだね。
5. 子馬と赤ちゃん
- グウェントの領主テイルノンの家には、毎年5月1日の夜に子馬を生むのに、その子馬がいつも消えてしまう、美しい牝馬がいました
- ある年、テイルノンが見はっていると、生まれた子馬を、窓から入ってきた大きなつめがつかもうとしました。テイルノンがそれをふりはらって外へ追いかけ、もどってくると、戸口に赤ちゃんがおかれていました
- テイルノンと妻は、その子を自分の子として育てましたが、大きくなるにつれ、プウィスにそっくりになっていきました。テイルノンは、リアンノンのつぐないの話を聞き、子をつれてナルベルスへむかいました
- 城門のそばで、リアンノンは「わたしが、みなさんを背負って宮殿へお運びします」と言いましたが、テイルノンたちはことわりました
- 宴の席でテイルノンがすべてを話すと、リアンノンは言いました。「それが本当なら、わたしの心配(プラデル)は終わりました」。その言葉から、子はプラデリと名づけられました。ゲストの注によると、「プラデル」「プラデリ」は「心配」という意味です

ゲスト訳の『マビノギオン』では、息子がもどったとき、リアンノンが「わたしの心配は終わりました」と言ったことから、子はプラデリ(心配)と名づけられました。
まとめ
- リアンノンは、どんな馬でも追いつけない白い馬であらわれた女性
- 「止まって」とたのんだプウィスに、「もっと早く言えばよかったのに」と答えた
- 自分からプウィスをえらび、結婚した
- いなくなった赤ちゃんのことでいつわりの罪を着せられ、7年のつぐないをうけた
- テイルノンに育てられた息子がもどり、「心配が終わった」という言葉からプラデリと名づけられた
- 同じ『マビノギオン』のブロダイウェズ、2匹の竜の話スリッズとスレヴェリス、アイルランドのエーディン、ケルト神話の入門もどうぞ
参考文献
- Lady Charlotte Guest(英訳). The Mabinogion. “Pwyll Prince of Dyved” と注. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/5160 (閲覧日:2026年10月10日)
- ウィキメディア・コモンズ. Page 30 illustration in More Celtic Fairy Tales(John D. Batten、1895年、パブリックドメイン). https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Page_30_illustration_in_More_Celtic_Fairy_Tales.png (閲覧日:2026年10月10日)
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