
プレ男蝶にされて、1000年以上たってから人間に生まれなおすって、スケールが大きいね!

メル美アイルランドの『エーディンへの求婚』っていう物語なんだって。最後は、白鳥になって飛んでいくの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はケルト神話(アイルランド)のエーディンです。A.H.リーイの英訳『アイルランドの英雄ロマンス』第1巻(1905年、Project Gutenberg)の「エーディンへの求婚(The Courtship of Etain)」を読みました。リーイ訳は、中世の写本『レボル・ナ・フイドレ』の版と『エジャトン写本』の版の2つを訳しています。ケルト神話の全体はケルト神話の入門へ。

スティーヴン・リード「ふたりは空にうかびあがった」(T.W.ロールストン『フィンの偉業』1910年の、エーディンの話の挿絵)。ウィキメディア・コモンズ(パブリックドメイン)
プロフィール
| エーディン | アリルの娘。「馬のエーディン」とよばれた |
| 最初の夫 | 妖精の丘ブリー・レイトにすむミディル |
| ねたんだ妻 | ミディルのもうひとりの妻フアムナッハ |
| かくまった神 | ダグザの子オイングス(マック・オーグ) |
| 2度目の誕生 | 戦士エタルの娘として。最初の誕生から1012年後 |
| 人間の夫 | タラの王エオヒド・アレヴ |
1. 蝶になったエーディン
リーイ訳の「妖精の国のプロローグ」(レボル・ナ・フイドレ版)です。
- エーディンは、妖精の丘ブリー・レイトにすむミディルの妻でした。ミディルのもうひとりの妻フアムナッハは、エーディンをねたみ、ドルイドの術をかりて、エーディンを「花の中によろこびを見つける蝶」の姿に変えてしまいました
- そして、フアムナッハのおこした大風で、エーディンは7年のあいだ、とばされつづけました
- やがて風は、ダグザの子オイングス(マック・オーグ)の宮殿へエーディンをはこびました。オイングスは、蝶の姿でもエーディンだと気づき、すきとおった窓のあるあずまやをつくって、むらさきのベールをかけ、どこへ行くにもつれて歩きました
- あずまやには、香りのよい草花がいっぱいで、エーディンはその香りと花で元気をとりもどしました

メル美ガラスのあずまやに、蝶のエーディン…。オイングスはやさしいね。
2. 1012年ぶりの誕生
- それを知ったフアムナッハは、オイングスがミディルのもとへ出かけたすきに、またエーディンを風でふきとばしました。エーディンは、さらに7年、アイルランドじゅうをとばされ、よわりはてました
- 風は、アルスターの人びとが酒をのんでいる家の屋根の上をこえ、エーディンは屋根から金のさかずきの中に落ちました。そばにいた戦士エタルの妻が、さかずきのミルクといっしょにエーディンを飲みこみ、やがてエーディンは人間の娘として生まれ、「エタルの娘エーディン」と名づけられました
- 「アリルの娘として最初に生まれてから、エタルの娘として2度目に生まれるまで、1012年がたっていた」と書かれています
- なお、オイングスはフアムナッハを追いかけて、ドルイドの家でたおしたとも、マナナンの助けでたおされたとも語られています
3. タラの王妃に
- 人間として育ったエーディンは、やがてタラの王エオヒド・アレヴの王妃になりました(エジャトン版では、王の弟アリルがエーディンに恋をして病気になる話もあります)
- そこへ、ミディルがあらわれます。ミディルはエーディンを「金髪の女(ベヴィン)」とよび、「わたしの国へ来ないか」と歌いかけました。エーディンは「わたしの家の主から、わたしをもらいうけられたら行きましょう。できなければ行きません」と答えました

プレ男勝手についていかないで、ちゃんと「夫がみとめたら」って条件をつけたんだ。
4. チェスの賭け
レボル・ナ・フイドレ版です。
- ミディルは、エオヒド王に「チェスをしよう」ともちかけます。はじめはわざと負けて、王ののぞみどおり、ミーズの野の石をとりのぞき、森を切りひらき、沼に道をつくる大仕事までしてみせました(この部分は写本が1段やぶれていて、リーイがおぎなって角かっこで書いた箇所をふくみます)
- そして最後の勝負で、ミディルは「勝った者が、のぞむものをもらう」という賭けにして、勝ちました。ミディルののぞみは、「エーディンをだきしめて、口づけをすること」でした
- 王は「1か月後に来い」と答え、その日、アイルランドじゅうの勇士をタラに集めて、宮殿をかためました
5. 2羽の白鳥
- 約束の夜、エーディンが王たちにお酒をついでいると、ミディルが宮殿のまんなかに立っていました。「その夜のミディルは、これまでのどの時よりも美しく見えた」と書かれています
- 王は「エーディンはわたさない。だが、この家の床で、そのまま彼女をだきしめるのはゆるそう」と言いました
- ミディルは、左手に武器をもち、右うでにエーディンをかかえると、屋根の明かりとりの穴からとびさりました
- 人びとが外へかけだすと、2羽の白鳥が、タラの丘のまわりをまわって、妖精の丘のほうへ飛んでいくのが見えました
- エオヒド王は、アイルランドの人びととともに、妖精の丘をひとつずつほりかえして、王妃をとりもどそうとした、と語られています

リーイ訳のレボル・ナ・フイドレ版では、ミディルがエーディンをかかえて屋根の明かりとりからとびさり、人びとは2羽の白鳥がタラのまわりをまわるのを見ました。
まとめ
- エーディンは、妖精の王ミディルの妻
- もうひとりの妻のねたみで蝶に変えられ、オイングスのガラスのあずまやにかくまわれた
- ふたたび風にとばされ、さかずきに落ちて、1012年ぶりに人間の娘として生まれなおした
- タラの王妃になったエーディンを、ミディルはチェスの賭けでとりもどし、2羽の白鳥になって飛びさった
- ウェールズの、花からつくられた女性ブロダイウェズ、エーディンをかくまったオイングス、白鳥に変えられたリルの子どもたち、ケルト神話の入門もどうぞ
参考文献
- A. H. Leahy(英訳). Heroic Romances of Ireland, Volume 1(1905). “The Courtship of Etain”(Introduction; Prologue in Fairyland; Egerton Version; Leabhar na h-Uidhri Version). Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/5678 (閲覧日:2026年10月10日)
- T. W. Rolleston. The High Deeds of Finn and other Bardic Romances of Ancient Ireland(1910、挿絵 Stephen Reid). Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/14749 (閲覧日:2026年10月10日)
- ウィキメディア・コモンズ. 9 They rose up in the air(Stephen Reid、パブリックドメイン). https://commons.wikimedia.org/wiki/File:9_They_rose_up_in_the_air.jpg (閲覧日:2026年10月10日)
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