
プレ男白鳥にかえられる話って、アンデルセンの童話にもあったような…。

メル美アイルランドには、900年も白鳥のままだった4人きょうだいの話があるんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はケルト神話(アイルランド)の「リルの子らの運命」です。グレゴリー夫人『神々と戦士たち』(1904年、プロジェクト・グーテンベルク)の英訳を読みました。夫人は、ちがう版をまぜあわせ、つなぎの文を入れたと書いています。ケルト神話の全体はケルト神話の入門へ。

スティーヴン・リード「人びとは野営をし、白鳥たちは彼らに歌った」1910年(T.W.ロールストン『フィンの偉業』のさし絵)。ウィキメディア・コモンズ(パブリックドメイン。作者は1948年没)
プロフィール
| 父 | ダーナ神族のリル(シー・フィオナハの丘に住む) |
| 母 | アーヴ(双子の弟を生んで亡くなった) |
| まま母 | アーヴの妹アイフェ |
| 4人のきょうだい | 姉フィオヌーラ、弟アイ(アーヴのはじめての子どもは、フィオヌーラとアイの2人)、双子のフィアフラとコン |
| のろい | 白鳥の姿で900年。言葉と、人をねむらせる歌声はのこされた |
1. まま母の嫉妬
- ダーナ神族の王にえらばれたボドヴ・デルグは、妻を亡くしたリルに、自分の養い子の娘のひとりアーヴをとつがせました。アーヴは、女の子フィオヌーラと男の子アイ、それから双子のフィアフラとコンを生みましたが、双子を生んだときに亡くなります
- ボドヴは、アーヴの妹アイフェをリルにとつがせました。アイフェも、はじめは姉の子どもたちを大切にします。「4人の子どもを見て、心から愛さない者はいなかった」。リルは毎朝はやく起きて、子どもたちのそばに横になるほどでした
- ところが、アイフェの心に「嫉妬の火」がともり、子どもたちをにくむようになりました。アイフェは子どもたちを戦車に乗せて出かけ、従者たちに子どもたちを殺すよう命じますが、従者はことわります。自分でも剣をぬきますが、できませんでした
2. 白鳥にかえられる
- 一行がダルヴラの湖(カシの木の湖)に着くと、アイフェは子どもたちに湖で水あびをさせ、ドルイドの杖で打って、白く美しい4羽の白鳥の姿にかえました
- フィオヌーラは言います。「このわざがいつ終わるのか、決めてください」
- アイフェは答えました。「南の女と北の男がいっしょになるときまで。ダルヴラの湖で300年、アイルランドとスコットランドのあいだのモイルの海で300年、イルス・ドムナンとイニシュ・グルーラで300年」
- それからアイフェは後悔して言いました。「ほかに助けてあげられることはないから、言葉はそのまま持っていなさい。人をねむらせる妖精の国の美しい歌をうたえるようにしよう。世界にそれとならぶ音楽はないだろう。分別も気高さも、そのまま。鳥の姿でいることが、あまり重くないように」

メル美900年…。人間の一生の何倍なんだろう。
3. 湖のほとりで
- 子どもたちがいないことに気づいたリルは、ダルヴラの湖へかけつけます。人の声で話す白鳥たちに、フィオヌーラが言いました。「リルよ、わたしたちは、あなたの4人の子どもです」
- 「もとの姿にもどす方法はないのか」「ありません。世界じゅうの人が集まっても、時がすぎるまでは、だれもわたしたちを助けられません。900年が終わるまでは」
- フィオヌーラは「今夜はここにいて。わたしたちが音楽をかなでます」と言い、リルたちは白鳥の歌を聞きながら、その夜はしずかにねむりました
- ボドヴ・デルグは、アイフェに「どんな姿になるのがいちばんいやか」とたずね、アイフェが「空の魔女」と答えると、杖で打ってその姿にかえました
- それから300年、ダーナ神族もゲール人も、湖のほとりに集まって白鳥の歌を聞きました。その歌を聞くと、どんななやみや長い病気がある人も、しずかにぐっすりねむれたといいます
4. 嵐の夜の、姉の翼
- 300年がたち、4羽は北のモイルの海へ飛びたちます。アイルランドの人びとは、「これからは、アイルランドじゅうで白鳥を殺してはならない」というおふれを出しました
- モイルの海は冷たく荒れていました。ある嵐の夜、フィオヌーラが「はぐれたときに会う場所を決めておきましょう」と言うと、弟たちは「アザラシの岩にしよう」と答えました。真夜中の嵐で、4羽はばらばらになりました
- ひとりアザラシの岩で夜をあかしたフィオヌーラのもとへ、やがて、ぬれて頭をたれたコン、寒さで口もきけないフィアフラ、そして最後にアイがもどってきました
- フィオヌーラは、アイを胸の羽の下に、フィアフラを右の翼の下に、コンを左の翼の下に入れて、3人ともつつみこみました

プレ男お姉ちゃんが、弟たち3人を翼でつつむ場面…泣ける。
5. 900年のあと
- モイルの海で300年、西のイルス・ドムナンで300年。ついに時がすぎ、4羽は父の住むシー・フィオナハへ飛んでかえりますが、そこには家も火もなく、緑の小山とイラクサのしげみがあるだけでした
- グレゴリー夫人の本の結末では、4羽はイニシュ・グルーラの島で、聖モハヴォグの鐘の音を聞きます。フィオヌーラは「あの鐘の音で、わたしたちは苦しみから解きはなたれる」と言いました
- コナハトの王ラルグネンと、その妻でフィンギンの娘のデオフがむすばれていたことが、アイフェの言った「南の女と北の男」でした。王が白鳥をむりにつれていこうと手をかけると、白鳥の羽が落ち、そこには、年老いた3人の男と1人の女がいました
- フィオヌーラは「コンをわたしの右に、フィアフラを左に、アイをわたしの顔の前に、両腕のあいだに」ねかせてほしい、とたのみます。4人は洗礼を受けて亡くなり、のぞみどおりにほうむられて、オガム文字で名前がきざまれた、と語られています

グレゴリー夫人の本では、嵐の夜、フィオヌーラはアイを胸の羽の下に、フィアフラを右の翼の下に、コンを左の翼の下に入れて、弟たちをつつみこみました。
まとめ
- リルの4人の子どもは、まま母アイフェの嫉妬で、白鳥にかえられた
- 言葉と、人をねむらせる美しい歌声はのこされ、湖・荒れた海・西の海で、あわせて900年をすごした
- 嵐の夜、姉フィオヌーラは、弟たち3人を翼の下につつんだ
- 鐘の音と、「南の女と北の男」の結婚で、のろいがとけ、4人は年老いた姿にもどって亡くなった
- 海の神マナナーン、アンガス・オーグ、ケルト神話の入門もどうぞ
参考文献
- Lady Augusta Gregory. Gods and Fighting Men: The Story of the Tuatha de Danaan and of the Fianna of Ireland(1904年). Part I, Book V(The Fate of the Children of Lir). Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/14465 (閲覧日:2026年10月10日)
- Stephen Reid. “They made an encampment and the swans sang to them”(T.W. Rolleston, The High Deeds of Finn and Other Bardic Romances of Ancient Ireland, 1910年のさし絵). Wikimedia Commons(パブリックドメイン). https://commons.wikimedia.org/wiki/File:3_They_made_an_encampment_and_the_swans_sang_to_them.jpg (閲覧日:2026年10月10日)
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