
プレ男マナナーンって、ケルトの海の神さまだよね。ギリシャのポセイドンみたいな感じ?

メル美海の神だけど、魔法と変身の名人で、海の向こうのふしぎな国にも人をさそうんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 神さまの解説、今回はケルト神話(アイルランド)のマナナーンです。グレゴリー夫人『神々と戦士たち』(1904年、プロジェクト・グーテンベルク)の英訳を読みました。夫人は、ちがう版をまぜあわせ、つなぎの文を入れたと書いています。ケルト神話の全体はケルト神話の入門へ。

ジョン・ダンカン「シーの騎行(The Riders of the Sidhe)」1911年、マクマナス美術館(ダンディー)所蔵(ダンカンは1945年没)。丘に住むようになったダーナ神族(シー)をえがいた絵で、マナナーンをえがいたものではありません。ウィキメディア・コモンズ(パブリックドメイン)
プロフィール
| 名前 | マナナーン・マック・リル(「リルの子マナナーン」)。「ほこり高きマナナーン」 |
| 立場 | 海の神。ダーナ神族の中で、王ヌアザより「さらに大きい」とされる |
| 力 | 魔法のすべてを知り、たくさんのすがたをもつ |
| 住まい | 海の向こうの国。「リンゴの木のエヴァン」など、たくさんの住まいがある |
| 乗りもの | 海の上を走る2輪の戦車 |
| 弟子 | 英雄ディアルミドに武器の使い方を、英雄クー・フランにゲイ・ボルグ(魔槍)の使い方を教えたといわれる |
1. 見えない壁で、神々をかくす
- ダーナ神族がアイルランドに来たときから、マナナーンは王ヌアザよりも「さらに大きい」神とされていました
- ミールの子ら(ゲール人)に負けたダーナ神族は、その支配を受けいれず、自分たちだけで暮らすことにします。マナナーンはあらゆる魔法を知っていたので、神々は住む場所さがしをマナナーンにまかせました
- マナナーンは、アイルランドでいちばん美しい丘や谷をえらび、そのまわりに、人には見えないけれど、自分たちは見通せて、通りぬけられる、かくれた壁をめぐらせました
- そして「年の宴」をひらき、かじ屋ゴヴニュの、年をとらず、病気にも死にもならない酒と、殺して食べても次の日には生きかえる自分のブタをふるまったといいます
- 仕事を終えたマナナーンは、自分はアイルランドを去りました。死んだという人もいましたが、そのあとも、たびたびアイルランドで話を聞くことがあった、とグレゴリー夫人は書いています
2. 海から上がってきた3頭の牛
- あるとき、マナナーンの牛が3頭、海から上がってきました。赤と白と黒の牛です
- 3頭は浜にしばらく立って、考えているようでしたが、やがてならんで陸へ歩きだしました。そのころアイルランドには道がなかったのに、牛たちの前には、広くりっぱな道ができていました
- 海から1マイルほどで3頭は別れ、白い牛は北西へ、赤い牛は南西へ、黒い牛は北東へ。それぞれの前に道がひらけ、いまも見ることができると語られています

メル美海の神さまの牛が、アイルランドの道を作ったんだ!
3. 英雄ブランをさそう歌
- ある日、王子ブランは、うしろからひびく音楽にさそわれてねむりこみ、目をさますと、そばに白い花のさいた銀の枝がありました
- 宮殿にあらわれたふしぎな女性は、こう歌います。「わたしは、リルの子のかがやく馬たちがまわりを走る、遠い島エヴァンから、リンゴの木の枝を持ってきた」「そこには、なげきも、うらぎりもない。悲しみも、死も、病気も、弱さもない」「海の上に、旅に出なさい。女たちの国にたどりつけるかもしれない」
- ブランは27人の仲間と海に出ます。2日2晩こいだころ、海の上を戦車で走ってくる男に出会いました。それがリルの子マナナーンでした。マナナーンは歌います
- 「ブランは、すばらしい澄んだ海を小舟で行くと思っている。でも遠くから戦車で見るわたしには、それは花の野原だ」
- 「ブランに見えるのは、澄んだ海にうちよせる波。わたしに見えるのは、きずひとつない赤い花」
- 「ブランよ、こぎつづけよ。女たちの国はもう遠くない。日がしずむ前に、エヴァンに着くだろう」

プレ男同じ海が、人間には波、神さまには花畑に見えるんだ。見ている世界がちがう!
4. 帰ってきたら、何百年
- ブランたちは、途中の「よろこびの島」で、笑いつづける人びとの中に仲間をひとり残し、やがて「女たちの国」に着きました。そこでは、皿の食べものがつきることがなく、のぞむものは何でも食べられ、飲めました
- 1年ほどいたと思えたころ、仲間のネフタンが、故郷に帰りたくなります。女の人は「後悔しますよ。アイルランドに着いても、陸にふれてはいけない」と言いました
- アイルランドの岸に近づいてブランが名のると、浜の人びとは言いました。「そんな人は知らない。ブランの航海の話なら、わたしたちのとても古い言い伝えにあるけれど」
- ネフタンが小舟から岸にとびおりると、陸にふれたとたん、何百年も土の中にいたかのように、ひとかたまりの灰になってしまいました

メル美日本の浦島太郎みたい…! ふしぎな国の1年が、こちらでは何百年なんだね。

グレゴリー夫人の本のマナナーンは、「ブランには澄んだ海でも、遠くから戦車で見るわたしには花の野原だ」と歌っています。
まとめ
- マナナーンは、リルの子とよばれる海の神。魔法と変身の名人
- 負けたダーナ神族のために、見えない壁で丘や谷をかくし、年をとらない酒と生きかえるブタの宴をひらいた
- 海から上がってきた3頭の牛の前に、アイルランドの道がひらけた
- 海の上を戦車で走り、英雄ブランを「女たちの国」へみちびいた。帰ってきた仲間は、陸にふれると灰になった
- ケルト神話の全体はケルト神話の入門へ。アンガス、ギリシャの海の神ポセイドンもどうぞ
- 同じ「リル」の名が出てくる悲しい物語はリルの子らへ
参考文献
- Lady Gregory. Gods and Fighting Men(1904年). Part One, Book One, I. The Fight with the Firbolgs; Book Four, I. Bodb Dearg, VIII. Manannan and X. His Call to Bran. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/14465 (閲覧日:2026年10月10日)
- Wikimedia Commons. File:Riders of th Sidhe (big).jpg(John Duncan、The Riders of the Sidhe、1911年、パブリックドメイン). https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Riders_of_th_Sidhe_(big).jpg (閲覧日:2026年10月10日)
- Wikidata. John Duncan(Q1521460、スコットランドの画家、1866〜1945年). https://www.wikidata.org/wiki/Q1521460 (閲覧日:2026年10月10日)
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