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プレ男ケルト神話って、ゲームで「ドルイド」とか「ダーナ神族」とか聞くけど、ギリシャ神話みたいに、まとまった本があるの?

メル美それが、ないらしいよ。どうやって伝わったのか、たどってみよう。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、ケルト神話の成り立ちと大まかなあらすじです。カエサル『ガリア戦記』6巻(W.A.マクデヴィット、W.S.ボーン訳、1869年、ペルセウス・デジタル・ライブラリー)、グレゴリー夫人『神々と戦士たち』(1904年)、ゲスト夫人訳『マビノギオン』(プロジェクト・グーテンベルク)を読みました。
成り立ち1:ドルイドは、文字に書かなかった
紀元前1世紀、ローマのカエサルは、いまのフランスのあたり(ガリア)でケルト人と戦い、『ガリア戦記』6巻13〜18章に、その宗教を書きのこしました。
- ガリアで身分の高い人には、ドルイドと騎士の2つの身分がある。ドルイドは神々のまつりといけにえをとりおこない、宗教のことを説明し、争いごとの裁きもする
- この制度はブリタニア(いまのイギリス)で生まれ、ガリアに伝わったと考えられている。くわしく学びたい人は、いまもブリタニアへ行く
- ドルイドの学校では、たくさんの詩を暗記する。20年学ぶ人もいる
- ふだんの記録にはギリシャ文字を使うのに、教えを文字に書くことは正しくないと考えている。カエサルは、その理由を「教えを広めたくないから」「文字にたよると、おぼえる努力をしなくなるから」だろうと書いています
- いちばん大事な教えは、「魂はほろびず、死ぬと、ある体から別の体へうつる」こと。そのため死をおそれず、勇敢になる、とカエサルは考えました

メル美文字を知ってるのに、あえて書かなかったんだ…!
成り立ち2:カエサルが書いた、ガリアの神々
- 「いちばんあがめているのはメルクリウスで、像がたくさんある。あらゆる技術を発明した神、旅の道案内、お金もうけや商売の神だと考えている」
- 次がアポロン(病気を追いはらう)、マルス(戦い)、ユピテル(天を治める)、ミネルウァ(技術や手仕事)
- ガリア人はみな、自分たちはディス(冥界の神)の子孫だと言う。だから時間を日でなく夜の数で数え、誕生日や月・年のはじめも「夜のあとに昼が来る」順で数える
- ここで大事なのは、カエサルが、ガリアの神々をローマの神の名前で書いていることです。ガリアの人たちが自分の神を何とよんでいたのかは、『ガリア戦記』のこの部分には書かれていません

「トルク(首輪)」紀元前4〜3世紀、ケルト(ラ・テーヌ期)。銅合金。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
成り立ち3:物語は、中世のアイルランドとウェールズの写本に
- 神々の物語として伝わっているのは、おもにアイルランドとウェールズで、のちの時代に書きとめられたものです
- ウェールズ:ゲスト夫人は『マビノギオン』の序文で、もとの写本の中心は、オックスフォードのジーザス・カレッジにある14世紀の『ハーゲストの赤い本』だと書いています。『マビノギオン』には、「ダヴェドの王子プイス」「スィールの娘ブランウェン」「スィールの子マナワダン」「マソヌウイの子マース」の4つの話(マビノギの四つの枝)などが入っています
- アイルランド:グレゴリー夫人の『神々と戦士たち』は、アイルランド語の古い物語を英語にまとめた本です。ただし夫人自身が、あとがきで「ところどころに、つなぎの文を自分で入れ、ちがう版をまぜあわせ、多くの部分をちぢめたり、はぶいたりした」と書いています
ここからは、グレゴリー夫人の本にそって、アイルランドの神々の大まかな流れを追います。
あらすじ1:ダーナ神族がやってくる
- トゥアタ・デ・ダナーン(女神ダナの神々の一族)は、霧の中を、空を通ってアイルランドにやってきました。来たのは北からで、もとの国には4つの都がありました
- 4つの都から持ってきた4つの宝
- 運命の石(リア・ファール):アイルランドを治める王が足をのせると、さけび声をあげた
- 剣
- 勝利の槍
- 大釜:だれも満腹にならずに帰ることはない
- 王はヌアザ。ほかに、文字を教えたオグマ、医術のディアン・ケーフト、かじ屋のゴヴニュ、戦いの女神モリグー(モリガン)、詩と医術とかじの女神ブリギッド、そして「神々の母」ダナがいました
- ダーナ神族は、ベルティネ(5月1日)に上陸し、先に住んでいたフィル・ボルグと戦って勝ちます(第1のマグ・トゥレドの戦い)
あらすじ2:銀の腕の王ヌアザと、美しい王ブレス
- ヌアザは戦いに勝ちましたが、腕を切りおとされました。ダーナ神族には「体に欠けたところのない者でなければ、王になれない」というおきてがあり、ヌアザは王をおりました
- かわりに王になったのは、いちばん美しい若者ブレス。でもブレスの時代、海のかなたのフォモール族が、麦の3分の1、乳の3分の1、子どもの3分の1を税として取りたて、ブレスはさからいませんでした。ブレスはけちで、客をもてなさなかったので、詩人にアイルランドで最初の風刺の詩を作られてしまいます
- 医術の神ディアン・ケーフトは、ヌアザに、指の1本1本まで動く銀の腕を作りました。それからヌアザは「銀の腕のヌアザ」とよばれ、王にもどります
あらすじ3:万能の神ルーと、邪眼のバロル
- ヌアザが都タラ(テウィル)で宴会をしていると、若者ルーがやってきます。門番は「技を持たない者は、タラに入れない」と言います
- 「大工です」「大工はいる」。「かじ屋です」「いる」。「戦士です」「いる」。竪琴ひき、詩人、魔術師、医者、酒つぎ、銅細工……ぜんぶ「もういる」
- ルーは言います。「このぜんぶを1人でできる者がいるか、王に聞いてくれ。いるなら、わたしは入らない」
- ルーは「すべての技の達人」とよばれ、なかに入れられました。くわしくはルーへ
- ルーの母方の祖父は、フォモール族の王バロル。片方の目に見た者を殺す力があり、ふだんは閉じていて、敵を殺すときだけ、家来が象牙の輪でまぶたを持ちあげたといいます
- 第2のマグ・トゥレドの戦いで、王ヌアザはバロルにたおされます。バロルが「まぶたを上げろ」と言ったとき、ルーの赤い槍が目をつらぬき、目はうしろのフォモール軍のほうに落ちた——というのが、グレゴリー夫人の書き方です

プレ男「ぜんぶできる1人」って、面接で言ってみたい…!
あらすじ4:ミールの子らの到来と、神々は丘の中へ
- 長い時がたって、南からミールの子ら(ゲール人)の船がやってきます。ダーナ神族は魔法の雲で島をかくしますが、ミールの子らは上陸します。最初に陸に足をおろした詩人アマーギンは、「わたしは海の上の風」で始まる歌をうたいました
- 戦いに負けたダーナ神族は、ミールの子らには従わず、海の神マナナーンが、アイルランドでいちばん美しい丘や谷に、人には見えず、自分たちは見通せて通りぬけられる、かくれた壁をめぐらせました
- 神々は、かじ屋ゴヴニュの年をとらず、病気にも死にもならない酒を飲み、食べても次の日には生きかえるブタを食べて、丘の中で暮らすことになった、とグレゴリー夫人は書いています

カエサルによると、ドルイドはたくさんの詩を暗記し、20年学ぶ人もいたそうです。教えは文字に書かなかったので、神話はのちの時代の写本で読むことになります。
まとめ
- ケルト神話には、1冊にまとまった「神統記」がない。ドルイドは教えを文字に書かなかった(カエサル『ガリア戦記』6巻14章)
- カエサルは、ガリアの神々をメルクリウス・アポロン・マルス・ユピテル・ミネルウァというローマの神の名前で書いた
- 物語は、のちのアイルランドとウェールズ(14世紀の『ハーゲストの赤い本』など)の写本に
- アイルランドでは、ダーナ神族の到来→銀の腕のヌアザ→万能の神ルーがバロルをたおす→ミールの子らの到来→神々は丘の中へ
- 神さまごとの話は、ルー、ダグザの記事もどうぞ
- ほかの神話は、ギリシャ神話の入門、北欧神話の入門、日本神話の入門もどうぞ
参考文献
- Caesar. The Gallic War, Book 6, chapters 13–18(英訳:W.A. McDevitte、W.S. Bohn、1869年). Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.02.0001:book=6:chapter=13 (閲覧日:2026年10月6日)
- Lady Gregory. Gods and Fighting Men: The story of the Tuatha de Danaan and of the Fianna of Ireland(1904年). Part One, Books One–Four; Notes, I. The Apology. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/14465 (閲覧日:2026年10月6日)
- Lady Charlotte Guest(英訳). The Mabinogion, Introduction and Contents. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/5160 (閲覧日:2026年10月6日)
- メトロポリタン美術館. Torc, Celtic, 4th–3rd century BCE(17.191.244、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/464948 (閲覧日:2026年10月6日)
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