
プレ男ダグザって、ケルト神話の「よい神」って聞いたけど、どんな神さま?

メル美力持ちで、竪琴の名手で、ちょっと苦労人みたい。
こんにちは、Dr. Taro です。 神さまの解説、今回はケルト神話(アイルランド)のダグザです。グレゴリー夫人『神々と戦士たち』(1904年、プロジェクト・グーテンベルク)の英訳を読みました。夫人は、ちがう版をまぜあわせ、つなぎの文を入れたと書いています。ケルト神話の全体はケルト神話の入門へ。
プロフィール
| 名前 | ダグザ |
| よび名 | 「すべての知恵の赤い人」 |
| 一族 | ダーナ神族(トゥアタ・デ・ダナーン) |
| 家 | ボイン川のブルー・ナ・ボーニャ |
| 子ども | 若い神アンガス(オーグ)、ボドヴ・デルグ。娘のエリウ、フォドラ、バンバは、のちにアイルランドの国の名前になった |
| 持ちもの | 竪琴ウアトネ(「2つの花のオーク」「四角い音楽」ともよばれる) |
1. 王ブレスのもとで、堀をほる
- 美しいけれどけちな王ブレスの時代、ダーナ神族の勇者たちは、王のための仕事をさせられました。ダグザは腕のいい建築家だったので、とりでを築く仕事をし、ブレスのとりでのまわりに堀をほります
- 仕事場には、口の悪いクリデンベルという男がいて、ダグザの分け前をうらやみ、「あなたの名声のために、いちばんよいところを3切れください」と言います。ダグザは毎晩それにこたえましたが、男の言う「1切れ」はブタ1頭ほどもあって、ダグザは食べものの3分の1をとられ、弱っていきました
2. 3枚の金貨と、1頭の黒い若牛
- やせたダグザを見た息子アンガスは、袋から3枚の金貨を出してわたしました。「今夜わたす3切れに、この金貨を入れなさい。それが皿の中でいちばんよいものになる」
- 金貨をのみこんだクリデンベルは死に、人びとは「ダグザが毒草をのませた」とさわぎます。王はダグザを死刑にしようとしますが、ダグザは「それは王の正しいさばきではない」と言い、「今夜、わたしの前でいちばんよいものは3枚の金貨だった。だから、それをわたしたのだ」と説明しました。体を調べると金貨が見つかり、ダグザの言ったことが本当だとわかりました
- アンガスは、さらに教えます。「仕事が終わって報酬を聞かれたら、アイルランドじゅうの牛を前に集めさせて、黒くて、たてがみの黒い若牛を1頭だけえらびなさい」
- 仕事が終わり、ダグザが若牛1頭だけをのぞむと、ブレスは「もっと欲しがると思ったのに、おろかなやつだ」と思いました

プレ男ごほうびが牛1頭だけ? 息子のアドバイス、なにか考えがありそう…。
3. 壁から飛んでくる竪琴
- フォモール族とのマグ・トゥレドの戦いのあと、ルーとダグザとオグマは、フォモール族を追いかけます。フォモール族は、ダグザの竪琴をうばって持っていっていたのです
- 宴会の館に入ると、ブレスとその父がいて、壁に竪琴がかかっていました。ダグザは竪琴に音楽をしばりつけていて、ダグザがよばなければ鳴らないようにしてありました
- ダグザがよびかけます。「来たれ夏、来たれ冬、竪琴と袋と笛の口から」。すると竪琴は壁から飛び出してダグザのもとへ来ました
- ダグザは、竪琴ひきが知っている3つの曲をひきます
- 泣きの曲:女たちが泣き
- 笑いの曲:女も子どもも笑い
- ねむりの曲:軍勢がみんなねむりこむ
- そのねむりのあいだに、3人はフォモール族のあいだをぬけて帰りました
4. 若牛のひと声
- 戦いが終わると、ダグザは、ブレスから報酬にもらったあの黒い若牛を連れ出しました
- 若牛が自分の子牛をよんで鳴くと、その声で、フォモール族が税としてうばっていったアイルランドじゅうの牛が、もとの野原にもどってきた、とグレゴリー夫人は書いています

メル美たった1頭の牛が、国じゅうの牛を取りもどした! アンガスの作戦だったんだね。

ジョン・イーガン「携帯用ハープ」1819年、アイルランド・ダブリン。木ほか。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)。神話の時代の竪琴ではなく、19世紀のアイルランドの楽器です
5. 「1日と1夜」のとんち
- ダグザの家ブルー・ナ・ボーニャは、結局、息子アンガスのものになります。海の神マナナーンが、アンガスにこう知恵をさずけました
- アンガスは父に「1日と1夜のあいだ、家を貸してください」とたのみ、ダグザは貸しました。ところが返してと言われると、アンガスは「1日と1夜で、永遠にもらった。人生も時間も、すべては1日と1夜が、かわるがわる続いてできているのだから」と答えたのです
- ダグザは家来とともに家を去りました。マナナーンが魔法をかけていたからです。ダグザは、気が短く、仕返しをする神と言われていたのに、仕返しをしなかったといいます
6. 息子を殺した男へのさばき
- あるとき、ダグザの家をおとずれたコナハトの男コルゲンが、妻とダグザの息子エードの仲をうたがい、ダグザの目の前でエードを殺してしまいます
- みんな、ダグザがその場でコルゲンを殺すと思いました。でもダグザは「もし息子に罪があったのなら、コルゲンを責めることはできない」と言って、命は取りませんでした
- かわりにあたえた罰は、「息子のなきがらを背負い、長さも幅もぴったり合う墓石が見つかるまで、決しておろさないこと」。コルゲンは遠くフォイル湖のほとりまで歩いて石を見つけ、墓をほって息子を葬ると、力つきて死にました
- ダグザは2人の石工に、墓のまわりにとりでを築かせました。そこは「ため息と石の丘(アリャハ)」とよばれ、ダグザが息子の死に血の涙を流したからだ、といいます

グレゴリー夫人の本のダグザは、息子を殺した男を、その場で殺すことはしませんでした。「息子に罪があったのなら、責めることはできない」と言っています。
まとめ
- ダグザは、「すべての知恵の赤い人」とよばれるダーナ神族の神。家はボイン川のブルー・ナ・ボーニャ
- 王ブレスのもとで堀をほり、息子アンガスの知恵の3枚の金貨で横どりする男をこらしめた
- 報酬にえらんだ黒い若牛1頭が、のちにアイルランドじゅうの牛を取りもどした
- うばわれた竪琴をよびもどし、泣き・笑い・ねむりの3つの曲でフォモール族をねむらせた
- 「1日と1夜」のとんちで家を息子にとられても、仕返しをしなかった
- ケルト神話の全体はケルト神話の入門へ。いっしょに戦ったルー、竪琴で冥界の王の心を動かしたギリシャのオルペウスもどうぞ
参考文献
- Lady Gregory. Gods and Fighting Men: The story of the Tuatha de Danaan and of the Fianna of Ireland(1904年). Part One, Book One, II. The Reign of Bres; Book Two, III. The Great Battle of Magh Tuireadh; Book Four, II. The Dagda. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/14465 (閲覧日:2026年10月7日)
- メトロポリタン美術館. John Egan, Portable Harp, 1819, Dublin(89.4.1083、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/501661 (閲覧日:2026年10月7日)
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