
プレ男ケルト神話のルーって、どんな神さまなの?

メル美なんでもできる「万能の神」なんだって。生まれ方もドラマチックみたい。
こんにちは、Dr. Taro です。 神さまの解説、今回はケルト神話(アイルランド)のルーです。グレゴリー夫人『神々と戦士たち』(1904年、プロジェクト・グーテンベルク)の英訳を読みました。夫人自身があとがきで、ちがう版をまぜあわせ、つなぎの文を入れたと書いている本なので、その点に注意して読んでください。ケルト神話の全体はケルト神話の入門へ。
プロフィール
| 名前 | ルー(グレゴリー夫人の表記は Lugh)。「長い手のルー」 |
| よび名 | 「すべての技の達人(イルダーナッハ)」 |
| 父 | ダーナ神族のキアン |
| 母 | フォモール族の王バロルの娘エスリン |
| 育ての親 | 大平原の王の娘タルティウ。のちに海の神マナナーンの息子たちのもとでも暮らした |
| したこと | フォモール族の支配からダーナ神族を解きはなち、バロルをたおした |
1. 塔の娘と、海に投げこまれた赤んぼう
- フォモール族の王バロルは、ドルイドから「おまえは自分の孫に殺される」と予言されました
- バロルには、ひとり娘エスリンしかいません。バロルはエスリンを、海の島のガラスの塔にとじこめ、12人の女に見はらせて、「男を見せるな、男の名前も聞かせるな」と命じました
- そのころ、ダーナ神族のキアンは、乳がつきることのないすばらしい牛を、バロルにぬすまれてしまいます。キアンは女のドルイドビログの助けで、女の姿になって風に乗って塔にわたり、エスリンに会いました。エスリンは「夢で見た顔だ」と言ったといいます
- やがてエスリンは男の子を生みます。それを知ったバロルは、子を布につつんでピンでとめ、海の潮の流れに投げこめと命じました
- ところが、入り江をわたるとちゅうでピンが落ち、子は水の中にすべり落ちます。みんなは子がおぼれたと思いましたが、ビログが助け出して父キアンにとどけました。これがルーです

メル美「孫に殺される」予言で娘をとじこめるって、ギリシャのペルセウスの話にそっくり!
ギリシャ神話でも、王アクリシオスが「孫に殺される」と予言されて娘ダナエを地下の青銅の部屋にとじこめ、生まれたペルセウスは、母といっしょに箱に入れられて海に流されます(アポロドーロス)。
2. 「ぜんぶ1人でできる者はいるか」
- 銀の腕の王ヌアザが都タラ(テウィル)で宴会をしていると、若者が門に来ます。門番は「技のない者は、タラに入れない」と言いました
- 若者は名のります。「わたしはダーナ神族のキアンと、フォモール族の王バロルの娘エスリンの子、ルーだ」
| ルー | 門番 |
|---|---|
| 大工です | 大工はいる |
| かじ屋です | かじ屋はいる |
| 戦士です | 戦士は王の兄弟オグマがいる |
| 竪琴ひきです | 竪琴ひきはいる |
| 詩人で、物語の語り手です | 語り手はいる |
| 魔術師です | 魔術師も力のある者もたくさんいる |
| 医者です | 医者はディアン・ケーフトがいる |
| 酒つぎをさせてください | 酒つぎは9人いる |
| 銅細工が得意です | 銅細工師はいる |
- そこでルーは言いました。「このぜんぶを1人でできる者がいるか、王に聞いてくれ。いるなら、わたしはタラに入らない」
- 門番は王に「この若者は『すべての技の達人』とよぶべきです」と伝えます。王はチェスで試させ、ルーはすべての勝負に勝ちました
- 宮殿に入ったルーは、80組の牛でも動かせない大きな石板を、戦士オグマが外へ投げたのを、投げ返して宮殿のまん中にもどしました。竪琴をひけば、人びとを笑わせ、泣かせ、最後はねむりの曲でみんなをねむらせます
- ヌアザは、ルーの力があればフォモール族の税と支配からのがれられると考え、13日のあいだ、自分の王座をルーにゆずって、その意見を聞きました

プレ男1つずつだと「もういる」なのに、「ぜんぶ」なら合格。ひとりで何でもできる人、強い…!
3. 父のかたきへの「つぐない」
- ルーの父キアンは、ダーナ神族のトゥレンの3人の息子(ブリアン、ユハル、ユハルバ)に殺されていました
- ルーは王の前で、3人につぐない(罰金)をはらうよう求めます。言ったのは「りんご3つ、ブタの皮、槍1本、馬2頭と戦車、ブタ7頭、子犬1匹、焼きぐし1本、丘の上での3回のさけび」
- 3人は「少なすぎるから、うらに何かあるのでは」とうたがいます。その心配のとおり、ルーが説明したのは、こんな宝でした
- 東の果ての庭のりんご:焼けた金の色で、はちみつの味。食べれば傷の痛みも病気もなくなり、いくら食べてもへらない
- ギリシャの王のブタの皮:世界じゅうの傷と病気をなおす
- ペルシャの王の槍:あまりに強いので、穂先を水の器にひたしておかないと、まわりを焼いてしまう
- 海も陸と同じように走れる馬と戦車、毎晩殺しても次の日には生きかえるブタ、世界じゅうのけものがひれふす子犬
- そして丘の上の3回のさけび。その丘の主たちは、だれにもさけばせないという誓いにしばられていて、しかもルーの父に学問を教えた人たちでした
- 父トゥレンは「ルーかマナナーンの力がなければ、できるものではない」となげきます
4. 夕日のようにかがやく顔
- そのあと、ルーはヌアザ、ダグザ、オグマ、かじ屋ゴヴニュ、医術のディアン・ケーフトと、まる1年、ひそかに計画を立てました。その場所はのちに「ダーナ神族のささやき」とよばれたといいます
- ウシュネフの丘での集まりに、東から武装した一団がやってきます。先頭の若者の顔は「夕日のようにかがやき」、まぶしくて見ることができませんでした。それがルーでした

「剣とさや」紀元前60年ごろ、ケルト。鉄の刀身、銅合金の柄とさや。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
5. マグ・トゥレドの戦い
- フォモール族との大きな戦い(第2のマグ・トゥレドの戦い)で、王ヌアザはバロルにたおされます
- ルーは、自分を守っていた者たちからぬけ出して最前線に立ち、「しばられて税をはらって生きるより、自分の国を守って死ぬほうがいい」と人びとをはげましました
- バロルが「このおしゃべりを見てやるから、まぶたを上げろ」と言ったとき、ルーの赤い槍が邪眼をつらぬき、目はフォモール軍のほうへ落ちました。ルーがそのとき目をつぶさなければ、「アイルランドじゅうが、ひと目で焼かれていただろう」とグレゴリー夫人は書いています。こうして、予言どおり、バロルは孫にたおされました

グレゴリー夫人の本では、ルーは戦いの前に「しばられて税をはらって生きるより、自分の国を守って死ぬほうがいい」と人びとをはげましています。
まとめ
- ルーは、ダーナ神族のキアンと、フォモール族の王バロルの娘エスリンの子
- 「孫に殺される」と予言されたバロルに海に投げこまれたが、助けられて育った
- タラの門で「ぜんぶ1人でできる者はいるか」と言い、「すべての技の達人」とよばれた
- 父を殺したトゥレンの息子たちに、世界の果ての宝をつぐないとして求めた
- マグ・トゥレドの戦いで、祖父バロルの邪眼を槍でつらぬいた
- ケルト神話の全体はケルト神話の入門へ。予言と孫の話は、ギリシャのペルセウスとも読みくらべてみてください
参考文献
- Lady Gregory. Gods and Fighting Men: The story of the Tuatha de Danaan and of the Fianna of Ireland(1904年). Part One, Book Two: Lugh of the Long Hand(I. The Coming of Lugh; II. The Sons of Tuireann; III. The Great Battle of Magh Tuireadh). Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/14465 (閲覧日:2026年10月7日)
- メトロポリタン美術館. Sword and Scabbard, Celtic, ca. 60 BCE(1999.94a-d、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/470298 (閲覧日:2026年10月7日)
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