目次

プレ男オーディンって、北欧神話のいちばんえらい神さまだよね。なんで片目なの?

メル美知恵と引きかえにしたんだって。ほかにも、知恵のためにすごいことをしてるみたい。
こんにちは、Dr. Taro です。 神さまの解説、今回は北欧神話のオーディンです。スノッリ・ストゥルルソン『新エッダ』(R.B.アンダーソン訳、1879年)と、『古エッダ』の詩「高き者の言葉(ハーヴァマール)」(H.A.ベロウズ訳、1923年)の英訳を、プロジェクト・グーテンベルクで読みました。北欧神話の全体は北欧神話の入門へ。
プロフィール
| 立場 | アース神族の長。「万物の父(アルファズル)」 |
| 家族 | 父ボル、母ベストラ。兄弟ヴィリとヴェー。妻フリッグ。子にバルドル、トールなど |
| 持ちもの | 槍グングニル、8本足の馬スレイプニル、金のかぶと |
| お供 | カラスフギンとムニン、狼ゲリとフレキ |
| 住まい | アースガルズ。高座フリズスキャールヴ、戦士の館ヴァルハラ |
1. 12の名前をもつ、いちばん古い神
『新エッダ』の『ギュルヴィたぶらかし』で、王ギュルヴィが「いちばん高く、いちばん古い神はだれか」とたずねると、こう答えが返ってきます。
- 「わたしたちの言葉では万物の父とよばれる。でも、むかしのアースガルズでは、12の名前があった」
- 万物の父は「永遠から永遠に生き、国をおさめ、大きなことも小さなこともすべてを治める」。そして「天と地と空気と、その中のすべてを作った」
- オーディンは、すべての神々の父なので「万物の父」。そして「戦いでたおれた者はみな、オーディンがえらんだ子ら」なので、「戦死者の父(ヴァルファズル)」ともよばれます
- 王ゲイルロズのもとへ行ったときには、「グリーム」「ハール(高き者)」など、さらにたくさんの名前を名のったといいます
2. 2羽のカラスと2匹の狼
- オーディンの両肩には、2羽のカラスがとまっています。名前はフギンとムニン。夜明けに世界じゅうへ飛ばすと、朝ごはんのころにもどってきて、見たこと聞いたことをオーディンの耳に話します。だからオーディンは「カラスの神」ともよばれます
- 『古エッダ』の「グリームニルの言葉」では、オーディン自身がこう言います。「フギンとムニンは、毎日、大地の上を飛ぶ。フギンが帰ってこないのではと心配だ。でも、ムニンのほうがもっと心配だ」
- 食卓に出された食べものは、2匹の狼ゲリとフレキにあげてしまいます。オーディン自身は食べものがいらず、「ワインが、食べものでもあり飲みものでもある」といいます

メル美毎朝、カラスがニュースを運んでくるんだ。しかも「ムニンが帰ってこないのが心配」って、ちょっとかわいい。

ローレンツ・フレーリク「槍グングニルを持ち、スレイプニルに乗るオーディン」1895年刊、カール・ギェレルプ訳『古エッダ 神々の歌』(デンマーク語)の挿絵。ウィキメディア・コモンズ(パブリックドメイン)。コモンズの説明によると、ここではスレイプニルは4本足で描かれている
3. 片目を知恵の泉に
- 世界樹ユグドラシルの3本の根のうち、霜の巨人の国にのびる根の下には、ミーミルの泉があります。そこには知恵と知識がかくされていて、番人ミーミルは、その水を飲むので知恵にあふれています
- 万物の父は、泉の水を1口飲ませてほしいとたのみましたが、片目をかたにあずけるまで、飲ませてもらえませんでした
- 『巫女の予言』は、こううたいます。「オーディンよ、わたしは知っている。あなたが目をかくした場所を。すみきったミーミルの泉の中だ。ミーミルは毎朝、戦死者の父のかたから、はちみつ酒を飲む」
4. 風のふく木に9夜——ルーンを手に入れる
『古エッダ』の「高き者の言葉」138〜145節で、オーディン自身が語ります。
- 「わたしは、風のふく木につるされていた。まる9夜のあいだ。槍で傷つき、オーディンにささげられていた——わたし自身が、わたし自身に。その木の根が、どこからのびているのか、だれも知らない木に」
- 「だれもパンもくれず、角の杯もくれなかった。わたしは下を見つめ、ルーンを拾いあげた。さけびながら拾い、そのまま、うしろにたおれた」
- それからオーディンは、9つの力のある歌をおぼえ、知恵を得て、育ち、元気になった。「ひとつの言葉が次の言葉へ、ひとつのおこないが次のおこないへ、わたしをみちびいた」
- ルーン文字は、神々にはオーディンが、エルフにはダーイン、小人にはドヴァリンが書いた、とうたわれています

プレ男いちばんえらい神さまが、知恵のために片目をあずけて、9夜も木につるされて…。努力の神さまなんだ。
5. ヴァルハラの戦士たち
- 世界のはじまりから戦いでたおれた人たちは、みなヴァルハラのオーディンのもとに来て、エインヘリヤル(戦士たち)とよばれます
- 戦士たちは、毎日、イノシシセーフリームニルの肉を食べます。イノシシは毎日料理されて、夕方にはまた元どおりになるのです
- ヴァルハラには「540の扉」があり、狼と戦いに出るときには、1つの扉から800人ずつ出ていく、と「グリームニルの言葉」はうたいます
- 戦士たちは、毎朝、武器を持って中庭に出て、たがいに戦うのが遊び。朝ごはんのころには館にもどり、いっしょに飲みます
6. ラグナロクでの最期
- 世界の最後の日ラグナロク、オーディンは金のかぶと、かがやくよろい、槍グングニルを身につけ、神々と戦士たちの先頭に立って、狼フェンリルに向かいます
- でも、狼はオーディンをのみこみます。オーディンの子ヴィーザルが、狼の下あごを足でふみつけ、上あごを手でつかんで、引きさいて殺しました

「高き者の言葉」のオーディンは、ルーンを手に入れたあと、「ひとつの言葉が次の言葉へ、ひとつのおこないが次のおこないへ、わたしをみちびいた」と語っています。
まとめ
- オーディンは「万物の父」。むかしのアースガルズでは12の名前があった
- 2羽のカラスフギンとムニンが毎朝世界を飛び、2匹の狼ゲリとフレキに食事をあげる。自分はワインだけ
- ミーミルの泉の水を飲むため、片目をかたにあずけた
- 風のふく木に9夜つるされ、自分を自分へのいけにえにして、ルーンを手に入れた
- 戦死者はヴァルハラに集まる。ラグナロクではフェンリルにのみこまれ、子ヴィーザルがかたきをうつ
- 北欧神話の全体は北欧神話の入門へ。オーディンの馬スレイプニル、息子バルドルの記事もどうぞ
参考文献
- Snorri Sturluson. The Younger Edda; Also called Snorre’s Edda, or The Prose Edda(英訳:Rasmus B. Anderson、1879年). The Fooling of Gylfe, sections 3, 6, 15, 20, 39–41 and Ragnarok. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/18947 (閲覧日:2026年10月6日)
- The Poetic Edda(英訳:Henry Adams Bellows、The American-Scandinavian Foundation、1923年). Hovamol, stanzas 138–145. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/73533 (閲覧日:2026年10月6日)
- Wikimedia Commons. File:Odin holding Gungnir atop Sleipnir by Frølich.jpg(Lorenz Frølich、Karl Gjellerup『Den ældre Eddas Gudesange』1895年刊の挿絵、パブリックドメイン). https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Odin_holding_Gungnir_atop_Sleipnir_by_Frølich.jpg (閲覧日:2026年10月6日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。



