
プレ男ギリシャ神話って、神さまも怪物もいっぱい出てきて、どこから読めばいいのかわからないよ。

メル美まずは、だれが書いたのか、どんな順番で話が進むのか、大まかにつかんでみよう。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、ギリシャ神話の成り立ちと大まかなあらすじです。ヘロドトス『歴史』(A.D.ゴドリー訳、1920年)、ヘシオドス『神統記』『仕事と日』(H.G.エヴリン=ホワイト訳、1914年)、アポロドーロス『ビブリオテーケー(ギリシャ神話)』(J.G.フレイザー訳、1921年)、ホメロス『イリアス』(A.T.マレー訳)の英訳を、ペルセウス・デジタル・ライブラリーで読みました。
成り立ち:ヘシオドスとホメロス
- 紀元前5世紀の歴史家ヘロドトスは、『歴史』2巻53節で、こう書いています
- ギリシャ人は、神々がそれぞれどこから生まれたのか、すがたはどうなのかを、「ついきのうか、おととい」まで知らなかった
- ヘシオドスとホメロスは、わたしより400年ほど前の人だと思う。この2人が、ギリシャ人に神々の系図を教え、神々に名前をつけ、役目を決め、すがたを語ったのだ
- つまり、ヘロドトスの時代のギリシャ人にとっても、神話のまとまった形は、詩人たちの作品でした
- ヘシオドス:『神統記』(世界と神々の生まれ)、『仕事と日』(人間の時代など)
- ホメロス:『イリアス』(トロイア戦争)、『オデュッセイア』(英雄オデュッセウスの帰国の旅)
- のちの時代には、アポロドーロスの名で伝わる『ビブリオテーケー』が、神々と英雄の話を系図の順にまとめました。ローマの詩人オウィディウスの『変身物語』も、多くの話を伝えています

レンブラント・ファン・レイン「ホメロスの胸像を見つめるアリストテレス」1653年。油彩・カンヴァス。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
あらすじ1:はじまりはカオス
- ヘシオドス『神統記』は、「いちばんはじめに、カオスが生まれた」と語ります
- つぎに、すべてのものの土台である、胸の広い大地(ガイア)、地の底のタルタロス、そして神々の中でいちばん美しいエロス(愛)
- カオスからは、エレボス(闇)と黒い夜(ニュクス)が生まれ、夜からはアイテール(天上の光)と昼が生まれました
- 大地は、自分と同じ大きさの、星のかがやく天(ウラノス)を生み、自分をすっぽりおおわせました
あらすじ2:王は、ウラノス→クロノス→ゼウス
アポロドーロスの『ビブリオテーケー』1巻1〜2章で、流れを追ってみます。
| ① ウラノス(天) | はじめて世界を治めた神。大地とのあいだに、百の手を持つ巨人、ひとつ目のキュクロプス、そしてティタン族(オケアノス、ヒュペリオン、イアペトス、末っ子のクロノスなど)が生まれる。ウラノスは巨人やキュクロプスをタルタロスにとじこめた |
| ② クロノス | 子どもたちをとじこめられて悲しんだ大地が、ティタンたちに父をおそわせ、クロノスがウラノスを王の座から追う。クロノスは妹レアと結婚するが、「自分の子に王の座をうばわれる」と予言され、生まれた子(ヘスティア、デメテル、ヘラ、プルトン、ポセイドン)をつぎつぎにのみこむ |
| ③ ゼウス | レアはクレタ島の洞窟でゼウスを生み、クロノスには産着でくるんだ石をのませた。成長したゼウスは、メティスのくすりでクロノスに子どもたちをはき出させ、ティタン族と10年たたかう |
- 大地の予言どおり、ゼウスはタルタロスの巨人たちを味方にし、キュクロプスから雷と稲妻をもらいました。キュクロプスは、プルトンにはかぶとを、ポセイドンには三叉の矛をあたえます
- 神々はティタン族をタルタロスにとじこめ、くじ引きで世界を分けました
- そのあとも、大地が生んだ怪物テュポンが神々にいどみますが、ゼウスに敗れます

プレ男3代続けて、子どもが父親から王の座をうばってるんだ…!
あらすじ3:人間の時代
- ヘシオドス『仕事と日』は、人間の時代を5つに分けて語ります
- 金の種族:クロノスの時代に、神々のように暮らした
- 銀の種族:金の種族よりずっとおとる
- 青銅の種族:ゼウスがトネリコの木から作った。よろいも家も道具も青銅で、黒い鉄はまだなかった
- 英雄(半神)の種族:「わたしたちの前の種族」
- 5番目の種族(鉄の種族):ヘシオドスは「わたしは、5番目の種族の人間でなければよかったのに」となげき、「いまはまさに鉄の種族で、人は昼は働きと悲しみから、夜は滅びから、休むことがない」と書いています
- 人間に火をあたえたプロメテウスと、ゼウスがその罰として送った最初の女性パンドラの話も、ヘシオドスが伝えています
あらすじ4:英雄たちとトロイア戦争
- 英雄の時代には、ペルセウス、ヘラクレス、イアソンとアルゴー船の仲間たちなどが、怪物と戦い、冒険をします
- そして、ギリシャ軍がトロイアの町をせめたトロイア戦争。ホメロス『イリアス』は、「女神よ、歌ってください、ペレウスの子アキレウスの怒りを」で始まります
- 戦争のあと、オデュッセウスが故郷に帰るまでの長い旅が『オデュッセイア』です。ひとつ目の巨人ポリュペモスやセイレーン、スキュラとカリュブディスに出会います

「ホメロス『イリアス』の詩行が書かれたオストラコン(陶片・石片)」580〜640年、コプト。石灰岩にインク。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)

メル美ホメロスの詩は、何百年もあとまで、石のかけらに書き写されていたんだね。

ヘロドトスは、ギリシャ人に神々の系図を教え、名前をつけ、すがたを語ったのはヘシオドスとホメロスだと書いています。
まとめ
- ヘロドトスによると、神々の系図・名前・すがたを語ったのはヘシオドスとホメロス
- はじまりはカオス。つぎに大地(ガイア)、タルタロス、エロス
- 王はウラノス→クロノス→ゼウス。ゼウスはティタン族に勝ち、くじ引きで天・海・冥界を分けた。くわしくはゼウス、ゼウスの頭から生まれたアテナへ
- 人間は、金・銀・青銅・英雄・鉄の5つの種族(ヘシオドス『仕事と日』)
- 英雄の時代の山場がトロイア戦争(『イリアス』)と、オデュッセウスの帰国(『オデュッセイア』)
- くわしくはプロメテウス、テュポン、ポリュペモスなどの記事もどうぞ。北欧神話は北欧神話の入門、インドの神さまはインドラから。ほかに日本・ケルト・エジプト・インド・中国・メソポタミアの神話の入門もあります
参考文献
- Herodotus. The Histories, Book 2, chapter 53(英訳:A.D. Godley、1920年). Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0126:book=2:chapter=53 (閲覧日:2026年10月6日)
- Hesiod. Theogony, 116〜(英訳:H.G. Evelyn-White、1914年). Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0130 (閲覧日:2026年10月6日)
- Hesiod. Works and Days, 109〜201(英訳:H.G. Evelyn-White、1914年). Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0132 (閲覧日:2026年10月6日)
- Apollodorus. The Library, Book 1, chapters 1–2(英訳:J.G. Frazer、1921年). Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0022 (閲覧日:2026年10月6日)
- Homer. The Iliad, Book 1, line 1(英訳:A.T. Murray). Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0134 (閲覧日:2026年10月6日)
- メトロポリタン美術館. Rembrandt, Aristotle with a Bust of Homer, 1653(61.198、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/437394 (閲覧日:2026年10月6日)
- メトロポリタン美術館. Ostrakon with Lines from Homer’s Iliad, 580–640(14.1.140、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/473402 (閲覧日:2026年10月6日)
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