
プレ男セイレーンって、歌で船乗りをさそう海の怪物だよね。

メル美人魚みたいな姿を想像してたけど、古い本だとちがうらしいよ。
こんにちは、Dr. Taro です。 世界の幻獣、今回はセイレーンです。ホメロス『オデュッセイア』12巻(A.T.マレー訳、1919年)と、アポロドーロス『ビブリオテーケー』摘要(J.G.フレイザー訳、1921年)の英訳を、Perseusデジタル図書館で読みました。
プロフィール
| 名前 | セイレーン(複数形はセイレーネス) |
| 人数 | ホメロスでは2人。アポロドーロスでは3人(ペイシノエ、アグラオペ、テルクシエペイア) |
| 親 | アポロドーロスでは、川の神アケロオスと、ムーサのメルポメネの娘 |
| 姿 | ホメロスは書いていない。アポロドーロスでは「太ももから下は鳥の姿」 |
| すみか | 花の咲く野のある島 |
| 得意わざ | 澄んだ歌声で、通りかかる船乗りを引きとめる |
| 出典 | ホメロス『オデュッセイア』12巻37〜54行、158〜200行/アポロドーロス『ビブリオテーケー』摘要7章18〜19節 |

セイレーンの形をした素焼きの容器。東ギリシャ(ロドス島)、紀元前550〜500年ごろ。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
魔女キルケの警告
- 『オデュッセイア』12巻で、魔女キルケは旅立つ英雄オデュッセウスにこう告げます
- 「セイレーンは、近づいてくる人をだれでも惑わす。知らずに近づいてその声を聞いた者は、二度と帰れない。妻と小さな子どもたちが、そばで喜ぶこともない」
- 「セイレーンは花の野にすわって澄んだ声で歌い、そのまわりには朽ちていく人の骨が山になり、骨のまわりで皮がしなびている」
- だから、甘いロウをこねて仲間の耳をふさぎ、こいで通りすぎなさい。自分が聞きたいなら、船のマストに手足をしばらせ、「ほどけ」とたのんでも、もっときつくしばらせなさい

メル美骨の山…!きれいな歌声と、こわい光景のギャップがすごい。
オデュッセウスの作戦
- 船がセイレーンの島に近づくと、風がやみ、海はなぎになりました
- オデュッセウスは、大きな丸いロウのかたまりを剣で小さく切り、手でこねて温め、仲間全員の耳にぬりました
- 仲間たちは、オデュッセウスをマストに手足ごとしばり、オールをこぎ始めます
- 声がとどくほどの近さまで来ると、セイレーンが歌いはじめました
さあ、こちらへ。名高いオデュッセウス、アカイア人の誇りよ。船をとめて、私たち2人の声を聞きなさい。この島を、私たちの甘い声を聞かずに通りすぎた者はいない。聞いた者は楽しみ、前より賢くなって去っていく。私たちは、トロイアで起きたすべての苦しみを知っている。豊かな大地で起こるすべてのことを知っている
「ほどけ」と合図しても
- オデュッセウスの心は、聞きたくてたまらなくなり、まゆで合図して「ほどけ」と仲間に伝えます
- でも仲間たちはこぎつづけ、ペリメデスとエウリュロコスが立ち上がって、さらにきつくしばりました
- セイレーンの声も歌も聞こえないところまで来て、ようやく仲間たちは耳のロウを取り、オデュッセウスをほどきました

プレ男自分が誘惑に負けるのをわかってて、先にしばってもらったのか。かしこい!
アポロドーロスのセイレーン
- アポロドーロスでは、セイレーンは3人。1人は竪琴、1人は歌、1人は笛で、通りかかる船乗りを引きとめようとしました
- 姿は「太ももから下は鳥」
- そして、「船が通りすぎたら、セイレーン自身が死ぬ」という予言があり、オデュッセウスの船が通りすぎたとき、そのとおりになった、と書いています
- 英訳の注によると、ホメロスはセイレーンの名前も親も書いておらず、「2人」を表す言葉(双数形)を使っています。人数や親は、作家によってちがうのです

ホメロス『オデュッセイア』では、オデュッセウスは仲間の耳をロウでふさぎ、自分はマストにしばられてセイレーンの歌を聞き、島を通りすぎました。
まとめ
- セイレーンは、澄んだ歌声で船乗りを引きよせる。島のまわりには人の骨の山(ホメロス)
- オデュッセウスは、仲間の耳をロウでふさぎ、自分はマストにしばられて歌を聞いた
- 「ほどけ」と合図しても、仲間はもっときつくしばった
- ホメロスでは2人、姿は書かれていない。アポロドーロスでは3人で、太ももから下は鳥
- 船が通りすぎたら死ぬ、という予言があった(アポロドーロス)
- 次の海峡の怪物はスキュラとカリュブディス、翼のある女の怪物はハルピュイア、同じ『オデュッセイア』の怪物はポリュペモス、なぞなぞの怪物はスフィンクス、見たら石になる怪物はメドゥーサもどうぞ
参考文献
- Homer. The Odyssey(英訳:A.T. Murray、1919年). 12.37–54, 12.158–200. Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0136:book=12:card=37 (閲覧日:2026年10月4日)
- Apollodorus. The Library, Epitome(英訳:Sir James George Frazer、1921年). E.7.18–19. Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0022:text=Epitome:book=E:chapter=7:section=18 (閲覧日:2026年10月4日)
- メトロポリタン美術館. Terracotta vase in the form of a siren, East Greek, Rhodian, ca. 550–500 BCE(06.1021.34、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/247207 (閲覧日:2026年10月4日)
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