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プレ男一つ目の巨人「サイクロプス」って、ゲームでよく見るよね。

メル美ギリシャ語では「キュクロプス」。『オデュッセイア』では、とんち話みたいな名場面があるんだよ。
こんにちは、Dr. Taro です。 世界の幻獣、今回は一つ目の巨人キュクロプスのポリュペモスです。ホメロス『オデュッセイア』9巻(A.T.マレー訳、1919年)と、ヘシオドス『神統記』(H.G.エヴリン=ホワイト訳、1914年)の英訳を、Perseusデジタル図書館で読みました。
プロフィール
| 名前 | ポリュペモス。キュクロプス(複数形はキュクロペス)の一人 |
| 父 | 海の神ポセイドン(ポリュペモス自身が「私があなたの息子なら」と祈る) |
| すみか | 山の高みの洞窟。羊とヤギを飼い、チーズをつくる |
| 性格 | 『オデュッセイア』では「正義も法も知らない、乱暴な男」 |
| 弱点 | ぶどう酒に弱かった |
| 出典 | ホメロス『オデュッセイア』9巻105〜535行/ヘシオドス『神統記』139〜146行 |
キュクロプスの国
- オデュッセウスによると、キュクロプスたちは畑を耕さず種もまかないのに、小麦・大麦・ぶどうがひとりでに育つ国に住んでいます
- 話しあいの場も、決まった法もなく、それぞれが山の高みの洞窟に住み、自分の家族のことだけを決めていました
洞窟にとじこめられる
- オデュッセウスは12人の仲間をつれ、ぶどう酒を入れた革袋を持って、巨人の洞窟へ行きました。このぶどう酒は、水で20倍にうすめてもいい香りがするほど強いものでした
- 洞窟にはチーズや子羊がいっぱい。仲間は「チーズを持ってすぐ帰ろう」と言いますが、オデュッセウスは巨人の顔を見て、もてなしの贈りものをもらいたいと残ってしまいます。本人も「そうしなかったほうが、ずっとよかった」とふり返っています
- 帰ってきたポリュペモスは、入口を巨大な岩でふさぎ、仲間を2人ずつ食べてしまいます
- 眠っているすきに剣でさそうとも考えますが、入口の岩は人間には動かせない。巨人を倒したら、自分たちも出られなくなるのです

メル美倒しても出られない…!絶体絶命だね。
「ぼくの名前は『だれでもない』」
- オデュッセウスは、オリーブの木の太い棒の先をとがらせて火でかため、羊のふんの下にかくします
- 夕方、巨人にぶどう酒をすすめます。巨人は大よろこびで飲み、「名前を教えろ、贈りものをやる」と言いました
- オデュッセウスは3杯飲ませてから答えます。「ぼくの名前は『だれでもない(ノーマン)』。母も父も仲間も、みんなそう呼ぶ」
- 巨人の返事は、「『だれでもない』は、仲間のなかで最後に食べてやる。それが贈りものだ」
- 巨人が酔って眠ると、オデュッセウスと仲間は焼いた棒を巨人の目に突き刺しました
「『だれでもない』がおれを殺す!」
- ポリュペモスの叫びを聞いて、近くの洞窟のキュクロプスたちが集まり、「だれかに羊をとられたのか?だれかに殺されそうなのか?」とたずねます
- ポリュペモスは答えます。「友よ、『だれでもない』が、力ではなく、だましうちでおれを殺そうとしている!」
- 仲間たちは「だれもおまえに乱暴していないなら、それはゼウスからの病気だ。父のポセイドンに祈れ」と言って、帰ってしまいました
- オデュッセウスは「名前としかけで、うまくだませた」と、心の中で笑います

プレ男「だれでもない」にやられたって言っても、だれも助けに来ないわけか!うまい!
羊のおなかにしがみついて脱出

バルトロメオ・クリヴェラーリ「目をつぶされたポリュペモスと、羊にかくれて洞窟を出るオデュッセウスたち」1756年。銅版画。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
- 目の見えなくなった巨人は、入口の岩をどけて出口にすわり、羊にまぎれて出ていく人間を手でさぐってつかまえようとします
- オデュッセウスは、羊を3頭ずつしばり、まん中の羊のおなかの下に仲間を1人ずつかくしました。自分は、いちばん立派な雄羊のおなかの毛にしがみつきます
- 巨人は羊の背中をなでて確かめますが、おなかの下には気づきません
- 最後に出てきた雄羊に、巨人は話しかけます。「いつもはいちばん先に出ていくのに、なぜ今日は最後なんだ。主人の目を悲しんでいるのか」
- (上の版画は、羊の毛皮をかぶってかくれるように描いていますが、ホメロスの原文では「羊のおなかの下にしがみつく」です)
名乗ってしまったオデュッセウス
- 船にもどったオデュッセウスは、がまんできずに、「おまえの目をつぶしたのは、イタケのラエルテスの子、オデュッセウスだ」と本当の名前を叫んでしまいます
- ポリュペモスは、「オデュッセウスに目をうばわれる」という昔の予言が当たったことを知り、父ポセイドンに祈りました。「オデュッセウスが故郷に帰れないように。帰れるとしても、仲間をすべて失い、ずっとあとに、ひどい姿で帰るように」
- この祈りのせいで、オデュッセウスの帰り道は長い長い旅になります。セイレーンの島も、その旅の途中です

『オデュッセイア』9巻で、オデュッセウスは「ぼくの名前は『だれでもない』」と名乗りました。目をつぶされた巨人が「『だれでもない』に殺される」と叫んでも、仲間の巨人たちは帰ってしまいました。
ヘシオドスのキュクロプスは「雷をつくる職人」
- ヘシオドス『神統記』のキュクロプスは、大地と天の子のブロンテス、ステロペス、アルゲスの3人
- ゼウスに雷と稲妻をつくってあたえた職人で、ほかは神々に似ていますが、額のまん中に目が1つだけありました。「キュクロプス」という呼び名も、まるい目が1つあることからついた、とヘシオドスは書いています
- 同じ「キュクロプス」でも、『オデュッセイア』の羊飼いの巨人とは、だいぶちがいます
まとめ
- ポリュペモスは、ポセイドンの息子の一つ目の巨人キュクロプス
- オデュッセウスたちを洞窟にとじこめ、仲間を食べた
- オデュッセウスはぶどう酒で酔わせ、「ぼくの名前は『だれでもない』」とうそをつき、目をつぶした
- 「『だれでもない』に殺される」と叫んでも、仲間の巨人は帰ってしまった
- 羊のおなかの下にしがみついて脱出。でも最後に名乗ってしまい、ポセイドンの怒りで旅が長引く
- ヘシオドスのキュクロプスは、ゼウスの雷をつくった3人の職人
- 半分人間・半分馬の一族はケンタウロス、ギリシャ神話の英雄はヘラクレス、迷宮の怪物はミノタウロスもどうぞ
参考文献
- Homer. The Odyssey(英訳:A.T. Murray、1919年). 9.105–535. Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0136:book=9:card=105 (閲覧日:2026年10月4日)
- Hesiod. Theogony(英訳:Hugh G. Evelyn-White、1914年). 139–146. Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0130:card=139 (閲覧日:2026年10月4日)
- メトロポリタン美術館. Bartolomeo Crivellari, Plate 7: the blinded Polyphemus, guarding the entrance of his cavern, with Ulysses and his companions escaping below by covering themselves with ram skins, 1756(62.602.525(2)、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/818315 (閲覧日:2026年10月4日)
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