目次

プレ男ギルガメシュって、ゲームでよく見る名前だけど、もとはどんな話なの?

メル美世界でいちばん古いくらいの物語なんだって。粘土板に書かれてたらしいよ。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、メソポタミア神話の成り立ちと大まかなあらすじです。大英博物館エジプト・アッシリア古代遺物部のE.A.ウォリス・バッジがまとめた『バビロニアの天地創造の伝説』(1921年)と『バビロニアの洪水伝説』(1920年)(英訳。プロジェクト・グーテンベルク)を読みました。
成り立ち:王の図書館の粘土板
- メソポタミア(いまのイラクのあたり)の神話は、粘土板にくさび形文字で書かれました
- 天地創造の話の粘土板は、ニネヴェ(いまのクユンジク)の、アッシリアのアッシュルバニパル王(紀元前668〜626年)の宮殿と図書館のあとから、1848〜1876年に掘り出されました。見つけたのは、レヤード、ラッサム、そして大英博物館のジョージ・スミスです
- ラッサムが1852年に見つけた粘土板やかけらは、約2万点。スミスはそれを調べて、洪水の伝説のかけらや、天地のはじまりを語る粘土板を見つけました
- スミスは1875年3月4日、新聞『デイリー・テレグラフ』に、天地創造の粘土板約20点の内容を発表し、1876年に『カルデア人の創世記』として訳を出版しました
- そのあと大英博物館のL.W.キングが、ニネヴェの書記たちの記録から、天地創造の粘土板が7枚ひと組だったことをつきとめました
あらすじ1:「エヌマ・エリシュ」——上に天の名がまだなかったとき
天地創造の叙事詩は、最初の言葉から「エヌマ・エリシュ」とよばれます。
- 「上に、天がまだ名づけられず、下に、地がまだ名をもたなかったとき」(エヌマ・エリシュ・ラ・ナブー・シャマム)
- はじめにあったのは、アプスー(はてしない、まざりあった水)だけ。そこから神々があらわれ、アン(天の神)やエア(ヌディンムド)も生まれました
- 神々があらわれると、世界に秩序が生まれます。アプスーはこれをきらい、相手のティアマトと、神々の秩序をこわす相談をしました
- 知恵の神エアは、強い呪文でアプスーをたおします
- 夫を失ったティアマトは怒り、11の怪物(大蛇、狂犬、さそり人間、魚人間など)を味方にして、キングーを大将にし、その胸に天命の書板(運命の粘土板)をつけました

プレ男神さまのほうが、怪物の軍団にせめられる側なんだ…。
あらすじ2:マルドゥク、ティアマトを2つに切る
- 神々はこわがり、天の神アンはティアマトのところへ行ったものの、そのようすを見てにげ帰ってしまいます
- そこで、エアの子マルドゥクが「戦おう」と名のり出ました。神々は宴会をひらき、マルドゥクに「言ったことが、そのままおこる力」をさずけます。マルドゥクは、衣を消して、また出してみせました
- マルドゥクは、弓・槍・こん棒、いなずまを持ち、網を用意し、4つの風をまわりにおいて、嵐の車に乗って出かけます
- ティアマトが呪文をとなえても、きき目はありません。マルドゥクは網を投げ、悪い風を口から送りこんで体をふくらませ、槍でつらぬきました。11の怪物も網でつかまえ、キングーから天命の書板を取りあげます
- それからマルドゥクは、ティアマトの体を2つに分け、半分で天の丸天井を、もう半分で地の下の水の上の住まいを作りました。そして、星や月日をととのえます
- 神々が「わたしたちをまつり、そなえものをする者がいない」となげくと、マルドゥクは人間を作ることにします。戦いをおこしたキングーの血から、エアが人間を作り、人間は神々に仕えることになりました
- バッジは、この叙事詩のいちばんの目的は、天地創造を語ることより、竜ティアマトに勝ったマルドゥクをたたえることだったと書いています。マルドゥクはバビロンの町の神です。くわしくはマルドゥクへ

「ムシュフシュ竜と神々のしるしのあるクドゥル(境界石)の上部」紀元前1156〜1025年ごろ、イシン第2王朝。石灰岩。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
あらすじ3:王ギルガメシュと、野人エンキドゥ
『ギルガメシュ叙事詩』は、12枚の粘土板でできていて、最初の言葉から「すべてを見た人」とよばれました。バッジのまとめで、流れを追います。くわしくはギルガメシュの記事へ。
- ギルガメシュは、ウルク(エレク)の王。「3分の2は神、3分の1は人間」で、ウルクの城壁や神殿を作りました。でも、人びとを働かせすぎたので、人びとは神々に「王をおさえる者を作ってください」とたのみます
- 女神アルルは、粘土から、全身が毛でおおわれた野人エンキドゥを作りました。エンキドゥは森で、ガゼルのように草を食べ、けものといっしょに水を飲んで暮らしていました
- 町に来たエンキドゥは、パンを食べ、ビールを飲み、服を着ることを覚えます。ギルガメシュとは、はげしいとっくみあいのあと、親友になりました
- 2人は、神がまもる杉の森の番人フンババ(バッジの表記ではクンババ)をたおします
- 女神イシュタルがギルガメシュに結婚をせまり、ことわられると、天の神アンに天の牛を作らせてウルクを荒らさせます。2人は天の牛も殺しました
- そのあと、エンキドゥは病気になり、12日目に死んでしまいます
あらすじ4:死をおそれた王の旅と、大洪水
- 「わたしも死ぬのか。エンキドゥのようになるのか。死のおそれにとりつかれて、わたしは国をさまよう」——ギルガメシュは、神々から不死をもらったという祖先ウトナピシュティムをたずねて、旅に出ます
- 「死の水」をこえてたどり着いたギルガメシュに、ウトナピシュティムは大洪水の話をします(第11の粘土板)
- 知恵の神エアから「家をこわして、船を作れ。財産をすてて、いのちを求めよ」と知らされたウトナピシュティムは、船を作り、家族や親類、家畜や野のけもの、職人たちを乗せて、生きのびました
- 船はニシルの山に止まります。7日目、ハトをはなすと、とまるところがなくて帰ってきました。ツバメも帰ってきました。最後にカラスをはなしました
- ウトナピシュティムは、ギルガメシュに「6日と7晩、ねむらずにいてごらん」と言いますが、ギルガメシュはすぐにねむってしまいます
- 帰りぎわ、ウトナピシュティムは、海の底にある草のことを教えます。名前は「老人が若がえる」。ギルガメシュは足に石をつけて海にもぐり、草を手に入れました
- ところが、帰り道、つめたい泉で水あびをしているあいだに、ヘビがにおいをかぎつけて、草をのみこんでしまいます。ギルガメシュはすわりこんで泣きました
- ウルクにもどったギルガメシュは、船頭に、城壁にのぼって、れんがを土台からたしかめてごらんと言います

「くさび形文字の粘土板:アトラ・ハシス(バビロニアの洪水神話)」紀元前7〜6世紀ごろ、新バビロニアまたはアケメネス朝。粘土。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)

メル美若がえりの草を、ヘビに食べられちゃうなんて…。何千年も前の人も、死がこわかったんだね。

『ギルガメシュ叙事詩』は、親友エンキドゥの死をきっかけに、「わたしも死ぬのか」と旅に出る王の物語です。
まとめ
- メソポタミア神話は、粘土板にくさび形文字で書かれ、ニネヴェのアッシュルバニパル王の図書館などのあとから、19世紀に掘り出された
- 天地創造の「エヌマ・エリシュ」(7枚の粘土板):マルドゥクが竜ティアマトをたおし、その体を2つに分けて天と地を作り、キングーの血から人間が作られた
- 『ギルガメシュ叙事詩』(12枚の粘土板):3分の2が神の王ギルガメシュと、親友エンキドゥ。友の死から不死を求めて旅に出て、大洪水を生きのびたウトナピシュティムに会うが、若がえりの草はヘビに
- ほかの神話は、ギリシャ神話の入門、エジプト神話の入門、インド神話の入門もどうぞ。ギリシャの怪物テュポンも、神々にいどんだ怪物です
参考文献
- E.A. Wallis Budge. The Babylonian Legends of the Creation and the Fight between Bel and the Dragon, told by Assyrian Tablets from Nineveh(1921年6月1日の序). Discovery of the Tablets; The Seven Tablets of Creation, Description of their Contents. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/9914 (閲覧日:2026年10月6日)
- E.A. Wallis Budge. The Babylonian Story of the Deluge as Told by Assyrian Tablets from Nineveh(1920年7月24日の序). The Epic of Gilgamish; The Eleventh Tablet. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/7096 (閲覧日:2026年10月6日)
- メトロポリタン美術館. Top fragment of a kudurru with a mushhushshu dragon and divine symbols, ca. 1156–1025 BCE(1985.45、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/327048 (閲覧日:2026年10月6日)
- メトロポリタン美術館. Cuneiform tablet: Atra-hasis, Babylonian flood myth, ca. 7th–6th century BCE(86.11.378a、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/321999 (閲覧日:2026年10月6日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。



