
プレ男マルドゥクって、名前はかっこいいけど、どんな神さまなの?

メル美竜をたおして、その体で天と地を作った神さまなんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 神さまの解説、今回はメソポタミア神話のマルドゥクです。大英博物館のE.A.ウォリス・バッジ『バビロニアの天地創造の伝説』(1921年、プロジェクト・グーテンベルク)の英訳を読みました。天地創造の叙事詩「エヌマ・エリシュ」の流れはメソポタミア神話の入門へ。
プロフィール
| 立場 | バビロンの町の神。のちに「神々の主」 |
| 父 | 知恵の神エア(エンキ) |
| たおした相手 | 竜ティアマトと、その大将キングー、11の怪物 |
| 武器 | 弓、槍、こん棒、いなずま、網、4つの風、嵐の車 |
| 神殿 | バビロンのエサギラ |
| よび名 | 「50の名前」 |
- バッジは、天地創造の叙事詩のいちばんの目的は、天地創造を語ることよりも、竜ティアマトに勝ったマルドゥクをたたえることだったと書いています
- そして、もとの物語の主人公はニップルの神エンリル(ベール)で、バビロンが力をもつようになって、マルドゥクにかわったのだろうという説を紹介しています。アッシュル(アッシリアの都)の粘土板では、マルドゥクのかわりにアッシュル神が主人公になっています
1. だれも竜に立ち向かえない
- 夫アプスーを知恵の神エアにたおされたティアマトは、怒って、11の怪物(大蛇、狂犬、さそり人間、魚人間、角のあるけものなど)を集め、キングーを大将にして、その胸に天命の書板をつけました
- それを聞いたエアは「悲しんですわりこみ」、天の神々の代表アンシャルはくちびるをかんでなやみます
- アンシャルは天の神アヌをティアマトのもとへ送りますが、怒りにみちたティアマトを見たアヌは、おそろしくなってにげ帰ってしまいました
2. 名のり出たマルドゥクと、宴会
- 神々の会議に、エアは息子マルドゥクを出席させます。マルドゥクは、神々の代表として、ティアマトと戦おうと申し出ました
- アンシャルは、神々の大会議をひらきます。神々は集まって、たがいにキスをかわし、席について、パンを食べ、あたたかく甘いゴマの酒を飲みました。酒がまわって頭がぼんやりしても飲みつづけ、とうとう「気分が高まった」といいます
- 神々はマルドゥクを正式に代表にえらび、「言ったことが、すぐにそのとおりになる力」をさずけました
- マルドゥクは力をためすため、衣に「消えよ」と命じると、衣は消え、「あらわれよ」と命じると、またあらわれました
- 神々はマルドゥクを王とたたえ、王笏・王座などの王のしるしをわたしました

プレ男出陣の前に、まず宴会で盛り上がるんだ。神さまも人間みたい!
3. ティアマトとの戦い
- マルドゥクは、弓と槍とこん棒を持ち、体に火をみたし、いなずまを前においたといいます。ティアマトをつかまえる網を用意し、にげられないよう4つの風を網のまわりにおきました。嵐や大風を作り、雷をにぎり、4頭の馬が引く嵐の車に乗って出かけます
- マルドゥクのおそろしい姿を見たキングーは、ふるえて足がもつれ、ほかの悪霊たちも、見ただけで力がぬけてしまいました
- ティアマトは、呪文でマルドゥクの力をうばおうとしますが、きき目はありません。マルドゥクは網を投げ、悪い風を口から送りこんで体をふくらませ、槍でつらぬきました
- 11の怪物も網でつかまえ、キングーの胸から天命の書板を取りあげて、自分の印をおして、自分の胸につけました
4. 天と地と人間を作る
- マルドゥクは「たくみな計画」を考えます。ティアマトの体を2つに分け、半分で天の丸天井を、もう半分で、深い水(アプスー)に向かいあうエアの住まいを作りました
- 天の館を作り、アヌ・ベール(エンリル)・エアの古い神々に、天と地と地下の場所を分けあたえます
- 第5の粘土板はこわれていますが、マルドゥクが「1年の12か月に、それぞれ3つずつの星をおいた」という一行が残っています
- 神々が「わたしたちをまつり、そなえものをしてくれる者がいない」となげくと、マルドゥクは「血と骨」から人間を作ると言います。神々の会議で、戦いをおこしたのはキングーだと名ざしされ、その血から、エアが神々に仕える人間を作りました
5. エサギラの神殿と「50の名前」
- マルドゥクの勇気をたたえるため、神々(アヌンナキ)は神殿を建てることにします。マルドゥクがえらんだ場所はバビロン、意味は「神の門」。神々がみずかられんがを作り、大神殿エサギラを建てました
- 神殿ができると、マルドゥクは、天で神々に場所を分けたように、エサギラの中でも神々にそれぞれの場所をあたえました
- 最後の第7の粘土板では、神々が集まって、マルドゥクの「50の名前」をおごそかにとなえます。そこにはこう書かれています
- 「この名前を心にとどめよ。だれでもとなえよ。かしこい者は、いっしょに考えよ。父はくり返して子に教えよ。牛飼いや羊飼いの耳にもとどけよ」

メル美「父から子へ教えて」って、神さまの名前を、みんなで語りついでいったんだね。

「くさび形文字の粘土板:マルドゥクへの賛歌」紀元前1千年紀、バビロニア(?)。粘土。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)

バッジによると、天地創造の叙事詩のいちばんの目的は、天地創造を語ることよりも、竜ティアマトに勝ったマルドゥクをたたえることでした。
まとめ
- マルドゥクは、知恵の神エアの子で、バビロンの神
- 天の神アヌさえ逃げた竜ティアマトに、ただひとり名のり出た。宴会で「言ったことがそのままおこる力」をさずかる
- 網・4つの風・嵐の車で出陣し、ティアマトをたおして、その体を2つに分けて天と地を作った
- キングーの血から人間が作られ、神々はエサギラの神殿を建てて、マルドゥクを「50の名前」でたたえた
- 物語の全体はメソポタミア神話の入門へ。同じメソポタミアの英雄ギルガメシュ、怪物テュポンをたおしたギリシャのゼウスとも読みくらべてみてください
参考文献
- E.A. Wallis Budge. The Babylonian Legends of the Creation and the Fight between Bel and the Dragon, told by Assyrian Tablets from Nineveh(1921年6月1日の序). The Object of the Babylonian Legend of the Creation; The Seven Tablets of Creation, Description of their Contents. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/9914 (閲覧日:2026年10月7日)
- メトロポリタン美術館. Cuneiform tablet: hymn to Marduk, 1st millennium BCE(86.11.313、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/321937 (閲覧日:2026年10月7日)
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