
プレ男ゼウスって、ギリシャ神話のボスだよね。雷を投げるおじさんのイメージ。

メル美じつは、生まれてすぐに大ピンチだったんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 神さまの解説、今回はギリシャ神話のゼウスです。ヘシオドス『神統記』(H.G.エヴリン=ホワイト訳、1914年)とホメロス『イリアス』(A.T.マレー訳)の英訳を、ペルセウス・デジタル・ライブラリーで読みました。ギリシャ神話の全体はギリシャ神話の入門へ。
プロフィール
| 立場 | 神々の王。「神々と人間の父」とよばれる |
| 家族 | 父クロノス、母レア。兄や姉に、ヘスティア、デメテル、ヘラ、ハデス、ポセイドン。ゼウスは末っ子 |
| 武器 | 雷鳴、稲妻、雷(いかずち) |
| 住まい | オリュンポスの山 |
| よび名 | 「雲をあつめるゼウス」「雷を投げるゼウス」(『イリアス』) |
1. 身代わりの石
『神統記』453〜506行です。
- クロノスは、大地と天から「自分の子に、王の座をうばわれる」と聞かされていました。だから、レアが子を生むたびに、つぎつぎにのみこんでしまいます
- 末っ子ゼウスを生むとき、レアは両親の大地と天に相談しました。大地はゼウスをクレタ島にはこび、アイガイオンの山の洞窟にかくします
- クロノスには、産着でくるんだ大きな石をわたしました。クロノスは、それをのみこみます。「あわれなやつ! 石のかわりに、自分の子が負けず、なやみもなく残っていることを知らなかった」とヘシオドスは書いています
- 大きくなったゼウスの力と、大地のたくらみで、クロノスはのみこんだ子どもたちをはき出しました。最後にのみこんだ石が、最初に出てきました
- ゼウスはその石を、デルポイ(ピュトー)の、パルナッソス山のふもとの大地にすえ、「人間たちへのしるし、おどろき」にしました
2. 雷をもらい、王になる
- ゼウスは、父クロノスにしばられていた天の子ら(クロノスの兄弟)を自由にしました。彼らは恩を忘れず、ゼウスに雷鳴と、かがやく雷と、稲妻をおくります。それまでは、大地がかくしていたものでした。「ゼウスは、これをたよりに、人間と神々を治める」
- ティタン族との戦いが終わると、神々は、大地のすすめで、ゼウスに王になってくれるようたのみ、ゼウスは神々に役目を分けあたえました(『神統記』881〜885行)
- そのあと、大地が生んだ怪物テュポンがいどみますが、ゼウスは雷で、そのすべての頭を焼き、タルタロスに投げこみました
3. 知恵の女神をのみこみ、頭からアテナ
『神統記』886〜929行です。
- ゼウスが最初に妻にしたのは、神々と人間の中でいちばん知恵のある女神メティスでした
- でも、メティスからは「父と同じ力と知恵をもつ娘」、そのあと「神々と人間の王になる息子」が生まれる運命でした
- そこでゼウスは、大地と天のすすめで、メティスを言葉たくみにだまし、自分のおなかに入れてしまいます。メティスが、ゼウスによいことも悪いことも、考えて教えるように、とヘシオドスは書いています
- そして、ゼウスは自分の頭から、知恵と戦いの女神アテナを生みました

プレ男お父さんにのみこまれかけた人が、自分も奥さんをのみこんでる…!
4. 妻たちと子どもたち
『神統記』が伝える、ゼウスの妻と子どもたちです。
| 母 | 子ども |
|---|---|
| メティス | アテナ(ゼウスの頭から生まれる) |
| テミス(おきて) | 季節の女神ホーラーたち(秩序・正義・平和)、運命の女神モイラたち |
| エウリュノメ | 美の女神カリスたち3人 |
| デメテル | ペルセポネ |
| ムネモシュネ(記憶) | 芸術の女神ムーサたち9人 |
| レト | アポロンとアルテミス |
| ヘラ(最後の妻) | ヘベ、アレス、エイレイテュイア |
- ヘラは、ゼウスがひとりでアテナを生んだことに怒り、ゼウスなしで、かじの神ヘパイストスを生んだといいます
- 『神統記』では、このほかにもマイアからヘルメス、人間の女性セメレからディオニュソス、アルクメネから英雄ヘラクレスが生まれています(938〜944行)。英雄ペルセウスも、アポロドーロスではゼウスの子とされます

「神(おそらくゼウス)の大理石の頭部」紀元前3〜2世紀、ギリシャ(ヘレニズム時代)。大理石。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
5. 「うなずき」と「金の鎖」
ホメロス『イリアス』に出てくる、王としてのゼウスです。
- うなずき(1巻517〜530行):英雄アキレウスの母テティスにたのまれたゼウスは、「ヘラに文句を言われるぞ」と困りながらも、こう言います。「わたしがうなずいたことは、取り消されず、うそにならず、かならずかなう。これが神々のあいだで、いちばん確かなしるしだ」。ゼウスが黒いまゆを動かしてうなずくと、髪がゆれ、オリュンポスの山がふるえました
- 金の鎖(8巻1〜27行):ゼウスは神々を集めて言います。「天から金の鎖をたらして、神々も女神もみんなでつかまって引いてみろ。それでも、わたしを天から引きおろすことはできない。だが、わたしが引けば、大地も海もいっしょに引きあげ、鎖をオリュンポスの峰にむすんで、すべてを宙づりにしてやる」
- でも、そのすぐあと、娘アテナに意見されると、ゼウスはほほえんで「安心しなさい。本気で言ったのではない。おまえには、やさしくしたいのだ」と答えています
6. 幸と不幸の2つのかめ
『イリアス』24巻で、アキレウスは、息子を亡くした敵の王プリアモスに、こう語ります。
- 「ゼウスの館の床には、2つのかめがおいてある。ひとつは災い、ひとつは恵みのかめだ」
- 「ゼウスがまぜてあたえた人は、あるときは悪いことに、あるときはよいことに出会う。でも、災いだけをあたえられた人は、人びとにけなされ、地上をさまよう」

メル美よいことと悪いことが、まざってやってくる。それが人生、ってことなのかな。

『イリアス』のゼウスは、「金の鎖」で力を見せつけたすぐあとに、娘アテナには「本気で言ったのではない」とほほえんでいます。
まとめ
- ゼウスは、クロノスとレアの末っ子。母レアが産着でくるんだ石を身代わりにし、クレタ島の洞窟で育った
- 自由にした天の子らから雷鳴・雷・稲妻をもらい、ティタン族に勝って神々の王に
- 知恵の女神メティスをのみこみ、自分の頭からアテナを生んだ。最後の妻はヘラ
- 『イリアス』では、「わたしのうなずきは取り消されない」「金の鎖で引いても、わたしは引きおろせない」
- ギリシャ神話の全体はギリシャ神話の入門へ。火をぬすんでゼウスに罰せられたプロメテウス、ゼウスと戦ったテュポンの記事もどうぞ
参考文献
- Hesiod. Theogony, 453–506, 881–944(英訳:H.G. Evelyn-White、1914年). Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0130:card=453 (閲覧日:2026年10月6日)
- Homer. The Iliad, Book 1, 493–530; Book 8, 1–40; Book 24, 518–533(英訳:A.T. Murray). Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0134 (閲覧日:2026年10月6日)
- メトロポリタン美術館. Marble head of a god, probably Zeus, Hellenistic, 3rd or 2nd century BCE(26.60.46、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/252511 (閲覧日:2026年10月6日)
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