
プレ男アレスって戦いの神でしょ? きっと最強なんだよね!

メル美それが、『イリアス』では、やられてばかりなんだって…。
こんにちは、Dr. Taro です。 神さまの解説、今回はギリシャ神話のアレスです。ホメロス『イリアス』5巻・21巻(A.T.マレー訳)とヘシオドス『神統記』をペルセウス・デジタル・ライブラリーで、『ホメロス風讃歌』第8歌(H.G.エヴリン=ホワイト訳)をプロジェクト・グーテンベルクで読みました。ギリシャ神話の全体はギリシャ神話の入門へ。

「マルスの頭部のある大理石の浮き彫りのかけら」3世紀初め、ローマ帝政中期。大理石。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)。マルスはローマの戦いの神です
プロフィール
| 立場 | 戦いの神 |
| 父母 | 父ゼウス、母ヘラ(『神統記』) |
| 子 | アフロディテとのあいだに、戦列を乱す恐慌と恐怖(英訳 Panic and Fear)、そしてハルモニア(『神統記』) |
| 讃歌のよび名 | 「金のかぶとの、盾をもつ者、町の救い手、青銅のよろいの、勝利の父」 |
1. 人間の槍で傷つく
『イリアス』5巻835〜909行です。
- トロイア戦争で、アレスはトロイア側について戦っていました。女神アテナは、ギリシャの英雄ディオメデスの戦車に乗りこみ、手綱をとって、アレスめがけて走らせます。アテナは、アレスに見られないように「ハデスのかぶと」をかぶっていました
- アレスが先に槍を投げると、アテナがそれを手でつかんで、それさせました
- つぎにディオメデスが槍をつきだすと、アテナがその槍をアレスの下腹へとみちびき、アレスは傷つきます
- 「青銅のアレスは、9000人か1万人の戦士が戦いでさけぶほどの大声でほえた。ギリシャ軍もトロイア軍も、ふるえあがった」

プレ男戦いの神が、人間の槍でさけび声…! 1万人分って、どれだけ大声なんだ。
2. 父ゼウスの言葉
- アレスは黒い雲のように天へのぼり、オリュンポスのゼウスのそばにすわって、流れる不死の血を見せながらうったえました。「父上、こんなひどいことを見ても怒らないのですか。あなたがあの手のつけられない娘(アテナ)に好きにさせるから、人間がわたしにまで向かってきたのです」
- ゼウスは、まゆの下からにらみつけて言いました
- 「わたしのそばで、めそめそするな。オリュンポスの神々の中で、おまえがいちばんきらいだ。いつも争いと戦いと、けんかばかりが好きなのだから」
- 「それでも、おまえはわたしの子だ。おまえが苦しむのを、これ以上は見ていられない」
- ゼウスはいやしの神パイエオンに命じて、アレスの傷をなおさせました
3. アテナに石で打ちたおされる
『イリアス』21巻391〜415行。神々どうしの大げんかの場面です。
- アレスが先に、青銅の槍でアテナにとびかかりました。「このアブめ! また神々をけんかさせる気か。ディオメデスにわたしを傷つけさせたのをおぼえているか。今度こそ、そのつぐないをさせてやる」
- アレスの槍は、ゼウスの雷さえはねかえすアテナのアイギスに当たりました。アテナは一歩さがって、野原にあった、むかしの人が畑の境界のしるしにおいた、黒くごつごつした大きな石をつかみ、アレスの首を打ちます
- アレスは手足の力がぬけ、7プレトロン(英訳では seven roods)にわたってたおれ、髪は土でよごれ、よろいががらんと鳴りました
- アテナは笑って言います。「おろか者。まだわからないのか。わたしがおまえよりどれほど強いか」

メル美同じ戦いの神でも、知恵のあるアテナのほうが、ずっと強いんだ。
4. 讃歌の祈り──「平和のおきてに」
『ホメロス風讃歌』第8歌は、アレスに、こう祈ります。
- 「力にあふれ、戦車に乗り、金のかぶとの、勇ましいアレスよ。盾をもつ者、町の救い手、青銅のよろいの、つかれを知らず、槍に強い者。オリュンポスの守り、勝利の父、正義の味方」
- 「上から、わたしの命に、やさしい光をそそいでください。にがい臆病を頭から追いはらう力を。そして、わたしをけわしい争いの道へとかりたてる、心のはげしい怒りをおさえてください」
- 「むしろ、しあわせな者よ、争いも、にくしみも、死の悪霊もさけて、おだやかな平和のおきてにとどまる勇気をあたえてください」

プレ男戦いの神に「平和でいられる勇気をください」って祈るんだ。なんだか深い…。

『ホメロス風讃歌』第8歌は、戦いの神アレスに、争いやにくしみをさけて「おだやかな平和のおきてにとどまる勇気」を祈っています。
まとめ
- アレスは、ゼウスとヘラの子で、戦いの神
- 『イリアス』では、アテナに助けられたディオメデスの槍で傷つき、1万人の戦士のような声でさけんだ
- ゼウスには「いちばんきらいな神」と言われながらも、「わたしの子だ」と手当てしてもらった
- 神々の大げんかでは、アテナに境界石で打ちたおされた
- 『ホメロス風讃歌』第8歌は、アレスに「平和のおきてにとどまる勇気」を祈る
- アテナ、父のゼウスの記事もどうぞ
参考文献
- Homer. The Iliad, Book 5, 835–909; Book 21, 391–415(英訳:A.T. Murray). Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0134:book=5:card=846 (閲覧日:2026年10月10日)
- Hesiod. Theogony, 921–937(英訳:H.G. Evelyn-White、1914年). Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0130:card=901 (閲覧日:2026年10月10日)
- Homeric Hymns, VIII. To Ares(英訳:Hugh G. Evelyn-White、1914年). Hesiod, the Homeric Hymns, and Homerica. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/348 (閲覧日:2026年10月10日)
- メトロポリタン美術館. Marble relief fragment with the head of Mars, Roman, early 3rd century CE(18.145.49、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/250709 (閲覧日:2026年10月10日)
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