
プレ男ハデスって、冥界の王さまでしょ? こわい悪役のイメージ!

メル美原典を読むと、悪役というより、地の底の国をきびしく治める王さまみたい。
こんにちは、Dr. Taro です。 神さまの解説、今回はギリシャ神話のハデスです。ヘシオドス『神統記』(H.G.エヴリン=ホワイト訳、1914年)とホメロス『イリアス』(A.T.マレー訳)をペルセウス・デジタル・ライブラリーで、『ホメロス風讃歌』「デメテルへ」(エヴリン=ホワイト訳)をプロジェクト・グーテンベルクで読みました。ギリシャ神話の全体はギリシャ神話の入門へ。

「奉納浮き彫りのかけら」紀元前470〜460年ごろ、南イタリアのロクリ。テラコッタ。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)。美術館の分類では、ハデスとペルセポネ
プロフィール
| 立場 | 地の下の神、死者たちの王 |
| よび名 | 「アイドネウス」「多くの者の主」「影たちの主」 |
| 家族 | 父クロノス、母レア。兄弟はゼウスとポセイドン。妻はペルセポネ |
| 領分 | くじで引いた「うす暗い闇」 |
| 持ちもの | 身につけると姿が見えなくなるかぶと |
| 館の番犬 | ケルベロス(『神統記』では名前を出さず「おそろしい犬」) |
1. 「心にあわれみのない」強い神
- 『神統記』は、クロノスとレアの子どもたちをならべるとき、ハデスを「地の下に住む、心にあわれみのない、強いハデス」とよんでいます。ハデスも、父クロノスにのみこまれた子のひとりでした(くわしくはゼウス)
- 『イリアス』15巻で、弟のポセイドンは「くじをふったとき、わたしは灰色の海を、ハデスはうす暗い闇を、ゼウスは広い天を引いた」と語っています
- 『イリアス』9巻では、総大将アガメムノンが「ハデスは、なだめることも、負かすこともできない。だから、すべての神々の中で、人間にいちばんきらわれている」と言っています
2. 入る者にはしっぽをふる番犬
『神統記』767〜774行は、地の底の館をこう書きます。
- 「そこには、地の下の神、強いハデスと、おそろしいペルセポネの、こだまする館が立っている」
- 「館の前を、おそろしい犬が見張っている。あわれみがなく、ずるいくせがある。入ってくる者には、しっぽと両耳をふってなつくが、出ていこうとする者はゆるさず、門から出ようとするところを見つけると食べてしまう」

プレ男入るときはやさしいのに、出られない…! いちばんこわいタイプの番犬だ。
3. 姿を消すかぶと
- ティタン族との戦いのとき、ひとつ目の巨人キュクロプスたちは、ゼウスに雷、ポセイドンに三叉の矛、そしてハデスにかぶとをおくりました(アポロドーロス。くわしくはギリシャ神話の入門)
- 『イリアス』5巻では、女神アテナが戦場で「ハデスのかぶとをかぶった。強いアレスに見られないように」とうたわれます。かぶるとだれにも見えなくなるかぶとです
- 英雄ペルセウスも、ニンフたちから「ハデスの帽子」を受けとって、メドゥーサのもとへ向かいました
4. ヘラクレスの矢と、王座からとびあがるハデス
- 『イリアス』5巻によると、ハデスも、英雄ヘラクレスに、ピュロスでするどい矢で肩を射られたことがあります。ハデスは痛みに苦しみながらオリュンポスのゼウスの館へ行き、いやしの神パイエオンに薬をぬってもらってなおりました。「死すべき者のつくりではなかったから」です
- 『イリアス』20巻では、トロイア戦争で神々どうしが戦いをはじめます。ゼウスが天から雷をとどろかせ、ポセイドンが地の下から大地と山々をゆらすと、
- 「地の下で、影たちの主アイドネウスはおそれ、王座からとびあがってさけんだ。ポセイドンが上の大地をさいて、神々でさえいみきらう、おそろしくしめった住まいが、人間にも神々にも見えてしまうのではないかと」

メル美冥界の王さまも、天井がぬけるのはこわかったんだ…!
5. ペルセポネへの言葉と、ザクロの種
『ホメロス風讃歌』「デメテルへ」で、ハデスは、ゼウスのはかりごとで、花をつんでいたペルセポネを冥界へつれさりました。
- ペルセポネの母デメテルに、太陽神ヘリオスはこう言います。「多くの者の主アイドネウスは、あなたの娘の夫として、ふさわしくない相手ではない。あなたの兄弟で同じ血筋だし、はじめに世界を分けたときの3分の1を受けて、そこに住む者たちの主なのだから」
- ゼウスの命令で、ペルセポネを母のもとへ帰すとき、ハデスはペルセポネにやさしく語りかけます
- 「行きなさい、ペルセポネ。黒い衣のお母さんのところへ。わたしに、やさしい心をもっておくれ。そんなに悲しまないで。わたしは父ゼウスの兄弟、神々の中で、ふさわしくない夫ではないのだから」
- 「ここにいるあいだ、あなたは生きて動くすべてのものを治め、神々の中でいちばん大きな権利をもつだろう」
- でもハデスは、こっそりあまいザクロの種をペルセポネに食べさせました。ペルセポネが、いつまでも母のもとにいることがないように、と讃歌は書いています

『神統記』によると、ハデスの館の犬は、入ってくる者にはしっぽと両耳をふってなつき、出ていこうとする者はゆるしませんでした。
まとめ
- ハデスは、クロノスとレアの子で、ゼウスとポセイドンの兄弟。くじで「うす暗い闇」を引き、地の下を治める
- 館の番犬は、入る者にはなつき、出る者を食べる(『神統記』)
- 身につけると姿が消えるハデスのかぶと。アテナやペルセウスも使った
- ヘラクレスの矢で肩を傷つけられたことも。神々の大げんかでは、冥界が見えてしまうとおそれて王座からとびあがった
- ペルセポネを妻にし、帰すときにはザクロの種を食べさせた
- 妻の話はペルセポネ、番犬の話はケルベロスへ
参考文献
- Hesiod. Theogony, 453–458, 767–774(英訳:H.G. Evelyn-White、1914年). Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0130:card=767 (閲覧日:2026年10月10日)
- Homer. The Iliad, Book 5, 395–404 and 844–845; Book 9, 158–159; Book 15, 187–193; Book 20, 56–66(英訳:A.T. Murray). Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0134 (閲覧日:2026年10月10日)
- Homeric Hymns, II. To Demeter(英訳:Hugh G. Evelyn-White、1914年). Hesiod, the Homeric Hymns, and Homerica. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/348 (閲覧日:2026年10月10日)
- メトロポリタン美術館. Terracotta fragment of a votive relief, Greek, South Italian, Locrian, ca. 470–460 BCE(1989.281.60、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/255937 (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。



