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プレ男エジプトの神さまって、頭が動物のイメージ。アヌビスとか、ホルスとか。どんな話があるの?

メル美ピラミッドの時代から何千年も続いた国だから、どうやって伝わったのかも気になるね。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、エジプト神話の成り立ちと大まかなあらすじです。E.A.ウォリス・バッジ『神々の伝説』(1912年、プロジェクト・グーテンベルク)、ヘロドトス『歴史』2巻(A.D.ゴドリー訳、ペルセウス・デジタル・ライブラリー)、プルタルコス『イシスとオシリスについて』(F.C.バビット訳、1936年、ラクス・クルティウス)の英訳を読みました。
成り立ち:神話は、壁とパピルスに
- エジプト神話には、ギリシャのヘシオドスのような、神々の系図を1冊にまとめた本が残っていません。神話は、呪文や賛歌の中、神殿や墓の壁、パピルスに、かけらのように書かれています
- たとえば、この記事で紹介する天地創造の話は、ブリティッシュ・ミュージアムのパピルス(10188番)にあります。バッジによると
- 長さ約5メートル、全部で930〜940行
- 日付は「アレクサンドロスの子、ファラオ・アレクサンドロスの12年」、つまり紀元前311年
- 太陽の神ラーの敵の大蛇アペプ(アポピス)をたおすための呪文の本の中に、天地創造の話が入っていて、ほかのエジプトの文書には見つかっていない
- 「人類滅亡の伝説」は、テーベ(いまのルクソール)の西岸にあるセティ1世の墓の、小さな部屋の4つの壁にヒエログリフで書かれています
ギリシャ人から見たエジプト
- 紀元前5世紀のギリシャの歴史家ヘロドトスは、エジプトをおとずれて、『歴史』2巻に書きのこしました
- エジプト人は、1年を12か月に分けた最初の人びとで、1か月を30日とし、毎年5日をたして、季節と暦がずれないようにしている
- 「ほとんどすべての神々の名前は、エジプトからギリシャに来た」(ヘロドトスの考え)
- 1世紀ごろのギリシャの著述家プルタルコスは、『イシスとオシリスについて』で、オシリスの物語を「むだな部分をはぶいて、できるだけ短く」まとめています
あらすじ1:なにもない水から、太陽の神が生まれる
パピルス10188番の「ラーの生成を知り、アペプをたおす書」で、神ネブエルチェル(万物の主)が、こう語ります。
- 「わたしは、ケペラの姿で生まれた。天はまだなく、大地もなく、地をはうものも、まだ作られていなかった」
- 「わたしは、なにもせずにただよう水ヌンの中から、それらを起こした。立つ場所はどこにもなかった」
- 「わたしは、ひとりだった。まだシュウを出しておらず、テフヌトをはき出してもいなかった」
- それから神は、シュウ(空気)とテフヌト(しめり気)を生み、「ひとりの神から、3柱の神になった」といいます
- そのあと神は、自分の体をよせ集めて泣きました。「わたしの目から流れた涙から、男と女が生まれた」
- シュウとテフヌトから、ゲブ(大地)とヌト(天)が生まれ、ゲブとヌトから、オシリス、ホルス(盲目のホルス)、セト、イシス、ネフティスが、ひとつのお産で次々に生まれました

メル美人間は、神さまの涙から生まれたんだ…!
あらすじ2:年をとったラーと、女神ハトホル
セティ1世の墓の「人類滅亡の伝説」です。
- 神々と人間の王だったラーは、年をとり、「骨は銀に、体は金に、髪はラピスラズリのように」なりました。人びとは、王の悪口を言いはじめます
- ラーはすぐには罰せず、まず父のヌンや神々を集めて意見を聞きました。神々は「あなたの目を送りなさい」と言います
- ラーの目は、女神ハトホルの姿で出かけ、山や砂漠ににげた人びとを殺しはじめました
- ラーは、人間を守ろうとします。南の町アブ(いまのアスワン)から「タタアト」という実(バッジは「何の実かはっきりしない。ブルクシュはマンドラゴラと考えた」と注記)を取りよせ、それをまぜたビールを7,000つぼ作らせ、夜のうちに野原にまきました
- 朝になってやってきた女神は、野原をうめつくすビールを見てよろこび、飲んでよっぱらい、人間のことを忘れてしまいました
- このことから、ハトホルのお祭りでは、ねむりをさそうビールを作るようになった、と伝説は語ります
- 人間とくらすのに疲れたラーは、牝牛になった女神ヌトの背中に乗って、天にのぼりました。ラーのくわしい話はラーへ

プレ男世界のピンチを、ビールで止めたの!?
あらすじ3:オシリス・イシス・セト・ホルス
プルタルコスが伝える物語です(ギリシャ人なので、セトを「テュポン」とよんでいます)。
- 天の女神と大地の神の子は、1年のどの月にも生まれてはならないとのろわれていました。そこで知恵の神(ギリシャでいうヘルメス)が、月とすごろくのような遊びをして勝ち、光の時間から5日をもらって、1年の360日のあとにたしました。エジプト人はこの5日を、神々の誕生日として祝うといいます
- 1日目にオシリス、2日目にアルエリス(年上のホルス)、3日目にセト、4日目にイシス、5日目にネフティスが生まれました
- 王になったオシリスは、エジプトの人びとに作物の育て方と法律、神々をうやまうことを教えました
- でも弟のセトは、72人の仲間とたくらみ、オシリスの体にぴったりの美しい箱を作らせて、宴会で「ぴったり入れた人にあげよう」と言います。オシリスが横になると、ふたをしめ、川に流してしまいました
- 妻のイシスは、エジプトじゅうをさがし歩きます。そのあとのオシリスの運命と、子のホルスとセトの戦いは、オシリスの記事でくわしく紹介します

ニナ・ド・ガリス・デイヴィス(模写)「心臓をはかるアヌビス、ナクトアメンの墓」原画は紀元前1290〜1224年ごろ(第19王朝、ラメセス2世の時代)。紙にテンペラ。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
- エジプトの墓の壁には、死んだ人の心臓をてんびんにかける場面も描かれました。上の絵では、犬の頭の神アヌビスが、てんびんに手をそえています

セティ1世の墓の伝説では、ラーは怒りにまかせてすぐ罰するのでなく、まず神々の意見を聞き、最後は人間を守るためにビールを7,000つぼ用意しています。
まとめ
- エジプト神話は、1冊の本でなく、呪文・賛歌・墓や神殿の壁・パピルスに、かけらのように残っている
- はじめは、なにもない水ヌン。太陽の神が自分で生まれ、シュウとテフヌト→ゲブとヌト→オシリス・セト・イシス・ネフティスたちへ。人間は神の涙から生まれた
- 年をとったラーにそむいた人間を、女神ハトホルがほろぼしかけ、ラーはビールで止めた
- オシリスはセトにだまされて箱に入れられ、妻イシスが探しに出る(プルタルコス)。続きはオシリスへ
- ほかの神話は、ギリシャ神話の入門、北欧神話の入門、日本神話の入門、ケルト神話の入門、メソポタミア神話の入門もどうぞ。エジプトの像で有名なスフィンクスの記事もあります
参考文献
- E.A. Wallis Budge. Legends of the Gods: The Egyptian Texts, edited with Translations(1912年). The Legend of the God Neb-er-tcher, and the History of Creation; The Legend of the Destruction of Mankind. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/9411 (閲覧日:2026年10月6日)
- Herodotus. The Histories, Book 2, chapters 4 and 50(英訳:A.D. Godley、1920年). Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0126:book=2:chapter=4 (閲覧日:2026年10月6日)
- Plutarch. Isis and Osiris, chapters 12–13(英訳:F.C. Babbitt、Loeb Classical Library, Moralia Vol. V、1936年). LacusCurtius. https://penelope.uchicago.edu/Thayer/E/Roman/Texts/Plutarch/Moralia/Isis_and_Osiris*/A.html (閲覧日:2026年10月6日)
- メトロポリタン美術館. Nina de Garis Davies, Anubis Weighing the Heart, Tomb of Nakhtamun, original ca. 1290–1224 BCE(33.8.21、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/557830 (閲覧日:2026年10月6日)
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