
プレ男ラーって、エジプトの太陽の神さまだよね。いちばんえらいの?

メル美神々の王なのに、イシスにだまされて「秘密の名前」を教えちゃう話があるんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 神さまの解説、今回はエジプト神話のラーです。大英博物館のE.A.ウォリス・バッジ訳『神々の伝説』(1912年、プロジェクト・グーテンベルク)の英訳を読みました。エジプト神話の全体はエジプト神話の入門へ。
プロフィール
| 立場 | 太陽の神。「神々と人間の王」 |
| 生まれ | 自分で自分を生み、自分で作った |
| 作ったもの | 天と地、いのちの息、火、神々、人間、けもの、地をはうもの、空の鳥、水の魚 |
| すがた | 「朝はケペラ、昼はラー、夕べはトゥム(アトゥム)」 |
| 乗りもの | 「数百万年の舟」。毎日、舟乗りたちの先頭に立って天に入る |
| 敵 | 闇の大蛇アペプ(アポピス) |
1. 目をひらけば光、とじれば闇
トリノのパピルスの「ラーとイシスの伝説」で、ラーは自分のことをこう語ります。
- 「わたしは天と地を作り、山々をむすびあわせ、その上にあるすべてを作った」
- 「わたしが目をひらけば光が来て、目をとじれば闇になる」
- 「わたしが命じれば、ナイルの水があふれ出る。わたしの名前を、神々は知らない」
- 「わたしは時を作り、日を作った。祭りをはじめ、洪水を作った」
- 「わたしは、朝はケペラ、昼はラー、夕べはトゥム」
- ラーにとって120年は1年のようで、名前があまりに多いので、「神々でさえ、その名前を知らない」とされています

メル美朝・昼・夕方で名前がちがうんだ。太陽の動きそのままだね。
2. イシスのたくらみ
- そのころイシスは、ことばの力(呪文)を知る女の姿で暮らしていました。何百万もの人間にあきて、神々や霊たちの上に立ちたいと考えます。「聖なる神の『名前』を知れば、天と地でラーのようになれるのではないか」
- ラーはもう年をとり、口からよだれをたらし、それが地面に落ちていました。イシスはそれを土とこねて、聖なるヘビを作り、ラーが毎日通る道においておきます
- いつものように道を行くラーを、ヘビがかみました。ラーのさけび声は天までとどき、あごはふるえ、くちびるはふるえ、毒は、ナイルの水が土地に広がるように、ラーの体じゅうに広がりました
- ラーは神々をよび集めます。「わたしの目で見たことも、わたしの手で作ったこともない何かに打たれた。こんな痛みは、はじめてだ。火だろうか、水だろうか。水よりつめたく、火より熱い」
3. 「あなたの名前を教えて」
- 神々は泣くばかりでしたが、イシスが、病をほろぼす呪文をもってやってきます。「ヘビの毒が入ったのですか。わたしのことばの力で追いはらいましょう」
- イシスは言います。「父なる神よ、名前を教えてください。名前を名のれる者は生きられるのです」
- ラーは「天と地を作った者」「朝はケペラ、昼はラー、夕べはトゥム」と、たくさんの名前をならべます。でも、毒は少しも引きません
- 「いまおっしゃった中に、あなたの名前はありません。教えてくだされば、毒は出ていきます」
- ラーの両親は、ラーが生まれたとき、その名前をラーの体の中にかくしていました。呪文を使う者が、ラーに力をふるえないようにするためです
- 毒はますます燃えさかり、ついにラーは言いました。「イシスに、わたしの中をさがさせよう。わたしの名前を、わたしの体から出して、イシスの体へうつそう」。ラーは神々から身をかくし、数百万年の舟の王座は、からっぽになりました
- 名前を手に入れたイシスは、となえます。「流れ出よ、毒よ。ラーから出よ。ラーは生き、毒は死ね」

プレ男名前がパスワードみたい! いちばんえらい神さまが、毒ヘビ1匹でそれを明かしちゃうなんて。
- この伝説は、ヘビにかまれた人をなおす呪文として使われました。「ラーは生き、毒は死ね。同じように、だれそれの子のだれそれも生き、毒は死ね」という言葉をとなえ、トゥム、ホルス、イシスの像の上で唱えるように、と最後に書かれています
- 秘密の名前そのものは、伝説の中では明かされていません

「ラー・ホルアクティの小像」紀元前332〜30年、プトレマイオス朝時代。ファイアンス。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
4. 人類滅亡の伝説
- セティ1世の墓の壁に書かれた伝説では、年をとったラーに人間たちがそむき、ラーの目が女神ハトホルの姿で人間をほろぼしかけます。ラーは、7,000つぼのビールで女神をよわせて止めました(くわしくはエジプト神話の入門)
- 人間とくらすのに疲れたラーは、牝牛になった女神ヌトの背に乗って、天にのぼりました。バッジによると、このときラーは知恵の神トトを通して、人間にヘビやけものからみずからを守る呪文をあたえた、とされています
5. 闇の大蛇アペプ
- バッジによると、ブリティッシュ・ミュージアムのパピルス(紀元前311年の日付)には、「ラーの敵アペプをたおす書」という呪文集が書かれています
- アペプは、闇の軍勢の大将で、空にあらわれる巨大な大蛇の姿をしています。冥界の悪霊たちを集め、太陽の神を闇の国にとじこめようとします
- この呪文は、嵐をふせぎ、雨雲を散らし、朝に太陽がのぼるのをじゃまするもの、昼の光をかくすものをとりのぞくために、儀式でとなえられたといいます

「ラーとイシスの伝説」は、ヘビにかまれた人をなおすための呪文として、最後に「ラーは生き、毒は死ね」ととなえるように書かれています。
まとめ
- ラーは、自分で生まれ、天と地と神々と人間を作った太陽の神。「朝はケペラ、昼はラー、夕べはトゥム」
- 年をとったラーは、イシスがよだれと土で作ったヘビにかまれ、命とひきかえに、両親が体にかくした秘密の名前をイシスにわたした
- この伝説は、ヘビにかまれたときの呪文として使われた
- 人間がそむいたときには、ハトホルをビールで止め、牝牛ヌトの背に乗って天へ
- 闇の大蛇アペプは、太陽をとじこめようとする敵
- エジプト神話の全体はエジプト神話の入門へ。イシスの夫オシリス、知恵のために片目を差し出した北欧のオーディンもどうぞ
参考文献
- E.A. Wallis Budge. Legends of the Gods: The Egyptian Texts, edited with Translations(1912年). The Legend of Ra and Isis; The Legend of the Destruction of Mankind; The Legend of the God Neb-er-tcher, and the History of Creation. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/9411 (閲覧日:2026年10月7日)
- メトロポリタン美術館. Statuette of Re-Harakhty, Ptolemaic Period, 332–30 BCE(26.7.863、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/551042 (閲覧日:2026年10月7日)
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