
プレ男神さまが3つの家をたずねて、そこから身分がはじまった!? どういう話?

メル美むかしの北欧の人たちが、自分たちの社会のなりたちを、神話で説明しようとした詩なんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回は北欧神話の「リーグの歌」です。ヘンリー・アダムズ・ベローズ英訳『詩のエッダ』(1923年、プロジェクト・グーテンベルク)の「リーグスシュラ(リーグの歌)」と、その解説を読みました。リーグと同じとされた神はヘイムダルへ。ベローズが「詩人が考えていたのはこの神では」とした神はオーディンへ。
プロフィール
| 詩の名 | 「リーグスシュラ(リーグの歌)」。『スノッリのエッダ』の写本の最後の1枚にだけのこり、終わりの部分がかけている |
| リーグ | 「年をとった、かしこい、力の強い神」。詩の前の散文はヘイムダルのこととするが、ベローズは、詩人はオーディンを考えていたのでは、と書いている |
| 3つの家 | アイとエッダの家、アヴィとアンマの家、ファジルとモージルの家 |
| 3人の子 | スレール(しもべ)、カール(自由な農民)、ヤール(戦士の首長) |
| 若きコン | ヤールのいちばん下の子。ルーンを学び、鳥のことばを聞いた |
| ベローズの説明 | 3つの身分のはじまりを神話で語り、王の身分をたたえる詩。デンマークの王のためにつくられたのでは、という説を紹介している |
1. 歩いてきた神
- 詩の前の散文によると、神々のひとりヘイムダルが、ある海辺の道を歩いていき、ある家に来て、自分を「リーグ」となのりました
- 詩は、こう歌いはじめます。「むかし、緑の道を、年をとった、かしこい神が行った。力強く、たくましく、リーグは大またで歩いていった」
- リーグは、3つの家をたずねました。どの家でも、かしこいことばで語り、家の人たちとならんですわり、食事をし、3晩とまってから、また道をすすんでいきました。そして9か月ののち、それぞれの家に男の子が生まれた、と歌われます
2. 1つめの家:スレール
- 1つめの家には、古い服を着た年よりのアイとエッダがすんでいました。エッダは、もみがらのまじった、重くて厚いパンと、スープを出しました
- この家に生まれた子は、黒い髪で、「スレール」と名づけられました。詩は、スレールの手の皮はしわだらけでかたく、指は太く、顔はみにくく、背はまがり、かかとは大きかった、と描いています
- スレールは大きくなると、木の皮のひもで荷をしばり、一日じゅうたきぎをはこびました
- スレールのもとには、足がまがり、日やけした腕で、鼻の低い「シール」という娘がやってきて、2人は家庭をもちました。訳注によると、シールは「召使いの女」という意味です
- 2人の子どもたちには、「どなる者」「くさい者」「太った者」「ぼろを着た者」のような、けなす意味の名前がつけられています(訳注による)。子どもたちは、ブタやヤギの世話をし、畑に肥やしをまき、泥炭をほりました。こうして、しもべの身分がはじまった、と詩は語ります

メル美見た目で身分を描きわけるなんて、いまの感覚だとびっくりするね。でも、むかしの人がどう考えていたかを知る手がかりになるんだ。
3. 2つめの家:カール
- 2つめの家では、アヴィとアンマがはたらいていました。夫は、はた織りの道具にする木をけずり、妻は糸まき棒をもって、はたを織っていました
- 夫はひげをととのえ、ひたいに巻き毛をたらし、体にあった服を着ていました。妻は頭に帯をまき、むねに上着、肩にとめ金のついた布をかけていました
- この家に生まれた子は「カール」と名づけられ、赤い顔に、かがやく目をしていました
- カールは大きくなると、牛をあつかい、すきを用意し、家や納屋をたて、荷車をつくりました。ヤギの皮をまとい、かぎをもった花嫁スネールをむかえ、指輪をとりかわしました
- 子どもたちには、「強い者」「土地をもつ者」「職人」「肩の広い者」「誇り高い者」「美しい者」のような名前がつけられています(訳注による)。こうして、自由な農民の身分がはじまりました
4. 3つめの家:ヤール
- 3つめの家は、南むきの戸のある館でした。ファジルとモージルがすみ、夫は弓のつるをまき、矢をけずっていました。妻は、布をととのえ、そでを合わせていました。妻は青いガウンを着て、まゆは明るく、首は新雪より白かった、と詩は描いています
- モージルは、白い小麦のうすいパンと、銀でおおった器に入れた肉や鳥、ワインを出しました
- この家に生まれた子は、絹につつまれ、「ヤール」と名づけられました。金色の髪に、かがやくほお、ヘビのようにするどくかがやく目をしていました。ヤールは、盾をふり、弓をひき、馬にのり、犬をはなち、海峡をおよいで大きくなりました
- そこへ、林からリーグが大またで歩いてきて、ヤールにルーンを教え、自分の名でよび、わが子とみとめて、「広い土地をおさめよ」と言いました
- このように、詩は3つの身分の差を、見た目の差として描いています。これは当時の社会の見かたで、いまの考えとはちがいます
5. 若きコンと、しゃべるカラス
- ヤールは18の館をもち、富を人々にわけあたえました。ヘルシルの娘、かしこいエルナを妻にむかえ、たくさんの子どもにめぐまれました。いちばん下の子が「若きコン」です
- コンは「いつまでもつづく、命のルーン」を学びました。戦士をまもり、剣のはをにぶくし、海をしずめることができ、鳥のことばを聞き分け、火をよわめ、心をしずめ、かなしみをやわらげることができました
- コンはルーンのわざでヤールにまさり、「リーグ」とよばれる権利を手にしました
- ある日、コンが森で鳥をよんでいると、枝の上のカラスが語りかけました。「コンよ、なぜ鳥などよんでいるのか。……ダンとダンプの館はりっぱで、おまえよりも富がある」——詩は、ここで切れています

プレ男いいところで切れてる! カラスはコンに何を言いたかったんだろう。気になる!

ベローズ訳の「リーグの歌」では、神リーグがたずねた3つの家に生まれたスレール、カール、ヤールから、しもべ、自由な農民、戦士の首長の3つの身分がはじまった、と歌われています。写本の終わりがかけていて、詩はカラスのことばのとちゅうで切れています。
まとめ
- 「リーグの歌」は、むかしの北欧社会の3つの身分のはじまりを、神話として語る詩
- 神リーグは3つの家をたずね、そこに生まれたスレール、カール、ヤールから、しもべ、自由な農民、戦士の首長の身分がはじまった。詩は身分の差を見た目の差として描いているが、これは当時の社会の見かたで、いまの考えとはちがう
- リーグはヤールにルーンを教え、ヤールの子若きコンは、命のルーンを学び、鳥のことばを聞いた
- 写本の終わりがかけていて、詩はカラスのことばのとちゅうで切れている
- リーグとされたヘイムダル、ベローズがリーグの正体と考えたオーディン、同じ『詩のエッダ』のハーヴァマール(高き者のことば)もどうぞ
参考文献
- Henry Adams Bellows(英訳). The Poetic Edda(1923年). “Rigsthula”(Introductory Note と本文). Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/73533 (閲覧日:2026年10月12日)
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