
プレ男水にうつった自分に恋をした少年の話、聞いたことある?

メル美「エコー」っていうニンフの悲しい恋の話でもあるんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、ギリシャ神話のナルキッソスとエコーです。オウィディウス『変身物語』3巻(H.T.ライリー訳、1851年)の英訳を、プロジェクト・グーテンベルクで読みました。
ニンフとは、ギリシャ神話で、森や泉、川の源、草地、山などに住む、女性の姿の精霊のことです(ホメロス『イリアス』20巻)。人間でも不死の神々でもなく、とても長く生きるとされます。山のニンフは、生まれるときにいっしょに生えたマツやカシの木が枯れると、命が終わる、ともうたわれています(『ホメロス風讃歌』「アフロディテへ」)。
プロフィール
| ナルキッソス | エコー | |
|---|---|---|
| 親・すがた | 川の神ケピソスとニンフリリオペの子。16歳の美少年 | ニンフ。もとは体があった |
| とくちょう | 美しさをほこり、若者にも娘にも心を動かさない | 自分から先に話せず、人が話した最後の言葉だけをくり返す |
| 出典 | オウィディウス『変身物語』3巻339〜510行 | 同左 |

フランス・ファン・デル・ネーフェ「ナルキッソスとエコー」17世紀。エッチング。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
予言:「自分を知らなければ」
- ナルキッソスが生まれたとき、母リリオペは予言者に、「この子は長生きするでしょうか」とたずねます
- 答えは、「もし、自分を知ることがなければ」
- 長いあいだ、この言葉は意味のないものに思われていました。けれども、のちの出来事が、この予言を証明することになります
エコーの罰
- エコーは、むかしからおしゃべりなニンフでした
- 女神ユノ(ヘラ)は、夫ユピテル(ゼウス)のそばにいるニンフたちを見つけようとするたびに、エコーに長い話でひきとめられ、そのあいだにニンフたちに逃げられていました
- 気づいたユノは言います。「わたしをだましたその舌は、少ししか使えないようにしてやろう」。それからエコーは、人が話した最後の言葉だけを、くり返すことしかできなくなりました
「ここに!」「来て!」
- エコーは、森でシカを追うナルキッソスを見て恋をし、こっそりあとをついていきます。でも、自分から話しかけることはできません
- 仲間からはぐれたナルキッソスが「だれかいるの?」とよぶと、エコーは「いるの!」。「来て!」と言えば「来て!」
- 「ここでいっしょになろう」と言うと、エコーはよろこんで「いっしょになろう!」とくり返し、森からとび出して、だきつこうとします
- ナルキッソスは逃げながら言います。「手をはなせ!そんなことをされるくらいなら、死んだほうがましだ」

プレ男言葉をくり返すことしかできないのに、やっと気持ちを伝えたら、ことわられちゃった…。
- ことわられたエコーは森にかくれ、はずかしさで顔を木の葉でかくし、それからはさびしい洞窟に住みます。それでも恋はさめず、ますますつのっていきました
- 悲しみで体はやせ細り、声と骨だけが残ります。骨は石になり、エコーはいまも森にかくれて、山々で声だけが聞こえるのだ、とオウィディウスは書いています
泉にうつった姿
- ナルキッソスにふられた者のひとりが、天に手をあげて祈ります。「あの子も恋をしても、愛するものを手に入れられませんように」。報いの女神ネメシスが、その祈りを聞きいれました
- 羊飼いもヤギも鳥も、だれもふれたことのない、銀のように澄んだ泉がありました。狩りにつかれたナルキッソスは、のどをうるおそうとして、そこで水にうつった自分の姿を見ます
- ナルキッソスは、体のない影を本物だと思って、恋をしてしまいました。水にキスしようとしても、腕をのばしてだきしめようとしても、つかまえられません
- やがてナルキッソスは気づきます。「おまえは、わたしだったのか。わたしは、自分自身への恋に燃えている」
黄色い花
- 食べることも休むこともわすれて、ナルキッソスはやせおとろえていきます
- 姉妹のニンフたちが悲しみ、エコーもその嘆きをくり返しました。ところが、葬儀の用意をすると、体はどこにもなく、そのかわりに、まん中が黄色く、白い花びらにかこまれた花が見つかりました

オウィディウス『変身物語』によると、ナルキッソスについての予言は「もし、自分を知ることがなければ、長生きする」でした。
まとめ
- エコーは、女神ユノの罰で、人の言葉の終わりしかくり返せないニンフ
- エコーはナルキッソスに恋をしたが、ことわられ、声だけが残った
- ナルキッソスへの予言は「自分を知らなければ、長生きする」
- だれもふれない泉で、水にうつった自分に恋をし、やせおとろえた
- 体のかわりに残ったのは、まん中が黄色く、白い花びらの花
- 『変身物語』のほかの話はミダス王、ギリシャ神話の恋の物語はオルペウスとエウリュディケ、ペルセポネもどうぞ
参考文献
- Ovid. The Metamorphoses, Books I–VII(英訳:Henry T. Riley、1851年). Book III, Fables VI–VII. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/21765 (閲覧日:2026年10月6日)
- メトロポリタン美術館. Frans van der Neve, Narcissus and Echo, 17th century(51.501.1851、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/367327 (閲覧日:2026年10月6日)
- Homer. The Iliad, Book 20, 7–9(英訳:A.T. Murray). Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0134:book=20:card=1 (閲覧日:2026年10月8日)
- Homeric Hymns, 5. To Aphrodite, 256–272(英訳:H.G. Evelyn-White、1914年). Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0138:hymn=5:card=247 (閲覧日:2026年10月8日)
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