
プレ男太陽より月のほうがえらかったの!? ふつうは太陽の神さまがいちばんじゃない?

メル美メソポタミアでは、月の満ち欠けで日をかぞえていたから、月がとても大事だったんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はメソポタミア神話の月の神シン(ナンナル)です。アメリカのアッシリア学者モリス・ジャストロウ『バビロニア・アッシリアの宗教』(1898年、プロジェクト・グーテンベルク)の第4章「ナンナルとシン」と第12章「シン」の項を読みました。月の神の子とよばれた太陽の神は太陽神シャマシュへの賛歌へ。
プロフィール
| 名前 | ナンナル(ウルでの名)、シン(ハランでの名)。のちに同じ神とされた |
| ナンナルの意味 | 「光をもたらす者」。太陽の名バッバル(「かがやく者」)とにた意味 |
| シンの意味 | ジャストロウによると、わからない |
| 町 | ウル(いちばん名高く、たぶんいちばん古い)と、ハラン(名は「道」の意味) |
| すがた | 頭の上に三日月。ラピスラズリ色の長いあごひげ |
| 称号 | 「冠の主」、「アヌの子牛」(アヌの子という意味)、「ベルの長子」 |
1. 光をもたらす者
- ジャストロウによると、ナンナルという名は「光をもたらす者」という意味で、太陽の名バッバル(「かがやく者」)とよくにています。名前がにているのは、はたらきがにているからで、バッバルは太陽、ナンナルは月です
- 月の神は、ウルの町でナンナルの名でまつられました。ウルは、月の神がおさめる町の中で、いちばん名高く、たぶんいちばん古い町でした
- ウルの神殿は、町の王たちがこぞって手をくわえ、「たてた者」という称号をほこりました。月の神は「ウルの神」、ウルは「ナンナルの町」とよばれるほど、町と神はむすびついていました
2. 太陽より上の月
- ジャストロウは、バビロニアの人々が、太陽よりも月を重んじたことを強調しています。太陽は「かがやくはじまりの主(月の神)の子」とよばれていました
- 月は、きまった満ち欠けで、太陽よりも人のみちびきになったので、天の力とも地の力とも、むすびつけられました
- 地への力によって、月は時をかぞえることとむすびつけられました。ジャストロウは、そのためか、月の神は地の神ベルの長子ともされた、と書いています

メル美カレンダーのもとになる月が、いちばん大事だったんだね。なるほど!
3. 三日月の冠
- 天での位置から、ナンナルは「アヌの子牛」とよばれました。アヌは天の神(天そのもの)で、「子牛」は子どものたとえです。ジャストロウは、このたとえは、月がある時期に見せる「角」から思いつかれたのだろう、と書いています
- この「角」が月の神の冠です。月の神は、円筒印章に、頭の上に三日月をいただき、ラピスラズリ色の長いあごひげをたくわえた姿でよくえがかれ、「冠の主」とよばれました
4. ハランのシン
- 月の神のもうひとつの名がシンです。ジャストロウは、その意味はわからない、としています
- ウルとならんで月の神で名高い町がハランで、シンという名は、もともとハランの名だっただろう、とジャストロウは考えます。ハランという名は「道」の意味で、西へむかう大きな道にある町でした
- アッシリアの王サルゴン2世は、「ハランのおきてとならわし」をもとにもどしたことを、神々のめぐみをうけるわけのひとつにあげています
- のちには、ナンナルとシンは同じ神とされ、シンという名がほとんどになりました。ジャストロウは、それは、ハランが巡礼の地として名高くなったからかもしれない、と書いています
5. アッシリアのシン
- アッシリアでは、月の神の役わりは、くらべると小さいものでした
- アッシリアの王たちによびかけられるとき、シンは、アッシリアの神々のえいきょうで、人をおそれさせる戦いの神の性格も見せます。同時に、ゆたかさの主、知恵の神として決めごとの主ともされました
- ジャストロウは、バビロニア南部で月の神がうやまわれつづけたのは、月を観測する天文学と占星術がさかんだったことも大きい、と説明しています

プレ男三日月の冠に、青いあごひげ。夜空の月を見ながら、そんな神さまを想像していたんだね。

ジャストロウの本では、バビロニアの人々は太陽よりも月を重んじ、太陽は「かがやくはじまりの主(月の神)の子」とよばれた、と説明されています。
まとめ
- メソポタミアの月の神は、ウルではナンナル(光をもたらす者)、ハランではシンとよばれ、のちに同じ神とされた
- 満ち欠けで時をきざむ月は太陽より重んじられ、太陽は月の神の子ともよばれた
- 頭に三日月の冠、ラピスラズリ色のあごひげ。「アヌの子牛」「冠の主」とよばれた
- アッシリアでは役わりは小さく、戦いの神や決めごとの主の性格もそなえた
- 月の神の子とよばれた太陽の神をたたえるシャマシュへの賛歌、同じ本で解説したエアとナブーもどうぞ
参考文献
- Morris Jastrow, Jr. The Religion of Babylonia and Assyria(1898年). Chapter IV “Babylonian Gods Prior to the Days of Hammurabi”(Nannar and Sin)、Chapter XII “The Assyrian Pantheon”(Sin). Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/20758 (閲覧日:2026年10月12日)
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