
プレ男メソポタミアにも、知恵の神さまがいたの?

メル美ナブーっていう神さまなんだって。お父さんのマルドゥクとの関係が、町と町の関係そのものだったみたい。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はメソポタミア神話のナブーです。アメリカのアッシリア学者モリス・ジャストロウ『バビロニア・アッシリアの宗教』(1898年、プロジェクト・グーテンベルク)の第8章「ハンムラビの時代の神々」のナブーの項を読みました。ナブーの父とされる神はマルドゥクへ。メソポタミア神話の全体はメソポタミア神話の入門へ。
プロフィール
| 名前 | ナブー(ネボとも) |
| 町 | ボルシッパ。ユーフラテス川の西岸で、バビロンのすぐ近く |
| 神殿 | エ・ジダ |
| いちばんの性格 | 知恵の神。「賢い者」「すべてを知る者」 |
| ほかの性格 | 地下の水をひらいて畑をうるおし、穀物を芽ぶかせる、農業の守り手 |
| しるし | つえ。書く人の尖筆とも、王のつえとも考えられた |
| 神々の中の位置 | マルドゥクの子 |
1. 知恵の神
- ジャストロウによると、ナブーのいちばんめだつ性格は、知恵でした。ナブーは「賢い者、すべてを知る者」で、神々のすべての知恵を身にそなえていました
- アッシリアの王たちは、自分の知恵だけでなく、むかしの知恵を、のちの時代のためにのこそうという考えも、ナブーのおかげだとたたえました
- ジャストロウは、バビロニアの人々が知恵を深い水とむすびつけていたことから、ナブーにも水とのつながりがあったのではないか、と考えています(ただし、たしかめられない、とことわっています)
2. 畑をうるおす神
- ナブーは、知恵の神であるだけでなく、農業の守り手でもありました
- 宗教や歴史の文書では、地下の水源をひらいて畑をうるおし、穀物を芽ぶかせ、倉に穀物を積みあげる神としてたたえられています
- ナブーのめぐみがなくなると、ききんと苦しみがやってくる、と考えられました

メル美知恵と、畑の水と、実り。どれも、くらしをささえるのに欠かせないものだね。
3. 名前が出てこない時代
- ジャストロウは、ハンムラビ王とその後つぎたちの碑文に、ナブーの名が出てこないことに注目しています
- ハンムラビの王朝は、バビロンの神マルドゥクの地位をかためることに力をそそいでいました。すぐ近くの町ボルシッパの神ナブーは、マルドゥクのライバルになりかねなかった、とジャストロウは考えます
- ハンムラビは、ボルシッパにマルドゥクの神殿をたて、ナブーの神殿の名「エ・ジダ」を、その神殿につけたといいます
- けれども、ナブーをおさえこもうとするこころみはうまくいきませんでした。ジャストロウは、それが、ナブーが古くから人々にしたわれていたしるしだ、としています
4. 新年の訪問
- ナブーは、マルドゥクの子として、マルドゥクより下の位で、神々の中にむかえいれられました
- 毎年の新年の日には、ナブーの像が、ボルシッパから川をわたって、バビロンの大通りを、父マルドゥクの神殿までおごそかに運ばれました。帰りには、父の神もとちゅうまで子を送った、とジャストロウは書いています
- バビロンのマルドゥクの神殿エ・サギラの中にも、ナブーのための礼拝所がもうけられ、それも「エ・ジダ」とよばれました
- こうして、バビロンとボルシッパのむすびつきが、父と子の神のすがたで、あらわされたのです

プレ男ライバルだった町どうしが、神さまを「父と子」にして、なかよくなったんだね。
5. アッシリアの王たちとナブー
- のちのアッシリアの王たちは、マルドゥクより、むしろナブーをこのみ、知恵のみなもととしてたたえつづけました
- ナブーのしるしのつえは、書く人の尖筆と、王のつえの2つの意味にとられました。ナブーは、気に入った者に王の力をさずける神ともされました
- ジャストロウは、アッシリアの王たちが、自分たちの主神アッシュールとはりあうマルドゥクより、性格のちがう知恵の神ナブーをうやまうほうが、つごうがよかったのだろう、と説明しています

ジャストロウの本では、毎年の新年の日に、ナブーの像がボルシッパから川をわたり、父マルドゥクの神殿までおごそかに運ばれた、と説明されています。
まとめ
- ナブーは、バビロンの近くの町ボルシッパの神で、知恵の神
- 地下の水をひらいて畑をうるおす、農業の守り手でもあった
- ハンムラビの時代には名が出てこないが、やがてマルドゥクの子として神々の中にむかえられた
- 新年には、ナブーの像が川をわたって父の神殿をたずねた。しるしのつえは、尖筆とも王のつえとも考えられた
- 父とされるマルドゥク、裁きの太陽神をたたえるシャマシュへの賛歌、メソポタミア神話の入門もどうぞ
参考文献
- Morris Jastrow, Jr. The Religion of Babylonia and Assyria(1898年). Chapter VIII “The Pantheon in the Days of Hammurabi”(Nabu). Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/20758 (閲覧日:2026年10月12日)
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