
プレ男アダパって、はじめて聞いた! どんな話?

メル美人間が不死になりそこねる話なんだって。神さまの忠告をちゃんとまもったのに…。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はメソポタミア神話のアダパです。モリス・ジャストロウ『バビロニアとアッシリアの宗教』(1898年、プロジェクト・グーテンベルク)の「アダパの伝説」の英訳と解説を読みました。メソポタミア神話の全体はメソポタミア神話の入門へ。

「アプカルの像:魚の皮のずきんをかぶった男性」紀元前9〜8世紀ごろ、新アッシリア時代。陶器。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
プロフィール
| 名前 | アダパ |
| 立場 | 知恵の神エアの子とよばれる、漁師(ジャストロウは「エアの守りのもとにいる人間」と解説) |
| したこと | 南風の翼を折った |
| 天の門の神々 | タンムズとギシュジダ |
| 天でさしだされたもの | いのちの食べもの、いのちの水、衣、油 |
| 見つかった場所 | エジプトのアマルナの粘土板(紀元前15世紀) |
1. 南風の翼を折る
- ジャストロウによると、この伝説は、エジプトのエル・アマルナで見つかった粘土板に書かれていました。アマルナの粘土板は紀元前15世紀のものなので、この話はそのころにはもうまとめられていたことになります
- 漁師アダパは、エアの家のために、海で魚をとっていました。そこへ南風がふいて、アダパを水の中へ、魚のすみかへとしずめてしまいます
- アダパは言いました。「南風よ、ひどいしうちだ。おまえの翼を折ってやる」。すると、その言葉どおり、南風の翼は折れました。7日のあいだ、南風は国をふきませんでした

プレ男言っただけで風の翼が折れちゃった! 人間なのにすごい力。
2. 天の神アヌのよびだし
- 天の神アヌは、7日も南風がふかないのをふしぎに思い、使いのイラブラトにたずねます。「アダパが、南風の翼を折ったのです」
- アヌは怒り、アダパを天へよびだしました。アダパをまもるエアは、こう教えます
- 「喪服を着ていきなさい。天の門にいるタンムズとギシュジダに、なぜ喪服を着ているのかと聞かれたら、『地上から2柱の神がいなくなったから』と答えなさい。2柱は顔を見あわせて、アヌによい言葉を言ってくれるだろう」
- 「アヌの前では、死の食べものが出されるだろう。食べてはいけない。死の水が出されるだろう。飲んではいけない。衣が出されたら着なさい。油が出されたら体にぬりなさい。わたしの言いつけを、わすれてはいけない」
3. 天の門で
- 天の門で、タンムズとギシュジダはアダパを見て、「だれのために喪服を着ているのか」とたずねました。アダパが「地上から2柱の神がいなくなったからです」と答えると、2柱は顔を見あわせて、なげきました
- アヌの前に出たアダパは、「主人の家のために海で魚をとっていたら、南風にしずめられた。怒りのあまり、その翼を折った」とわけを話します
- タンムズとギシュジダがとりなし、アヌの怒りはしずまりました
4. いのちの食べもの
- アヌは、人間が天と地の秘密を見てしまったことにおどろき、「この者に何をあたえよう。いのちの食べものを出して、食べさせよう」と言いました
- ところが、アダパはいのちの食べものを食べず、いのちの水も飲みませんでした。衣は着て、油は体にぬりました。エアの言いつけを、そのとおりまもったのです
- アヌはアダパを見て、なげきました。「さあ、アダパよ、なぜ食べなかったのか、飲まなかったのか……」

メル美「死の食べもの」だと教えられていたから、こわくて食べられなかったんだね…。
5. なぜエアは止めたのか
- ジャストロウは、人間を作り、知恵をあたえ、ほかの神々から人間をまもってきたエア自身が、アダパをだまして不死をのがさせたことに注目しています
- そして、この伝説でバビロニアの神学者たちが伝えたかったのは、「人間が永遠に生きるのは、よいことではない」という教えだったのだろう、と書いています
- ジャストロウは、この話を、ギルガメシュが若がえりの草を手に入れながら失う話とならべて、どちらも「人間は不死になれない」という問題をあつかっている、と解説しています

ジャストロウの英訳では、アダパはエアの言いつけをまもって、天でさしだされたいのちの食べものも、いのちの水も口にしませんでした。
まとめ
- アダパは、知恵の神エアの子とよばれる漁師
- 南風にしずめられて、南風の翼を折り、7日のあいだ南風がふかなくなった
- 天の神アヌによびだされると、エアは「死の食べもの・死の水は口にするな」と教えた
- 天でさしだされたのはいのちの食べもの・いのちの水だったが、アダパは言いつけをまもって口にせず、不死をのがした
- ジャストロウは、「人間が永遠に生きるのはよくない」という教えの話だと考えた
- 不死をめぐるギルガメシュ、不死をさずかったウトナピシュティム、タンムズの妻イシュタル、同じジャストロウの本の嵐の鳥ズー、ワシに乗って天へのぼったエタナもどうぞ
参考文献
- Morris Jastrow. The Religion of Babylonia and Assyria(1898年). Chapter XXIV(Myths and Legends)の「The Adapa Legend」. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/20758 (閲覧日:2026年10月10日)
- メトロポリタン美術館. Apkallu figure: male with a fish-skin hood, Neo-Assyrian, ca. 9th–8th century BCE(54.117.25、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/324338 (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。



