
プレ男大洪水で船を作って生きのびる話って、ノアの箱舟みたい!

メル美メソポタミアの粘土板にも、そっくりの話があるんだって。主人公がウトナピシュティムだよ。
こんにちは、Dr. Taro です。 神さまと英雄の解説、今回はメソポタミア神話のウトナピシュティムです。大英博物館のE.A.ウォリス・バッジ『バビロニアの洪水伝説』(1920年版、プロジェクト・グーテンベルク)にある、『ギルガメシュ叙事詩』第11の粘土板の英訳を読みました。メソポタミア神話の全体はメソポタミア神話の入門へ。

「バビロニアの洪水の粘土板の石膏による復元模型」19世紀(もとの粘土板は紀元前7世紀)。石膏。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
プロフィール
| 名前 | ウトナピシュティム(バッジの英訳では Uta-Napishtim)。「遠くの者」ともよばれる |
| 父 | ウバラ・トゥトゥ |
| 住んでいた町 | ユーフラテス川のほとりのシュルッパク(バッジの注:いまのファーラの遺跡) |
| 助けた神 | 知恵の神エア |
| のちの住まい | 「遠く、川の口」。神々のように不死 |
| 子孫 | ギルガメシュ(バッジは「祖先」と書いています) |
1. 「あなたは、わたしと変わらない」
- 親友エンキドゥを亡くし、死をおそれたギルガメシュは、祖先のウトナピシュティムが不死になったと知り、その秘密を聞くために、「死の水」をこえて会いに行きました(くわしくはギルガメシュ)
- ギルガメシュは言います。「ウトナピシュティムよ、あなたを見ていると、姿はわたしと変わらない。わたしと同じだ。それなのに、どうやって神々の仲間に入り、いのちを得たのか」
- ウトナピシュティムは答えました。「ギルガメシュよ、かくされた秘密を明かそう。神々の秘密を話そう」
2. 葦の家へのお告げ
- ユーフラテス川のほとりの古い町シュルッパクで、神々の父アヌ、相談役の戦士エンリルたちは、嵐(大洪水)をおこすと決めました
- 知恵の神エアもその場にいましたが、エアはその言葉を、ウトナピシュティムがねむる葦の家に向かって伝えます
- 「葦の家よ、葦の家よ! 壁よ、壁よ! 葦の家よ、聞け! 壁よ、さとれ!」
- 「シュルッパクの人、ウバラ・トゥトゥの子よ。家をこわして、船を作れ。財産をすてて、いのちを求めよ。持ちものを手ばなして、いのちを救え。あらゆる穀物の種を、船に運びこめ」
- 町の人には何と言えばよいのかと聞くと、エアは「エンリルがわたしをきらっているので、もうこの町には住めない。海へくだって、わが主エアとくらそう」と言いなさい、と教えました

メル美人に直接ではなく「葦の家の壁」に話しかけるんだね。神々の秘密を守るための工夫なのかな。
3. 船づくり
- 5日目に設計が決まりました。壁の高さは10ガル(120キュビット)、屋根のまわりも10ガル。外側は7つ、内側は9つにしきり、内側にアスファルトとピッチを流しこみます
- 働く人たちには、毎日牛やヒツジをふるまい、ビールやゴマの酒を「川の水のように」飲ませて、新年の祭りのように祝いました。そして、日がしずむ前に船はできあがりました
- ウトナピシュティムは、持っている銀と金、生きた穀物の種を積み、家族と親類、野の家畜とけもの、あらゆる職人を船に乗せました
- 太陽の神シャマシュが決めた時が来て、夕方に雨がふりはじめると、ウトナピシュティムは船に入り、戸をしめました
4. 6日6晩の嵐
- 夜明けとともに、天の底から黒い雲がのぼり、その中で嵐の神アダドがとどろきます。アヌンナキの神々はたいまつをふりかざし、その光で大地を照らしました
- 水は山にまでとどき、「兄弟が兄弟を見わけられない」ほどでした
- 神々も嵐におびえ、アヌの天へにげのぼって、「犬のようにうずくまり、壁ぎわにちぢこまった」といいます。女神イシュタルは、「わたしが生んだ人びとが、小さな魚のように海をうめつくすなんて」となげきました
- 嵐は6日6晩つづき、7日目にようやくおさまりました。ウトナピシュティムが窓をあけると、光が顔にあたり、彼はすわりこんで泣きました

プレ男神さまたちまで、こわくて犬みたいにうずくまったんだ…!
5. ハト、ツバメ、カラス
- 「12日ののち」に島があらわれ、船はニシルの山にとまって、動かなくなりました
- 7日目、ウトナピシュティムはハトをはなしました。ハトは、とまるところがなくて、もどってきました
- 次にツバメをはなしましたが、ツバメももどってきました
- 最後にカラスをはなすと、カラスは水がひいていくのを見て、食べ、地面をつつき、鳴いて、もどってきませんでした
- ウトナピシュティムは船から出て、山の頂でそなえものをしました。神々はそのよい香りをかいで、「そなえものをする人のまわりに、ハエのように集まった」と書かれています
6. 不死をさずかる
- 女神イシュタルは、首のラピスラズリの飾りをかかげ、「この首飾りを忘れないように、この日々のことも決して忘れない」とちかい、相談を聞かずに嵐をおこしたエンリルを、そなえものに来させないで、と言いました
- 船を見たエンリルは怒ります。「いのちをもってにげのびた者がいるのか。ほろびの中で、人間が生きのこってはならない」
- エンウルタの神は「エアのほかに、だれがこんな計画を立てられよう」と言い、エアはエンリルをいさめました。「罪のある者には、その罪を負わせよ。でも、すべてをほろぼさないように、あわれみを」。そして「わたしは神々の秘密をもらしてはいない。アトラ・ハシスに夢を見せ、それで彼が神々の秘密を聞いたのだ」と言います
- エアは船に上がると、ウトナピシュティムと妻の手をとってひざまずかせ、2人のあいだに立って祝福しました。「これまでウトナピシュティムは、ただの人間だった。だが、いまからウトナピシュティムとその妻は、われら神々のようになれ。ウトナピシュティムは、遠く、川の口に住め」

バッジの英訳では、知恵の神エアがウトナピシュティムに「家をこわして、船を作れ。財産をすてて、いのちを求めよ」と告げています。
まとめ
- ウトナピシュティムは、シュルッパクの人で、大洪水を生きのびて不死になった人
- 知恵の神エアに、葦の家の壁ごしに「家をこわして、船を作れ」と教えられた
- 家族・家畜・職人を船に乗せ、6日6晩の嵐をのりこえた
- 船はニシルの山にとまり、ハト・ツバメ・カラスをはなした。カラスはもどらなかった
- エアの祝福で、妻とともに「神々のように」なり、遠く川の口に住んだ
- ギルガメシュ、メソポタミア神話の入門、マルドゥク、同じエアに守られながら不死をのがしたアダパ、インドの大洪水の話マヌと魚もどうぞ
参考文献
- E.A. Wallis Budge. The Babylonian Story of the Deluge and the Epic of Gilgamish, with an Account of the Royal Libraries of Nineveh(1920年版). Eleventh Tablet, lines 1–205 と注11・12. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/7096 (閲覧日:2026年10月10日)
- メトロポリタン美術館. Cast reconstruction of Babylonian Flood Tablet, 19th century, after 7th century BCE original(87.33.21、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/322133 (閲覧日:2026年10月10日)
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