
プレ男大洪水の話って、ノアの箱舟みたいなのがインドにもあるの?

メル美うん。インドでは、助けてあげた小さな魚が、大洪水から人を救ってくれるんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はインド神話のマヌと魚です。古いヴェーダ文献『シャタパタ・ブラーフマナ』1.8.1(J.エッゲリング英訳、1882年)と、『マハーバーラタ』森の巻(ヴァナ・パルヴァ)第186章(K.M.ガングリ英訳)を読みました。インド神話の全体はインド神話の入門へ。

「マツヤ(ヴィシュヌの魚の化身)」1890年ごろ、インド・コルカタのカーリーガート絵画。紙にテンペラなど。クリーブランド美術館所蔵(CC0)
プロフィール
| シャタパタ・ブラーフマナ | マハーバーラタ(森の巻) | |
|---|---|---|
| マヌ | 大洪水のあと、ただひとりのこった人 | ヴィヴァスヴァットの子の聖仙。1万年の苦行をした |
| 魚との出会い | 朝、手を洗っていると、魚が手に入ってきた | チーリニー川の岸で、苦行中に魚が話しかけた |
| 魚の育て方 | つぼ → 穴(池) → 海 | つぼ → 大きな池 → ガンジス川 → 海 |
| 船に乗った人 | マヌ | マヌと7人の聖仙、そしてあらゆる種 |
| 船がついた所 | 北の山 | ヒマーラヤのいちばん高い峰 |
| 魚の正体 | (書かれていない) | 「わたしはブラフマーである」 |
1. 手の中の小さな魚
『シャタパタ・ブラーフマナ』1.8.1です。
- 「朝、人びとはマヌに、手を洗うための水をもってきた。マヌが手を洗っていると、1匹の魚が手の中に入ってきた」
- 魚は言いました。「わたしを育ててください。そうすれば、あなたを救います」。「何から救うのだ」。「洪水が、これらの生きものをみな押し流すでしょう。そこから、あなたを救います」
- 「わたしたちは小さいうちは、ほろびることが多いのです。魚が魚を食べるから。まず、わたしをつぼに入れてください。それより大きくなったら、穴をほってそこに入れ、それより大きくなったら、海へつれていってください。そうすれば、もうほろびることはありません」

メル美小さい魚が大きい魚に食べられないように、守ってあげたんだね。
2. 角につないだ綱
- 魚はすぐに大きくなり、こう言いました。「これこれの年に、洪水が来ます。そのときは船を用意して、わたしの言うことを思い出してください。洪水がおしよせたら船に乗りなさい。わたしが救います」
- マヌは魚を育てて海へはなし、魚が言ったその年に船を用意しました。洪水がおしよせると船に乗りこみ、魚が泳いできたので、その角に船の綱を結びつけ、魚は船をひいて、北の山へいそぎました
- 魚は言いました。「わたしはあなたを救いました。船を木につなぎなさい。山の上にいるあいだに、水にとりのこされないように。水がひくにつれて、少しずつおりてきなさい」
- 「洪水は、これらの生きものをみな押し流し、マヌだけがここにのこった」
3. 『マハーバーラタ』の魚
『マハーバーラタ』森の巻では、聖仙マールカンデーヤが、ユディシュティラ王にこの話を語ります。
- 「ヴィヴァスヴァットの子マヌは、片足で立って手をあげ、1万年のあいだ、きびしい苦行をした」
- チーリニー川の岸で、小さな魚が話しかけました。「わたしは、たよりない小さな魚です。大きな魚がこわいのです。強い魚が弱い魚を食べるのが、わたしたちのならわしなのです。どうか助けてください。ご恩はかならずお返しします」
- マヌはあわれに思い、月の光のようにかがやく魚を、土のつぼに入れ、子どものように大切に育てました。魚は大きくなるたびに、大きな池へ、ガンジス川へ、そして海へとうつされました
- 海に入ると、魚はほほえんで言いました。「この世界がほろびる時が近づいています。じょうぶな舟をつくり、長い綱をそなえなさい。7人の聖仙といっしょに乗り、むかしバラモンたちがかぞえあげた、あらゆる種をもっていきなさい。わたしは角のある姿であらわれます」

プレ男動物じゃなくて「種」をのせるんだ! 植物をまた育てるためかな。
4. 「わたしはブラフマーである」
- 大洪水になると、水は天までおおい、陸も方角もわからなくなりました。見えるのは、マヌと7人の聖仙と魚だけでした
- 魚は、何年ものあいだ舟をひきつづけ、ヒマーラヤのいちばん高い峰へみちびきました。その峰は、いまも「ナウバンダナ(舟をつなぐところ)」とよばれている、といいます
- 魚は聖仙たちに言いました。「わたしはブラフマー、すべての生きものの主である。魚の姿になって、あなたたちをこのわざわいから救った。マヌは、神々も、アスラも、人も、あらゆるものを、もう一度つくりだすだろう」
- そう言うと、魚はたちまち消えました。マヌはきびしい苦行をして、すべての生きものを、正しい順序でつくりなおしました

『マハーバーラタ』森の巻では、マヌの舟をひいた角のある魚が、最後に「わたしはブラフマーである」と名のります。
まとめ
- マヌは、大洪水を生きのびたインドの人類の祖
- 助けた小さな魚が、つぼ → 池 → 海と大きくなり、洪水を予告した
- 洪水が来ると、マヌは魚の角に舟の綱を結び、北の山(ヒマーラヤ)へみちびかれた
- 『マハーバーラタ』では、マヌは7人の聖仙とあらゆる種をのせ、魚は「わたしはブラフマーである」と名のった
- のちの時代の絵では、魚の姿の神がヴィシュヌの化身マツヤとしてえがかれている(上の絵)
- ギリシャの洪水の話デウカリオンとピュラ、メソポタミアの洪水の生きのこりウトナピシュティム、ヴィシュヌ、インド神話の入門もどうぞ
参考文献
- Julius Eggeling(英訳). The Satapatha-Brahmana, Part I(Sacred Books of the East, Vol. 12, 1882), I, 8, 1, 1–6. Internet Sacred Text Archive. https://sacred-texts.com/hin/sbr/sbe12/sbe1234.htm (閲覧日:2026年10月10日)
- Kisari Mohan Ganguli(英訳). The Mahabharata of Krishna-Dwaipayana Vyasa, Volume 1. Vana Parva, Section CLXXXVI. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/15474 (閲覧日:2026年10月10日)
- クリーブランド美術館. Matsya, Fish Avatara of Vishnu, Kalighat, c. 1890(2003.102、CC0). https://clevelandart.org/art/2003.102 (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。



